2009/11/17

イエローマジック歌謡曲 DISC-3/様々なアーティスト

予定より1日遅れましたが、「イエローマジック歌謡曲」の第3夜です。3枚組なので今日が最終回。このシリーズは曲名書いてれば良いから楽といえば楽なんですが、ときどきすごく耳に残る曲があって、困っています。



M1.わがままな片想い/松田聖子
作詞・松本隆、作曲編曲・細野晴臣。「天国のキッス」のB面であるよ、とライナーノーツに書いてあります。松田聖子の倍音たっぷりな声にはちょっとバックがしょぼくない?B面的な制約がちょっと感じられてしまいます。この曲は「細野晴臣トリビュート・アルバム」でコシミハルがカバーしていますが、そっちの方が断然良いです。


M2.まりン/飯島真理
おお、飯島真理が出てきました。彼女が作詞作曲した作品を坂本龍一がアレンジしています。「愛・おぼえていますか」よりも早い時期の作品で、そのためか歌いかたも声優さんが歌うアニメ主題歌的です。

M3.鏡の中の十月/小池玉緒
作曲編曲YMOとなっています。DISC-2の三国志のテーマを歌っている人ですが、どういう人か分かりません。

M4.ダンスホールで待ちわびて/タンゴ・ヨーロッパ
作曲が細野晴臣。これもまったく分かりませんが、タンゴとも8ビートとも取れるリズムの曲なのに間奏では突然3拍子が入ってきたりして作品としては凝っていて面白い。背景に関係なく面白い曲です。

M5.ピンクの鞄/高橋美枝
作詞・松本隆、作曲・細野晴臣。誰だこれ?ライナーノーツには後に作詞家、コーラスとして活躍したようなことが書いてあるがちょっと信じられない歌声です。デモテープみたい。DISC-3はかなり玉石混淆です。

M6.玉姫様/戸川純
あ、やっと知ってるのが出てきました。戸川純が時代の最先端だった頃の作品。しんぴーしんぴー♪って流行ったなあ。「BSマンガ夜話」の「すすめ!!パイレーツ」の回にゲストで出てきた戸川純が、80年代をしみじみ懐かしんでいるのを見た時はちょっと寂しかったです。

M7.風の谷のナウシカ/安田成美
これも松本隆/細野晴臣コンビです。安田成美の歌唱は褒められたものではないけれど、その声があって完成している作品でもあります。

M8.ピンクのモーツァルト/松田聖子
私が松田聖子の全盛期と思うのがこの曲です。声の完成、抑制された中に高級感のあるカラオケ。作曲・細野晴臣ですが編曲は松任谷正隆との併記になっています。おそらくストリングス部分を松任谷正隆が担当したんでしょうね。


M9.ファンキーマージャン/竹中直人
作詞・高橋幸宏、作曲・加藤和彦、編曲・高橋幸宏。こんな作品があったんですね。というか、サディスティック・ミカ・バンドの曲のカバーらしいです。まだ役者としてブレイクする前で、モノマネ芸人なのか俳優なのか分からなかった頃の竹中直人が持ちネタのいくつかを使って録音しています。資料価値は高いと思います。

M10.リセエンヌ/原田知世
作曲編曲が坂本龍一。髪を切って男の子みたい、なんて歌っているからまた松本隆かと思ったら、作詞は原田知世と康珍花と書いてありました。

M11.クララ気分/原田知世
こちらは作曲が南佳孝、編曲が坂本龍一。原田知世ってもう25年もこういう、ちょっと文化の香りを纏いながらの歌手活動を続けているんですね。なんだか分からないけれど偉大だ!

