2009/07/25

シフォン主義/相対性理論

聴き始めたら癖になってきたので、今度はiTSで落としてきました。相対性理論の「シフォン主義」です。こっちが例の「2009年 第1回 CDショップ大賞」受賞作です。
相対性理論 - シフォン主義 - EP

こいつら、やっぱり面白いです。
"Sing that iTune!"というMacのガジェットで歌詞を読みましたが、話の飛躍のしかたが80年代江口寿史的(あるいは「ビックリハウス」的なのかもしれない。僕は読んでなかったけど)で「あるある!」という感じがします。「脳卒中」と「由比ケ浜」という2つの言葉の絶対値が同じであるとする言語感覚については、おそらく説明不能ですが、分かる人には分かる。

予算的に使える機材の制限等もあったと思うから、どこまでがわざとでどこまでが制約によるものかは知りませんが、例のか弱い声のボーカルの、音が取りきれてないところもそのまま直さずに収録されていて、それがまた生々しさを助長する効果になっています。ギターの音も私たちが仲間内で宅録していたころの、「エフェクター繋いでライン録り」の音に良く似ていて、今からでもコーラスの録音を手伝いに行ってやりたくなります。

今の「メジャーなアーティスト」のCDであれば、この素材をトラックごとにデジタルでいじって、ボーカルはピッチ&タイミングばっちり、ギターはエフェクターが何種類使ってあるのか分からないようにパッケージされますが、相対性理論は、というか特にこの「シフォン主義」は生の素材がそのまま見えていて面白いです。「LOVEずっきゅん」の途中で「らぶ〜らぶ〜らぶ〜らぶ〜」というコーラスっぽいフレーズがありますが、普通は多重録音で4つ重ねる(そのくらいは僕らでもやってた)かコンピュータで最初のフレーズのピッチを変えて貼付けるんだと思うけど、ボーカルがはあはあいいながら4回続けて歌ってるのはいつの時代だい(だからこれはわざとやってるんですね)?
この作品をCDショップの店員が1位にした、ということは彼らも今の主流の、仕上げだけはきれいきれいな音楽に辟易としている証拠じゃないでしょうか。

例えば、引き合いに出して申し訳ないけど、相対性理論と良く似た編成でいまや超メジャーな「いきものがかり」という毒にも薬にもならないバンドがありますね?あれはコンビニのサンドイッチのように作られたものですが、「いきものがかり」という全国で大量販売する280円のサンドイッチを作る時に切り落とした耳の部分のようなもの、あるいは最初から三角形の袋に入れることを考えず、個人経営の喫茶店店主が作ったようなものが相対性理論の作品だと思います。彼らはこれから三角形の袋に入ることを目指すのでしょうか?

2009/07/21

ハイファイ新書/相対性理論

20日に銀座に行ってPerfumeの"Δ(文字の選択はこれで良いのか?)"と中川翔子の新作を買って来ようと思ったんですが、「今度こそ本物の松田聖子仕立て」の中川翔子を試聴したらちょっと期待と違ったのでパスしてしまいました。

代わりになにか若いもんの、知らないバンドでも聴いてみるかと店内を見渡すと「CDショップ大賞受賞(CD市場の落ち込みをなんとかしようと「本屋大賞」を真似たんでしょうね)」と書いてあるPOPを発見。相対性理論といういかにも一癖ありそうな名前のバンドの、「シフォン主義」というCDが置いてありました。ところが見たところシングルCDだと思ってしまったので「1曲じゃ分からないよなあ」とすぐ横に並んでいた、見た目にちゃんとアルバムに見えた「ハイファイ新書」の方を買ってきてしまいました。あとPerfumeもね。


帯から読み取れる曲名が「テレ東」「地獄先生」「ふしぎデカルト」「品川ナンバー」「学級崩壊」等で、「きっとキンモクセイみたいな男4〜5人の理屈っぽい連中に違いない」と思って家に帰って聴いたら、意外にもボーカルが女の子。それもカヒミ・カリィとか風吹ジュンのような弱々しい声の。そしてバックはかなり理屈重視かつロックな演奏で、そのミスマッチ振りが80年代にあったような、なかったような。ゲルニカとかの、細野晴臣が探してきてYENレーベルで売り出していたような、ちょっと既視感のある違和感がありました。

買って損だったか、というとある意味「さすがCDショップ大賞」http://www.cdshop-kumiai.jp/cdshop-taisho/だけあって、中身は悪くないです(投票した店員の数がまだ少ないのがちょっと寂しいが)。風吹ジュンのような、とは書きましたがこの弱い声のボーカルの人=やくしまるえつこ(芸名だったらひどいね!)はへたではなさそう。音域も狭そうで狭くない。それからほぼ一人でこの不思議ちゃんな詞と曲を書いている真部脩一という人は、やはりキンモクセイ的な邦楽マニアなんだろうと思われます。
私が一番気に入ったのは「品川ナンバー」という曲ですが、真部さんが筒美京平の流れを汲む作家であることが窺えます。

