2009/01/03

決定盤!!「ニュー・ミュージックの時代」ベスト〜その4〜(パープルタウン/八神純子)

新年おめでとうございます。
今年もいたってマイペースに書き進めて参りますが、よろしくお願いします。

年末は毎度のことですが、結構熱心に紅白歌合戦を見て、今の日本の音楽の裾野の広がりとその真ん中はどこにあるのかと観察しておりました。演歌勢の相変わらずの現場での強さと、若手J-POP勢の保守化が目立ちました。景気が悪くて冒険ができないのか、抽き出しがないのか、もう私には読み取れないのですが、「そんなに『イイ歌だ』と言われることが大事なんですか?」と作り手に訊いてみたい気分になりました。聴き手を信用してないんでしょうなあ、というか今の若い購入層たちは、相当バカにされていると思いますよ。

一方、昨日は母のマンションで、自宅では見られないBSで「大集合!青春フォークソング」というのを見ていました。はっきり言って現代で鑑賞に堪える音楽性があるのは一握りで、山崎ハコなんてこんなもんだったのかなあと変な感慨に耽る一方で、岡林信康の神様ぶりに圧倒されたりして、全体ではとても面白かったです。バブル前夜の80年代に青春を送った私にはほとんどリアリティが感じられなかった「チューリップのアップリケ」なんて歌が、今の時代のひどさに再びマッチし始めた恐ろしさ。

かつて日本語の問題シリーズをやったときは、言葉ののせ方とかのテクニックの問題に終始しましたけど、聴き取れたところですっかり角が取れてつるつるになった抽象的な歌詞から何かを読み取ることは、どのみち難しいということに気がついてしまいました。
これだけ若者が虐げられている世の中で、それを具体的な場面を描写しながら怒りや悲しみを唄う若者が出てこないのは不思議な気がしますが、それもこれも社会的メッセージを「カッコワルい」で否定した「ニューミュージック」の後遺症なのかもしれないなあ。

そんなわけで「決定盤!!「ニュー・ミュージックの時代」ベスト」からの4曲目は
M6.パープルタウン/八神純子
です。

私はこの頃、今までの人生で一番熱心に歌番組を見ていましたが、この曲は出てくる度に「作詞・作曲」のクレジットが変わるという、コドモ心にも不思議な現象が起きていたことを覚えています。今となってはWikipediaにも記述があるほど有名な話ですが、この曲は最終的に邦題「ロンリー・ガイ」とされるRay Kennedyの曲に八神純子のオリジナルなメロディを付け足したものである、ということになっています。


以前、広瀬香美の話の途中や「ポーラー・スター」のお題でこの人について書きました。好き嫌いで言うと私はこの人の声が好きだし、作品もフォーク・ロックの世界に歌謡曲的「歌心」を持ち込んで「ニューミュージック」という分野を拡大した人であると思っています。宮川泰のザ・ピーナッツ用の曲を思い出させる、洒落た中にも歌謡曲的に唄って楽しい要素が入っているのが良い。

ただ曲作りにおいてちょっと元ネタがはっきり分かりすぎるという欠点があったかな、と。彼女の最初の大ヒットである「水色の雨」にもそっくりの外国曲があるという指摘は当時からされておりました(私は後から自分で気がつきましたがデビュー曲の「思い出は美しすぎて」もユーミンの「あの日に帰りたい」そのまんま)。
「パープルタウン」では、A-B-Cと展開する曲のうち、歌メロは違うのだけれどもA-Bとさらにイントロまでもがあまりにも「そのまんま」だったので、言い訳ができなかった、ということでしょう。歌メロは大幅に書き換えられており、アレンジャーに罪をかぶせることはできなかったのかな?と思いましたが、"I love you more and more"のメロディがまんまなので、やっぱり確信犯ですね。
今なら「サンプリング」しました、と言ってはじめから「ご挨拶」しておけば、問題なかったのだと思うのですが、まあしょうがないか!

さて、実際にこの曲を聴いてみると、突然健康的になる後付けのサビも含めて、上手に唄っています。
歌詞を読むと、事情は良く分かりませんが、彼氏と喧嘩かなんかがあって、「一人でニューヨークに来てみたらすっかり機嫌が直ったので、仲直りのエアメールを日本に送りました。ニューヨークに来ると元気になっていいですよ」みたいな感じ。当時のJALのキャンペーンソングだったとのこと(Wikipediaによる)。さもありなん。

なんぼ軽薄な80年代とはいえ、こんな生活をリアルに受けとめられる人は少なかったと思いますが、この背伸び感が後のバブルに繋がったんでしょう、多分。

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