ラベル 歌謡曲 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 歌謡曲 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019/04/14

宮川泰テレビテーマ・ワールド/宮川泰

 こんな辺境のブログを書いていて良かったことといえば、歳とともに消え去りそうになる「音楽を聴こう」という情熱を無理矢理にでも維持されることで、そのことによって出会えた音楽も多いです。こないだのKing Gnuもそうだし、相対性理論とか、土岐麻子とか。
 で、なんでこんな音楽ブログを書き続けているかというと、30年以上前に潜り込んだ地方私立大学の学生時代にたまたまレベル的にちょうどいい音楽仲間に会えたことで、バンドの真似事ができたこと。それによって音楽をやることの楽しさと大変さのさわりだけでも知ることができたことが大きな理由。一方、当時の自分に与えられていた時間と才能の限界もあって、そこから先の一消費者になった自分の「よすが」としてこのブログがあるわけです。

 ところで、なぜ大学生という遅いスタートから拙い音楽活動を始めたのかというと、実はそこに宮川泰先生の存在があったわけです。
 奇しくも(?)この方は私の父と同じ年の生まれで、作家としていちばん売れていたのはザ・ピーナッツや園まりのヒット曲を書いていた頃でしょうから、おそらく30歳前後だったんでしょう。今よくテレビで見かける息子さんもその頃生まれているんだと思う。そのあと、ヒットチャートではあまり名前を見かけない時期があって(まさにこのCDの曲の多くがその間に作られてるわけですが)、そして我々が中学生の頃に「宇宙戦艦ヤマト」の大ブームが起きました。あの勇壮なオープニング曲と「真赤なスカーフ」の作曲家として再ブレークしたのがおそらく40代後半、ということになると思います。

 ちょうどその頃、宮川泰先生(珍しく敬称をつけてしまうが)はうちで取っていた新聞、確かこの頃は朝日新聞だったと思うけど(読売だったらゴメン。Wikipediaでも出てなかった)しばらくの間、毎週金曜日の夕刊に歌謡曲の評論をかなり大きなスペースで連載をしていらっしゃった。毎回、ポイントのところは譜面付きで解説がされていて、主に曲作り(メロディ、コード付け、歌詞)についての解説が詳しかったと記憶しています。現在も続く近田春夫の評論は、どちらかというと声質や歌唱テク、作品が出てきた文脈やサウンドについて詳しいのとは微妙に力点が違ってました(より教科書的使いでがあった)。
 一方、この新聞連載の期間を挟んでもっと長い期間、宮川先生は毎週土曜日午後にFMで「コーセー歌謡ベストテン」という番組のMCも勤めておられました。ですから、70年代後半の一時期、私は当時の代表的ヒット曲を、常に新聞かラジオを通じた宮川泰の解説付きで聞いていたのです。

 ご本人は音大出で、理屈を熟知しているはずですが、当時雨後の筍のように出現するニューミュージック系のシンガーソングライターたちにもやさしい評論を加えていました。今でも覚えているのは横浜銀蝿が出てきたとき、「(本人たちは)3コードのロックンロールでやれるだけやってからっぽになったらやめると言っているらしいが、馬鹿な真似はよせ、あと3つくらい覚えたら10年くらいできる」と書いていたこと。めっちゃウケる!
 それでもやっぱり音楽性が高い新人が出てくると嬉しかったようで、原田真二、渡辺真知子、八神純子、山下達郎なんかはお気に入りだったように思います。

 こうして私は歌謡曲にも作り手の巧拙や志の高低や、いろんな思惑があることを学ぶことができました。その興味が私を音楽という趣味に走らせた、ということです。

 さて、長くなりましたがCDの話です。
 最初に書いた通り、ブログ更新のため意識的に音楽に触れようとする行動の一つとして銀座の山野楽器に行ってきました。渋谷だったらタワーレコードですが、今日は銀座だったので山野楽器です。最近は一階のエスカレーター近くの、五十音順から漏れた、オムニバスというか企画ものコーナーをざっと見てくることが多いんですが、たまたまそこにジャケットを正面に向けて置いてあったのがこのCDです。
CD1枚にボーナストラックも含めて38曲!しかも内容は宮川泰がテレビ番組用に書いた曲ばかり。38全部は書きませんが、「シャボン玉ホリデー」から始まって「ゲバゲバ90分」「(あの「チコちゃんに叱られる」にも流用されている)カリキュラマシーン」「ズームイン!朝」「ふたりのビッグショー」。もちろん「宇宙戦艦ヤマト」の2曲も入ってます。作詞以外のクレジットはいちいち書いてありませんが、おそらく編曲もほとんど本人がやっているはずです。世代はかなり違いますが、大瀧詠一と並べて聞いても良いような内容で、しかも完成度はある意味こっちが高いわけです。
 職人的になんでもやれちゃう音作りと、濡れたようなメロディラインのギャップが宮川泰サウンドの特徴なのかなと漠然と捉えていますが、何れにせよそのバリエーションの豊かさとボリュームに圧倒されます。

 ちなみに隣には「浪花のモーツァルト キダ・タローのほんまにすべて」という3枚組CDも並んでいて大いに気になったんですが、今日はパス。こっちは「恋するフォーチュンクッキー」の元歌ともいうべきキャンディーズの「プロポーズ大作戦」が収録されているようです。

2012/05/13

歌窈曲/一青窈

先週のBENIの話でちょっと引き合いに出した、一青窈が昭和歌謡を歌う企画物アルバムです。
行きがかり上、通して聴いてみました。

やっぱり予想通りでした(悪いほうで)。

選曲は悪くない。なかなかシブイと思いますが、一青窈に唄わせるにはどうか?
元歌を歌っているメンバーが美空ひばりをはじめ、ちあきなおみ、西田佐知子、園まり、とレコード大賞最優秀歌唱賞クラス(まあ、今となってはマッチもその一人ですが)の実力派揃いで、当然オリジナルがすごいことになっているわけです。(ちあきなおみと園まりについては、それぞれこのブログでも書いたことがあるので、そちらも参照して下さい。
哀愁りふれいん: しんぐるこれくしょん/ちあきなおみ
哀愁りふれいん: 逢いたくて逢いたくて/園まり )

昭和歌謡では、力関係が「作曲家>>>歌手」で、作曲家のセンセイの細かい指定を丁寧になぞるように歌っていたわけで、そのせいで悪くするともっちゃりしてしまうところもあって、そこを素人に毛の生えたようなニュー・ミュージック勢につけこまれた歴史もありました。
しかし、ちあきなおみクラスの超一流になると、そのへんをクリアした上で大したことない曲でも名曲にしてしまうような芸があったわけです。

一青窈の歌い方は独特で、何をうたっても彼女流になってしまうのは悪いことではありませんが、それにしてもなんかすごく浅いところでOKにしてしまっている気がして、楽曲への愛情があまり感じられない。まあなんというか、一青窈がカラオケボックスで遊んでいる所に呼んでもらったような感じです。
若い人に過去の名曲を紹介するという意味ではそれなりに意義があると思いますし、「天使の誘惑」なんかはキャラクターにも合っていると思いますので、ファンの人は買ったらよろしいかと思います。
私くらいまたは上の年代の人は、聴くときっといろいろ考えてしまうので、強くはお薦めしません。

2010/01/24

Expressions[Disc 1]/竹内まりや

竹内まりやの3枚組(4枚目はカラオケ)ベストの1枚目です。
90年代にはソングライターとして松任谷由実、中島みゆきと並ぶ位置を確立した彼女ですが、1978年のデビューから山下達郎と結婚するまでは、基本的に作家に提供された楽曲を歌う歌手でした。同期をWikipediaで拾うと石野真子、杏里、中原理恵、サザンオールスターズ…。時代はピンク・レディーの全盛期であり、沢田研二と山口百恵がザ・ベストテンで歌う一方、アリスのブレイクや原田真二、世良公則&ツイスト、渡辺真知子らが現れた「ニューミュージック」の開花期にもあたります。

竹内まりやは大卒後のデビューという年齢的なものもあってか、太田裕美や中原理恵がそうだったようにアイドルとニューミュージック・シンガーの中間的イメージでテレビに出ていました。一番良く見かけたのは年末賞レースがらみで「September」を歌うところです。「September」の発音がなんか本場モンぽく、ちょっと偏差値が高そうな感じでした。
70年代デビューの女性歌手の中ではもっとも現役感がある人なので、もっと若いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、南沙織、太田裕美とほぼ同い年で、大器晩成タイプとも言えます。
それでは聴きましょう。

M1.戻っておいで・私の時間
加藤和彦夫妻の楽曲。オシャレだが素人の耳に残りにくいですね。ゴダイゴのブレイク以前にしては英語部分が多い。

M2.グッドバイ・サマーブリーズ
これ、全く憶えてないわ…。歌詞カードはカタカナですが、本人は英語風に歌っています。またそれを許す譜割りになっています。

M3.ドリーム・オブ・ユー〜レモンライムの青い風〜
これは有名ですね。キリンレモンのコマーシャルソング。個人的にはまだ顔と歌が一致しておらず、意識して聴いたことはありませんでした。

M4.涙のワンサイデッド・ラヴ
ワンサイデッドと過去分詞がカタカナで表記されるのは当時の曲名としては珍しかったと思いますよ。これはアルバム用ということですが、自身の作詞作曲で、編曲には早くも山下達郎の名があります。

M5.September
前年に同い年の太田裕美が「September rain」と儚げに歌っていた単語を、彼女は乾いた声で、バリバリのRの発音で歌いました。この曲で集中的にテレビに出たので私もようやく竹内まりやを認知しました。私の第一印象は「南沙織が風邪ひいたみたいな声だなあ」。もっと年配の人は「伊東ゆかりみたいな声だなあ」と思っていたみたいです。

M6.不思議なピーチパイ
シンガー・ソングライターとしての作品以外ではもっとも成功した曲でしょう。安井かずみと加藤和彦のコンビによるポップな曲。当時はCMもガンガン流れててサビはいやでも覚えたし、しかもCM曲によくある「サビまでいくまでが退屈」ということもありません。前半からめくるめくように展開して、一気にCMで使われる箇所まで行ってしまいます。さすが!「かーくしきれない(っぱん)」と入るハンドクラップが効いてます。コーラスには山下達郎の声が。

M7.象牙海岸
松本隆と林哲司の作品ですが、ちょっと退屈。この頃の竹内まりやって歌い方が一本調子でこういうミディアム・スローなナンバーを聴かせられるタイプではなかったようにも感じます。アレンジはいろいろ頑張って変化をつけているんですけどね。

M8.五線紙
ギター1本の伴奏に3声コーラスという渋い曲。「いかにも松本隆」という歌詞で、メロディが変われば太田裕美のアルバムに入っていても全く違和感が無いでしょうね。

M9.Morning Glory
山下達郎のを先に聴いちゃったからなあ…

M10.僕の街へ
竹内まりやに対して林哲司が提供している曲は、いまいちキレが無いように思うのは何故だろう?なんかこう、この子の声はこう、と枠を決めてそこから一歩も踏み出さないような作り方をしているような気がする。それが悪いのかと言われると「いや、べつに…」としか言えないんですが。

M11.ボーイ・ハント(Where The Boys Are)
これはもう、もろに伊東ゆかりに挑戦したわけですね。

M12.恋のひとこと(Something Stupid)/Duet with 大滝詠一
これはオシャレ。しかも相手が大滝詠一。アレンジが服部克久という豪華版。

M13.Never Cry Butterfly
「スローなブギにしてくれ」みたいですが、作曲は南佳孝ではなく杉真理。学生時代に杉真理と活動していた、と自筆ライナーノーツに書いてあります。なるほど、そういうルーツの人なんですね。

M14.Let It Be Me [Studio Version]
2008年の新録音だそうです。サンデーソングブックの夫婦放談でも聴いたことがある曲。山下達郎とのデュエット。

気が向いたら来週辺りに[Disc 2]をやります。

2009/11/17

イエローマジック歌謡曲 DISC-3/様々なアーティスト

予定より1日遅れましたが、「イエローマジック歌謡曲」の第3夜です。3枚組なので今日が最終回。このシリーズは曲名書いてれば良いから楽といえば楽なんですが、ときどきすごく耳に残る曲があって、困っています。