M12.タキシード・ムーンで夕食を/キララとウララ
作曲が細野晴臣、編曲は細野晴臣と船山基紀。片っ方が小室哲哉の元奥さんだったということで有名な女性デュエットですが、どんな唄を歌っていたのかは知らなかった。全編ユニゾンだが、結構声質の相性が良く、聴いてる分には問題ないですね。ま、問題ないだけじゃ売れないか。

M13.銀河鉄道の夜/中原香織
誰?ちょっとDISC-3はマニアック過ぎて着いて行けません。作曲が細野晴臣、編曲は細野晴臣の他2名。

M14.生意気娘/中原理恵
同じ中原でも今度は中原理恵。作詞・RIEとあるのは多分中原本人でしょう。作曲編曲が高橋幸宏。歌メロの一部やベースラインが、まんま、じゃないんだけど、でもやっぱり"Like A Virgin"なんだろうなー、1年後だし。DISC-1、2でスーザンという人の歌でもやってたけど、この頃の高橋幸宏はVCFで変調かけたようなビブラートで声を処理するのが好きだったんですね。

M15.NEO-PLANT/如月小春
作曲編曲が坂本龍一。2000年に若くして亡くなった如月小春がこういう曲を出していたのは知りませんでした。この人も糸井重里や坂本龍一といっしょにいろんな媒体に出てました。私の中では名前の字面とか出てくるチャンネルのせいで松本小雪とちょっとごちゃごちゃになってます。

M16.SIAM PARADICE/少女隊
作曲編曲が細野晴臣。ただし書き下ろしではなく、過去の作品の「リサイクル」とライナーノーツに書かれています。それにしても80年代でこのとんがり方はちょっと意外なほど良くできています。こんなこともやっていたんだ、カッコいいぞ少女隊!

M17.天使のゆびさき/西村知美
「天使の○○/西村〜」と書いていると「まゆ子」を思い出してしまいますが、あ、同調者少ないですね。まあ良いです。これも松本隆/細野晴臣コンビ。すごいプレミアムなイメージの組み合わせなんですが、結構むちゃくちゃ量産してるんですね。

M18.時代よ変われ/つみきみほ
最後の1曲も松本隆/細野晴臣です。

はい、「イエローマジック歌謡曲」3枚聴き終わりました。とっても疲れた。戸川純とか如月小春とかつみきみほとかもう、懐かしさでオジサンはお腹いっぱいです。このCDずっと聴いてたら、仕事中も柏原よしえの「しあわせ音頭」の「そーれそれそれ」が耳元で鳴ってて、困りました。ちょっとなんか毒消しの音楽を探さないといけませんね。
また、これではまだ足りない、というキャパシティの大きな方には、関連商品として「テクノマジック歌謡曲」というのもあるようです。「芳賀ゆい」とか入ってるらしいですよ。

2009/11/15

イエローマジック歌謡曲 DISC-2/様々なアーティスト

バンドに演奏をさせようと思うと、楽器の数だけ他人の目に晒されるわけですから、意識するにしろしないにしろ作り手側にも体面みたいなことが気になるんだと思うのですが、シンセサイザーは曲を評価することもしないし、いやがることもありません。電気代以外のギャラもいりませんから、前衛的な実験もできるし、どんなレベルの低い冗談も実現できます。
80年代にいわゆるテクノサウンドの歌謡曲がこんなに増殖したのは、音色の流行以上に予算やスタジオ・ミュージシャンをマネージメントする手間を大幅に省けることが最大の理由だと思います。

なんてことを考えながら、「イエローマジック歌謡曲」のDISC-2を聴きます。


M1.赤道小町ドキッ/山下久美子
作詞・松本隆、作曲が細野晴臣です。独特の存在感はありながらも大ヒットが無かった山下久美子の代表作になりましたが、本来のスタイルと違ったのがその後の悩みになったか?

M2.サマルカンド大通り/スーザン
作曲・編曲が高橋幸宏。DISC-1にも出てきた人です。声といい、メロディといい、今から始まるアニメの主題歌などにするととても良いと思います。ていうか、最近こんな曲無かったですかね?

M3.哀愁のデスマッチ・ラブ<予告編>/アゴ&キンゾー
これも作曲・編曲が高橋幸宏。なんだっけこれ?

