2011/10/30

age/斉藤由貴

本来のタイトルにはフランス語風にaの上に"^"がついて、読みは「アージュ」です。 先日、何かの拍子に突然聴きたくなって、CDラックその他を捜索したんですが、引越しの時に捨ててしまったのか、どこかに二束三文で売っぱらってしまったのか、見つからずに(持っていたのは間違いないんだけど)iTunesでダウンロードしてきました。
   
ところが、なぜかこの「age」は「アルバムの一部」としか表示されず、同じアルバム名を持つ別々の曲群として販売されていました(アルバムとして一括購入できない)。 
なんで?とじーっとタイトル部分を見たら、なぜか7曲目がありません。そのため、このアルバム1枚分を落とそうと思うと、収録曲全部を1個ずつクリックせねばならず、しかも7曲目は無いままという、とても不満足な形での購入になります。

欠落している7曲目はアルバム中唯一、斉藤由貴自身が作詞した「あなたの存在」という曲。

本人が封印したとか、別の大人の事情があるのか知りませんが。
しかし、今でも大きいCDショップに行けば買える、紙ジャケ・HQCD版にはちゃんと収録されています。ということは、おそらくiTunes Storeとレコード会社側の情報伝達の齟齬かなんかだと思いますが、iTunesは結構こういうこと多いですね。っていうか、ダウンロード販売だからって手を抜かないで、サプライ側もショップもちゃんとやれよなー!

 斉藤由貴は、今でもほとんど印象が変わりませんが、田舎の学級委員長がまちがって芸能人になっちゃったような、若い時からおばさん臭い人でしたが、実はミスマガジン出身のグラビア系だし、スケバン刑事とか朝ドラとか芸能界のど真ん中をきょとんとした顔のままこなしてきた不思議な人。

歌手デビューしても、第一印象としては「あ、声出ない、下手」って感じだったんですが、実はこれが食わせ者で、同時期に歌い始めた菊池桃子が「下手そうで本当に下手」だったのと違って、変な表現力があるんですね。音程もずーっとフラット気味に聞こえるんですけど、作品が壊れるような外れ方はしない。似てる人をさがすと大竹しのぶとかすごい名前が出てきます。最近だと相対性理論のやくしまるえつこなんかもそうかな。 

さて、「age」は1989年と言いますから、バブルまっさかり&80年代アイドル歌謡の爛熟期で、それぞれが差別化のために凝った仕掛け作りに頑張りまくっていたころです。

宮沢りえが小室哲哉プロデュースで歌を出したり、工藤静香があの「あーらしをっおーこーして」とか歌ってたのがこの年(だったんだ。Wikipediaによる)です。

斉藤由貴はちょっとサブカル的方向に向かっていて、武部聡志や崎谷健次郎をスタッフに起用していました。斉藤由貴本人もたいした詩人なんですが、作詞は谷山浩子の印象が強いです。CMで流れた「土曜日のタマネギ」の評判がすこぶる良かったですね。
 
「age」はそれまで棒立ちで歌っているイメージだった斉藤由貴が意外なほど派手な振り付きで歌った「夢の中へ」と同時期に発売されました。「夢の中へ」は崎谷健次郎がプロデュースと編曲を担当していますが、「age」も全編・崎谷健次郎プロデュースで、エレクトロ・ポップなサウンドがほぼノンストップで最後まで続く意欲作です。今聴くとちょっと直球すぎるかもしれませんが、でもちゃんと楽しい。個人的にはM8.「雨色時計店」の、歌詞+曲+声のもつ雰囲気と、エレクトロニクスなバックとのミスマッチな感じがすごく好き。

 このアルバムに「夢の中へ」が収録されていないのは、同シングルとこのアルバムが同日発売だったので「棲み分け」のためらしいです。とはいえ、もう、発売から20年も経っていることですし、サウンド的にもつながっているのだから、iTunesStoreではぜひ今後、7曲目をきちんと入れて、10曲目を「LUCKY DRAGON(ServiceVersion)」から「夢の中へ」に差し替えた、「age(コンプリート版)」としてきちんとアルバムとして購入できるようにしてもらいたいと思います。
 

2011/10/09

Gold Skool/久保田利伸

久保田利伸の新作が出ていたので、半分懐かしい気持ちで買って来ました。

今やJ-POPの半分はイエロー・ブラックミュージックと言いたいような状況ですが、その最初のところに久保田利伸がいます。もっと前にRATS & STAR(シャネルズ)がいたよ、という人もいるかもしれませんが、あれはもっとオールディーズな感じで大滝詠一などの息もずいぶんかかっていたので、またちょっと別の話になると思うのです。

久保田利伸は80年代に「いわゆるブラック・コンテンポラリー」を日本でやり始めた人です。

当時はニューミュージックからの流れを汲むフォーク・ロックをベースにした大御所たちやバンドブームから生まれたロックバンドが幅をきかせており、ブラコンはそれほどメジャーな存在ではありませんでした。 久保田利伸が一般に注目されたのも田原俊彦の"It's BAD"という日本語ラップを大胆に取り入れた新曲の作曲者としてです。

「夜のヒットスタジオ」のマンスリーゲストとして"It's BAD"やオリジナルを披露したのが何時の事なのか覚えていませんが、あの一ヶ月で、おそらく彼の認知はものすごく広がったんだと思います。1989年に発売されたベストアルバム"the BADDEST"は我々当時の若者の必携CDとなり、ようやく普及し始め、やたら音飛びしてた車のCDプレーヤーで再生しながら眉毛を太く描いたおねいさまたちを送り迎えしたものです。

今さら演歌やベタベタの歌謡曲には行けず、かと言って根っからロックンローラーにもなりづらかった日本の若者を、昔から歌謡曲とも親和性が高かったブラックミュージックが受け皿になって、しかもその鉱脈はすごく太かった、ということです。

彼がメジャーになった後には、1990年にはドリームズ・カム・トゥルーがブレークしていますし、1993年にCHAGE and ASKAが「ブラコン作った」と"You are free"を出した頃には、J-POPにおけるブラックミュージックの影響は明白になりました。そして、1998年にMISIAがブレイクして以降の「R&Bの歌姫」乱立は今も続いています。

そういう意味で久保田利伸は日本のR&Bの元祖または本家であり、このジャンルの大御所として君臨してもいいはず。しかし、90年代の後半以降、アメリカに活動拠点を移してしまったためか、その功績や音楽性のわりに扱いが小さいように見えてしまうのは同年輩として不満なところです。

 さて、8月に出た最新アルバムである"Gold Skool"は"the BADDEST"や"LA・LA・LA LOVE SONG"以来目を離してしまったヌルいファンも優しく迎えてくれる 親しみやすいアルバムになっています。声はまったく衰えていませんし、あいかわらず歌詞が聞き取りやすい。あの頃好きだった久保田利伸が今もそこにいてくれますから、オジサンも安心して聴きましょう。