M1.わがままな片想い/松田聖子
作詞・松本隆、作曲編曲・細野晴臣。「天国のキッス」のB面であるよ、とライナーノーツに書いてあります。松田聖子の倍音たっぷりな声にはちょっとバックがしょぼくない?B面的な制約がちょっと感じられてしまいます。この曲は「細野晴臣トリビュート・アルバム」でコシミハルがカバーしていますが、そっちの方が断然良いです。


M2.まりン/飯島真理
おお、飯島真理が出てきました。彼女が作詞作曲した作品を坂本龍一がアレンジしています。「愛・おぼえていますか」よりも早い時期の作品で、そのためか歌いかたも声優さんが歌うアニメ主題歌的です。

M3.鏡の中の十月/小池玉緒
作曲編曲YMOとなっています。DISC-2の三国志のテーマを歌っている人ですが、どういう人か分かりません。

M4.ダンスホールで待ちわびて/タンゴ・ヨーロッパ
作曲が細野晴臣。これもまったく分かりませんが、タンゴとも8ビートとも取れるリズムの曲なのに間奏では突然3拍子が入ってきたりして作品としては凝っていて面白い。背景に関係なく面白い曲です。

M5.ピンクの鞄/高橋美枝
作詞・松本隆、作曲・細野晴臣。誰だこれ?ライナーノーツには後に作詞家、コーラスとして活躍したようなことが書いてあるがちょっと信じられない歌声です。デモテープみたい。DISC-3はかなり玉石混淆です。

M6.玉姫様/戸川純
あ、やっと知ってるのが出てきました。戸川純が時代の最先端だった頃の作品。しんぴーしんぴー♪って流行ったなあ。「BSマンガ夜話」の「すすめ!!パイレーツ」の回にゲストで出てきた戸川純が、80年代をしみじみ懐かしんでいるのを見た時はちょっと寂しかったです。

M7.風の谷のナウシカ/安田成美
これも松本隆/細野晴臣コンビです。安田成美の歌唱は褒められたものではないけれど、その声があって完成している作品でもあります。

M8.ピンクのモーツァルト/松田聖子
私が松田聖子の全盛期と思うのがこの曲です。声の完成、抑制された中に高級感のあるカラオケ。作曲・細野晴臣ですが編曲は松任谷正隆との併記になっています。おそらくストリングス部分を松任谷正隆が担当したんでしょうね。


M9.ファンキーマージャン/竹中直人
作詞・高橋幸宏、作曲・加藤和彦、編曲・高橋幸宏。こんな作品があったんですね。というか、サディスティック・ミカ・バンドの曲のカバーらしいです。まだ役者としてブレイクする前で、モノマネ芸人なのか俳優なのか分からなかった頃の竹中直人が持ちネタのいくつかを使って録音しています。資料価値は高いと思います。

M10.リセエンヌ/原田知世
作曲編曲が坂本龍一。髪を切って男の子みたい、なんて歌っているからまた松本隆かと思ったら、作詞は原田知世と康珍花と書いてありました。

M11.クララ気分/原田知世
こちらは作曲が南佳孝、編曲が坂本龍一。原田知世ってもう25年もこういう、ちょっと文化の香りを纏いながらの歌手活動を続けているんですね。なんだか分からないけれど偉大だ!

M12.タキシード・ムーンで夕食を/キララとウララ
作曲が細野晴臣、編曲は細野晴臣と船山基紀。片っ方が小室哲哉の元奥さんだったということで有名な女性デュエットですが、どんな唄を歌っていたのかは知らなかった。全編ユニゾンだが、結構声質の相性が良く、聴いてる分には問題ないですね。ま、問題ないだけじゃ売れないか。

M13.銀河鉄道の夜/中原香織
誰?ちょっとDISC-3はマニアック過ぎて着いて行けません。作曲が細野晴臣、編曲は細野晴臣の他2名。

M14.生意気娘/中原理恵
同じ中原でも今度は中原理恵。作詞・RIEとあるのは多分中原本人でしょう。作曲編曲が高橋幸宏。歌メロの一部やベースラインが、まんま、じゃないんだけど、でもやっぱり"Like A Virgin"なんだろうなー、1年後だし。DISC-1、2でスーザンという人の歌でもやってたけど、この頃の高橋幸宏はVCFで変調かけたようなビブラートで声を処理するのが好きだったんですね。

M15.NEO-PLANT/如月小春
作曲編曲が坂本龍一。2000年に若くして亡くなった如月小春がこういう曲を出していたのは知りませんでした。この人も糸井重里や坂本龍一といっしょにいろんな媒体に出てました。私の中では名前の字面とか出てくるチャンネルのせいで松本小雪とちょっとごちゃごちゃになってます。

M16.SIAM PARADICE/少女隊
作曲編曲が細野晴臣。ただし書き下ろしではなく、過去の作品の「リサイクル」とライナーノーツに書かれています。それにしても80年代でこのとんがり方はちょっと意外なほど良くできています。こんなこともやっていたんだ、カッコいいぞ少女隊!

M17.天使のゆびさき/西村知美
「天使の○○/西村〜」と書いていると「まゆ子」を思い出してしまいますが、あ、同調者少ないですね。まあ良いです。これも松本隆/細野晴臣コンビ。すごいプレミアムなイメージの組み合わせなんですが、結構むちゃくちゃ量産してるんですね。

M18.時代よ変われ/つみきみほ
最後の1曲も松本隆/細野晴臣です。

はい、「イエローマジック歌謡曲」3枚聴き終わりました。とっても疲れた。戸川純とか如月小春とかつみきみほとかもう、懐かしさでオジサンはお腹いっぱいです。このCDずっと聴いてたら、仕事中も柏原よしえの「しあわせ音頭」の「そーれそれそれ」が耳元で鳴ってて、困りました。ちょっとなんか毒消しの音楽を探さないといけませんね。
また、これではまだ足りない、というキャパシティの大きな方には、関連商品として「テクノマジック歌謡曲」というのもあるようです。「芳賀ゆい」とか入ってるらしいですよ。

2009/11/15

イエローマジック歌謡曲 DISC-2/様々なアーティスト

バンドに演奏をさせようと思うと、楽器の数だけ他人の目に晒されるわけですから、意識するにしろしないにしろ作り手側にも体面みたいなことが気になるんだと思うのですが、シンセサイザーは曲を評価することもしないし、いやがることもありません。電気代以外のギャラもいりませんから、前衛的な実験もできるし、どんなレベルの低い冗談も実現できます。
80年代にいわゆるテクノサウンドの歌謡曲がこんなに増殖したのは、音色の流行以上に予算やスタジオ・ミュージシャンをマネージメントする手間を大幅に省けることが最大の理由だと思います。

なんてことを考えながら、「イエローマジック歌謡曲」のDISC-2を聴きます。


M1.赤道小町ドキッ/山下久美子
作詞・松本隆、作曲が細野晴臣です。独特の存在感はありながらも大ヒットが無かった山下久美子の代表作になりましたが、本来のスタイルと違ったのがその後の悩みになったか?

M2.サマルカンド大通り/スーザン
作曲・編曲が高橋幸宏。DISC-1にも出てきた人です。声といい、メロディといい、今から始まるアニメの主題歌などにするととても良いと思います。ていうか、最近こんな曲無かったですかね?

M3.哀愁のデスマッチ・ラブ<予告編>/アゴ&キンゾー
これも作曲・編曲が高橋幸宏。なんだっけこれ?

M4.夏の雫/三田寛子
若い人には想像もつかないでしょうが、三田寛子がアイドル歌手で、ひょっとするとポスト山口百恵かもと思われていた時期があったんです。この曲はたしかデビュー曲「駆けてきた処女」の次の曲だったと思います。阿木燿子と井上陽水が作った曲を坂本龍一が編曲しています。

M5.ハートブレイク太陽族/スターボー
ある意味DISC-2の最大の聴きどころがこの曲でしょう。
松本隆と細野晴臣が組んだにも関わらず大コケにこけたプロジェクト。そのコケ方があまりに見事だったので却って歴史的存在になっています。

今聴くと「シブがき隊」を女の子にやらせてみた、以外の意図が見えませんが、「太陽系10番目の惑星からやってきた」と頭がガンガンするような設定など、相当に作り込まれた商品です。おそらく狙いは「じつは女の子なのに男のアイドルよりも女の子に騒がれる」みたいな完成図を夢見ていたのではないかと思うのですが、結局は男の子にも女の子にも受け入れられずに早々に撤退することになりました。普通にカワイイ女の子を一人混ぜておけばPerfumeになったのかもしれない。

M6.しあわせ音頭/柏原よしえ
作曲が細野晴臣です。聴けば分かりますね。はっぴいえんどとYMOの間で細野晴臣が作っていた「チャンキー・ミュージック」が形を変えてアイドル歌手の、しかもノベルティ的作品として再現されたのがこの曲。イントロは「大ちゃん数え唄」ですが、そこからは沖縄民謡風です。柏原よしえ(芳恵)と酒井法子って声とか存在感が良く似てますね。

M7.コズミック・サーフィン/コズミック・インベンション
初期YMOの作品に近田春夫が歌詞を付けて歌われています。歌ってる人がどういう人なのか、ライナーノーツを見てもよく分かりませんが、それにしてもこの、3分で書いたような歌詞はすごすぎる。

M8.ねらわれた少女/真鍋ちえみ
M9.ロマンチスト/真鍋ちえみ
この2曲は作詞・阿久悠、作曲・細野晴臣です。真鍋ちえみはパンジーというアイドル3人組の一人で、あとのメンバーは北原佐和子とえーと、忘れました。真鍋ちえみも顔を覚えていません。北原佐和子は顔がきれいだったので良く覚えているんですが…。M8の眉村卓なタイトルもなんか絡んでたのかとか全て記憶にありません。

M10.雪列車/前川清
糸井重里と坂本龍一という「若者たちの神々」が合作した曲を「大人の音楽」の本丸であるムード歌謡のエース・前川清に歌わせる、という意欲作。前川清にとってもキャリアの中でこれほどの冒険は、ずっと後の福山雅治作品を歌った「ひまわり」くらいではないかと思います。コーラス最後の「どおぞー」の「お」以外は白鍵だけで弾けるのが意外。坂本龍一はおそらく自分で歌うのは好きな人ではないけれど、理論の抽き出しが一杯あるので、「歌曲の定石」みたいな理詰めなメロディ作りをやるのでしょうね。素人が指摘できるような破綻はしない。


M11.三国志ラヴ・テーマ/小池玉緒
NHK人形劇のテーマソングだそうだが、私は全く見ていなかったので分かりません。細野晴臣が作詞作曲編曲という珍しい曲です。

M12.I Like Best/山田邦子
作詞が山田邦子、作曲が矢野顕子、編曲が坂本龍一。収録されているアルバムのタイトルが「贅沢者」。音楽番組などには出演を渋りつつ、こういう「お笑い」関連に気軽な感じで取り組んで意外性を見せるところがYMO流。

M13.哲学しよう/山田邦子
山田邦子が上昇カーブを描いていた頃ですね。ひょうきん族に出始めた頃は今で言うと青木さやかと柳原可奈子を足して2で割らないくらいの面白さがあったんですけどね。

M14.だってホルモンラブ/伊武雅刀
作曲が細野晴臣。「おちゃっぴー」って!死語だということに誰も気づかないくらいの死語ですね。

M15.ティーン・エイジ・イーグルス/イモ欽トリオ
あー、もう分からないわ。作詞・松本隆、作曲・細野晴臣の布陣は変わってないんですが。

M16.きたかチョーサン まってたドン/川上さんと長島さん
今でもときどきテレビで見かけるプリティ長嶋と、多分今は北海道でラジオを聴けば会えるドン川上(DON)が初期の「笑っていいとも!」で人気が出たことから発売された企画もの。作曲と編曲が細野晴臣です。

M17.君の名はサイコ/郷ひろみ
作詞・糸井重里、作曲編曲・坂本龍一。
M18.毎日僕を愛して/郷ひろみ
詞と曲が矢野顕子、編曲が坂本龍一。

M18.From Tokyo-Endingメロディーはリピートで/ユミ
「もしも世界にタヌキがいたら」のB面なのだそうです。懐かしいなー「なるほど!ザ・ワールド」。
歌ってる「ユミ」は名物リポーターの「ひょうきん由美」ではなく遠藤由美子です。結構可愛かったのにすぐにいなくなっちゃったんだよなー(遠い目)。「メロディー」って今は(最後の音引きを)書かないこと無いですか?時代です。
ていうかなぜA面の方を入れてないんだろう、このCD?

