2020/05/16

Time/宇多田ヒカル

コロナ騒動が収まりきらない中ではあります。
私も月の八割は在宅勤務ということで、それまでの糸が切れた凧のような営業スタイルもやりようがなく、定期的に上がってくる注文をおとなしく見ているだけ、という毎日です。
音楽環境としては、先月からAmazonアンリミテッドのキャンペーンで3ヶ月追加料金なしとかいうのにまんまと騙されて絶賛愛聴中。iTunesとは微妙に違ったラインナップで、たとえばAppleMusicでいまいちアルバムとしてのまとめ方が変だった斉藤由貴のâgeとかゴダイゴの「西遊記」なんかがきちんとしたパッケージで提供されているのに気を良くして聴き直していました。そしたらなんということかゴダイゴのギターだった浅野さんの訃報に接してしまい、寂しい思いをしています。

さて、そんな中で「宇多田ヒカルの新曲が配信トップに!」のニュースをみかけておやおやエヴァンゲリオンだったっけ?と思ったらなんかドラマの主題歌になっているらしいですね。
もはやサブスプリクションで個別の決済もないまま聴くことができました。

このところあまり売れ線臭のしない音作りの曲が続いていましたが、ドラマ見ている人に「はい、主題歌は宇多田ヒカルですよ、ちゃんとお金使ってますよ」と言いたいプロデューサーに依頼されたのか、この曲はちょっと既視感のある曲になっています。
小田さんの「ラブ・ストーリーは突然に」を聴くと「君が、嘘を、ついた」と「Yes-No」がぼんやり聴こえてくるように、「Time」を聞いてると「Flavor of Love」とか「For You」とかがフラッシュバックするようになっています。6月予定と聞いていたシン・エヴァンゲリオン劇場版はいつの公開になるかわかりませんが(私は担当外ですが)、そこでも主題歌が出るんだと思いますけど、どういう曲を出してくれますかね?
私としてはこのへんではっちゃけた曲も出してもらいたい気がします。それこそKing GnuみたいなあまりJ-POP臭のしないロックバンドなんかと仕事してもらえないかな?

2020/04/26

KISS OF LIFE/崎谷健次郎

前回、King Gnuのついでにofficial髭男dismのTravellerを聴いていましたが、そこで書いたとおり、このアルバムのかなりな部分がR&B的というかブラコン的なサウンドになっていて、そこでふと思い出したのが崎谷健次郎のことでした。
確か持っていたはずだよな〜と思ってコレクションをあたってみました。CD棚もiTunesも探したけれど見つからないのにまだまだ探していたらAmazonミュージックで揃うことがわかりました。私が持っていたのはカセットテープだったのかなあ?

最初の発売は1989年4月21日となっています。平成元年ですね。バブル絶頂期か。うろ覚えの記憶とWikipediaによると「ハウスミュージック」という惹句が付いています。
ずいぶんと前のことのように思いますが、大丈夫、もうテクノポップも一段落して、デジタルレコーディングもYAMAHA DX7もサンプラーもありました。音は今の音楽と一緒です。

崎谷健次郎はシングルヒットというと「もう一度夜を止めて」になっちゃうんで、あまりダンサブルな印象がないかもしれませんが(中西保志というと「最後の雨」しか出てこないのと印象が似ています)、こういうノリノリのアルバムも出しています。
official髭男dismの人と同じでキーが高くて細い声なのに音域が広くて結構豪勢なカラオケにも負けずに歌えるところもよく似ています。彼らは令和のレミオロメンやオフコースの孫ではなく、崎谷健次郎の息子たちだったようです。

