2020/08/16

Love,Peace & Trance/Love,Peace & Trance

HISは1991年、テクノドンが1993年。歌物だったHISに対して、テクノドンの頃の細野晴臣の興味はアンビエント方面に向かっていたんでしょうか? YMOのテクノドンは「ポケットが虹でいっぱい」や、「BE A SUPERMAN」というキャッチーなナンバーが入っているので、いつものYMOかと思って入っていくこともできますが、当然あのメンバーが再結成だからといってそのまま昔の延長で作曲をするわけもなく、かなり難しい曲が並んでいます。

さて、テクノドンの発表後の2年後に発売されたのが「Love,Peace & Trance」です。アルバム名=ユニット名。Love(遊佐未森),Peace(甲田益也子) & Trance(小川美潮)という割り振りらしいです。キャッツアイでいうと愛、瞳、泪という並びになっております。

甲田益也子は当時dip in the poolというユニットでちょっと売れていた人で、キャリアの最初はモデルの人です。小川美潮は80年代にバーっと出てきたテクノバンドの中で結構序列が上の方にいたチャクラのボーカルだった人。遊佐未森はもういいですよね。

じつはこの3人を集めても全篇歌物というわけではなくて、半分はアンビエント・ミュージックなんですよね。3人の個性の強い声が素材として張り合わせられている感じでボーカリストとしてのエゴを満足させるような曲はとても少ない。だからこそ当時大メジャーじゃない3人が選ばれたのかもしれません。まあ、呼ばれた当人にとってはキャリア的に箔も付くし悪い話じゃなかったんじゃないかな。

さて、とはいえ2020年の現代にこういうアルバム出そうとしたら、どういうルートなら出せるのかわからないくらい趣味的な世界です。1998年に向けてCDがどんどん売れていた時代だったっていうのが良かったんでしょうね。HISのところでも書いたんですけど、やっぱり車が売れてて車載CDが普及したっていうのが大きかったんだと思います。レンタル屋が売り上げを下げてるのどうのっていう声がありましたけど、全国のレンタルCDショップの数だけ貸し出し用のCDが売れるってのは結構下支えとしては大きかったんじゃないのかな、と思ってます。CCCDとかなんだったんだと。

iPodが発売されたのが2001年。もっと大きな変革は始まっていたのにね。


2020/08/13

日本の人/HIS

 お盆休みに入ったけれど、新しいものは仕入れていないのでちょっと古いのを聴いてみます。

これもCDで買ったんですが、今はApple Musicから落として聞いているHISの「日本の人」というアルバム。Hosono,Imawano,Sakamotoの頭文字をとってHIS、わかりやすい。ちなみにSakamotoはRyuuichiではなくFuyumiです。Apple Musicのビジュアルは熨斗を模したジャケットのみですが、CDのブックレットはなぜか学生服姿の細野、清志郎とセーラー服の坂本冬美がはしゃいでいる写真が並ぶ不思議なものでした。RCサクセション活動休止後の1991年に発表され、そこそこヒットした、とWikipediaに書いてあります。私は当時愛知県民で小市民的マイカーを持っており、ようやく搭載された我が車載CDで聴く音源を漁っていた時期。ちょっと面白そうなのがあると買い込んでいた時代だったので、発売間もない頃に買いました。

細野晴臣も忌野清志郎も当時は既にオジサンでしたが、坂本冬美は当時久しぶりに現れた若手美人演歌歌手(藤あや子や伍代夏子が売れたのは坂本冬美より後。島津亜矢ファンの人にはごめんなさい)で当時は二十代前半のはずです。猪俣公章センセイの家で雑巾掛けから始めた本格派ですが、どうやら根っから演歌バカではないようで若い頃からロックやポップスへの興味を隠していませんでした。