DISC-3では松田聖子が登場しますよ。

2009/11/14

イエローマジック歌謡曲 DISC-1/様々なアーティスト

シンセサイザー奏者出身の作曲家・音楽プロデューサーである小室哲哉の話を2回に渡って書きましたが、もちろんそういう音楽を彼一人が作り上げたわけではなく、その前のほぼ10年間、80年代全体に渡ってテクノポップとその派生商品というものがたくさんありました。歌わないキーボード奏者といえば坂本龍一なんていう大物もすでにいたわけです。

たまたまTM NETWORKのベスト盤を探しに行った山野楽器でこんなのみつけました。
「イエローマジック歌謡曲」CD3枚組で4200円。YMOの3人が何かの形で関わった「歌謡曲」のオムニバスアルバムです。こんなのあるんだなあ…。


今ではテクノのことなんかおくびにも出さないアコースティックなイメージの人が、80年代には時代に乗っかってピコピコサウンドに乗っかって歌っていたこともバレてしまいます。
3日間連続で休みをもらったので、三夜連続でご紹介しましょう。今日はDISC-1です。

M1.YELLOW MAGIC CARNIVAL/マナ
あーいたいた。マンガで描いた中村紘子みたいな容貌の、国籍不明の女の子でした。今聴くとイントロが無茶苦茶レトロなんですね。作詞作曲が細野晴臣、編曲は鈴木茂です。

M2.エレクトリック・ラブ・ストーリー/近田春夫
この柴田恭平のような水谷豊のような南佳孝のような声で、芝居っ気たっぷりに歌っているのが、「音楽界の小林秀雄」こと近田春夫御大です。ちょっとキンモクセイに似ています。編曲が細野晴臣。そして作詞がなぜかあの漫画家・楳図かずおです。おそらく近田春夫との髪型や全体の相似性にちなんだ洒落でしょう。80年代はそれが通用した良い時代でした。

M3.ユー・メイ・ドリーム/シーナ&ザ・ロケット
作曲が鮎川誠と細野晴臣の共作になっています。シンプルなロックンローラーのイメージがある鮎川誠ですが、実は細野人脈から出てきた人なんですね。

M4.チャイナ ローズ/金井夕子
作曲が細野晴臣、編曲が細野+坂本龍一。伊東ゆかりっぽいこの人はスタ誕出身で、歌唱も外見も中庸な人でしたが、ヒット曲には恵まれませんでしたね。

M5.憧れのラジオ・ガール/南佳孝
リズム&ストリングスアレンジに坂本龍一の名が。この人は今「テクノってなに?」って感じでやってますけどね。ボコーダーって和音の演奏できたんだっけ?多重録音?

M6.夜の翼/南佳孝
M5と同じ布陣です。作詞は2曲とも松本隆。この曲は聴いたこと無かったな。

M7.IDOL ERA/サンディー
作曲・編曲が細野晴臣。この人も知らない。"ERA"ってなんだろ?と思ってGOO辞書で調べたら"〔Equal Rights Amendment〕男女平等の観点からアメリカ合衆国憲法の修正を求める修正条項のこと。"なんだそうです。難しいな。このメロディは違う曲名でYMOがやってるような気がするが、ちょっとすぐに分かりません。細野さんって同じ基本コンポーネンツでたくさん曲作りますからね。

M8.CARNAVAL/大貫妙子
大貫妙子が作詞・作曲。編曲が坂本龍一です。電子楽器で構成されていますが演奏形態はロック的。大貫妙子の声がシンセベースの上に乗っかってるのも今聴くと貴重な気がします。

M9.AH! SOKA/スーザン
作曲が細野晴臣、作詞と編曲が高橋幸宏。高橋幸宏で編曲するんだ、と今更ながら。高橋幸宏が鼻歌歌うのを坂本龍一が「しょーがねーなー」って形にするのがYMOだと思っていたので。それにしても耳に残る曲ですね。今をときめくおバカタレントがカバーすると良いと思う。

M10.浮かびのビーチガール/シーナ&ザ・ロケット
作曲・編曲がYMOとなっています。

M11.ラジオと二人/ラジ
作詞・糸井重里、作曲・杉真理。編曲が高橋幸宏。普通の歌謡曲を電子音楽でやってるだけのような気がしてしまう。ラジという人は声が良くて、いろんなアーティストの作品で印象的なコーラスをやってる人。大瀧詠一の「ロング・バケーション」で「ふ」う「け」い「が」とやってる人もこの人。「さんぽしない?」は別の大物歌手。

M12.アパルトマン/ラジ
こちらは作詞作曲が大貫妙子。編曲が高橋幸宏。こっちの方が大人っぽくて好き。

M13.春咲小紅/矢野顕子
作詞・糸井重里、作曲・矢野顕子。編曲がymoymoとなっていますが、もちろんYMO。売上枚数的には多分、矢野顕子史上最大のヒットでしょう。化粧品のCMソングでした。「みーにみにー」のバックのコードが教授っぽいですね。

M14.ハイスクール ララバイ/イモ欽トリオ
作曲・編曲が細野晴臣、作詞が松本隆。DISC-1最大のヒット曲がこれかな?世間の人が思うYMOの音をかなり甘口に再現したサウンド。山口良一らがバックでやってたコードの差し替えみたいな振り付けは松武秀樹の作業を表していたのでしょう。

M15.コンピューターおばあちゃん/酒井司優子
NHK「みんなのうた」の名作として知られる曲。編曲が坂本龍一。

M16.恋はルンルン/伊藤つかさ
作曲・編曲が坂本龍一です。21世紀に聴くと脳みそが痒くなりますが、この後まだ菊池桃子とかもいましたからね。すごかったな80年代。転調あり、音域はA#3〜E5くらいで意外と幅を使ってます。かなり苦しいけどね。

M17.ティアドロップ探偵団/イモ欽トリオ
M14と同じく作曲・編曲が細野晴臣、作詞が松本隆。前作が思いのほか成功したので、もう少し趣味的にしてみた感じでしょうか?シンセサイザーは使っているのでしょうが、テクノポップというよりも思い切りサーフィンミュージックになっていますが、当時は気がつきませんでした。残像効果ってやつですね。松本隆のレトロな歌詞の世界を細野晴臣が疑似60年代サウンドで受けとめた、コンビ芸なのでしょう。

M18.プリティ・ボーイ…大丈夫?/中原理恵
作詞作曲編曲が高橋幸宏。解説を見て思い出したんですが、ここで中原理恵が出てくるのはイモ欽トリオと同様に欽ちゃんファミリーとしての括りなんですね。この人、デビューした時はシンガー・ソングライターという触れ込みだったのですが、とうとうオリジナル曲を聴く機会は寡聞にしてありませんでした。歌はうまいんですけどね。

というわけで、さらに有名なネタが多いDISC-2に続きます。

2009/04/02

昭和八十三年度!ひとり紅白歌合戦/桑田佳祐(Disc-2)

「ひとり紅白歌合戦」の後半、Disc-2の話。

Disc-1が懐メロ主体であり、かつ作り込みの深いプログラムだったのに対して、後半はややリラックスムード。「ヒロシ&ハラ坊 from SAS」の「三年目の浮気」なども織り込み(桑田本人は休憩)、サザンと同世代または後輩に当たるアーティストのヒット曲をスピーディーに展開していました。

こうして、普段の自前のバンドにおける桑田佳祐とは違う顔を見ていると、いろんなことが分かってきて面白いですね。例えばMCで段取りを進めるときの口調が先代林家三平に似ている、とかハンドマイクで唄う時に動きのレパートリーが乏しい(ちゃんと踊りを勉強したことがないので)こととか。
善くも悪くも緊張感が漲っていないステージは長尺だけれど見ていて疲れるところがないのは好ましいところです。

私はこのDVDを見ながら、米米CLUBのライブビデオのことを思い出していました。

私が見たのは上の"THE 8TH OF ACE"という作品です。「君がいるだけで」がバカ売れした直後の武道館公演のライブビデオでしたが、これも長尺かつおふざけ要素たっぷりのプログラムです。オリジナルだけでなく、例えば「さらば恋人」のカバーとか郷ひろみのパロディなんかをやっていて、「ひとり紅白」に結構近い。米米CLUBはもともと山本リンダのネタなどもやっていたので、違和感はありません。

二者に共通なのは、「あくまでも余興」という前提で展開する冗談の気楽さです。桑田佳祐もちょっとそういうところがありますが、オリジナルの作品でも自分の内面をさらけ出すよりも、「これってこういういことだよね」という批評的作品作りで伸してきた人たちです。そして時折見せる本音を混ぜたときに、それでも商売になるのが桑田佳祐で、ちょっとつらくなっちゃうのが石井竜也。今の両者にちょっとランクの違いがあるとすればその辺じゃないかなあと私は思っています。

2009/03/29

昭和八十三年度!ひとり紅白歌合戦/桑田佳祐(Disc-1)

この1ヶ月はホントに中年狙いのコンテンツがたくさん出るので、ディスク貧乏になってしまいました。和幸、ユニコーン、布袋寅泰、Utadaと続いて、DVDが「容疑者x-」とこの「ひとり紅白歌合戦!」です。当分物理ディスクは自粛しないとカードの支払いが怖いです。幸い、買って後悔した物件はありませんが!

さて、桑田佳佑"Act Against AIDS 2008"のコンサートである「ひとり紅白歌合戦」はやじうまプラスの芸能情報で見て以来、DVDになったら買おう、と心に決めていたので早くからアマゾンで予約していました(だから今月に出費が集中したorz)。

昭和二十年代から現代までの、歴史に輝く歌謡曲とJ-POPの数々を桑田佳佑がひとりで(中略)唄い継ぐ!!(中略)壮大なミュージック・エンターテインメント・ショー!

とDVDのカバーにも書いてある通り、桑田佳佑が全61曲(TVサイズだったり一部メドレーも含むが)を唄うので、2枚組で3時間を越えるプログラムになっています。とてもいっぺんに全部見られないので、とりあえずDisc-1を見てみました。

Disc1は前半の39曲が入っています。曲目を全部書くとぐったりしますので、アマゾンなどのデータを参照してください。戦後間もない「青い山脈」ありGSあり、フォークVSニュー・ミュージックでは「学生街の喫茶店」「あの日に帰りたい」「ルビーの指環」。あるいはビッグバンド歌謡曲コーナーでは「経験」や「長崎は今日も雨だった」などエッジの立った選曲で徹底したエンターテイナーぶりを発揮しています。そしてDisc-1のクライマックスはクレイジーキャッツとザ・ピーナッツのメドレーです。

桑田佳佑は自作曲でも歌謡曲の影響を隠そうとしない人ですから、当然、昔の歌謡曲に関する知識と愛情は相当なものであることは想像できました。そして、これらの作品を予想以上に原曲に忠実なアレンジで、歌唱法もモノマネまでいかないけど「当時の俺にはこう聴こえたよ」というニュアンスを混ぜて唄っています。「スーダラ節」ではちゃんと「きたもんだ」と植木等風笑い声も加えています。うんうん、そうじゃないと!「きたもんだ」は大事だよね!と納得の前半でした。後半(Disc-2)に続く…。

2008/10/12

ROYAL STRAIGHT FLUSH/沢田研二

ディープな歌謡曲の世界から、浅瀬に向かって浮上を開始しています。浮上のついでに、なぜか「青春歌年鑑」に入っていなかった大物、沢田研二を聴きながら行きましょう。
iTunesでも買うことができる、彼の全盛期のベストアルバムである"ROYAL STRAIGHT FLUSH"をダウンロードしてみました。
沢田研二 - ROYAL STRAIGHT FLUSH


