2010/02/21

Sim City/平沢進

そして話は時代をさかのぼって"Sim City"に移ります。

私が平沢進作品が好きな理由は電子音楽でありながら、素朴に「歌もの」として楽しいことで、その典型が"Sim City"です。
発売は1995年、私が友人たちと今のところ最後の作品を作っていた頃です。PC98に入れた"Tool de Music Lite"でカラオケを作り、ギターをかぶせたりかぶせなかったり、コーラスを入れたり入れなかったりしながら、カセット4chのMTRにオリジナル曲を作っていた頃ですよお立会い!
私一人じゃ心もとなかったんで、高校時代にベースをやってたもう一人の作曲ができる相棒と、ボーカル用に友人を2人巻き込んで。オフコース好きだったので、アルバムにはいろんな人の声が入ってた方が良いと思っていたからです(ユニコーンは今でもそうですね)。

もはやうろ覚えですが、このアルバムは"Sound & Recording Magazine"で特集が組まれ、インタビューの中で平沢進はトラック作りに使用するコンピュータはAmigaであると言っていたと思います(もちろん、当時でも主流はMacです)。
そして聴いてみたら、これが電子音楽であるにもかかわらず、手作り感あふれるものでした。ボーカルにかかるエコーにしろ、シンセの音色にしろ「とにかくつまみをめいっぱい回してみました」みたいな侠気溢れるきっぷの良い音作りにノックアウトされました。

タイトルの"Sim City"は当時すでに同名のゲームもありましたが、人工的なタイの街並みの印象に由来しているのだそう。アルバムにはそのタイのニューハーフが(つまり人工的な性として)コーラスで参加しています。

そして「歌もの」としての楽しさ。平沢進の声は民謡寸前のドメスティックな歌唱で、歌詞中の英単語の発音もめちゃめちゃカタカナっぽいんですが、とんがったコンピュータ・サウンドのオケとも相性抜群で、オリジナリティ豊かなものになっています。カーステレオかけながら一緒に歌うと楽しいことこの上なし。覚えやすいメロディなので、今からでもぜひやってみましょう。
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2010/02/13

点呼する惑星/平沢進

去年出たアルバムですが、つい先日、銀座の山野楽器で見つけて買ってきました。平沢進の「点呼する惑星」。もう、タイトルだけで笑みが浮かんでしまいますね。
現代美術の作品名みたいです。

「ばーっばばーばっばっばばー」
「俺たち太陽塾。よーしみんなそろってるか点呼するぞ」
「俺が先頭!水!」「金!」「地!」「火!」「木!」「どっ」「てん」「ころりん」
「ばかやろー、なんだころりんて。お前も冥王星みたいに太陽系から外すぞ」
「俺が先頭!金!」
「地!ってこの場所暑いよ、生物住めねえよ!もう、俺が先頭!地……って、だから暑いってば!」
というコントが頭に浮かびますが、平沢進は相変わらず良い!

もともとはるか昔に「月刊Keyboard Magazine」で「SIM CITY」の特集を読んで以来のリスナーで、まあ最近の作品は結構取りこぼしていますが、気がつけば聴くようにしています。
平沢進の何が良いかというと、iTunesでは"New Age"とジャンル分けされてるバリバリの電子音楽でありつつ、完璧な「歌モノ」であること。入浴中の鼻歌としても愛唱できる曲であるというのが良いです。いつかしつこくやった「歌心」っていうのがあるんですね。

布袋寅泰も(自身の声は良くないけど)ジャンルに関係なく歌好きなメロディを書きますが、平沢進は声もイイ!
ちょっと東北のオジサンみたいな発声が良い意味で日本的で、それと電子音楽のピコピコがすごくマッチして、真似したくなる。




解説はご本人が自身のホームページでやってらっしゃるので、そちらを参照されたし。
そのうち「SIM CITY」の話も書きなおそうっと。

2010/02/07

Expressions[Disc 3]/竹内まりや

Expression [Disc 3]は90年代以降の作品が並んでいます。
時代はバブル絶頂から崩壊、と世の中は転換点を迎えましたが、かといって日本中が一夜にして貧乏になってしまったのではなく、じわじわと蝕まれていく過程が何年かありました。竹内まりや自身は40代を迎えて一段と大人びていくのかと思いきや、90年代以降は特にタイアップの関係か、与えられた「お題」に対して答えを作る、職業作家的アプローチで書かれたものが多い。[Disc 2]で時折はっとさせられたリアリティとは違う味わいの作品が多くなっています。