アルバムにはオリジナル曲以外にジミ・ヘンドリックス、PPM、ビートルズ、園まりなどのカバーが混在した14曲(後日再発売でボーナストラックが追加された版もあるとか)が並びます。坂本冬美が演歌のシャウトで歌う「パープルヘイズ音頭」は大滝詠一が布谷文夫と作っていた音頭ものを思い出す感じ。ユニゾンパートが多いので、忌野清志郎がほぼ全篇キーの低いところで歌っているのもレアな感じがします。細野さんは下のパートのコーラスと、たまーに出てくる感じで、ほぼ忌野・坂本の掛け合い、または坂本冬美のソロが続きます。

若い頃にこういう仕事をしていたので、その後の坂本冬美が演歌以外のカバー曲で一山当てた時も別に意外な感じはしませんでした。訓練を積んだ演歌歌手のボイスコントロール芸を見せるという意味では有意義なことなのではないでしょうか。「演歌的ボイスコントロール芸」というのはちょっと悪口っぽいですが、例えば「逢いたくて逢いたくて」の「ふーたりぃはこいびいいとおおおお」というビブラートを園まりバージョンと聴き比べてみるとわかると思います。

最近、ぼんやりテレビの情報番組で紹介されるビルボードトップ5とかを見ていると、アニメソング文化の中からロック色の強いヒット曲が生まれているようです。このジャンルで出てくる達者な歌い手の発声法にやはり演歌的訓練の跡が見えることがあり、その度に「騙されないぞ」と構えてしまいます。

2020/08/11

誰にも言わない/宇多田ヒカル

宇多田ヒカル、最近音はすごくいいんだけど地味な曲が多くて、ちょっと知能指数上げすぎなんじゃないのかなあと心配になっていたんですが、すみません、私が間違っていました。

宇多田ヒカルの歌い方は日本語が聞きやすいし、英語はもともと俺がわかんないし、でストリーミングがメインになってからはちょっとチェックが疎かになっていたんですが、今回の曲のタイトル「誰にも言わない」はそのタイトルがちょっと気になって、ダウンロードした後でしっかり歌詞を読んでみました。結構すごいことになっていました。

「誰にも言わない」というタイトルが気になったのは、今からかなり昔になりますが、私は東芝EMIの管理下で二十歳そこそこの彼女が投稿していたブログ(MESSAGE From HIKKI)をいい歳してしつこく読んでいました(キモっ)。

そのブログでかの大ヒット曲「Can You Keep A Secret?」発表の際、当時は彼女の英語タイトルの曲におしゃれな邦題をつける読者投稿という恒例行事があって、その時のご本人公認の邦題が「誰にも言わない?」だったのを覚えていたからです。

頭の良い宇多田ヒカルが自分の新曲のタイトルを決める際にこのことを思い出していないはずがなく、当然15年だが20年だか越しのアンサーになってるに違いないと思ったのです。

「Can You Keep A Secret?」は今思えば彼女の最初の結婚の寸前に発表されたのですが、私小説家・宇多田ヒカルはとても正直な人なので、恋をしていれば恋をしているような歌詞を書き、不幸なことがあればそのことを歌ってきました。だから「Can You Keep A Secret?」を聴いた時にオジサンは「あー、彼女は今恋をしているのだろうなあ」と思春期の娘を持った(ことないけど)父親のような気持ちで見ていたものでした。


で、2020年の新曲「誰にも言わない」です。

耳で聴くと、今回も曲調はわりとスローで地味です。ただ、通りいっぺんのバラードではなく、音のクォリティというかサウンドの計算がすごいので、聴き始めたら途中で飽きることはありません。最後まで連れて行かれるパワーはすごいです。