M4.夏の雫/三田寛子
若い人には想像もつかないでしょうが、三田寛子がアイドル歌手で、ひょっとするとポスト山口百恵かもと思われていた時期があったんです。この曲はたしかデビュー曲「駆けてきた処女」の次の曲だったと思います。阿木燿子と井上陽水が作った曲を坂本龍一が編曲しています。

M5.ハートブレイク太陽族/スターボー
ある意味DISC-2の最大の聴きどころがこの曲でしょう。
松本隆と細野晴臣が組んだにも関わらず大コケにこけたプロジェクト。そのコケ方があまりに見事だったので却って歴史的存在になっています。

今聴くと「シブがき隊」を女の子にやらせてみた、以外の意図が見えませんが、「太陽系10番目の惑星からやってきた」と頭がガンガンするような設定など、相当に作り込まれた商品です。おそらく狙いは「じつは女の子なのに男のアイドルよりも女の子に騒がれる」みたいな完成図を夢見ていたのではないかと思うのですが、結局は男の子にも女の子にも受け入れられずに早々に撤退することになりました。普通にカワイイ女の子を一人混ぜておけばPerfumeになったのかもしれない。

M6.しあわせ音頭/柏原よしえ
作曲が細野晴臣です。聴けば分かりますね。はっぴいえんどとYMOの間で細野晴臣が作っていた「チャンキー・ミュージック」が形を変えてアイドル歌手の、しかもノベルティ的作品として再現されたのがこの曲。イントロは「大ちゃん数え唄」ですが、そこからは沖縄民謡風です。柏原よしえ(芳恵)と酒井法子って声とか存在感が良く似てますね。

M7.コズミック・サーフィン/コズミック・インベンション
初期YMOの作品に近田春夫が歌詞を付けて歌われています。歌ってる人がどういう人なのか、ライナーノーツを見てもよく分かりませんが、それにしてもこの、3分で書いたような歌詞はすごすぎる。

M8.ねらわれた少女/真鍋ちえみ
M9.ロマンチスト/真鍋ちえみ
この2曲は作詞・阿久悠、作曲・細野晴臣です。真鍋ちえみはパンジーというアイドル3人組の一人で、あとのメンバーは北原佐和子とえーと、忘れました。真鍋ちえみも顔を覚えていません。北原佐和子は顔がきれいだったので良く覚えているんですが…。M8の眉村卓なタイトルもなんか絡んでたのかとか全て記憶にありません。

M10.雪列車/前川清
糸井重里と坂本龍一という「若者たちの神々」が合作した曲を「大人の音楽」の本丸であるムード歌謡のエース・前川清に歌わせる、という意欲作。前川清にとってもキャリアの中でこれほどの冒険は、ずっと後の福山雅治作品を歌った「ひまわり」くらいではないかと思います。コーラス最後の「どおぞー」の「お」以外は白鍵だけで弾けるのが意外。坂本龍一はおそらく自分で歌うのは好きな人ではないけれど、理論の抽き出しが一杯あるので、「歌曲の定石」みたいな理詰めなメロディ作りをやるのでしょうね。素人が指摘できるような破綻はしない。


M11.三国志ラヴ・テーマ/小池玉緒
NHK人形劇のテーマソングだそうだが、私は全く見ていなかったので分かりません。細野晴臣が作詞作曲編曲という珍しい曲です。

M12.I Like Best/山田邦子
作詞が山田邦子、作曲が矢野顕子、編曲が坂本龍一。収録されているアルバムのタイトルが「贅沢者」。音楽番組などには出演を渋りつつ、こういう「お笑い」関連に気軽な感じで取り組んで意外性を見せるところがYMO流。

M13.哲学しよう/山田邦子
山田邦子が上昇カーブを描いていた頃ですね。ひょうきん族に出始めた頃は今で言うと青木さやかと柳原可奈子を足して2で割らないくらいの面白さがあったんですけどね。

