2007/09/02

R35 Rock&Pops Super Hits/オムニバス(Disc1)

さて、ニューミュージックからJ-POPへと邦楽が発展する中で、消化すべき元ネタとなったのが、この"R35"に収録されている曲たちなんでしょう。
欧米で成立した音楽を日本人がやるにあたって、いきなりオリジナリティを要求するのは難しいのかもしれませんね。また、本家の欧米のアーティストにしたって、先人の成果の上に自分のものを積み上げて行くわけですから、日本のアーティストに対してだけこれはあれの真似だ、パクリだと指摘するのは音楽の可能性を狭めることになって、結局は日本の音楽をつまらなくしてしまうことになるのかもしれません。

ただし、短期間で売れれば良い、または経営上売らなきゃならない、という動機で安易に既存の外国曲のアイデアを拝借してヒット曲を作ったところで次に繋がるものはないわけで、やはり自分たちでそこに何か付け加えた形で新たに発信しなければ、自分は創作活動をしているとはいえないのではないでしょうか?

このR35に収録された曲は、1から10までではないかもしれないけれど、後に続く者になにかをインスパイアさせる力を持っている曲だと思います。

それでは、このオムニバスに収録されている曲を紹介しましょう。まずはDisc1から。

1.JUMP/Van Halen
7月1日のエントリでも触れているので話題が重複しますが、シンセサイザーの白鍵を2本指で適当に弾いてると生まれるシンプルだがカッコ良いイントロ、しかもその後のギターがとんでもない名演。曲自体は似ていないが、前に書いたように"Every Little Thing"の"FOREVER YOURS"の間奏はこの曲のエディのギターソロの、不完全コピーです。

2.Wake Me Up Before You Go-Go/Wham!
Wham!のアイドル歌謡っぽい可愛い曲。彼らのヒット曲である「ラスト・クリスマス」に夏の話の日本語詞をつけてカバーし、一躍有名になったのが"J-WALK"。

3.Psychic Magic/G.I.Orange
サビがむちゃくちゃ印象的ですが、実はイントロやAメロに使いやすそうなアイデアがいっぱいありますね。

4.Take On Me/a-Ha
発声練習みたいな曲。地声でかっきり2オクターブ(Aから2つ上のA)使って、ファルセットでまだ上がある(ちょうど山下達郎の音域ですね)。4オクターブ出る、とか云って威張っている人は一回テレビでこの曲を歌ってみせて欲しい。宇多田ヒカル「蹴っ飛ばせ!」はたぶんこの曲へのオマージュ。

5.Mickey/Toni Basil
最近ゴリエがカバーしてリバイバルヒットしました。渡辺美里「恋したっていいじゃない(1988年)」がそっくりですね。

6.There Must Be An Angel/Eurythmics
ちょっとJ-POPでは生まれてきそうにない、キリスト教文化を感じる格調高い曲。スティービー・ワンダーのハーモニカがカッコイイ。

7.Relax/Frankie Goes To Hollywood
イントロだけでなんの曲かすぐ分かるオリジナリティがすごい。中森明菜の"BITTER AND SWEET"というアルバム(1985年)の中に"BABYLON"というそっくりの曲がある。多分明菜が「コンサートで"Relax"を歌いたい」と言い出して、アイドルにちょっとこの歌詞の内容は…ということで似た曲を発注したんでしょう。

8.Venus/Bananarama
Bananaramaのバージョン自体がカバー曲であり、日本で孫カバーしたのが当時の中途半端なアイドル、長山洋子。この曲でやっと日の目を見た(その後の意外な展開には驚いた)。モーニング娘。もこの曲のパロディ「LOVEマシーン」で国民的アイドルグループになった。底力がある曲なんでしょうね。

9.U Can't Touch This/M.C. Hammer
「バブルへGo!!」の船上パーティーの場面でも使われた超有名曲。M.C. Hammerの発音だと「ケンタシティス」と聴こえるが、これが正規の英語の発音なのか、黒人独特の訛りなのか、彼の国でのツッパリ系発音なのか、極東の島国から1歩も出たことのない私には判断が付かない。とにかく現代日本のヒップホップの原点がここに。強面に喋るだけ喋って、疲れると「休憩~っ」てサボって、いいところになると「俺の番だぜ」って戻ってくる繰り返しが可笑しい。"Stop,Hammer time"のニュアンスをきっちり日本語に出来た奴が日本のラッパーの頂点になる、と私は思う。