さて、崎谷健次郎のプロデュース系の仕事というと、かつてこのブログでも紹介した斉藤由貴のアルバムが代表的ですが、ちょうど同時期に斉藤由貴のアルバム"âge"を作っていたはずです。と、あらためて調べてみたらあれ発売日が同じじゃないですか!これは知らなかった。つまり崎谷健次郎プロデュースによるハウスミュージック・アルバムが片や本人名義で発売されると同時にアイドルプロデュース版として斉藤由貴が同時発売されていたということなんですね!めちゃくちゃオシャレな仕掛けじゃないですか!
実際にこの2枚のアルバムの音は双子のようであり、あの、棒立ちで歌うイメージしか無い斉藤由貴が(センチメンタル・ジャーニーの松本伊代のように)2人のバックダンサーを従えて歌い踊った「夢の中へ」と合わせてすごいプロジェクトだったんだなあと改めて感心してしまいます。

2020/03/29

CEREMONY/King GnuとTraveller/Official髭男dism

また長い間ほったらかしにしてしまいました。
まあ、リタイアしてこんなことばっかりして生活できることを夢見て(ホントか?)あと何年かこんなペースでやっていくことになるでしょう。

接触型アイドルが古いフォーマットであるCDをコンスタントに100万枚とか販売し続けている中、他のアーティストはどんどん配信、サブスクリプションによる音楽販売を主戦場にしているようです。レコード会社の経営についてはあまり興味が無いですが、アーティストの生活は気になります。分け前はどちらが良いんですかね?
そしてこのコロナ騒ぎでコンサートは軒並み中止。今のところは要請を受けての自粛、ということなので公的補助が受けられるかは未定とのこと。気の毒なことです。
要請はしたが強制はしていない、だから政府には責任は持てない、というのはこの数年ずっと見させられてきた「忖度」の再生産をしているわけで、本当に我が国はひとつひとつの過ちを総括できない国であることよ。

さて、新しいのが出るとやっぱり気になるKing Gnuの新作が知らないうちにAppleMusicのサブスクリプションでダウンロードできるようになっていました。前作の"Sympa"でも感想文を書きましたが、歌謡曲臭を一切感じさせないロックな佇まいと神経症的に転調を繰り返す芸風は継続しており、とても良いです。
前作後半はちょっとおとなし目の曲が多くて眠くなったんですが、今回はそういう不満もなく最後まで完走できました。1曲毎の演奏時間が短くて、アルバム1枚を40分弱で走り切るのもロックの名盤のフォーマットに近くて聞きやすいです。ああ、俺も90年代の半ばに"Overflow"って歌詞書いたなあ!
転調の多用とツインボーカルのオクターブ違いの重ねはそろそろ飽きてる人もいるかもしれないけど、私は好きなんでずっとやってほしい。

一方、ちらちら見てはいたものの、ちゃんと聞いたのはじつはDr.キャピタルのYou TubeだったというOfficial髭男dismも、お勉強のためにアルバム1枚聞いてみました。テレビでよく歌っている「Pretender」とか、1曲め「イエスタデイ」を聴いていいる範囲では令和のレミオロメンか、オフコースの孫か、という感じでしたが、サウンドの作りがすごく豪華で、バンドというよりボーカルの存在感が突出している感じに聴こえる。アルバムの曲全体では意外なほどR&B的というかブラコン的な感じな曲が多かった。90年頃の崎谷健次郎の感じがしてなつかしかったですが、楽器それぞれのエッジが効きすぎてちょっと疲れちゃうのと出来が良すぎてオジサンが応援する余地がないのが残念か。

とりあえずAmazonのリンクを貼りますが、これも意味ないよなあ。




2019/08/04

Take My Time/シーナ・イーストン

今日も元ネタはApple Musicになります。
シーナ・イーストンのことを思い出しました。

ちょっと前にシティ・ポップなんちゃら、という話を書きましたが、当時私の考えでは、日本のシティ・ポップというのは「モダンガール」みたいなカラオケで声のきれいな人が歌うもの、という認識だったんですが、さてシーナ・イーストンてどんなだったかなあ?という振り返りです。