沢田研二のことを今更私なんかが紹介することもないと思いますが、ポイントはGS出身で、しかもそのトップにいた存在だったということ。
その後、ちょっとした空白期間の後でソロ歌手として大ヒットを飛ばす一方で、ザ・ピーナッツの片っぽうと結婚したりとか、一般人とのトラブルがあったりして、一瞬もたつきもしたのですが、1977年に「勝手にしやがれ」でレコード大賞を取りました。
その後、当時の子どもがみんな見ていた「ザ・ベストテン」の常連、「一等賞男」として一時代を築きます。
この時期、もうヒットチャートの何割かは「ニューミュージック」に浸食され、歌謡曲の歌い手も時代に乗り遅れまいとニューミュージックのアーティストに楽曲を発注するようになっていました。GSという、日本独自仕様のロックを唄っていた沢田研二が、ニューミュージック勢に対してどんな感情を持っていたかは分かりません。ただ、すでにピンクレディーが消えつつあったこともあり、本人の意識はどうであれ、結果として「歌謡曲側」の最後の牙城のような立場にいました。

この、"ROYAL STRAIGHT FLUSH"は、ソロになった1972年から1979年までに出した多くのシングル曲の中から、大ヒットと言われる曲だけを並べたもの。タイトルは当然、ポーカーでAと絵札を同じマークで全部揃えた最強の手のこと、でしょう。これさえ買っておけば、あとはiTunesで"TOKIO"と「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」を200円ずつ出して補えば、だいたい満足なんじゃないでしょうか?私の好みでは「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」も加えたいところです。

前回、山本リンダのところで書きましたが、「勝手にしやがれ」以降しばらくの間、沢田研二も曲ごとに衣装を決めて、それを常に着て唄っていました。西城秀樹もその少し前に似たようなことをやっていましたが、沢田研二の方が長い期間徹底してやっていたように記憶しています。前回これを「コスプレ歌謡」と便宜上呼ぶことにしたのですが、その裏方に常に阿久悠がいたのはなにか意味があるのだと思います。

これも前回、1973年の歌謡曲を聴く中で、そろそろこの時期から芝居っ気たっぷりの歌謡曲は、聴く側に取って過剰なものと感じられるようになったと思う、という話をしました。
それから5年経って、ソロ・シンガー沢田研二が活躍した70年代の後半以降になると、かたや音程もおぼつかないアイドル歌手が、こなた自作の曲に生の思いをぶつけるように唄うフォーク(ニューミュージック)がすっかりその陣地を広げていました。そんな中でプロの作詞家である阿久悠は、歌手に架空のキャラクターを割り当て、シリーズ化するというやり方で対抗していました。
その最初の成功例が山本リンダ(=セクシーな女王様というキャラ)であり、さらに大成功を収めたのがピンクレディーです。
ピンクレディーは、最初はパンチラお色気路線だったのを、子どもたちがすぐに飛びついたので「お色気」は捨て、SF、オカルト、おとぎ話の方向に展開していきました。

一方その頃、沢田研二は「当代一のいい男」でした。今で言うと木村拓哉みたいなものです。系統も同じ「雨に濡れた子犬系」。そんな彼に阿久悠はどんなキャラクターを設定したでしょうか?そんな興味を持ちつつ、中身を聴いてみたいと思います。
ベスト盤というと、年代順に並んでいることが多いのですが、このアルバムでは制作側の意図で曲順が変えられています。

M1.カサブランカ・ダンディ
イントロで、ジーンズに挟んだ携帯用ボトルのバーボン(たぶん)を口に含み、霧を吹きながら歌った曲。ドラムス、パーカッション、ギター、ピアノ、ベースというシンプルなバンドサウンド。そういえば、沢田研二は70年代の前半から、歌謡番組でも自分専用のバンド(井上堯之バンド)をバックに唄っていました。そのスタイルは一部で「(いい意味も悪い意味も無く)歌謡ロック」といわれました。それを参考にして「今の一般的な日本人が受け入れられる限界はこれだ」と戦略を練った上で派手な楽曲を唄い始めたのがアン・ルイスです。沢田研二のサウンドの基本はこのバンド形態にあり、あとは曲の要請によってブラスやストリングスが重ねられています。

M2.ダーリング
セーラー服(本来の、水兵さんの格好)で唄った曲。
M1のバンドにサックスが加わって、後のチェッカーズの音(「ジュリアに傷心」あたりの)になっています。沢田研二の歌唱法の特徴がいろいろと確認できる曲です。「むけてくれえ〜」の低音部の喉を絞めたような発声、キメの「ダーリーン」のロングトーンでの音程が狂いそうで踏みとどまるところの危うさ。細かいことは分かりませんが、特にこの曲ではピッチのアジャストがいい加減です。しかし、それがちゃんと味になっているし、下手とは言えない、絶妙な粗さになっています。

M3.サムライ
青緑っぽいぴたぴたしたシースルーの、後のビジュアル系の人が着ていたような衣装にちっちゃい刀を持って唄っていました。死んだ父は「見るのも嫌だ」と言って、本気で怒っていました(西城秀樹が「ジャガー」を唄っていた時も大変だった)。それだけインパクトがあったんですな。演奏時間が5分を越える、当時の歌謡曲としては例外的に尺が長い曲。

M4.憎みきれないろくでなし
洋ピン(外国人モデルのセクシーなピンナップ写真)のモデルが警官のコスプレをしているような格好で唄っていました。アメリカ警察の制帽にノースリーブの白いシャツと黒いレザーパンツだったんじゃないかな?化粧もちょっと女装風だったと思う。こちらはM1のバンドにブラスセクションが加わっていますね。

M5.勝手にしやがれ
曲の基本はいつものバンドサウンドですが、いつになく厚めのストリングスとブラスが重なっています。
私は元ネタを知らないのですが、伝聞&Wikipediaの記事等で勉強したことを総合すると、直接のタイトルはフランス映画からの拝借。その映画の内容も合わせ、全体がハンフリー・ボガードへのオマージュになっているようです。「いったきりなら」のところで客席に投げる帽子もボギー風。
実は、阿久悠が沢田研二に設定したキャラクターは「ハンフリー・ボガードを気取る二枚目」なのです。後でまとめます。

M6.ヤマトより愛をこめて
僕は見ていませんが、同級生が夏休みに見に行って、みんな泣いて帰って来た「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」のエンディングテーマ。
記憶が曖昧ですが、この曲にもデスラー総統風のマント付き専用衣装があったような気がします。タイトルはボギーから離れて、より大衆的な「007シリーズ」になりましたが、深追いはしません。
バンドサウンドにストリングスが厚く被っています。イントロのピアノとエレキギターのユニゾンのあたりに、「僕の基本はロックサウンド」という拘りを感じます。

M7.時の過ぎゆくままに
これはコスプレシリーズになる前、1975年の作品です。たしか沢田研二が三億円事件の犯人で、時効まであとわずかという、現実とリンクした設定の連続ドラマの主題歌でした。このドラマは(子どもだったので)見ませんでしたが、この曲は本当に流行ってたなあという記憶があります。
タイトルは「カサブランカ」のテーマ曲"As Time Goes By"からか。実は、この「カサブランカ」がその後大きな意味を持って行きました。

M8.危険なふたり
ソロになって最初の大ヒットです。これも年上の女性が相手ですが、不倫ではないかも。いずれにせよ若い頃の沢田研二はこういう、年上の女性に愛されるタイプの色気で勝負していたということです。イントロのブラス、伴奏でのオルガンがかっきり裏拍でコードを弾いているのを拾って聴いていると面白いですよ。
「わかーれーるつもーりー じゃじゃっじゃーん」で片足を上げるところを、後に石野真子が「ジュリーがライバル」でパロディにしていました。この頃の大ヒット曲っていうのは本当に浸透力があって、そういうネタに誰でも反応できたから素晴らしい。娯楽が少ない時代でしたからね。

M9.追憶
M8とM7の間の時期に発売された曲です。いつになくオーケストラが分厚く、このアルバムの中でもサウンド的にはちょっと異質です。
この曲については、とくに雰囲気重視な唄い方で、ピッチとかかなり怪しいです。
沢田研二にはなぜかフランスのイメージがあって、相手の名前がカタカナでもあまり滑稽な感じにならないのが強みです。ニーナってのはなに人でしょうか?彼女も人妻でしょうか?

M10.許されない愛
このアルバムの中では、もっとも古い曲になります(1972年)。
印象的なブラスが入っているのはシカゴの影響?オルガンもアタックが強めで、当時思いつくロックサウンドを追究したんでしょうか?
沢田研二は声をあまり作らずに唄うタイプの歌手で、この唄い方でよく声が保つなあと感心します。喉が強いんでしょうね。最後に出てくる最高音のGはかなりしんどく、ショーケンみたいになっていますが、ギリギリ踏みとどまって味にしています。この曲も人妻との恋愛を唄っています。

M11.あなたに今夜はワインをふりかけ
M3「サムライ」のB面の曲。おそらくコンサート等で人気が高い曲だったのでしょうね。あと、CMにも使われていたような気がします。出だしがキャッチーで、CMでもここが使われましたが、アイデアがそこにしかなくて全体を聴くとちょっと平凡。この曲が入っている代わりに「コバルトの季節の中で」という佳曲が入ってないのがちょっと不思議です。

M12.LOVE(抱きしめたい)
前年のレコード大賞に続き、狙いを最優秀歌唱賞と紅白のトリに絞って出して、それを実現した曲。
沢田研二が最優秀歌唱賞的歌手であるかというと、疑問なところもあります。もともとレコード大賞などが成立した頃の歌謡曲で推奨される唄い方(大先生の指導のもと修行を積み、作曲家の指定に忠実に歌い続けること)とは違います。沢田研二の場合、まずは自分の外見や声によるセックスアピールがあってこその歌手であり、それを曲げてまで楽曲に殉ずることはしません。また、ファンもそれを望んでいます。やっぱり大衆音楽とは、歌い手のキャラクターが重要ということが改めて認識され、その認識の中での歌唱賞ってことなのでしょうか?
さて、この「LOVE(抱きしめたい)」の歌詞の内容は、M10やM7と同様、年上の人妻との恋愛ですが、ジュリーも大人になって、ただ「辛抱たまらん!」と破滅型の恋愛をするだけでなく、相手の立場とか収拾のつけかたにも思いを馳せるようになっています。

さて、こうして全曲を聴いてみました。
この中で沢田研二が演じている男は何人いたでしょうか?
1.年上の人妻と恋に落ち、思い悩みつつ関係を続けてしまう若いイケメン=本来のキャラクターに近い
(M7,M8,M10,M12)
2.ハードボイルドを気取り、去って行く女に背を向ける男(後に落ちぶれる?)=阿久悠が仕掛けたキャラ
(M1,M3,M5,M12は1と2の統合でしょう)
3.外国人女性と恋愛する、グローバルな(?)二枚目=虚像としてのジュリーのイメージ
(M9,ひょっとしてM3も。相手がジェニーだから。全部源氏名だったらちょっとイヤだが)
4.無邪気なスケベ
(M2,M11,M4は女性の視点だが相手の男はこれ)
※M6は映画主題歌なので、別モノと考えます。

そのうち、M8、M9、M10は阿久悠の作詞ではありません。つまり阿久悠が担当する以前の作詞家は、若くてセクシーな沢田研二本人のキャラクターをそのまま膨らましていったのに対して、阿久悠には「ジュリーを大人の男、沢田研二にしよう」という意思があったものと思います。そのつもりで俺に発注したんだろ、と。
そこでまず、M7でそれ以前の作品でつき合ってきた女性との退廃的な恋愛を総括します。相手も不倫で疲れ果てているし、もうこの若いジュリーは心中でもして死んでもらおう、ということでしょう(ま、ドラマの内容に沿ってるだけなんでしょうが)。ただ、そのタイトルをハンフリー・ボガードに由来する"As Time Goes By"から拝借したことが、その後の展開に効いてきます。

そして、いよいよ本格的にジュリー大人化計画を進めるに当たって、"As Time Goes By"がヒントになり、「よし、ここからのジュリーはハンフリー・ボガードの路線で行くぞ」ということになったのだと思います。
そして「勝手にしやがれ」「サムライ」とハードボイルドな二枚目路線を演じさせ、「LOVE(抱きしめたい)」では、人妻と恋愛しつつも、相手の幸せを優先して別れを告げる、分別ある一人前の男として描きます。

ところが、最後にどんでん返しがありました。

「カサブランカ・ダンディ」では、それまでの度重なるやせ我慢に疲れた主人公が、その役目を果たせなくなってしまいます。
上のボタンをはずしたジーンズの、胴のところにポケット瓶の酒を持ち歩くだらしない男。帽子もシャツもくたびれています。そして、飲んだくれては「ボギー、アンタの時代はよかったよ」とぼやく中年(たぶん絡み酒で泣き上戸)になりました、というオチです。
だからM1の霧吹きは、M5で彼が恋人を見送った窓辺で抱いていたボトルと同様、バーボンなのだと思います。

阿久悠と沢田研二のコラボレーションによるフィクショナルな作品群はこれにて事実上終了し、この後、沢田研二は他の作詞家の曲を唄うようになります。

2008/10/11

青春歌年鑑 BEST30 '73(DISC 1)/コンピレーション

前回予告した通り、歌謡ポップス、アイドル歌謡を聴いてましょう。CDショップに行くと団塊世代をターゲットにしたようなこの手の商品がたくさん並んでいて、どれを選ぶか迷いますが、今回の話を進めるのに都合の良い1973年のベスト30を買ってきました。

この中には、ヒロミ・ヒデキ・ゴローの新御三家、3人娘と言われそうで言われなかった天地真理・小柳ルミ子・南沙織の曲、また、いよいよマーケットの中心に進出しつつあったフォーク、ロックに分類されるものも混ざっています。
ただし、フォーク、ロック系は話が広がり過ぎるので、今回は素通りして歌謡曲中心に書きます。またの機会をお楽しみに!