実は、家に帰ってからiTSで買えることが分かって、「シフォン主義」の各曲を試聴してみました。バックがもっと激しく、ロック好きは「こっちの方が良いのかな?」とも思いましたけど、「ハイファイ新書」の方がボーカルとバックの対比がより効果的になっているし、全体がソフィスティケイトされていて、私はこっちを買って正解でした。
まあ、初めて「はっぴいえんど」を聴くのに「ゆでめん」と「風街ろまん」のどっちが良いか、というようなことだと思います。
シフォン主義→相対性理論 - シフォン主義 - EP
ハイファイ新書→相対性理論 - ハイファイ新書

2009/07/12

C-Girl/浅香唯

大井町の駅前に臨時の中古CD/DVDの店が出ています。CDは値札に関係なく300円。掘り出し物を探していたら、以前書いた「青春歌年鑑」の続編をいくつか発見。といっても3つくらいですが、その中から「続・青春歌年鑑'88 PLUS」というのを買ってきました。「続」かつ「PLUS」ですから一体何匹目のドジョウなのかも分かりませんが、ちょっと良い曲が入っていたので。

はっきり云ってまったく興味ないのも入っているので以前のように熱心に全曲紹介などはしませんが、私がまだ25歳くらいで音楽を良く聴いていた頃のものなので、懐かしいことは懐かしい。時代としてはおニャン子死して工藤静香を残した時期であり、中森明菜の全盛期であり、菊池桃子がラ・ムーでロック(!?)を歌っていた頃。一方、フォークシンガー武田鉄矢がCMタイアップで演歌のデュエット曲を発売し、「『暮れなずむ町の光と影の中』と歌っていた俺が、今は同じ風景を『夜の帳が下りて町に灯がともる』と歌っている」と自虐ギャグを飛ばしていた頃です(全部入ってます)。

テクノロジー的にはデジタルエフェクターの類い、特にデジタルエコーとその派生品と思われるハーモナイザーやらピッチシフターが一般化して、「うまい人はよりうまく、そうでない人もそれなりに聞こえます」という処理がされるようになっています。中山美穂もディスクで聴けば実力派。シンセサイザーは何の断りも無く多用され、ほとんど打ち込みだけのオケの曲も多いです。そうでない曲もスネアドラムの音はみんな「びしゃあ」という音がします。シモンズでしょうか。

さて、そんな中から選ぶのは浅香唯の"C-Girl"です。当時TVで聴いてあんまりかっこ良かったもんでアルバム"Candid Girl"を買ってきてしまいました。恥ずかしながら!


この直前に歌った「ビリーヴ・アゲイン」あたりからベスト10番組に出始めて、声もだいぶ出るようになっていた印象があります。"C-Girl"は、吉川晃司作品等でロックサウンドの曲を職人的に作っていたNOBODYの作品。浅香唯はこの曲を松田聖子風の大きなビブラートで歌っています。作詞・森雪之丞/作曲・NOBODY/編曲・井上鑑。音域はA3-A#4のようです。当時はもっとうまく聞こえましたが、今聴くとやはりアイドル発声ですね。昭和のアイドルとはいえ、当時すでに鼻濁音なんて流行らなくなっていて、彼女も意識しては使ってないようですが、なぜか英語である"Girl"の頭に「ん」の音が入っているのが愛嬌。

今聴くと、楽器が新しくなったビーチボーイズのように感じてしまいますが、当時はこれで十分高揚感がありました。この後、彼女はさらにロック色の強い曲を歌うようになったと記憶していますが、思いのほかピークが短く(ルックスなんか松田聖子よりよっぽど可愛いと思うんだが)恋愛問題等の理由かなにかで第一線から退いてしまいました。

2009/07/11

三文ゴシップ/椎名林檎

珍しく出たばかりのアルバムをCDショップで買ってきました。
椎名林檎「三文ゴシップ」です。
iTSでも買えますが、かなり凝ったアートワークも施されているので物理ディスクで買った方が良いでしょう。
椎名林檎 - 三文ゴシップ

ちょっとレトロなジャズよりの演奏に乗って、椎名林檎らしい歌が続きます。作曲も彼女が全部やっており、出来上がったトラックに類型的かつ匿名的な歌詞を当てはめてはアーティストだと言い張っている女性シンガーが多い中、「間違っても一緒にしないでよ」というアピールは十分。今時のメジャーなアーティストで「労働者」なんてタイトルの曲を書くのは彼女くらいしかいません(あとは怒髪天の人くらいでしょうか?)。