で、「9時から5時まで」や「モダンガール」が入ってるやつで検索すると一番古い1980年のアルバムが出てきました。まあ、そのくらいの知識量。私はレコードは買わず、「夜のヒットスタジオ」などに出てきて歌っていたのをテレビで見ていました。


ほぼ初めての感覚で聴いていると、まあとにかく我々の世代にとって聴きやすいことこの上ないです。ちょっとフォーキーなアコースティックギターの入る曲から、ぶっといエレキギターの音が入るロックっぽい曲もあり、ちょうどこの少しあとで日本のアイドル歌手 (とそのプロデューサーたちが)ベンチマークしたと思われる当時のオシャレ系ポップスの定石集という感じです。70年代はちょっと歌えるアイドルはやたらとドナ・サマーの真似をされられましたが、こっちでもいいじゃん!て感じです。

そういうわりにはシーナ・イーストン風のアイドル歌謡はあまり心当たりがないんですが、ちょっと上の世代のニューミュージック系の女性歌手はかなり取り入れていたと思います。ビビアン・スーあたりも台湾で似たような曲を出していたに違いない(妄想)。なんなら、2000年代ですが、宇多田ヒカルの「SAKURAドロップス」だって、M8の”So Much In Love”に似ています。


あと、シーナ・イーストンは声が恐ろしいほどきれい。声がきれいな歌手というと、オリビア・ニュートン・ジョンとかケイト・ブッシュとかの大御所がいますが、シーナ・イーストンもすごい声してます。しかし、その後の活躍はその声のわりに地味な気がします。あまりにものっぺりときれいなのでBGM的に消費されてしまったのでしょうか?

2019/07/21

Apple Musicでお勉強する「渋谷系」

ちょっと前の投稿で、90年代は私の音楽ファン歴の中でちょっと空白期間である、という話をしたような気がしますが、90年代といえば日本のミュージックシーンでは「渋谷系」ということになります。
たまたま当時いっしょにオリジナル曲の制作に勤しんでいた頃の仲間が、「最近聴いているもの」の例としてピチカート・ファイブのことを教えてくれた(浅香唯の「Candid Girll」も教えてくれたのは内緒です)ので、ピチカート・ファイブだけは聴いていたんですが、それ以外はほとんどよく知らず、フリッパーズ・ギターも解散してから知ったような有様です。


そんじゃあ、「渋谷系」で手っ取り早いの見繕ってくれい!という乱暴なリクエストにもすぐに応えてくれるのがApple Musicです。検索するとホラ出た!「渋谷スクランブル50」1曲めがDAOKOという、意外に新しい名前が出てくるのがちょっと心配ですが、それを否定する知識もないので唯々諾々という感じで自分のライブリラリに追加してみました。


まあ、ほとんど知らない名前ばかりが並んでいますが、ところどころカヒミ・カリイとか「痛快ウキウキ通り」とか高野寛「虹の都へ」、「接吻」、「今夜はブギー・バック」なんてのが混じっていて、さらには先日「昭和のテクノ」の括りで聴いたヒカシューやPLASTICSなどの曲も混ざっています。大丈夫か、これ?
キング・ギドラと小沢健二が一緒の箱に入っていていいんでしょうか?まあそれを否定する知識も(以下略)


あと、永年その姿を捉え損ねていた土岐麻子が所属していたCymbalsも入っています。あーなんだ、この曲は当時からLOFTだか無印良品だか東急ハンズだかのBGMでいつも聴いてた曲じゃないですか!てっきり洋楽だと思ってたわ、と思って急に分かった。つまり渋谷系っていうのは(一部かもしれないけど)英語で歌っていたらそのまま洋楽と見分けがつかないところまで行った音楽だったんだなあと。でも日本人て「なぜなぜ英語ができなぁ〜い♬」なんで英語で歌っている限り、歌詞は理解してもらえない片肺飛行。1970年からの課題を結局いつまでも持ち越しています。