M1.家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)
お題は「倦怠期」。今の竹内まりやが歌うとリアルすぎて怖いかもしれないが、このころはまだ30代だったので、ちょっと背伸びして書いたらしいです。アコースティックギターがいるバンドサウンドは楽しいです。

M2.純愛ラプソディ
お題は「暗くなりすぎない不倫」。楽器の音は山下達郎の"Queen of Hype Blues"なんかで聴けるエレクトリックなものですが、ミディアムテンポの曲にはめることで新しい効果を生んでいます。

M3.毎日がスペシャル
お題は「めざましテレビ」。10代〜20代の女性をイメージした歌詞は取材と想像力に頼る部分が大きかったのでしょう。かなりオーバーにカリカチュア化された若い女性の生活が唄われます。シナモンロール頬張ってでかけたら、曲がり角で転校生にぶつかっちゃうじゃないか!

M4.カムフラージュ
ああ、これは良いですね。こればっかりだと飽きるけど、やっぱりこの辺が竹内まりやの王道って感じがします。

M5.今夜はHearty Party [Single Mix]
バブル崩壊直後でまだ生活が切り替えられていない頃のOLさんの話。「元気を出して」や「Forever friends」などと同じメンバーなのかは不明。ちょっとこの話のメンバーは浮ついています。ゲストの木村拓哉の声はスピーカーだと分かりづらいけれど、ヘッドホンで聴くとセリフ以外のコーラスでも声が入っているが分かります。実際には1995年には「お茶を配るだけ」ではOLはやっていけなかったし、本当に木村拓哉が好きな子は「キムタク」とは言わない。その辺の緩さも含めて計算済み、のはず。

M6.天使のため息
お題は広末涼子の映画「秘密」。この曲は広末涼子の中の人である岸本加世子に合わせて作られています。

M7.すてきなホリデイ
お題は「クリスマスソング」。服部克久がアレンジした豪華なオーケストラのついた、本格的なクリスマスソングです。こういう保守本流な歌を作って歌えるところが竹内まりやの強みですね。他にこういうのが似合う人がちょっと思い浮かばない。

M8.真夜中のナイチンゲール
「マンハッタン・キスとどう違うの?」と思ってしまいますが、この辺になると、新味を加えるというよりもやり続けてきたことの品質を高める方に(特にサウンド面で)興味が向いているのかも。ドラマ主題歌だったそうですが、ドラマを見ない私はこのアルバムで初めて聴いたように思います。

M9.返信
お題は「戦争映画」。「どーんどんっどどん」という民族系リズムに特徴があるのでこの曲は覚えています。背景を知らなかったので、「出口のない海」の主題歌と聴いて初めて何のことを歌った歌なのか理解しました。

M10.みんなひとり
お題は「松たか子」。この曲もあまり記憶に無いですが、サビは知っていたような。「マンハッタン・キスとどう(以下同文)

M11.チャンスの前髪
イケイケ系のナンバー。70〜80年代洋楽ヒットの断片が混じっている気がしますが、「これ」と決め付けられない微妙なさじ加減になってますね。なぜ原由子が一緒に出てくるのかは不明。「蒼氓」のことがあるので、夫婦ぐるみで仲が良いというのは知ってます。

M12.うれしくてさみしい日(Your Wedding Day)
お題は「結婚式」。独身中年男には理解が難しい。

M13.幸せのものさし
「チャンスの前髪」と似た路線の、ディスコでフィーバーなナンバー。と思って聴いていると、中盤から後半は意外と地味に。本人が作曲中に考えていたサウンドと山下達郎の考えが違った?

M14.人生の扉
タイアップでお題の決まっている曲が多い[Disc 3]の中で、例外的に作り手の心情吐露的な曲。年を取ることとか、いくらでも湿っぽくできる話でも必ず明るさや爽やかさを残せるのは竹内まりやの良いところです。それは彼女の自立心に満ちた歌詞やアメリカンなメロディからも醸し出されていますが、やっぱり声によるところが大きいなあ、と感心させられる曲です。

さて、長かったExpressionsのインプレッションでしたが、次回は全く違う話になります。