では、聴いていきましょうか。
M1.学生街の喫茶店/ガロ(D3-G4-A4)
微妙なところですが、一応フォーク・ロックとして素通りします。意外と歌、上手かったんですね。

M2.早春の港/南沙織(F#3-B4)
M3.色づく街/南沙織(A3-C5)
南沙織が2曲続きます。子ども心にも気になる存在でしたが、ちゃんと聴くとすごくイイ!南沙織だけで1本書きたくなりました。このまま現代のJ-POP界に連れて来ても違和感がないモダンさがあります。作曲は両方とも筒美京平。この湿り気のないカラッとした、でも色気がある声は貴重です。「早春の港」の歌詞を現代のリアルさで書き直すと「強く儚い者たち」にならないか?ならないか。
南沙織についてはDISC 2にも入ってますから、また書きます。

M4.心の旅/チューリップ(D3-F4)
これも今日は素通りします。他の曲と質感が全く違うところだけ覚えておきましょう。

M5.恋する夏の日/天地真理(C4-C5)
出た!80年代まで続いた、日本ならではのいわゆる「アイドル歌手」直接の元祖です。近所にいるような女の子を連れてきて、素人に毛が生えたレベルの歌を唄わせて、それが商品として成り立つということを皆に認識させた人。地声を使わない発声は、一応音楽学校で訓練された名残なのでしょうが、後で出てくる宝塚の優等生、小柳ルミ子とのレベルの違いはすごいものです。

M6.赤い風船/浅田美代子(A3-D5)
天地真理が切り開いた地平は、浅田美代子によって更に広がりをみせます。つまり、レコードとは音が出るブロマイドであり、歌がうまいとかへたとかは関係なく、とにかく浅田美代子の顔が付いている商品であればちゃんと流通することが分かったのです。
浅田美代子自身は素人時代はそこそこ歌がうまいと言われていたそうです。覚えた歌はある程度再現できる音感はありますが、声が弱いのですね。幸いなことに弱いけれども耳障りなところがないので、世間にも許容されました。この後、風吹ジュンや能瀬慶子など、唄うと不協和音が発生するような人もレコードを出すようになり、アイドル歌謡はさらにアナーキーになっていきます。
「赤い風船」では、サビの前半は自分の声のダブルで録音していますが、自分の声どうしなのに結構ばらつきがあるのが愛嬌。サビ後半は歌のうまいコーラスの女性にハモってもらい保たせています。あ、これも筒美京平作品です。

M7.若葉のささやき/天地真理(A#3-C#5)
天地真理のこの頃の作品は森田公一作曲が多かったのですね。M5が1オクターブかっきり、この曲は下に1音、上に半音広げていますが、この辺が天地真理の使えるギリギリなんでしょうか?申し遅れましたが、今回、歌手名の横に入っている(A#4-C#5)というのは、手元のEZ-EGで音をとった各曲の音域です。たまに3段階になっているのは上を地声の上限とファルセットの上限に分けました。ま、なにかの参考になるかと思って…。

M8.裸のビーナス/郷ひろみ(D3-F4)
初期の郷ひろみの中では抜群にいいと思います。半音階を多用したメロディ自体が楽しい。しかも無伴奏でも唄える親しみやすさをきちんと残しています。郷ひろみの声は、それまでの男性歌手にはあまり例のない中性的なものでした。だからデビュー曲が「男の子(?)女の子(?)」だったわけですが、声は不思議ですが音感は悪くない。大人が描くアイドル歌手の、悪い見本みたいに思われていましたが、それは本人の記号性(っていうのかな)が高かっただけで、レベルが低かったわけではないと思います。実際息の長い芸能人としてずっと残っていますからね。

M9.草原の輝き/アグネス・チャン(D#4-D#5)
いきさつはよく知りませんが香港からやってきたアイドルがアグネス・チャン。向こうではシンガー・ソングライターだった、というふれこみでしたが、日本では平尾昌晃の曲を歌っています。突然売れる外国人歌手というのがときどきいますが、おそらくアグネス・チャンが狙っていたのはベッツィ&クリス的なフォークソングのイメージだと思います。この人のすごいところは、来日してすぐのこの時点から現在まで、唄い方も日本語のたどたどしさも全く変わらないことです。ちりめんビブラートは歌謡曲的には気になるが、洋物のフォーク系シンガーにはあるように思いますし、癒し効果の高い声であることも否定しません。

M10.個人授業/フィンガー5(C4-F5)
沖縄出身の兄弟5人組。中心的スターは日本のマイケル・ジャクソンこと晃です。メジャーな歌謡曲の中で「イェーイェイェイェー」とフェイク部分をレコードに入れていた例は多分とても少ないと思います。フレーズは単純ですが、彼がそれなりに早熟の天才だったことは間違いないのだと思います。変声期前の子どもが、こまっしゃくれたサングラスをかけ、グラマーな学校の先生に恋をしたと唄う姿は、当時の中年以上の人たちには宇宙人のように見えたことでしょう。私の父なんかは、見ていたTVに彼らが出てくるとトイレに逃げたり、別の番組に変えようとしました。
作詞作曲は阿久悠と都倉俊一。彼らはフィンガー5と山本リンダでこの手のコスプレ歌謡(このブログでは便宜上この言葉を使います)のノウハウを蓄積してピンクレディーにつなげて行きました。

M11.君の誕生日/ガロ(B2-F4)
歌のうまいフォーリーブスという感じ。ハモリの難易度が高いなあ。詳細略。

M12.赤とんぼの唄/あのねのね(E3-E4)
これもジャンル違いで詳細略です。数年前のNHKTVで、本人たちが字幕付きで唄っているのを見ました。いい時代になったなあ。

M13.春のおとずれ/小柳ルミ子(A4-C#5)
音楽学校で鍛えた後で歌謡曲を唄うとこうなります、という見本。演歌のセンセイのところで育った人たちほど歌の中で芝居をしていませんが、とりあえず「あたしの声を聴けー」という唄い方。
歌詞とメロディが
「きこえて、きたのよ、とても、あかるく
しあわせなくせに、なぜなけてくるの」
と作られているところを
「きこえて、きたのよ、とても、あかるくーうしあわせな、」
とつなげて余裕を見せたりしています。
前年に「瀬戸の花嫁」という国民的大ヒット曲を生んでおり、それをもう一回やってみた、という曲でしょう。

M14.他人の関係/金井克子(A4-A#5)
金井克子は由美かおる等と同じ西野バレエ団出身。歌はうまくないですが、男性コーラスを従えて不思議な振り付けで唄うパフォーマンスが受け、人気になりました。歌謡曲というジャンルは突然変な曲が生まれて、そのまま大ヒットしてしまうことがあります。作曲はちあきなおみのところでも出てきた川口真。バックの伴奏が都会的なジャズっぽい演奏なのに、コーラスは単純なので、当時の忘年会等ではネタとして重宝されただろうと想像されます。
全編本人の声をダブらせて、エコーをかけていて、細かいニュアンスを伝えるような表現をする気は毛頭ないですよ、というプロデュース。その点についてはPerfumeの先輩と言っていいかも。

M15.そして、神戸/内山田洋とクールファイブ(B2-G4)
うまい・へた問題で蒸し返すと、前川清という人をどう評価したら良いのか、私は分かりません。声は間違いなく良い。音域も広い。しかもこの曲をしつこく聴くと、いろんな声の出し方をしています。出だしや「みじめになるだけえええー」での「いかにも前川清」な大きなビブラートはもちろん、「ないてどうなるのか」では杉良太郎風の鼻にかけた不良っぽい声、「あいてーさがすのーよー」では泣き節というかヨーデル寸前の声の変化を見せていて、つまり七色の声を使い分ける器用な歌手と言えないことは無い。でもトータルの印象は「なんでこの人はこんなに武骨に唄うんだろう?」と思わされるんです。
全てが計算なのか天然なのか?TV画面で見られるそのキャラクターも含め、正体が分からない人です。

DISC 2に続く。

2008/10/03

逢いたくて逢いたくて/園まり

ディープな歌謡曲のさらに最深部を目指して進んでいます。

Wikipediaによると、この曲は1966年発売。私が3歳の頃の歌です。私の記憶に残っている歌謡曲の中では最も古いもののうちの一つです。園まりは渡辺プロ所属の「三人娘」の一人。
アメリカン・ポップスが得意な中尾ミエや、竹内まりやに似た(ゆえにカレン・カーペンターにも似ている)モダンさを持つ伊東ゆかりに対して、「ムード歌謡」の真ん真ん中を行ったのが園まりです。

歌謡曲自体がジャンルとして特定し難いのに、サブジャンルの「ムード歌謡」と言われると、なにがなんだか分からなくなりますが、乱暴に要約すると、外国曲風のカラオケ(ジャズまたはラテン系)にのせて唄う演歌のようなものです。

園まりはiTMSでもダウンロードすることができます。代表曲の「逢いたくて逢いたくて」を聴いてみましょう。
園まり - 歌が唄いたい!! ベストヒット&カラオケ 園まり - 逢いたくて逢いたくて

なんとまあ、とため息が出るような声です。20歳そこそこの女の子が、こんな声で唄ったら、そりゃオジサンは堪りませんわ。クラシックに行きかけて途中でやめた感じの声です。男だと布施明に相当するのでしょうか?
この発声の後継者は、現代のJ-POPにはちょっと見当たりません。強いて似ている人を探すと、演歌の大月みやこ?
園まりは渡辺プロお得意の「丸顔女子大生風」アイドルの始祖でもあります(この後、あべ静江→田中好子→太田裕美→石川ひとみ→河合その子→中川翔子と続く)。

ちあきなおみの時にしつこくやりましたが、園まりももの凄く丁寧にこの曲を吹き込んで(レコーディングで唄うことの昭和的表現)いるのが分かります。
「ふたりはこいびと」の箇所では、
「ふーたりぃはこいびぃぃっとーぉぉぉ」と唄っています。
この「っとーぉぉぉ」の微妙なタメがこの曲における園まりの芸です。この曲ははねた4ビートで、1拍が3分割されていますが、普通の作曲法だと「こいびと」の「と」は小節の1拍目頭に置かれているはずですが、園まりは3連音符2つ分ためてから「と」と唄います。
(普通)
[ふーた|りーは|こーい|びーい][とーー|ーーー|ーーー|ーーv]
(園まり)
[ふーた|りぃは|こーい|びぃぃ][×っと|ーーー|ーーぉ|おおv]
この3連音符何個分かタメるというのは、この曲の中で何カ所か意識的に行われています。松尾和子などに先例があると思われますが、園まりは元々の声質がノーブルなので、下世話にならないという美点があります。