まあ、今となっては日本語で歌ってても聞きとってもらおうなんて思ってない人の方が多くなっちゃっているんですけどね。

2019/06/27

Apple Musicでは聴けないポリドール時代の原田真二

 2019年もあと数日で半分が終わります。
今年の投稿は前回までで18本。1ヶ月あたり3本か。
まあ近年の開店休業状態から思うとまあまあですね。これもApple Musicで聴きたい(というか昔違うメディアで聴いていた)曲が聴けるようになった事が大きいかな。
最近もちょっと良いネタを見つけたのでそのうち書きますけど、今日はちゃんとディスクで買ったものの紹介です。

買ったのは原田真二&クライシスの3枚組です。
原田真二もある程度はApple Musicで聴くことができます。当時テレビで見て好きだった、という人が覚えているヒット曲はだいたい網羅されています。
ところが、私の場合、高校時代の友人のせいで(普通はおかげで、と言う)その後のメッセージ色の強いロックをやっていた原田真二のことも覚えていて、「あー、たまにはSTRAWBERRY NIGHT とか聴きたいなあ」と思い出すことが年に1回くらいあるわけです。
ところが、その頃の曲(つまり「原田真二&クライシス」というバンド
名義で活動していた頃の曲)はApple Musicでは一部しか聴くことが出来ません。「スウィート・ベイビー」の次はすぐ「Modern Vision」みたいな繋がりになっていて、まさに「STRAWBERRY NIGHT」のあたりが抜けています。
Amazonのストリーミングサービスでも似たような状況なんですが、そのままAmazonで検索していたら「原田真二&クライシス ポリドール・イヤーズ完全盤」という物理ディスク(CD3枚組)が販売されていました。以前、タワーレコードで見て、ちょっと高くて買い損ねていたものですが、4500円くらいするはずが3000円そこそこで売っていました。てっきり中古の掘り出し物だと思い、慌ててポチって、届いてみたらちゃんとした新品でした。ラッキー!

さて、ほとんど仕様を確認もせずに買ったので、届いてから「どんなもんじゃい?」と開けてみると、ディスク1がアルバム「HUMAN CRISIS」、ディスク2がアルバム「ENTRANCE」、ディスク3が「シングル&ミニアルバム」となっていて、今まで買ったベスト盤とはほとんど曲が重複していません。よかった、探してみるものです。

実際に聴いてみると高校生の頃には気がつかなかった良さが改めてわかった感じです。
ヒット曲連発時代の原田真二は「ロックの御三家」とか言われながら、オーケストラをバックにしたポップス的サウンドでしたが、原田真二&クライシスはロックバンドの音です。ギターもドラムも生々しく録音されていて洋楽のロックのレコードに近い音がします。演奏の角を変に丸めずにそのままざらっとした手触りのまま聴きてに届けてくる感じ。それでも原田真二の絶妙にかすれた声はチャーミングで、とても聴きやすい。曲も1曲の中で展開する幅が大きく「才気煥発」という言葉を思い起こさせる自由さがあります。やっぱり天才だと思う。
このころの原田真二といえば、「&クライシス」になる直前、「MARCH」というバスドラ4つ打ちにピアノのオクターブ弾きのイントロから始まる曲をシングルで発売し、それを1年後くらいに「&クライシス」の「STRAWBERRY NIGHT」でやり直し、さらにディスク3に入ってる「街で散歩」という曲でもう一度使って、という三兄弟みたいな曲があります。当時こだわっていたテーマなんだと思うんですが、それが何を表していたのかは残念ですが今もわかりません(わからないままで好きですが)。ああ、「STRAWBERRY NIGHT」といえば、これからこの曲を初めて聴く人は、エンディングで低い声で英語のセリフが入ってくるところで「マイケル・ジャクソンのスリラーじゃん!」と思うかもしれません。残念!発売はこっちが先です。少なくとも「スリラー」の真似ではありませんので。

