2007/10/07

honeycreeper/PUFFY

デビューして十余年、出て来た時からすぐにいなくなりそうな風情だったにもかかわらず、年齢を重ねても、メンバーが結婚しても、ずっと続いているどころか「アメリカでも大人気」なPUFFYです。オリコンアンケートでもらったミュージック・ギフト券を使って最新アルバムを買って来ました。

デビューは1996年ですから、モーニング娘。よりも活動期間は長い。なんでモーニング娘。を引き合いに出すかというと、私はPUFFYの出現によって日本のいわゆるアイドル歌手は総括され、次の段階に入ると思ったからです。だから、当初は変形したアイドルとして生まれたものの、モーニング娘。がその後に純粋なアイドルとして活躍していたり、鈴木あみとかが出てくる余地があったのは、ちょっと不思議な気がしています。まあ、人間が成長する間にはアイドル的なものを必要とする時期があり、そのための商品は永遠に再生産されて行くのかもしれません。

さて、アイドル歌手とはなんであるか、としみじみ考えると、
1.アイドル歌手は楽曲よりも本人の存在こそが商品価値である
2.その存在価値の中心は歌唱力ではなく、外見とか声などから喚起される性的興味である
ということだと思います。1は大物アーティストならみんなそうですからね。

で、"R35"のときに個別に触れましたが、80年代のアイドルはニューミュージックの力を借りながら時代の音楽になんとか追随し、常に今風であろうとしたわけですが、その中には安易な外国曲の模倣が大変多く、そのテの情報に詳しい人にはかなり恥ずかしい例も多くありました。
さて、そんな80年代産のアイドル歌手たちがある程度淘汰されて、生態系的にアイドル歌手的なもの(性的なものを内包した興味を抱かせる、若いパフォーマー)の居場所が空いたとき、PUFFYが出て来ました。本人たちは下手くそではないが、それほどパワーを感じさせない良く似た感じの女子二人組。
外国曲の模倣ではなく、超有名曲を批評的に引用する奥田民生流のカラオケはロック色が強く、PUFFYがその歌唱においてユニゾンを多用するのはこのバックに負けないためなのではないかと思います。

さて、最新アルバム"honeycreeper"(タイトルは辞書で見ると「ミツドリ」という鳥の名前らしい。ハチドリとは違うんだろうか?)はデビュー曲「アジアの純真」をセルフカリカチュアしたかのような「オリエンタル・ダイヤモンド」から始まります(表記がダイ「ヤ」モンドなのがまた良い)。作者もデビュー曲と同じく井上陽水/奥田民生です。この10年間、PUFFYの基本線がずっと変わっていないのがよく分かります。この他、作家陣としては吉井和哉、真島昌利、ピエール瀧、宮藤官九郎など一癖ありそうな人が集まっています。以前のシングル曲でも草野正宗などを起用していましたね。
もちろんPUFFY側がそういう楽曲提供者を望んだのだと思いますが、PUFFYに歌わせる曲を作るというのは、シンガー・ソングライターにとっても楽しいことなのではないでしょうか?
カッコつけて書くと、PUFFYというのはシンガー・ソングライター(特に男子)にとって魅力的な作品異化の装置だと思います。自分の曲ってどうなんだ、自分の作風ってどうなんだという検証をするのにもってこいなんではないかと。それはPUFFYのユニゾンボイスが良くも悪くも匿名性が高いからです。だったら「初音ミク」でもいいじゃん!?半分はそうです。でもそこはやっぱり生身の、そこそこカワイイ女の子がやってくれる付加価値っていうのが大きくて、もし彼女たちがアイドルであるとするなら、そこがアイドル的価値なんじゃないでしょうか。

8曲目の「妖怪PUFFY」は車で聴いて笑ってしまった。不覚!

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