また、ぱっと聴くと、ちりめんビブラート(ロングトーンの最初から最後まで細かいビブラートが一面にかかる。悪口)かと思いますが、ビブラートをかける音符、まっすぐ伸ばす音符がしっかり区別されているのが分かります。1〜3番まで、キメ方にぶれが無いですから。

作曲は私も尊敬する宮川泰。もともとはザ・ピーナッツ用の曲だったとのこと。あの方の芸風(?)を思うと、「とにかく色っぽくやってよ、まりちゃん!」みたいな指導だったのではないかという気も半分はするのですが、音符はしっかり書き込んでいたんだろうなと思わせます。この、作者による細かい指定を忠実に何度も再現する、というのが演歌を含めた「歌謡曲」の芸です。この点ではクラシック音楽にも共通していますし、日本の伝統芸とも矛盾がありません。
「まずはセンセイのやった通りに再現することを目指す」
「少なくても形式上はセンセイの完全コピーができることが前提で、そこから熟成して自分の色を出す」
歌謡曲は、そんな日本の伝統芸能や、ファインアートとしてのクラシックに憬れつつも、産業として開発スピードが要求されますし、若年層への販売を考えると商品としての歌手も、若くてカワイイことが重要なフックになってきます。

そして、学生運動などの流れを通り過ぎ、「個性重視」とか「形式主義への軽蔑」などの気分が国民に共有されたところで、曲の解釈よりも歌い手のパーソナリティや声質などのアピールが優先された「歌謡ポップス」、「アイドル歌謡」が普及します。次回はその辺の話をしたいと思います。

2008/09/28

よこはま・たそがれ(他3曲)/五木ひろし

ディープな歌謡曲の世界を旅しております。
その中でもラスボス級の大物である五木ひろしを聴いてみたいと思います。アルバム1枚とか聴くのはちょっと大変なので、比較的前期に属する4曲を聴きます。「よこはま・たそがれ」「夜空」、それに事務所独立後の勝負曲だった「おまえとふたり」、レコード大賞受賞曲の「長良川演歌」です。ついでに言うと、「おまえとふたり」以降の作品はみんな同じだと思っているんですよね、私は(ファンの人からは説教されるでしょうね)。

五木ひろしはヒット曲の数、受賞歴、業界での位置づけなど、どれをとっても押しも押されぬ大スタアです。しかもぽっと出で売れたんじゃなくて、今の名前になるまでに何度も芸名を変え、レコード会社を代わり、と下積みの苦労を知っているのも本物っぽいところです。
では、実際どんなものなのか、聴いてみましょう。

1.よこはま・たそがれ
作詞 山口洋子/作曲 平尾昌晃
山口洋子の歌詞は、「あの人は行ってしまった」以外はすべて単語の羅列という画期的なもの。コラージュという手法は絵画が元だと思いますが、そこから音楽、文学でも同様な表現があり、この歌詞もその一つ。曲は演歌の中ではモダンな8ビートの中に、サビでの跳躍などテクニックと音域が必要なもの。当時の歌謡曲ど真ん中の作家がかなり集中して作ったと思われる作品です。そんな作品を「うた」として社会に広く届けるというのが再デビューに賭ける若き五木ひろしへの課題だったというわけです。
実際に聴いてみると、今私たちの頭の中にある五木ひろしの唄い方よりもずっと熱唱していますね。その中でも小節をきかせる部分とロングトーンの使い分け、サビの部分でさりげなくファルセットを混ぜるところなど、高度なテクニックを駆使しています。今では完全に封印していますが、この人はモノマネがもの凄く巧く、家には一生使い切れないほどの象印電子ジャーと魔法瓶が在庫されているはずです。
五木ひろし - 五木ひろし 配信限定ベスト 其の一 - EP - よこはま・たそがれ

2.夜空
作詞作曲は1と同じです。
当時小学生だった私にもとても分かりやすいいい歌でした。この間、ジェロのカバーも聴きました。声質とハリは甲乙付け難い。違うのは五木ひろしには押しと引きを感じますが、ジェロの方はバックが分厚い分、引きが使えていないので、歌唱としてのメリハリは五木ひろしに軍配か?「さみしいさみしい」の芝居っけを巧いと見るか、クドいと見るかで好き嫌いが別れるでしょうか。
五木ひろし - 五木ひろし 配信限定ベスト 其の三 - EP - 夜空

3.おまえとふたり
作詞 たかたかし/作曲 木村好夫
木村好夫はギタリストとしてアルバムをたくさん出している有名な人で、クラシックギターを習ったことがある人にはお馴染みの名前です。このギター演歌が成功したことで以降の五木ひろしはこの手のナンバーが多くなってしまいました。唄い方も今の唄い方であり、モノマネの人が真似するいわゆる五木風の唄い方になっています。声を張りすぎない、コントロール重視の唄い方。歌のメロディに寄り添うように木村好夫のギターが絡み、これはこれで芸術性が高いとは言えますが、女声コーラスのダサさなんかはJ-POP世代には許せない感じもします。ただただおとなしく唄っているように聴こえますが、やんちゃな巻き舌を使ったり鼻濁音もわりといい加減。これは意識してそういう部分を作っているのか、大物になったがゆえの手抜きなのかは、もう素人では聞き分けられないのでした。
五木ひろし - 五木ひろし 配信限定ベスト 其の三 - EP - おまえとふたり

4.長良川艶歌
作詞 石本美由起/作曲:岡千秋
「奥飛騨慕情」などのド艶歌復権の兆しが見られた80年代前半にロングヒットした曲です。この頃はもう、私には全く興味のない音楽になっていましたが、世間の評判はよく、レコード大賞をとったりしています。
格調高い琴の音から始まって、すぐにいつものイントロに切り替わって、そこから先はほぼ奥飛騨慕情です。岐阜県在住の女性が鵜飼の季節に出張かなんかで訪れた男性と一晩過ごしてそれっきり別れました、という話を3コーラス分の歌詞を作ってメロディをつけた、という曲です。全てが紋切り型で、この歌を聴いたからといって人生が変わったりは絶対にしないと思います。それを五木ひろしが歌唱テクニックを駆使して「なんだか分からないけどすごいもの」に仕立てています。一部の実力と人気のある歌手がこういうことをしてやるから、演歌を作るセンセイたちは楽ばっかりして、全体が下火になったんだと思うんですが、違いますかね。
五木ひろし - 五木ひろし 配信限定ベスト 其の四 - EP - 長良川艶歌

五木ひろしは男性歌手のなかでも相当緻密にコントロールされた唄い方をする人だと思います。ちあきなおみと並べて聴いても、ちあきなおみの方が自由度は高いような気がしますが、奥行きの深さにおいては互角。ただ、シンガー・ソングライター系の歌唱に慣れている私のようなタイプの聴き手は、「もっと頑張って唄えよ」と思ってしまいます。実際には頑張っていないのではなくて、自分の声に溺れず、常にベストの歌唱を届けるための高度に制御された唄い方をしているのだということだけは良く分かりました。
また、男の私の耳にはこの人の声は「ごく普通のまあまあいい声」にしか聴こえないのですが、おばさまたちの熱狂を見るに、女性にとっては、下半身を揺さぶられるようなセクシーな声に聴こえているのかもしれません。

2008/09/21

しんぐるこれくしょん/ちあきなおみ

さて、太田裕美で免疫力を回復したところで、いよいよディープな歌謡曲の世界に入りましょう。
テキストはちあきなおみです。

ダンナさんが亡くなって以来、芸能活動を止めてしまったので、今はもうNHKの懐メロ番組にも出てきてくれません。
キャリアの後半では「紅とんぼ」など船村徹作品での印象が強いので、「演歌歌手」と思っている人がいるかもしれませんが、本人はそんなつもりは無いと思います。余談ですが、この「しんぐるこれくしょん(何で平仮名なんだ?)」は、コロムビアレコード在籍時のものなので、「紅とんぼ」は入っていません。テイチク版も探してこないといけませんね。
ちあきなおみは昭和40年代の歌謡曲の良心と言ってよく、今の若い人が彼女やザ・ピーナッツを聴く機会がないことを残念に思います。

ちあきなおみは歌謡曲時代の歌手に要求されるほとんど全てを持っています。
歌謡曲における歌手の役割は、「作曲家の先生」が作った歌を、いかに丁寧に録音し、ステージやTVで再現するかです。
当時の歌手は、まず、これはと思う作曲家に「弟子入り」し、子どものお守や雑巾掛けから始め、レッスンを受けてデビュー。新曲ができたらその作家の家に通って、どう歌えば良いか、という綿密な打ち合わせとレッスンをしてレコーディングしていたようです。

最近はあまり見かけませんが、ちょっと前までは素人に歌を唄わせて、プロの作曲家がそれにダメだしするTV番組が結構ありました。そこで作曲家の大先生はこんなことを言います。
「こんやもきてきが、きてきが、きてきが」と3回ありますが、その3回には違った意味合いがあるのでそれを表現しないといけません」とか、
「なみだ、なみだ、なみだ、なみだ、なみだかれても、の5回のなみだは全部違うんですよ。歌は3分間のドラマです」
まるで禅問答です。今だったら、「じゃあ、3回目のなみだの時にアホになります」とか言い返しちゃいそうです。

ちあきなおみは「3分間のドラマ」を忠実に、しかもとても上手にやっています。彼女は後にちょっとコメディエンヌ風な女優の仕事をたくさんやりますが、彼女に取ってはドラマの台本も曲の譜面も同じようなものだったのではないかと思います。

歌手としてのちあきなおみは声質、声量、音域とも非常にすぐれた楽器であり、それは当時のポピュラーミュージックの範疇にある曲であれば、自在に唄いこなせるレンジの広さがありました。そしてハスキーまでいかないが、ちょっとホワイトノイズが乗っかったような深い声を持っています。
また、その演奏能力もすこぶる高度です。広瀬香美のときにしつこく書きましたが、ビブラートをどうかけるか?音程をどこできっちり合わせて、どこに破調を作るか?ということをきっちり計算しています。

ルックスは美人とはいえませんが、デビューが遅かったこともあって、出てきた時にはもうお色気系での勝負もいける、というキャラクターでした。

では、聴いてみましょう。

Disc1

M1.雨にぬれた慕情
デビュー曲です。作曲は彼女の師匠である鈴木淳。バックはジャズコンボ風で、特にピアノがジャズっぽいですね。この半年前にいしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」が大ヒットしています(作曲は筒美京平)。多分意識していると思うのですが、徹底してノン・ビブラートで唄っていて、気持ち鼻にかけていますが、これはいしだあゆみの唄い方(いしだあゆみはこの唄い方しかできない)です。

M2.朝がくるまえに
これもM1とほぼ同じものです。前年に大ヒットしたピンキラの「恋の季節」に似せてあります(もう、断定しちゃう!)。

M4.四つのお願い
彼女の最初のヒット曲です。いしだあゆみより色気があるんだから、それを使おうということか、ビブラートを使うようになりました(できるのに封印していた)。サビの「ひみつにしてねー」のロングトーンはビブラートはかけず、抜きのところでわざとダウングリッサンド(1オクターブ下に向かって声を下げる)しています。

M5.X+Y=Love
前作のヒットをどうつなげて行くかを、作家側が一所懸命考えて作られたと思われ、タイトルからして凝りに凝っています。細かいことですが、英語部分の譜割りが日本語的なのを、彼女なりにせいいっぱい抵抗して、"I love you"を英語風に3音節で唄おうと頑張っています。

M7.無駄な抵抗やめましょう
後に演歌も唄うようになる萌芽が見られます。このころはまだ「お座敷ソング」といって、芸者の格好をした年齢不詳のおばちゃん(実は戦前から唄ってたりする)が、ちょっと色っぽい歌を舞い踊るという歌謡曲のジャンルがありました。ちあきなおみの水商売っぽい雰囲気を使ってみたのでしょう。

M8.私という女
五木ひろしの「待っている女」によく似てるなあ、と思いましたが。こっちが1年先でした。こういうフォービートっぽいのがこのころ流行っていたんでしょうね。元ネタはなんだろう?この曲で年季が明けたのか、鈴木淳作曲作品としては最後のシングル曲です。

M9.しのび逢う恋
これはヨーロピアンな雰囲気でカッコいいですね。ちょっと変えれば竹内まりやが唄ってもおかしくないです。作曲は「バラが咲いた」で有名な浜口庫之助。

M10.今日で終って
これも70年代後半にニューミュージック系で似たようなことをやっている人がいました。具体的には「水鏡」とかに近いですね。

M13.喝采
レコード大賞受賞の名曲。作曲は中村泰士。エレキギターのトレモロは最近流行らないけれど、アコースティックギターのカッティングとかは今聴いてもカッコいいと思います。「ほそいかゲなガくおとして」の鼻濁音、ロングトーンでの声量のコントロールなど、他の曲もそうなんですが、もの凄く丁寧に唄っています。

Disc2

M1.夜間飛行
途中でフランス語の機内アナウンスが入るのは初めて気がつきました。バックの楽器の音を差し替えたら、今でも通用すると思います。このスケールの曲が実は3分29秒しかない。昔は良かったなあ!