原田真二&クライシスのポリドール時代は1980年〜1981年。オフコースが「さよなら」とかをヒットさせていた時代です。
私は高校時代に原田真二という才能に接していながら、大学時代は堅苦しいオフコースをずっと聴いていました。それはなんでかというと、今思うと「オフコースの方が真似しやすそう」だったからだと思います。オフコースの音楽と似た曲を作るには才能は要らない。必要な知識を順番に増やしながら指差し確認で音符を増やしていけば、いつか「小田和正が作りそうな曲」をパロディ的に作ることが可能です。でも原田真二の自由な跳躍に追いつくには、瞬発力のある音楽的才能が必要な気がします。

2019/06/17

Apple Musicで聞く太田裕美の第3期(ニューウェイブ期)

 当ブログ開設以来、基本的には購入した音楽ソフトの感想文を書いてきたのですが、いまやストリーミング配信での音楽消費がかなり定着してきました。
 ストリーミングが始まったころはオジさんが聴くような音楽が配信対象にならず、あえて深掘りしてきませんでしたが、ここにきてユーミンをはじめ私が若い頃に聴いてきた音楽がかなり配信されるようになっているようです。何回か前から「Apple Musicで聴く」シリーズを何本か上げてみましたが、飽きるまでもうしばらく続けてみようかと思います。
 私は少年時代から今まで、ちゃんとしたオーディオセットとは無縁の生活をしていたので、若い頃はミュージックテープ(LPレコードと同じものをカセットテープのフォーマットで販売するもの。基本は円盤と同価格)を購入していました。今聴くとカセットテープの音なんて本当にショボいんですが、当時はそれより良い音に触れることがなかったので、それはそれで満足していました。しかし、音楽の媒体がCD、MDと変化し、ついにはネット経由のデータで配信されるようになった今、当時買いそろえたカセットテープ資産は、何度かの引越しを経てすべて失ってしまいました。CDで買いなおした音源もかなりありますが、全部をフォローしきれませんので、忘れるともなく忘れているアーティストや作品があるものです。
 ところが、Apple Musicで思いついた名前をダメ元で検索してみると意外なほどヒットするんですねえ。ちょっと前は有料ダウンロードだった作品も改めて検索してみると配信されるようになっていて、iPhoneにダウンロードすることもできる!いい時代になったものです。月極めの家賃は取られますが、ただより怖いものはないですからね。

さて、今日は、発表当時は(一部で)賛否両論だった太田裕美のニューウェイブ路線作品3作をまとめてみます。

 太田裕美自身は音楽学校出身でそれなりの素養はあったのでしょうが、スクールメイツでキャンディーズといっしょにアイドル修行?をしていたし、渡辺プロにも入っていますから、普通のアイドル路線でのデビューもあり得たはずですが、ピアノの弾き語りスタイルで登場しました。おそらくちょっと前に小坂明子がピアノの弾き語りで大ヒットを飛ばした(今思えばヤマハ世界歌謡祭のグランプリ曲であることを前面に押し出して売り出された最初が小坂明子だったと思う)後だったからではないかと思われます。小坂明子より可愛い子がピアノ弾いて歌ったらもっと売れるんじゃないか?大手の商品開発ってのはえてしてそういうものです。