でも、今回は「Can You Keep A Secret?」のアンサーになっているのかのチェックもしなければいけないので、iTunesに落として「情報」タブをクリックして「歌詞」を開いてみるわけです(開業以来しばらく、歌詞についてはiTunesのストリーミングはボロボロでしたが、数年前から改善されて歌詞がかなり忠実に見られるようになっています。そういえばマップもだいぶ良くなったようですね)。そうやって歌詞を開いてみるとじつは全体の2/3が英語です(Mixでコーラスパートだと思って聴き逃せるくらいの大きさで聴こえるんですが)。その英語は大して難しくないのでGoogle翻訳などもチラチラ使って確認してみると、「Can You Keep A Secret?」の頃は(年上の?)相手に向かって「こんなことして、誰にも言わない?」って聞いてたヒカルちゃんが、このたびは「周りには心配されてるけど、誰にも言わないから」と相手に言(い寄)っているわけです。しかも「私を満足させられる?(&お金ならあるわよ、かな?)」とか言っちゃってて、めちゃくちゃエロいわけですわ。彼女の場合は、やっぱりちゃんと歌詞カードとか見ないとダメですね。

2020/08/09

STRAY SHEEP/米津玄師

 来週はお盆休み週間になるものの with コロナ、不自由な生活は続いています。

この先ワクチンができたところでウイルスの変異とのイタチごっこは永遠に続くと思われ、感染リスクがほんのちょっと軽減されるくらいで解決には至ると思えません。もうこの生活がスタンダードになって行かざるを得ない気がします。コロナの影響が大きい業態に対しては、持続化を応援する給付金よりも業態転換を促進するような補助が求められているのではないでしょうか?2019年以前の世の中は、もう戻ってこないと思います(ただ悲観的に言っているだけではありませんよ)。

さて、音楽の方もすっかり媒体はすっかりストリーミングにシフトしてしまい、かといってこの環境ではライブも満席にしてはいけないというわけでお気に入りのアーティストをどうやって応援したものか、と途方に暮れているファンの人も多いんじゃないかと思います。

そんなわけで、最後のCD・ダウンロード販売の雄、米津玄師の楽曲もApple Musicその他のストリーミングで聴くことができるようになりました。と同時に、アルバムとして「STRAY  SHEEP」が発表されました。

Lemonが流行ったときにじっくり聴いてみましたが、米津玄師の音楽は僕のようなニューミュージック世代に聴きやすく、歌も上手いし大変好ましく思いました。その印象はこのアルバム(と言ってもほぼヒットパレードみたいなものですが)を通して聴いても変わりません。中田ヤスタカがテクノ40年の歴史から美味しいところを好きなように引っ張り出してくるように、米津玄師も主に90年代以降のJ-POPの、美味しいところを思いのままに引っ張り出してうまく発展させている感じがします。

一方で、こういう音楽がまだ売れ筋の頂点にあることは我々年寄りには喜ばしいことではありますが、若い人たちはこれでいいんでしょうか?いきものがかりなんかはさらに15年くらい前のフォーマットでやっているように見えますが、まだ一線で活躍しているわけで、日本人の感性って平成元年くらいでぴたっと止まってしまっているのでは?

実際この間のコロナ騒ぎでの政治家の発言、一般市民の反応など見ていると、平成の30年間ていったいなんだったのかと思う特別な夏。

Apple Musicとアマゾンのリンクを貼りますが、Amazonのストリーミングはunlimitedの方でやってるみたいです。


2020/05/16

Time/宇多田ヒカル

コロナ騒動が収まりきらない中ではあります。
私も月の八割は在宅勤務ということで、それまでの糸が切れた凧のような営業スタイルもやりようがなく、定期的に上がってくる注文をおとなしく見ているだけ、という毎日です。
音楽環境としては、先月からAmazonアンリミテッドのキャンペーンで3ヶ月追加料金なしとかいうのにまんまと騙されて絶賛愛聴中。iTunesとは微妙に違ったラインナップで、たとえばAppleMusicでいまいちアルバムとしてのまとめ方が変だった斉藤由貴のâgeとかゴダイゴの「西遊記」なんかがきちんとしたパッケージで提供されているのに気を良くして聴き直していました。そしたらなんということかゴダイゴのギターだった浅野さんの訃報に接してしまい、寂しい思いをしています。

さて、そんな中で「宇多田ヒカルの新曲が配信トップに!」のニュースをみかけておやおやエヴァンゲリオンだったっけ?と思ったらなんかドラマの主題歌になっているらしいですね。
もはやサブスプリクションで個別の決済もないまま聴くことができました。