M3.円舞曲
「円舞曲」と書いて平仮名で「わるつ」とルビが振ってあります。作詞は阿久悠。曲は川口真です。前半は演歌調でサビはやや洋楽風になります。ちあきなおみのナンバーを、マトリクスを作って説明する時には、この曲が真ん中あたりに来るのかなあ。

M4.かなしみ模様
打って変わってこちらは外国の有名曲によく似ています。思い出せませんが、絶対こんな曲がありました。川口真って人のことはあまり良く知りませんが、面白いことするなあ。

M5.花吹雪
都倉俊一が作曲しています。「里の秋」に似た文部省唱歌っぽい爽やかなメロディを堂々と唄っています。ところが歌詞をみるとストーリーが「?」。十歳くらい年下の大学生に入れあげて、物心ともに支えていた地方都市の飲み屋のママが、その大学生の卒業を期に店じまいする、という解釈で良いんでしょうか?大人の歌の世界は難しいなあ、四十過ぎても読み取れない。

M6.恋慕夜曲
一転して作曲家に浜圭介を起用しています。これはもう完全に演歌です。もちろん、ちあきなおみは完璧に唄いこなしています。それまでの曲で使っていない、裏声になってから細く消えて行くようなビブラート。森昌子なんかが得意にしている唄い方ですが、そういうのも自由自在にやります。

M7.さだめ川
出た。ついに船村徹作品です。
ちあきなおみは演歌歌手に収まりきる人ではないのですが、船村徹の曲を歌わせると本当にうまいです。ここで、「さーだめがーわー」の唄い回しをじっくり聴いてください。「さーだめーがぁぁぁわーぁぁあーあ」と、ビブラートを細かくして抜いて行くのかと思わせておいて、もう一度力を入れ直してビブラートをやめてから、また抜く、という複雑なことをやっています。1番から3番まで全部やっているので、これはわざとです。そのことによって何を表そうとしているのか?音符の指定まできっちり伸ばしたい、とかいうことなのか?美空ひばりあたりになにか似た例があるのかもしれませんが、ちょっと私の知識では分かりません。でも、なにかを表現しようとしているのです。

M8.恋挽歌
こちらは浜圭介作品。浜圭介は演歌を得意にする作曲家の中では、チャレンジ精神というか実験精神みたいなものが旺盛で、佳い曲をたくさん書いている人ですが、ことちあきなおみ用の作品については、彼女の能力を使い切るほどの曲は提供できてないように思います。

M10.酒場川
これはもう、船村徹による古賀メロディでしょうね。「悲しい酒」をちあきなおみでやってみた、ということだと思います。

M11.ルージュ
ここで中島みゆき作品が出てきます。ちあきなおみはコロムビアから移籍した後、シャンソンやファド、ニューミュージック系のカバーなどをやっていますが、そのとっかかりに中島みゆきがいるというのは分かりやすいです。中島みゆきの歌を唄うと、どの歌手も中島みゆきに唄い方が影響されます(研ナオコ、桜田淳子、TOKIO)が、この曲でのちあきなおみの脱力した唄い方(特にAメロ部分)もそのひとつかと思います。これほど完成された歌手に影響を与える中島みゆき恐るべし、なのか?または、ポプコン出身のシンガー・ソングライターからも歌唱法を取り入れる、ちあきなおみの芸への執着を読み取るべきなのか?

M12.夜へ急ぐ人
出たァ!有名な「おいでおいで」の歌です。大ヒットはしなかったと思うのですが、唄っているところをTVで見た人はその晩から3日連続で悪夢を見、一生その映像が忘れられなくなる、という恐ろしい曲。CDだと割と平気ですが、ヘッドホンで聴くのは止めた方がいいかも。この頃、ちあきなおみはこんな感じの恐ろしげなナンバーばかりが並ぶ物騒なアルバムを出していたと思います。彼女はこの辺で、レコードセールスに関する競争から卒業し、アーティストとしての高みを目指す方向に踏み出したのだと思います。

M14.矢切の渡し
細川たかしが唄ってレコード大賞を取った曲ですが、元はM10のB面に入っていた曲。これも船村徹の作曲です。「つれてにげてよ」が女のセリフで「ついておいでよ」が男のセリフ。ちあきなおみはちゃんと女役と男役で声の出し方を変え、「歌を演じて」います。昨日の太田裕美「木綿のハンカチーフ」との違いが分かりますか?男のセリフはちょっと歌舞伎か新劇風のセリフ回し「ついて…おいで…よ」とためています。「これは、長谷川一夫先生のセリフ回しを参考にしたんですよ」なんて芸談が残っていそうです(ウソですよー)。

曲はこの後も続きますが、ちあきなおみのエッセンスはある程度書けたと思うので、以下省略して総論です。

結局、歌謡曲の神髄は「歌は3分間のドラマ」という、手垢の付いた言葉をどれだけ本気で表現しようか、ということだったのだと思います。「歌を演ずるから演歌」というのは多分誰かが言っていると思いますが、ちあきなおみがデビューした頃は、どんなジャンルに影響されていても、そいういう意味で歌謡曲=演歌だったのだと思います。
そして、ちあきなおみは歌を演ずる技術において、ちょっと突出した才能だと思います。当時、その流儀の頂点には美空ひばりという歌の怪獣がいましたが、彼女もそれに匹敵する芸の幅があります。

ちあきなおみが40年遅く生まれて、今二十歳くらいの歌手だったら、彼女はどんな歌を唄っているでしょうかね?

2008/09/20

GOLDEN☆BEST[Disc 1]/太田裕美

世界で多分数人しかいない、このブログの継続的読者の一人から、「昔の歌謡曲についてもっと書け」との希望をいただきました。

私にとって歌謡曲というのは、生まれた頃からそこにあった空気のような物で、その1曲1曲もまた、いじり様のない完成した製品として見えてしまい、今更分析したりする対象とは思えませんでした。だから、これまでほとんど触れずに来ました。

私が生まれた1960年代前半に流行っていたのは、橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦の御三家、あるいは中尾ミエ、園まりか。私はオムツをしながら電車の中で唄う子どもだったそうで、最初のレパートリーは「お座敷小唄」だったと我が家では言い伝えられています。自らの意思で唄った覚えがあるのは「星のフラメンコ」です。

また、当時はまだ美空ひばりが第一線のバリバリで、歌謡曲のど真ん中だったと思います。古賀政男とその門下生である遠藤実などが保守本流、かたや洋風の服部良一がおり、その中間あたりに吉田正など。戦前から洋風志向だった服部良一の後継として、ジャズのテイストを前面に出していた中村八大。ジャズ以外にも洋楽ポップスに明るい宮川泰。渡辺プロの全盛期であり、歌謡曲かくあるべしという形式が確立していました。

最近の分類では、古賀政男などの作品を「演歌」と呼ぶことが多いのですが、美空ひばりが自分を「演歌歌手」と称していた記憶はありません。自分が歌謡曲の真ん中なのに、あえてサブジャンルを名乗る必要を感じていたとは思えず、実際、彼女の歌の中にはマンボとかGS風のナンバーも存在しました。「演歌」という呼び方は絶滅危惧種として識別する必要が生じてから声高に叫ばれるようになったと記憶しています。

さて、そんな歌謡曲の世界にいきなり入って行くと体調を崩すかもしれませんので、体を慣らすために改めて太田裕美を聴きましょう。

太田裕美については、このブログや"はてなダイアリー「決して悪口というわけではなく」"で何度か書いていますが、ここでもう一度きちんと書いてみたいと思います。

太田裕美は、スクールメイツにも所属していましたし、事務所は当時の保守本流・渡辺プロ。「キャンディーズ」のメンバー候補でもあったそうです。最終的にスーちゃん(田中好子)と差し替えられたとか、そんな話だったと思います。アイドルグループの真ん中に置くにはルックスがちょっと弱いという(あるいは声質の問題かも?)判断があったのでしょう。
一方、彼女は音楽の学校に行っていたこともあって、ピアノが弾けたこととその声に特徴があった(実力派とは違う)ことや、デビュー年齢の問題などから、普通のアイドルとはちょっと違ったデビューの仕方をします。

それが伝説のロックバンド「はっぴいえんど」出身、新進気鋭の作詞家・松本隆の作品を弾き語りで唄うという、アーティスト志向の路線でした。前年に小坂明子が「あなた」でデビューして、TVで若い女の子がピアノを弾きながら唄うというのが新鮮なスタイルとして受けとめられていたころでした。ただ、小坂明子はルックス的にとんでもなかった(失礼!)ので、「弾き語りで唄う"カワイイ"女の子」としての太田裕美は存在意義がありました。太田裕美は早くから「作詞作曲もできる」という情報が流されていましたが、自作曲はアルバムにこっそり入っていて、TVで唄うシングルは必ず「作詞・松本隆/作曲・筒美京平」でした。自作曲のシングルはDisc1 16曲目の「ガラスの世代」が初めてです(その前に渡辺プロの後輩であるリリーズに提供した「春風の中でつかまえて」が発売されています。ヒットはしなかった、と思う)。


さて、買ってきたのは"Hiromi Ohta GOLDEN☆BEST Complete Singles Collection"という2002年に発売されたもの。Amazonで扱っている太田裕美個人名義の商品では一番売れている商品のようです。
Disc1は、デビューから休養宣言直前に発表した「恋のハーフムーン」まで。Disc2が休養宣言後のモラトリアム期に発売した「君と歩いた青春」から2001年まで。

歌謡曲へ戻って行く通り道としてはDisc1を聴くのが適当でしょう。

歌謡曲とニューミュージックには、実はほとんど音楽性の違いは無いのですが、強いて言えば歌謡曲の方が楽器の数が多い。太田裕美のカラオケも豪勢なものが多いです。つまり当時の、ビッグバンドを抱えた歌番組で再現しやすいサウンドになっているってことなんだと思います。
最近はあまり流行りませんが、ちょっと前までオッサンが5〜6人出てきて、真ん中の一人が唄い、あとの人は後ろでたまに「ワワワワー」とか「シュービルビッ」とか言ってるグループがいくつかあったでしょう?「あの人たち何やってるの?」と思いますが、あの人たちは売れてTVに出る前、キャバレーやクラブで唄っている時にはそれぞれ楽器を担当していたのです。TVに組み込まれたとたんに自分たちでは演奏できなくなったんで、あんな変なことになっちゃっていたんです。それが歌謡曲時代の歌番組のシステムだったのです。

そういう意味では太田裕美も基本的には歌謡曲のシステムから独立していたわけではありません。ただ、ビッグバンドに頼りつつもピアノに座り、自分で弾きながら唄うという姿勢は、そのピアノの音がTVから出てくる音に反映していたかどうかはさておき、小さな抵抗のひとつでありました。それは、後に歌番組でも自前のバンドで唄う(テープを回してのエアギター、エアドラムかもしれないけど)「ニューミュージックのアーティスト」たちに繋がる、蟻の一穴だったかもしれませんよ。

では、聴いていきましょう。

M1.雨だれ
全体を覆うヒスノイズに時代を感じます。
ピアノとアコースティックギターが中心ですが、イントロとサビのところで渦を巻くようなストリングスがかぶってきます。そのストリングスの渦の中で、必死なファルセットで唄う太田裕美の声を一生懸命拾って聴くうちに、「俺が守ってやらなきゃ!」とマインドコントロールされる魔性の1曲。

M2.たんぽぽ
タイトルだけ見てフォーキーな曲なのかと思うと、やはりストリングスが頑張る曲。私、この曲はちゃんと聴いたこと無かったんですが、サウンドとしては野口五郎的ですね。

M3.夕焼け
イントロの楽器はなんでしょうか?リリースのところでオクターブ下の音が加わる金属製の楽器のように聴こえるのですが、シンセサイザーはまだ使っていないと思うのです。ローズピアノの高音部をオクターブで弾いてるのかな?