 さて、太田裕美の音楽は4つか5つの時代に分けられると思います。デビューしてから数年間のアイドル的消費をされ、シングルヒットを続けていた時代(アルバムでいうと「ELEGANCE」、シングルだと「ドール」くらいまで)。アルバムでは自作曲を披露したりしていましたが、シングルに関しては判で押したように作詞・松本隆/作曲・筒美京平(/編曲・ 萩田光雄)でした。これが第1期になるのではないかと思います。
 その後、二十代半ばを迎えて少しアダルトな感じにモデルチェンジしようとしてやや迷走気味になりました。この頃の目立ったヒット曲となると、清涼飲料水のCMソングだった「南風」くらいでしょうか。「木綿のハンカチーフ」以来連続出演していた紅白歌合戦にも選出されなくなり、本人も思うところがあったのか、休養&渡米を発表するところまでが第2期。
 半年くらいと言って出て行ったアメリカ留学ですが、休養期間は1年を越え、ようやく活動を再開したのが今回紹介する第3期で、その後、結婚を機に活動は縮小します。
 しばらくして母親の立場から童謡を歌ったアルバム「どんじゃらほい」を発表した一方、自作曲や、久しぶりに松本隆/筒美京平コンビの作品を発表しました。また、近年は同時期に活動していたガロのメンバーや伊勢正三とのコンサート活動を継続しているようです。

 で、やっと本題。
 太田裕美(勝手な区分けで)第3期・ニューウェイブ編の3枚のアルバムもApple Musicで聴くことができます。
時代順に聴くのが良いと思いますが、タイトルは「Far East」(1983年)、「I do,You do」(1983年)「TAMATEBAKO」(1984年)となります。
 「Far East」はニューヨーク帰りでちょっと大人になった太田裕美をフィーチャーしたアルバムで、当時はLPレコードの時代でしたからA面とB面でコンセプトが違い、A面が「ニューヨーク・サイド」、B面は「トーキョー・サイド」と言っていました。A面は当時主流になりつつあったシティ・ポップの音で、なぜか日野皓正のラッパまで入っている豪華版です。B面もまったく違うわけではないのですが、「窓から春の風」のようなシンセの音が前面に出たテクノポップ風味のサウンドが強くなります。私は太田裕美はコンサバティブな人だと思っていたので、A面の路線で行くのだろうなと思っていたら豈図らんや、次作の「I do,You do」はデビュー当時もやっていなかったミルキーボイス全開のテクノポップでした。第2期の迷走は、つまりはどうやったら大人の歌手になれるかと足掻いた上でのことだと思うのですが、声質と舌足らずな滑舌のために本格派になりきれなかったのを完全に開き直った感じがして、「よくやった!」と思う出来でした。私はこのアルバムの「こ・こ・に・い・る・よ」という曲で初めて「5拍子」を理解したものでした。
 しかし、デビュー当時の「可愛い女子大生風弾き語り」のイメージでついてきていた人はこの辺りでいわゆる「オタ切り」されてしまったようです。私の学生時代の友達も一緒に行ったコンサートの後で「こんなの太田裕美じゃない!」と怒って帰って行きましたから、そういうファンは多かったんだと思います。
 そんなデジタル穏健派の私でもちょっと行き過ぎでは?と思ったのが3枚目の「TAMATEBAKO」。
 「ランドリー」とか「チラチラ傘しょって」とか奇天烈なタイトルが並び、前作よりもさらにぶっとんだ曲が並びます。

 でも、今聴くと「TAMATEBAKO」がいちばん完成度が高いですね。太田裕美の時代は、ちょうど音楽向けの機材が現代化していった過渡期なので、「ELEGANCE 」あたりまでは(曲はすごく好きなのが多いですが)音が古いです。次の「海が泣いている」は海外録音で音は良くなったんですが、曲が小難しくなって愛聴するにはいたりませんでした。大瀧詠一復活の時期にシングルで出した「恋のハーフムーン」はさすがのナイアガラ・サウンドですがこれはちょっと例外とすると、やはり「Far East」以降のサウンドは今の商品と比べても音の面で遜色がなく、改めてちょっとおススメしたいと思います。 

Mine or Yours/宇多田ヒカル

ベストアルバム"SCIENCE FICTION"を買った後しばらくぼーっとしていましたが、5月になった途端にYouTubeでライブ配信的なものを見かけました。配信は途中から見たのですが、過去のMVが次々流れていて、いつから新作発表になるのかわからず、見るのやめ...