それでレンタカーの中とかiPhoneにヘッドホン繋いだりして何遍か聴いてみているんですが、なかなか体に入って来ない。その理由は多分、歌詞が聴き取れないこと。

振り返って考えれば、椎名林檎の歌詞が聴き取りにくいのは今に始まったことじゃあないのですが、前に書いた「真夜中は純潔」はまずPVで知って、最初から歌詞を読みながら聴いていたのでそれに気がつきませんでした。
今回は歌詞カードと首っ引きで聴いていたわけじゃないので「なにか面白いこと云ってるんだけど聞こえない」のが結構ストレスになりました。もともと歌詞カードを読んでも大昔の松本隆みたいに難しい単語が並んでいますので、クセの強い巻き舌発音をヒヤリングで大意を読み取るのが難しいのです。また、歌詞の内容と曲調が善くも悪くも(多分わざと)ミスマッチな感じで作ってあるのが聴き取りにくさを助長しているような気がします。

ちょっとミキシングを変えてくれるだけでもずいぶん改善しそうなんですが、作り手がそれ以上に優先したいこと(サウンド)があるのでしょう。逆に言えばこの独特な歌詞の世界も、選ぶ言葉の絶対値のわりには作り手にとってそれほど重要じゃないのかもしれません。

2009/07/04

Around40 〜サマフォー〜/オムニバス

このタイミングならMJ問題とかやればアクセスが稼げるんでしょうが、見解が持てないので分かりやすい邦楽オムニバスの話にします。

TVでコマーシャルもやってた気がする恥ずかしいオムニバスアルバム「サマフォー」を買ってしまいました。なんでも人気投票かなんかやって選曲して、帯には「今の私も歌えちゃう15曲」なんて書いてある、ぁぁああ…。


01 夏を待ちきれなくて/TUBE
季節労働バンド、とかの自虐ネタも含めて「偽サザン」ぶりが板についた頃の1曲。あー、こんなにテンポがゆっくりだったんだ。前田亘輝が一番声が出てた頃なんでしょう、1オクターブ半を越える歌メロをゆうゆうと歌っています。
(ボーカルの音域、以下同じ:E3-A#4) 

02 世界で一番熱い夏/プリンセス プリンセス
しかけが一杯で楽しい曲ですね。過去に聴いた名曲を俯瞰して、良いところを抽出して書いているのが良く分かる。奥居香はそういう作家みたいです。サビの元ネタは"Can't Take My Eyes off of You"でしょうか?奥居香は一番目立つサビを引っ張ってきましたが、広瀬香美はAメロとBメロを巧妙に使って「ロマンスの神様」を作った。私はそれにずっと気づかなくてつい最近気づいて、今は「今夜飲み会〜」のあたりで「もう気づけよ、もう気づけよ」と云われている気分になる(余談)。
(A3-C#5)

03 私の夏/森高千里
ブレイクした前後の金属的なサウンドはすっかり改められて超オーソドックスなバンドサウンド。こういう「へたうま」な感じって、世知辛い今の世の中で新しく出てくるのは難しいんでしょうね。
(G3-C5)

04 夏の扉/松田聖子
あーこれ高校生のときだ。吹奏楽部が文化祭でやってた。
この曲って1オクターブで出来ているんですね。
(B3-B4)

05 モニカ/吉川晃司
この曲はもう、当時いろんなこと云われ尽くした気がします。今回改めて聴いてイントロが「フットルース?」と思ったけど、どっちが先か分からないくらい同時期なんで見立て違いでしょう。
(F3-F4)

06 アクアマリンのままでいて/カルロス・トシキ&オメガトライブ
男性ボーカルとしては驚くほど高いところ(F4あたり)から始まるので、どうなっちゃうのかと思うと意外と常識的な音域で収まる不思議な曲。転調を絡めながら絶対的な音域は1オクターブ。最後に転調したコーラス部分ではA#くらいまで使っているみたいですが。稲垣潤一と同じタイプで、うまいのか下手なのかよくわからない歌いかたです。
(G3-G4)

07 ふたりの夏物語/杉山清貴&オメガトライブ
杉山清貴については「うまい・へた問題」の時に書いたので、声については割愛。チョッパーベースとクリアなギターカッティングのバックに、レファドラとかファラミドとかM7コードをシンセでバラして弾いたサウンドに乗った、「白いセダン」と「海」と「人魚のようなオネエちゃん」が出てくる歌っていうのがいっぱいあったんだよなー。「キール」と「ディンギー」がなんなのか結局分からないままカラオケで歌ったなぁぁああアア…(脳みそが痒くなってる様子を表現中)
(F3-G4)