M14.だってホルモンラブ/伊武雅刀
作曲が細野晴臣。「おちゃっぴー」って!死語だということに誰も気づかないくらいの死語ですね。

M15.ティーン・エイジ・イーグルス/イモ欽トリオ
あー、もう分からないわ。作詞・松本隆、作曲・細野晴臣の布陣は変わってないんですが。

M16.きたかチョーサン まってたドン/川上さんと長島さん
今でもときどきテレビで見かけるプリティ長嶋と、多分今は北海道でラジオを聴けば会えるドン川上(DON)が初期の「笑っていいとも!」で人気が出たことから発売された企画もの。作曲と編曲が細野晴臣です。

M17.君の名はサイコ/郷ひろみ
作詞・糸井重里、作曲編曲・坂本龍一。
M18.毎日僕を愛して/郷ひろみ
詞と曲が矢野顕子、編曲が坂本龍一。

M18.From Tokyo-Endingメロディーはリピートで/ユミ
「もしも世界にタヌキがいたら」のB面なのだそうです。懐かしいなー「なるほど!ザ・ワールド」。
歌ってる「ユミ」は名物リポーターの「ひょうきん由美」ではなく遠藤由美子です。結構可愛かったのにすぐにいなくなっちゃったんだよなー(遠い目)。「メロディー」って今は(最後の音引きを)書かないこと無いですか?時代です。
ていうかなぜA面の方を入れてないんだろう、このCD?

DISC-3では松田聖子が登場しますよ。

2009/11/14

イエローマジック歌謡曲 DISC-1/様々なアーティスト

シンセサイザー奏者出身の作曲家・音楽プロデューサーである小室哲哉の話を2回に渡って書きましたが、もちろんそういう音楽を彼一人が作り上げたわけではなく、その前のほぼ10年間、80年代全体に渡ってテクノポップとその派生商品というものがたくさんありました。歌わないキーボード奏者といえば坂本龍一なんていう大物もすでにいたわけです。

たまたまTM NETWORKのベスト盤を探しに行った山野楽器でこんなのみつけました。
「イエローマジック歌謡曲」CD3枚組で4200円。YMOの3人が何かの形で関わった「歌謡曲」のオムニバスアルバムです。こんなのあるんだなあ…。


今ではテクノのことなんかおくびにも出さないアコースティックなイメージの人が、80年代には時代に乗っかってピコピコサウンドに乗っかって歌っていたこともバレてしまいます。
3日間連続で休みをもらったので、三夜連続でご紹介しましょう。今日はDISC-1です。

M1.YELLOW MAGIC CARNIVAL/マナ
あーいたいた。マンガで描いた中村紘子みたいな容貌の、国籍不明の女の子でした。今聴くとイントロが無茶苦茶レトロなんですね。作詞作曲が細野晴臣、編曲は鈴木茂です。

M2.エレクトリック・ラブ・ストーリー/近田春夫
この柴田恭平のような水谷豊のような南佳孝のような声で、芝居っ気たっぷりに歌っているのが、「音楽界の小林秀雄」こと近田春夫御大です。ちょっとキンモクセイに似ています。編曲が細野晴臣。そして作詞がなぜかあの漫画家・楳図かずおです。おそらく近田春夫との髪型や全体の相似性にちなんだ洒落でしょう。80年代はそれが通用した良い時代でした。

M3.ユー・メイ・ドリーム/シーナ&ザ・ロケット
作曲が鮎川誠と細野晴臣の共作になっています。シンプルなロックンローラーのイメージがある鮎川誠ですが、実は細野人脈から出てきた人なんですね。

M4.チャイナ ローズ/金井夕子
作曲が細野晴臣、編曲が細野+坂本龍一。伊東ゆかりっぽいこの人はスタ誕出身で、歌唱も外見も中庸な人でしたが、ヒット曲には恵まれませんでしたね。

M5.憧れのラジオ・ガール/南佳孝
リズム&ストリングスアレンジに坂本龍一の名が。この人は今「テクノってなに?」って感じでやってますけどね。ボコーダーって和音の演奏できたんだっけ?多重録音?

