2014/12/20

宇多田ヒカルのうた13組の音楽家による13の解釈について

去る者は日々に疎し、といいますが、15ヶ月ぶりの更新です。
もともとは、「音楽が趣味」と言い続けるためには1週間に1、2度は音楽のことを考えよう、という思いで始めたこのブログですが、昨年後半からは恐ろしいほどのネタ不足に襲われてどうしても更新ができませんでした。
ここ1年は本当に新譜を買っていなくて、大滝詠一の「EACH TIME 30th Anniversary Edition」みたいな「新商品」だけど「中身は知ってるもの」しかプレイリストに追加していないのです。
1980年代を知っている身としては、ここ十数年で「実力派」といえるシンガーはずいぶん増えたと思います。若い人でも、歌い手としてのJUJUとか西野カナとかはとても上手だと思います。
でも、その人たちが購買意欲を刺激してくれる曲を歌っているかというと、あまりにも売るための苦悩が作品に滲んでいて、無邪気に聴けない。「みんな同じに聴こえる」というのは年寄りの常套句で、自分が年を取って感性が鈍くなっているのを商品に八つ当たりすることはないだろうと思って生きてきましたが、とうとう自分がそうなってしまったようです。

さて、そんな私が年末ぎりぎりになってiTunesからダウンロードしたのが表題のアルバム。まあ、これも「中身は知ってる」ものなんですが、「浜崎あゆみが歌う宇多田ヒカルナンバー」とか、聴いてみたいじゃないですか?

さて、実際に通して聴いてみると、さすがにビッグまたは一癖あるアーティストを並べただけあって、まあ中には眠たいのもありますが、お買い得な1枚になっていました。
好きなのは、岡村靖幸の「Aotomatic」、椎名林檎の「Letteres」あたりでしょうか。曲によってはずいぶんと大胆なアレンジの変更が加えられており、このまま各人がシングルカットすればいいのに、という出来映えです。
注目の浜崎あゆみは、どうせ「Wait & See~リスク~」か「Movin'on without you」のどっちかだと思ってましたが、「Movin'on~」を選択。ちょうど、今思うと天文学的な売上数字を両者で競っていた頃の思い出の曲ですね。「枕元のPHS」の歌詞は時代を感じさせます。
私は浜崎あゆみ作品にはほぼ全く興味が無いのですが、近年になって歌手としては実は大したもんなんだということには気づいていました。その彼女がかつてのライバルである宇多田ヒカルのトリビュートアルバムに参加するという侠気をリスペクトします。また、歌いっぷりが素晴らしいです(合いの手のコーラスも自分でやっているのが良い)。これをシングルカットしておけば紅白も卒業しなくてよかったのにねえ…。この曲は宇多田ヒカルとしてはもっともIQが低い感じの世界を歌っていますが、だからこそハマったのかな?

あと、加藤ミリヤの「For You」。出だしの、オリジナルCDを聴いてる様子を思わせる効果音から始まる、素直なリスペクトぶりに好感が持てます。アレンジも、今風に調整されていますが、オリジナルをかなり忠実になぞっていて、曲間のアドリブ部分も含めて歌唱は完璧コピーされています。途中で「Give me a reason」と「First Love」が引用されるのも、少女だった頃の加藤ミリヤの音楽体験がかいま見えるようです。
そして、あっと驚く井上陽水は「すきですきでどうしようもない♪」ってところを歌ってみたかっただけだと思うんですが、これはこれで楽しいです。

まあ、それにしても宇多田ヒカルの才能というのは本当にマルチで奥が深いことがよく分かりますね。井上陽水は極端な例としても、年上のシンガーがカバーしている曲のほとんどが10代半ばに書かれた曲(と歌詞)で、しかもそれが今歌っている本人たちとほとんど乖離していないこと。ゆったりと大きくうねりつつさらに細部で自在に変化するメロディライン。本人の声が特殊なので、実は過剰に切なくなってしまうのが、他の歌手に預けるととても気軽に聴けるということに気づかせてもらいました。そしてやはり今の時代と私には、宇多田ヒカルが帰ってくる場所がぽっかりと大きく残されているということも。



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