08 ラストショー/浜田省吾
浜田省吾は買って聴いたことがないです。大学時代、父が失業してて貧乏だったので名古屋の大学生としては致命的なことに車を持っていなかった僕は、いつも友人の車に便乗させてもらっていました。その間に助手席でお腹いっぱい聴いちゃった感じです。感性がすごく普通で、基本真面目なんだけどちょっと不良っぽいのにも憧れる当時の健康な男の子の気持ちとシンクロしやすかったのでしょう。僕は若い頃から病んでいたので、ちょっとこの世界は恥ずかしかったです。ボーカルと歌詞が暑苦しい割にコーラスの感じとかは杉真理なんかと共通な可愛さがあり、そのアンバランスさにも抵抗がありました。
このCDに入っているのは91年のリメイク版だと思いますが、後の作品"J.BOY"と良く似ています。
(F3-F#4)

09 夏のクラクション/稲垣潤一
あ、噂していたら出てきましたね、稲垣潤一。
この人も以前書きましたので、詳細は割愛しますが、この曲は意外と低音も使っています。声の出しかたが上も下も変わらないので、そういう意味ではうまいのでしょうね。
この曲の情景を想像すると、お金のない稲垣潤一はいつも彼女に車で送ってもらってたんでしょうか?石巻あたりの人でしょうか?2番では波間で手を振ってるし、訳が分からん。「夏のクラクション」って、響きはカッコいいが意味を考えると結構まぬけです。
(D3-G4)

10 夢をあきらめないで/岡村孝子
世の中にレンタルビデオというものが現れたとき、狭い部屋で両親と同居していた私は、あまり物騒なものも借りられないので、音楽ビデオをよく借りて見ていました。岡村孝子のライブというのも借りてきましたが、そのMCのエンターテインメント精神のかけらもないところやたまにキーボードの前に座ると小節の頭のコードを白玉で弾くだけという演奏スキルに半ば呆れつつ、善意の塊のようなファンとの関係にちょっと鼻白んだ覚えがあります。
ところでこの曲のどこが「サマー」なんでしょうか?「乾いた空」は私の感覚では晩秋から冬の季語だと思いますが…。
(G3-A#4)

11 MOON/REBECCA
この曲も、ひとことも夏という言葉は出てきませんが、音色(おんしょく)は夏といえば夏のような気がするからまあいいか。歌詞をじっくり読むと、バブル前夜の80年代後半の日本にも階級らしきものがあったことが分かりますね。日本の音楽って一部の極端な例を除いて社会性とか感じないんですが、そういう意味では洋楽的アプローチなのかな?こういう音がかっこ良かったんだよなー、この頃。
(B3-C#5)

12 LA・LA・LA LOVE SONG/久保田利伸 with ナオミ キャンベル
この曲も歌詞というより音そのものが夏、という見立てでしょう。
「メリーゴーラウンド」と「(とーまる)くらいの」のメロディが、ミミレミなのかミレレミなのかどうしても聞き分けられません。
(D#3-G#4)

13 あなたに会えてよかった/小泉今日子
この曲も夏とは云ってませんが「星」とか出てくるので、我々にとって「星空を見る行為」が夏なのかな?キャンプとか林間学校とかのイメージ?プロは冬なんでしょうが。あるいは「素敵な恋」が夏?猫じゃないんだからさあ…。
小泉今日子の歌唱力はデビュー当時からほとんど変わっていませんが、うまくオーラを纏うことでOKにしてしまえた違う意味での実力派。
(A#3-B4)

14 サマータイム ブルース/渡辺美里
イントロ-A-B-A-B-C-A-B-C-D-間奏-C-D-D-D-エンディング。Cだけ転調。本当のサビ(D)がなかなか出て来ないけれど、ひとたび出てきたら後は間奏を挟んで畳み込み、という大きな構造の曲です。音域も広く、いかにも渡辺美里と言う感じ。作曲は誰だろうと思ったら本人の名前が書いてありました。へえ。
(G3-C5)

15 夏の終わりのハーモニー/井上陽水・安全地帯
それで最後がこれですか?ベタだなあ。どのくらいベタかというと、名古屋の外れのスナックに地元中小企業の若手社員が集まって好き勝手歌いまくって、閉店時間になるとリーダー格(主任クラス)が「マスター、あれ」とか云って代表2名で必ずこの曲を歌って帰っていた、というくらいベタです。
今のJ-POPからすると最低音がかなり低いですが、本来日本人男子の音域というのはこの辺が普通。上のFが出ると高い声が出る、と褒められたものです。今はカポ4つ分くらい上ですね。
(B2-F#4)

このシリーズはまだ続くらしく、CDの中に「Around 40 "バラードソング募集"」という紙が入っていました。インターネットで応募できるらしいです。ぁぁああア!
ちなみに会社の同僚にこのサマフォーを「貸してやろうか?」と云ったら「音源全部あるからいらん」と云われました。カルロス・トシキは無いだろう、と思うんだけど…。