10. Every Little Step/Bobby Brown
これもラップですが、M.C. Hammerと違っていたってイージーリスニングな曲です。似てる曲がいっぱいありそうだが、具体例が浮かんで来ない。いつもどこにでも流れているような気がするんですが。というか、M.C. Hammerを聴いてた連中がデブ5人くらいで輪になって歌うラッパーになって、こっちを聴いてた人がリップ・スライムとかケツメイシになったんでしょうか?また勉強しときますけど…。

11.Let's Go Crazy/Prince
この人はオリジナリティがありすぎて真似しにくいんでしょうね。岡村君?ちゃんと聴いたこと無いのでパス。

12.The Reflex/Duran Duran
この頃のイギリスもののボーカルって声がよく似てますよね。ボーイ・ジョージだといわれればそんな気がするし、ジョージ・マイケルだと言われればそんな気がする。特にカルチャー・クラブとは、全然違うものと思いきや、ギターの音とかも似てるんだな。曲はとにかく派手。理屈抜きで楽しい。ちょっと子どもっぽいけど…。

13.Let's Dance/David Bowie
それにしてもデビッド・ボウイのルックスと発声のギャップに改めて驚かされる曲。M.C. Hammerとはまったく別の流儀ですが、この発音もわざとなんでしょうね。「ふろーぅぅわ」って怖いわ。Gacktがなんでいつも声をあーゆー風に加工しているのか、という答えのヒントがこれかも。ビジュアル系の元祖がこれなんでしょうね。あと、荻野目洋子がコーヒー・ルンバの途中で叫んでいたのもこれだ。

14.Don't Stop The Dance/Bryan Ferry
"I Like Chopin"(1983年に出ているので、そっちが先)に似てない?解散直前のオフコースもこのテのサウンドが多い。例「昨日見た夢」

15.Invisible Touch/Genesis
英語は出来ないけれど、このPhil Collinsの英語はすごくよく聴き取れるような気がする。基本的に外国のロックボーカリストは発音がしっかりしてると思うんですが、どうでしょうか?
オフコースの"I'm a man"(1987年)がこのまんま。ミキサーのビル・シュネーは止めなかったのか?ビジネスに徹していたのか?

16.She Drives Me Crazy/Fine Young Cannibals
このイントロはさすがにパクれないよな。シンプル&有名すぎる。

17.Don't Get Me Wrong/The Pretenders
今でも何かの番組のテーマソングに使われてますね。ちょっと言い訳できないほど似ているのが本田美奈子の「ワンウェイ・ジェネレーション(1987年)」。

18.Silly Love Song/Wings
同じCDに入っているとこの曲だけ音圧が低くてボリューム調整してしまう。テクノロジーが一世代昔なんでしょうね。さて時は1979年。"Three and Two"のレコーディングに集まったオフコースの面々、
「仁、ベース練習してきたか」
「Wingsだったらバッチリや」
「じゃ、この曲そんなかんじで」と小田和正が持ってきたのが「愛あるところへ」
「俺のもそんなかんじで」って松尾一彦が持ってきたのが「君を待つ渚」。
「キャラかぶっとる(当時はこの言い回しはない)やん。元は一緒やから俺はどっちでもいいけど…」
「じゃ、松尾の曲は没ね。コンサートの時はやらしてやるからさ」
「せっかく作曲印税が入ると思ったのに…」
「年下なんだから口答えするなよ」
このときの不満が10年後に爆発し、オフコースの解散に繋がった…というのは嘘にしても、出だしの効果音は後に「アレンタウン」になったような気がするし、 "I〜Love〜you〜"が"Take〜 on〜 me〜"になったようにも思う。ついでにこの、"I 〜love〜 you〜"の声って小田さん?とか思うんだよなあ。やっぱり、ポールって偉大?

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