M6.夜の翼/南佳孝
M5と同じ布陣です。作詞は2曲とも松本隆。この曲は聴いたこと無かったな。

M7.IDOL ERA/サンディー
作曲・編曲が細野晴臣。この人も知らない。"ERA"ってなんだろ?と思ってGOO辞書で調べたら"〔Equal Rights Amendment〕男女平等の観点からアメリカ合衆国憲法の修正を求める修正条項のこと。"なんだそうです。難しいな。このメロディは違う曲名でYMOがやってるような気がするが、ちょっとすぐに分かりません。細野さんって同じ基本コンポーネンツでたくさん曲作りますからね。

M8.CARNAVAL/大貫妙子
大貫妙子が作詞・作曲。編曲が坂本龍一です。電子楽器で構成されていますが演奏形態はロック的。大貫妙子の声がシンセベースの上に乗っかってるのも今聴くと貴重な気がします。

M9.AH! SOKA/スーザン
作曲が細野晴臣、作詞と編曲が高橋幸宏。高橋幸宏で編曲するんだ、と今更ながら。高橋幸宏が鼻歌歌うのを坂本龍一が「しょーがねーなー」って形にするのがYMOだと思っていたので。それにしても耳に残る曲ですね。今をときめくおバカタレントがカバーすると良いと思う。

M10.浮かびのビーチガール/シーナ&ザ・ロケット
作曲・編曲がYMOとなっています。

M11.ラジオと二人/ラジ
作詞・糸井重里、作曲・杉真理。編曲が高橋幸宏。普通の歌謡曲を電子音楽でやってるだけのような気がしてしまう。ラジという人は声が良くて、いろんなアーティストの作品で印象的なコーラスをやってる人。大瀧詠一の「ロング・バケーション」で「ふ」う「け」い「が」とやってる人もこの人。「さんぽしない?」は別の大物歌手。

M12.アパルトマン/ラジ
こちらは作詞作曲が大貫妙子。編曲が高橋幸宏。こっちの方が大人っぽくて好き。

M13.春咲小紅/矢野顕子
作詞・糸井重里、作曲・矢野顕子。編曲がymoymoとなっていますが、もちろんYMO。売上枚数的には多分、矢野顕子史上最大のヒットでしょう。化粧品のCMソングでした。「みーにみにー」のバックのコードが教授っぽいですね。

M14.ハイスクール ララバイ/イモ欽トリオ
作曲・編曲が細野晴臣、作詞が松本隆。DISC-1最大のヒット曲がこれかな?世間の人が思うYMOの音をかなり甘口に再現したサウンド。山口良一らがバックでやってたコードの差し替えみたいな振り付けは松武秀樹の作業を表していたのでしょう。

M15.コンピューターおばあちゃん/酒井司優子
NHK「みんなのうた」の名作として知られる曲。編曲が坂本龍一。

M16.恋はルンルン/伊藤つかさ
作曲・編曲が坂本龍一です。21世紀に聴くと脳みそが痒くなりますが、この後まだ菊池桃子とかもいましたからね。すごかったな80年代。転調あり、音域はA#3〜E5くらいで意外と幅を使ってます。かなり苦しいけどね。

M17.ティアドロップ探偵団/イモ欽トリオ
M14と同じく作曲・編曲が細野晴臣、作詞が松本隆。前作が思いのほか成功したので、もう少し趣味的にしてみた感じでしょうか?シンセサイザーは使っているのでしょうが、テクノポップというよりも思い切りサーフィンミュージックになっていますが、当時は気がつきませんでした。残像効果ってやつですね。松本隆のレトロな歌詞の世界を細野晴臣が疑似60年代サウンドで受けとめた、コンビ芸なのでしょう。

M18.プリティ・ボーイ…大丈夫?/中原理恵
作詞作曲編曲が高橋幸宏。解説を見て思い出したんですが、ここで中原理恵が出てくるのはイモ欽トリオと同様に欽ちゃんファミリーとしての括りなんですね。この人、デビューした時はシンガー・ソングライターという触れ込みだったのですが、とうとうオリジナル曲を聴く機会は寡聞にしてありませんでした。歌はうまいんですけどね。

というわけで、さらに有名なネタが多いDISC-2に続きます。

2009/11/08

罪と音楽/小室哲哉〜その2〜

予告からずいぶん間があいてしまいましたが小室哲哉の第2回を始めます。
作曲家小室哲哉とはどんな作家なのか?

