2010/04/11

シンクロニシティーン/相対性理論

「シフォン主義」、「ハイファイ新書」ときて、次はどんなダジャレタイトルになるのかと楽しみにしていたところ、途中で近田春夫とか渋谷慶一郎が絡んできて、今度はこのまま解体するのかしらと思ってたらちゃんと3作目のアルバムが出てきました。

「シンクロニシティーン」はダジャレなのかどうかも分からないくらい微妙なタイトルですが、「シフォン主義」以来のリスナーを切り捨てない、相対性理論らしいアルバムになっています。

ただし、「シフォン主義」→「ハイファイ新書」で見られた音のノーマライズというかソフィスティケートというか、普通の商品的な音に近づこうとするベクトルはそのままで、今回は「ハイファイ新書」のバックの音に音圧が増したやくしまるえつこの声が載っている、という出来上がりになっています。以前はカヒミ・カリィ並みに消え入りそうだった声のゲインが上がって、もともとやくしまるえつこは下手そうで下手でない、字義通りの「へたうま」でありましたが、曲によってはYUKIに似ているくらい声が前に出てきています。こうなってくると私なんかは、昔の(熱心なファンほどショックを受けて、今ではなかった事になっている)太田裕美・ニューウェイブ路線をちょっと思い出します。

それと同時にたぶん過去2作では聴かれなかった、「リードボーカリストの多重録音によるコーラス」が採用されました。先行配信された「ミス・パラレルワールド」で「ぱられるぱられる…」とハモっているところなどですね。
↓iTunesへのリンク


相対性理論というバンドがどのくらい長くやる気があるのか全く見えてなかったんですが、こうして音楽教室のクラスをだんだん上がっていくように新しい要素を付け加えていけば10年くらいはできるような気がしてきました。ピアノ1本、ギター1本のオフコースが最後はTOTOかジェネシスそっくりになったように…。
逆に言えば相対性理論はバンドやりたいアマチュアにとって、絶好のテキストになるとも言えます。今ならまだ素人でも耳で拾える。ドラムは難しそうだけど、それ以外は頑張ればなんとかなりそうじゃないですか。

2010/04/03

5years<通常版>/木村カエラ

木村カエラのデビュー以来の音楽活動をまとめたベスト盤です。私はiTSで落としてきました。
木村カエラ - 5years<通常盤>
木村カエラは可愛い。デビュー当時はこういう姪がいたらおじちゃん会う度に5000円とか1万円とかお小遣いあげちゃうなーと思ってました。オシャレで、ガリガリ勉強するように見えないけれど学校の成績は良くて、ちゃっかり有名大学に推薦で進学しちゃうようなタイプに見えました。その後のちょっとカルチャーっぽい消費のされ方は80年代の小泉今日子に似てるような気もしますけど、小泉今日子はルックスや歌唱力へのコンプレックスの裏返しからはじけているように見えましたが、木村カエラにはそういうコンプレックスの香りがしません。

さて、中身を聴いてみます。「リルラリルハ」とサディスティック・ミカ・バンドしかちゃんと聴いたことがなかったんですが、CMタイアップ曲が多いため、聴けば「ああ、これか」と思いあたるラインナップです。
曲順は新しいものから過去に遡るように並べられていますが、スパンが5年ですし基本はロックバンドの音なので特別時代を感じさせるものはありません。気持ち「リルラリルハ」以前のナンバーが音圧が低いかなと思うくらい。演奏がユニコーン的ロックだし、木村カエラの歌は上手すぎず下手でない(最近お気に入りのフレーズ)。いわゆる3コードのロックンロールでは無く、メンバーにクラシック崩れがいる構成・展開重視の曲作りをするバンドのサウンドです。「M2.バタフライ」なんかもろにピアノの練習曲的ですし、「M4.どこ」は発声練習的。無理矢理に印象が似てるものを探すとPUFFYということになりますか。ときどきパロディ的に外国の有名曲のフレーズを一捻りして入れてありますし、実際に奥田民生のナンバー(M14.BEAT)も入っています。

また、おそらく木村カエラ自身がその生育史の中で受けてきた最近のJ-POPからの影響も随所に見られて面白い。たとえば、以前このブログの中でも書いた「hitomi風日本語母音の省略」が意識されてる「M8.Yellow」。この曲ではサビで「いつだってYellow そんなあなたにエールを送るよ」と歌いますが、「そんなーなたにえーろーくーりょー」と聞こえるように歌っています。しかも「エールを=yellを」が前の行の「Yellow」とかけてある。これ頭いいでしょ?
また「M1.You bet!!」の「すすまな"きゃって"そう"ちかった"」の日本語の選び方、歌い方には宇多田ヒカルの(良い)影響が見えます。

こういう細かいところをiPhoneで聴きながら追っかけられるのは、彼女がちゃんと歌詞が伝わるように歌っているからです。今、単純なアイドル歌手はすごく少なくなっていて、そのかわりに歌詞を書いてるからアーティストである、というアイドル歌手が多くなっています(その意味では森高千里の罪は深いのかなあ。彼女はアーティストでしたが)。しかしせっかく書いた歌詞をちゃんと伝わるように歌っている人はあまり多くない。木村カエラはそういう意味でちゃんと作詞をしてるし、伝えています。