ここ数年、プライベートな話題に事欠かない玉置浩二ですが、何年ぶりかで何度目かの活動再開ということで、安全地帯の新作アルバムが出ています。
"Hits"と、シンプルなタイトルが付いたこのアルバムは、安全地帯の代表作を「当時のトラックをベースに全曲新録音」しなおした(CDの帯による)もの、だそうです。年代的には「ワインレッドの心(1983年)」から「月に濡れた二人(1988年)」。その後はバンド活動休止と再開を数度繰り返していますが、安全地帯としてのヒット曲は記憶に無く(玉置浩二のソロでサバカレーのドラマの歌がありましたが)、これ1枚あれば特に思い入れのない消費者には十分なラインナップとなっています(失礼?)。
一通り聴いてみました。
カラオケは「え?」と思うほど昔のままです。「当時のトラックをベースに全曲新録音」というのはひょっとして玉置浩二がボーカル差し替えただけ?と思うほどです。確か先週の土曜日(7月9日)に放映されたミュージックフェアでは5人そろって演奏してましたから「できるだけオリジナルに忠実に」再現したのかもしれませんが、録音自体古いんじゃないかなあ、という音です。ミックスが変えてあるのは間違いないのですが、それ以上はどこが差し替わっているのか私の耳では分かりませんでした(昔の音源も持ってないし)。また、テレビでやってたアンプラグド風「ワインレッドの心」も良かったんですが、このアルバムには通常版が収録されています。
一方、健康面が心配された玉置浩二の声は健在で、オリジナルよりも生声っぽく処理されているにもかかわらず、その色気と迫力はさすが。よくできたホーンスピーカーのように朗々と歌う部分と囁くようなせつない歌い方のメリハリが見事で、しかもどちらもよく通る、素晴らしい声です。ところどころ自己陶酔っぽいフェイクが入りますが、全体的には「やっぱりうまい」と思わせます。私は以前、玉置浩二はボーカリストとしての才能がソングライターとしての才能に勝ちすぎてるんじゃないか、というような事を偉そうに書きましたが、撤回します。「恋の予感」とか、やっぱりうまくないと歌えません。
振り返ると、それぞれの時代には歌の神様に見込まれたかのように見える歌手がときどき出現します。80年代の代表はおそらく玉置浩二でしょう。90年代は吉田美和で00年代は平井堅、という見立てになるんですが。
しかし、歌の神様は見込まれたご本人たちの個人の幸福までは面倒を見てくれないようです。このジャケット写真といい、ここ1〜2年の乱行ぶりといい、最近の玉置浩二のハジけかたは異常です。前述のミュージックフェアでの本人の発言や、ワイドショーでの言動を総合すると、彼は「自分の感情のままに生きる」ということに決めているようです。その時思ったことに正直に行動するので、過去の発言との辻褄とか、世間の揶揄とかは斟酌しないのでしょう。
それはとても素敵な生き方ですが、ここは日本ですし、せっかくの才能ですから、あまり破滅的にならずに末永く活躍していただきたいと思います(あーでも50歳過ぎたら僕もそうなるかもしれないなあ。兆候あるもん)。
私はうっかりCDを買ってしまいましたが、iTunesでもダウンロード可能です。
2010/07/18
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