2013/06/30

なんだこれくしょん/きゃりーぱみゅぱみゅ

CDショップで買おうと思うと、どんな顔でレジに持っていけばよいのか悩んでしまいそうなシロモノですが、iTunesなら平気です。
買ってしまいました。

icon

昨年来、iconマスメディアでの露出も大変多いですし、海外公演でもウケているそうで(レディー・ガガのような圧倒的物量のレベルではないのでしょうが、一昔前の演歌歌手による「ラスベガス公演大成功」などよりは信用できる、気がする)なによりです。

また、「アーティストだから恋愛禁止じゃない」などの発言もあるそうなので、遠くから見るとアイドルとどこが違うのかわかりづらいですが、「アーティスト」としての自負を持って活動をしているらしいことは確かです。

ダウンロードしてアルバムの曲目を見渡すと、「なんだこれくしょん」「にんじゃりばんばん」「ふりそでーしょん」とひらがなで書かれた幼児語のようなタイトルが並び、挙句の果てに「み」なんて曲目まであります。中年オヤジのプレイリストにこんな曲目が並んでいいのか、じっと手を見てしまいます。かと言って「さよならクロール」なら良いわけでもないんでしょうが。かたやAKB48という、初老の男性の手による少女や少年の言葉をうたうアイドルがいて、こなた「にんじゃりばんばん」を歌うアーティストがいるのがクール・ジャパンです。
そして、きゃりーぱみゅぱみゅは本人もわかって神輿に乗せられていると思うのですが、彼女は「クール・ジャパン」の威信をかけた象徴的輸出品目でもあります。平成の李香蘭(ちがうか!)。とにかく、日本のカワイイ文化を音楽にのせて表現するのが彼女のアーティストとしての活動テーマです。


さて、実際に聞いてみます。
中田ヤスタカの手によるエレクトロポップとしては、Perfumeという存在もあり、その棲み分けというかどういうテイストの違いをつけているのかという興味もあります。
さて、何が違うか?

ざっと聴いた印象では、声の処理などはPerfumeの方が加工度が高く、人工的に聴こえるのに対して、きゃりーぱみゅぱみゅの声は一応本人がどのような声色をしているのかが分かります。反面、歌詞やメロディについてはPerfumeの方が王道アイドル的。つまりあの3人が生身で、ニオイも体重もある女性がパフォーマンスするものとして作られている(だが、声は匿名的にされている)のに対し、きゃりーぱみゅぱみゅの歌詞や曲はより現実離れというかかなりめちゃくちゃです。
ピンクレディーも宇宙人やモンスターと戯れる歌詞を歌いましたが、一応は恋愛のメタファーとして歌っていました。しかし、きゃりーぱみゅぱみゅの歌う歌詞は、そんな比喩は無い、ほぼ字義通りの意味です。「インベーダーインベーダー」は「あなたの心を侵略する私は恋のインベーダーよっ」なんて話ではなく、「私はおしゃれで世界征服を目論む侵略者であるぞよ」という話です。

そして、ここが「世界戦略」だと思うのですが、歌詞の語彙が異常に少ないです。タイトルを延々とくり返し、あとは日本語としても意味が無い「ぴーぽぴーぽ」とか「きゅーきゅきゅきゅ」とかのオノマトペで歌詞が埋められています(そして歌詞カードではそれらの多くがひらがなで記されているようです)。歌詞→http://utaten.com/lyric/jb71304092
英語で歌うばかりがグローバルじゃない、1曲あたりの重要な単語を3つくらいにしておけば、ガイジンさんたちも一緒に歌うだろう、という戦略。だって、我々英語の出来ない民族はそんな感じで洋楽を理解しているのですから。

曲調でいうと、Perfumeが全体に初期YMOっぽいのに対して、きゃりーぱみゅぱみゅはもうちょっと後の、CM音楽などに多用されて一般化した後の「テクノポップ」に近い気がします。「み」という曲はおそらく「元禄花見踊り」を下敷きにしていると思いますが、途中でテーマになるメロディを応援団のブラスバンド風に聴かせる箇所があります。日本的なメロディを使うときに、YMOだとわざと中国風にしたり、小難しい和音をつけたり、あるいは明らかにテンションが変な男の声を入れるなどして、ちょっと気持ち悪くするのですが、きゃりーぱみゅぱみゅの和テイストは、そういう批判やテレのニオイを感じません。あっけらかんと「和」。そうでないと輸出品目になりませんものね。




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