前回、私は「小室哲哉のメロディには歌心がない」「歌い手にとって過酷なわりに歌う喜びがない」という話をしました。今日はその辺りを…。


そこでですね、いきなり小室作品の話ではなく、小室哲哉と正反対のところにいると思われる
「ミスター歌心(今勝手に名付けた)・松山千春」の曲を見てみましょう。なんでも良いんですが、例えば「人生(たび)の空から」。


1〜2小節目のメロディの塊が3〜4小節目ではほぼ1度下に降りてもう一度繰り返されます。単なる繰り返しではなく呼びかけと返事の形になっています。こうなっていると歌い手は変化を付けることができますし、楽しいことに向かって進んでいる気持ちになれます。MacのGarageBandでピアノロール表示させるとこんな感じ。

「みみをす」でとんとんとんと下がって「ま」から「せ」で1オクターブぽんと上がりちょっと下がってロングトーン。こういうのは歌って楽しいですね。そして2回目のメロディでは「き」から「て」で今度の跳躍はちょっと短くて済むようになってます。ちょっと楽ができる。この曲はこの後更に跳躍を繰り返してサビでは最高音域をたっぷり使って「たびのーおわーりにー」と見せ場たっぷりに展開して行きます。1〜2小節でエンジン掛けて、3〜4小節でちょっと力をためてからいよいよ本番、とカバーする声域さえあれば歌って楽しい曲です。

松山千春は傍目で見ている範囲でですが、曲そのものの芸術性の追求よりもまずは「松山千春の声で歌ってどうか」に重きを置いて作品を作っている気がします。一番得意なF4~G4あたりの音域をいかに多用して色気を出すかに一番興味がある。私はそう思ってます。それは一方で松山千春の音楽の範囲を狭めているのではないかと思うのですが、私はシングル曲以外はほとんど聴いていないので、断定はできません。


さて、小室作品にも歌って楽しい曲がまったく無いわけではなく、例えば渡辺美里の「My Revolution」は声が出る人にはとても楽しい曲になっています。

引用部分の1〜2小節で「ドドドドドドドレードシド」と呼びかけ「ミミミミミミミミーレレー」と答えます。この似ているけどちょっと違う繰り返しが歌い手には嬉しいんですね。それから「My~Tears」「My~Dreams」の5度の跳躍で声を裏〜表〜裏〜表と切り替えて行くのは喉に覚えのある人には楽しい見せ場になります。
My Revolutionは小室哲哉がまだいろいろなことを証明しなければならなかった若い時期の作品であり、彼なりに当時の売れる音楽を分析した結果の作品だったのだろうと思います。


My Revolutionがヒットして作曲家・小室哲哉の初日を出した後、自分のユニットであるTM NETWORKで1年後に発表した「Self Control」ではもう、その後の小室作品と共通のエゴイスティックな(?)メロディになっています。

「Self Control」の一部を譜面に起こしてみました。


出だしの2音目以降、「みをつれーさるーくる」まで同じ音。ま、ここまではフォークソングなんかにもありますが。
B メロになるとちょっとメロディが動き始めます。「しばーらーれーたあだむといぶ」のメロディはそれなりに開放感があって「歌いで」のあるメロディなんですが、「はしーりーぬーけた〜」「たいーせーつーな〜」と3回まったく同じ繰り返しは辛い!そこを通り抜けて「くもらせなーいでー」とやっと解き放たれたと思うとサビがまた、細かい音符&尻下がりのメロディなんです。

前述のピアノロールだとこう。

だいたい歌い手というのは自分の最高音からちょっと下あたりが一番気持ちよく歌えるわけですが、このメロディは最高音に行った次の瞬間、中低音域まで一気に下がるという場面がとても多いのです。速いテンポで上に行ったり下に行ったりする割に自分の気持ち良く歌える音域をほとんど使わせてもらえません。辛い!