M4.木綿のハンカチーフ
記録に残らず記憶に残るのが太田裕美。この曲は大ヒットでありながら、その期間はずっと「およげ!たいやきくん」が1位に居座っていたため、オリコンのベスト1になったことがないのだそうです。この曲ではもう、TVではピアノは弾いていませんでした。各コーラスの前半が都会に出て行った男の子の気持ち。後半が田舎で待っている女の子の気持ち。1975年頃は、一度東京に出て行くと、帰省もままならなかったんですね。男のセリフと女のセリフを順番に唄う、という松本隆お得意のパターンはここから始まったようです。斉藤由貴の「卒業」はこれとほぼ同じ話を、女の子の視点だけに絞って書いたものですね。

M5.赤いハイヒール
木綿のハンカチーフで田舎に残された女の子が一大決心をして東京に出てきた、というM4の続編(と思う)。今度は前半が女の子で、後半が男の子。都会に疲れた女の子に、男の子が「僕と帰ろう」と言ったことで、はっぴいえんどになりました。大ヒットを受けて、レベルを少し上げていて、私はこっちの方が曲として優れていると思う。サビの間、ずっと「とてとてとてぽよよん」と延々と引き続けるギターの人、大変そう。

M6.最後の一葉
O.ヘンリーの短編を元ネタにした難病もののストーリー。この曲はTVでもピアノを弾いて唄っていたような気がしますが、うろ覚え。2番の後のアンコ部分の後、たっぷりためて一気にフィナーレに向かうアレンジはとっても豪華。本人もだいぶ声が出るようになっていて、M1の頼りなさがかなり克服されています。この曲、録音の時はオケと同時録音したんでしょうか?カラオケだと合わせるの難しそうですね。

M7.しあわせ未満
これ大好き!ストリングスも入っているけれど、サウンドがバンドっぽくなってます。途中で転調するんだけど、無理矢理な感じが無くて、必然性があってやってる感じで趣味が良い。「もっと利口な男探せよ」っていうところでなんかじーんとする。これは全編男言葉なんだけど、太田裕美は男にならずに、登場する女の子の方になっているでしょう?後でまとめますが、これはとても不思議な表現なんですよ。

M8.恋愛遊戯
この辺から、太田裕美を年齢に即した大人にしよう、という考えが楽曲に滲んできます。アイドル歌手としてはデビューが遅かったので、比較的この大人化問題が早く出てきてしまいました。今考えると実年齢に拘りすぎたんじゃないかなあ。

M9.九月の雨
「太田裕美白書」などの文献をあさると、筒美京平は「ABBAを意識したんだけどなんか違っちゃった」ということなんですが、ABBAというより、イタリア映画の音楽みたいです。太田裕美のナンバーの中ではもっとも歌謡曲色が強い曲だと思います。オケの人数が多すぎた?スケールが大きく、3コーラスの構成ですが、3番の前半で転調&メロディも変えて一気に盛り上がります。この曲も僕の何かに引っかかっていて、毎年9月1日に車の中でラジオを聴いていると必ず耳にするのですが、その度に運転中にじわーっと来ています。「きーせつーにー」のファルセットがツボなんですよ。

M10.恋人たちの100の偽り
「九月の雨」は今となってはあまり権威が無くなった「年末の賞レース」に太田裕美なりに挑戦した曲でした。当時はTBSの(今もやってる)レコード大賞、その他の民放各社で持ち回りの「歌謡大賞」があった他、各放送局がそれぞれに音楽賞をやっていました。太田裕美はそれらに沢田研二や山口百恵らに交じって、ほぼ皆勤賞で出ていました。結局ノミネートはされても主要な賞は受賞できず、その後はその手の番組とは縁がなくなるのですが、その前後から喉の故障をおこしてファルセット部分が極端に苦しい唄い方になっていました。
この曲のサビのファルセットが自分の声でダブルにしてあるのは、その辺もあるのかな?と思います。地声部分もかなりハスキーになっていて、結局この声がその後の太田裕美の声になります。サウンド的にはまた小編成バンドよりになっていて、私はこの方が好き。

M11.失恋魔術師
あれえ?僕の知っているのとアレンジが違う?僕が知っているのは「背中あわせのランデブー」に入っている方で、イントロが「ちゃーららら、ちゃーららら、ちゃーちゃちゃっちゃちゃー、ぽわぽわぽわぽわぽわお〜ん」の方なのですが、シングルはこうだったのかしら?まだまだ知らないことがたくさんあるなあ…。この曲は例外的に作曲が吉田拓郎です。この頃、A面が吉田拓郎作曲、B面が太田裕美作曲という企画アルバムを出していて、それが前述の「背中あわせのランデブー」で、シンガー・ソングライター路線への布石を打っています。この曲もよく聴くと、メインは女の子の言葉ですが、途中で「失恋魔術師」のセリフになっています。松本隆もかなりしつこいですね。

M12.ドール
と思ったら、また歌謡曲路線のシングルになりました。このへんレコード会社がどういうつもりだったのか、知りたいですね。基本的にコアなファンが手にするアルバムはアーティスティックにして、シングルは一般大衆が手に取りやすいもの、という使い分けをしていたようです。「新譜ジャーナル」なんかも太田裕美のアルバムはちゃんとレビューを載せていましたからね。松本隆の歌詞はどんどん深くなって行くのですが、この曲でいうと、太田裕美に横浜は似合わないと思う。彼女はやはり武蔵野に置くべきでしょう。

M13.振り向けばイエスタディ
ドールまではラジオのベストテンくらいには引っかかっていたのですが、この曲あたりからは同世代でも「知らない」と言われる可能性が出てきます。アメリカで録音したアルバムからのシングルカットです。バックのコーラスとかすごい本格的ですし、ストリングスなんかも臨場感が上がっていますよね。あと、ファン的には新鮮というかショックというか、この曲ではトレードマークのファルセットを使っていません。

M14.青空の翳り
年末賞レースの代わりに(?)東京音楽祭にこの曲で参加していました。つまりアーティスト路線で行くぞ、という宣言をしたわけですね。この曲もファルセットはごくわずかで、地声を中心に歌唱力をアピールしようとしています。ニューミュージック的にいい歌なんですが、特徴が無いんだよなあ。

M15.シングルガール
そして揺り戻しの歌謡曲路線です。CBSソニーどうしということなのか、阿木燿子/宇崎竜童という百恵ちゃん用の布陣を借りて作られています。曲としては仕掛けもいっぱいあるし、良い出来だと思いますが、ちょっと本人のイメージと違う感じ。中原理恵が唄った方が似合いますね。

M16.ガラスの世代
いかにも松本隆みたいな歌詞ですが、実は作詞はちあき哲也。「木綿のハンカチーフ」の後日談的なものを…という趣向なんだと思うのですが、かなり隘路に迷い込んでいる感じがします。とはいえ、記念すべき初の本人作曲によるシングルです。

M17.南風
鳴かず飛ばずだった歌手がCMのタイアップひとつでブレイクして行く中、なぜか太田裕美はCMタイアップに縁がありませんでしたが、ようやく「キリン・オレンジ」のCMに採用されました。これで一息ついて、無事に紅白歌合戦への連続出場を5回に伸ばしました。よかったねえよかったねえ。アダルト路線もアーティスト路線もひとまず保留して、C&Wをエレキギターでやってるだけのような感じがしますが、太田裕美「中興の祖」として網倉一也の名前は一応、記憶されています。

M18.黄昏海岸
これも網倉一也作品です。こちらの方が曲としては出来が良いと思いますが…。

M19.さらばシベリア鉄道
大滝詠一が「ロング・バケイション」で大復活する直前、習作のつもりなのか太田裕美に提供したのがこの曲。ロンバケのラストにも入っていますが、「アンコール!」の後なので、おそらく太田裕美用の曲をセルフカバーしたボーナストラック、という位置づけなのだと思います。作曲が大滝詠一なので、作詞も久しぶりに松本隆で、実はこのコンビが久々に復活したのもこの曲からです。このふたりが再び手を組むときに太田裕美が接点だった、というのはちょっと誇らしい感じです。この後、1年の間で、アルバム"A LONG VACATION"の大ヒットがあって、さらに松田聖子の「風立ちぬ」が発売されているんですよ。

M20.恋のハーフムーン
「ロンバケ」ヒット御礼なのか分かりませんが、編曲も大滝詠一がやった完全なナイアガラ・サウンドでできているのがこの曲(M19の編曲は萩田光雄)です。ベースが同じ音をずーっと弾いて行くサビがカッコイイ!「いえるのぅっ」の泣き節はそれまでの太田裕美では聴いたことが無い声の使い方です。この曲、もっと評価されても良いと思うんですが、みんな忘れてるんだよなあ…。

というわけで、Disc1全曲を聴いてみました。

こないだもちょっと書いたんですが、太田裕美は、M4、M5、M7のように男言葉をしょっちゅう唄っているのですが、そのとき決して「男役」をやらないのです。坂本冬美が男の歌を歌う時は男になっているでしょう?太田裕美はあくまでもその男の子の独白の中に出てくる相手の女の子なのです。「アランドロンが好きな面食いの女の子」が太田裕美なのであって、金もないのに家事も手伝わずにうじうじしている男の子の役なんてやってないのです。この構造が嵌まるのはたぶん彼女だけで、とても不思議です。

2008/05/10

思秋期/岩崎宏美

久しぶりにiTMSの「ブラウズ」ボタンを押してJ-POPのラインナップを見ていたら、ずいぶんと懐かしい曲が揃ってきました。門あさ美とか中原めいこなんていう「ニューミュージック」系の懐メロとか、'70〜'80年代のアイドル、麻丘めぐみあたりから始まって小泉今日子や中山美穂、おニャン子クラブなどの名前も出てきます。なぜ浅香唯が無い?それ以前に太田裕美の曲が無いのが惜しい!発売元がソニー系とか、そういう事情なのか?やれやれ…。

さて、岩崎宏美は70年代中期に「スター誕生」から生まれた、「中三トリオ」のちょっと後輩にあたるアイドルでしたが、デビュー当時から歌唱力は折り紙付きでした。私の父などもTVで見かけると「もっと年を取ってスタンダードナンバーを唄うのが見たい」というようなことを言っていました。
そして実際に今、スタンダードナンバーの似合う年になったわけですが、その歌手生活の収支は合っているのでしょうか?相変わらず歌のうまさに関して、その評価は揺るぎないと思われますが、代表曲というと行きがかり上「聖母たちのララバイ」あるいはネタとしての「シンデレラ・ハネムーン」ということになって、その楽曲のレベルは岩崎宏美の実力からするといかにも平凡です。前回書いた伊藤由奈もこの轍を踏んでしまうのではないか、とオジサンは心配しております。

さて、そんな岩崎宏美の曲の中から、iTMSですぐに聴けるサンプルとして、初期の名唱とされる「思秋期」のリンクを貼っておきます。昨年、阿久悠氏が亡くなった時に代表曲のひとつとして紹介されたり、本人が出てきて唄ったりするのを見聞きして思い出しました。
岩崎宏美 - 思秋期 (Original Cover Art) - Single - 思秋期
10代でこの安定感!ていうか、若い男の子向けにしては落ち着き過ぎだったのかなあ。
超蛇足ですが、すごく機嫌のいい男性がこの曲を鼻歌で唄うと、「ルビーの指環」になります。

Mine or Yours/宇多田ヒカル

ベストアルバム"SCIENCE FICTION"を買った後しばらくぼーっとしていましたが、5月になった途端にYouTubeでライブ配信的なものを見かけました。配信は途中から見たのですが、過去のMVが次々流れていて、いつから新作発表になるのかわからず、見るのやめ...