結婚前の安室奈美恵が苦しげに歌っていた"CAN YOU CELEBRATE?"はこうです。

私はこの曲の音を拾うためにiTunesでアルバム「181920」のバージョンを落として聴いていましたが、相当ぐだぐだになってます。超多忙だった安室本人の当時の体調とかもあると思いますが、ちょっとこれは?という歌唱になっています。

この曲も"Self Control"と同様、細かい音符&高音から急降下、伸ばしもためもない、というメロディ。冒頭部分のピアノロールはこんな感じになります。


松山千春と比べてみましょう


「人生の空から」にはオクターブの跳躍も含めて、小さな波と大きな波を繰り返す自然なうねりを感じるでしょう?「Can You Celebrate?」も鍵盤楽器で弾くときれいなメロディですが、なんというかモールス信号かなにかを連想させる無機質な法則性を感じませんか?

そしてひらうた部分「なーがくー〜」以降だとこんなピアノロールになります。


ほらモールス信号だ。

つまりですね。
小室哲哉って人は人の声もシンセサイザーも同じだという感覚でメロディを作っていたんじゃないでしょうか?「このタイミングでこの音程で、この長さ。ベロシティはこう」ってシーケンサーに打つ感覚。

そこにはそれ以前の日本の音楽に対する批評もこめられていたんだと思います。
演歌の大御所みたいにバックの和音がどう変化しようが自分が伸ばしたいだけ伸ばして喝采を受けてる人がいる中で「ボーカルも音楽の一部なんだから音楽の構成要素としてもっと全体のハーモニーに忠実であるべきだ」とか。
あるいは「ボーカリストのやつらはフロントで目立って女の子にキャーキャー言われてやがって、なんで俺らはこんな機材の隙間で汗かいてなきゃいけないんだ、気持ちよくなんて歌わせねえぞ」というボーカリストに対する演奏・作曲担当の反乱だったのかもしれない。

「安室?じゃ使えるのはG3〜D5ね。宇都宮?じゃD3~G4の範囲ね」とパートとして打ち込んで行く感じ。

そこでまた、邂逅としか思えませんが、TMの宇都宮隆って人はロック系ボーカリストには珍しい自己主張の無いタイプで、天然ボーカロイドみたいな人なんですね。 小室哲哉の制約の多い、気持ちよくなれない楽曲を(たぶん)文句も言わずに一所懸命歌うんだ、彼は。松山千春のように自分の売りの声域に拘るタイプだったら絶対 すぐ解散してたでしょう。

小室哲哉はボーカリストの気持ちよさを二の次にして、サウンドを構築する一部として歌メロをもう一度配置しなおした人と考えられます。そのことによって、それまでのどうにも歌手偏重だったJ-POPにはなかった芸術性(音楽性?)を手に入れたのではないかと思います。

ただ、その一方で彼は「カラオケ」のマーケットを意識していたという話もしているので、それはちょっと不思議なところです。彼が言うには「カラオケヒットの三大要素は」「発散・社交・エクササイズ」なのだそうです。「ダンサブルな曲で発散」「一緒に声を張り上げる社交」「練習が必要な高いキーはエクササイズ」。TRFやH.Jungleはそうやってできていた、と。
その辺に「歌うの大好き」な私は疑問がある。エクササイズには達成感が必要じゃないか?と。体重が減った、とかベンチプレスが何kg上がるようになった、とか。一緒に声を張り上げるにもそれを喚起するメロディというのがあるのでは?
同じように高いキーで歌われる広瀬香美の曲などに比べて、歌った後の達成感、快感に大きな違いがありゃしませんか?

その理由は上記の通りです。
自分の一番良い声を聴いてもらえたか?出したい声が出たか?その機能にちょっと乏しいのではないか、というのが私の見立てです。

小室哲哉にその辺が分かっていたのか、実のところは分かっていなかったのか?どこまでが計算で、どこからが彼の限界なのか?これは本人にしか分からない事なんだと思います。