このところあまり売れ線臭のしない音作りの曲が続いていましたが、ドラマ見ている人に「はい、主題歌は宇多田ヒカルですよ、ちゃんとお金使ってますよ」と言いたいプロデューサーに依頼されたのか、この曲はちょっと既視感のある曲になっています。
小田さんの「ラブ・ストーリーは突然に」を聴くと「君が、嘘を、ついた」と「Yes-No」がぼんやり聴こえてくるように、「Time」を聞いてると「Flavor of Love」とか「For You」とかがフラッシュバックするようになっています。6月予定と聞いていたシン・エヴァンゲリオン劇場版はいつの公開になるかわかりませんが(私は担当外ですが)、そこでも主題歌が出るんだと思いますけど、どういう曲を出してくれますかね?
私としてはこのへんではっちゃけた曲も出してもらいたい気がします。それこそKing GnuみたいなあまりJ-POP臭のしないロックバンドなんかと仕事してもらえないかな?

2020/04/26

KISS OF LIFE/崎谷健次郎

前回、King Gnuのついでにofficial髭男dismのTravellerを聴いていましたが、そこで書いたとおり、このアルバムのかなりな部分がR&B的というかブラコン的なサウンドになっていて、そこでふと思い出したのが崎谷健次郎のことでした。
確か持っていたはずだよな〜と思ってコレクションをあたってみました。CD棚もiTunesも探したけれど見つからないのにまだまだ探していたらAmazonミュージックで揃うことがわかりました。私が持っていたのはカセットテープだったのかなあ?

最初の発売は1989年4月21日となっています。平成元年ですね。バブル絶頂期か。うろ覚えの記憶とWikipediaによると「ハウスミュージック」という惹句が付いています。
ずいぶんと前のことのように思いますが、大丈夫、もうテクノポップも一段落して、デジタルレコーディングもYAMAHA DX7もサンプラーもありました。音は今の音楽と一緒です。

崎谷健次郎はシングルヒットというと「もう一度夜を止めて」になっちゃうんで、あまりダンサブルな印象がないかもしれませんが(中西保志というと「最後の雨」しか出てこないのと印象が似ています)、こういうノリノリのアルバムも出しています。
official髭男dismの人と同じでキーが高くて細い声なのに音域が広くて結構豪勢なカラオケにも負けずに歌えるところもよく似ています。彼らは令和のレミオロメンやオフコースの孫ではなく、崎谷健次郎の息子たちだったようです。

さて、崎谷健次郎のプロデュース系の仕事というと、かつてこのブログでも紹介した斉藤由貴のアルバムが代表的ですが、ちょうど同時期に斉藤由貴のアルバム"âge"を作っていたはずです。と、あらためて調べてみたらあれ発売日が同じじゃないですか!これは知らなかった。つまり崎谷健次郎プロデュースによるハウスミュージック・アルバムが片や本人名義で発売されると同時にアイドルプロデュース版として斉藤由貴が同時発売されていたということなんですね!めちゃくちゃオシャレな仕掛けじゃないですか!
実際にこの2枚のアルバムの音は双子のようであり、あの、棒立ちで歌うイメージしか無い斉藤由貴が(センチメンタル・ジャーニーの松本伊代のように)2人のバックダンサーを従えて歌い踊った「夢の中へ」と合わせてすごいプロジェクトだったんだなあと改めて感心してしまいます。

2020/03/29

CEREMONY/King GnuとTraveller/Official髭男dism

また長い間ほったらかしにしてしまいました。
まあ、リタイアしてこんなことばっかりして生活できることを夢見て(ホントか?)あと何年かこんなペースでやっていくことになるでしょう。

接触型アイドルが古いフォーマットであるCDをコンスタントに100万枚とか販売し続けている中、他のアーティストはどんどん配信、サブスクリプションによる音楽販売を主戦場にしているようです。レコード会社の経営についてはあまり興味が無いですが、アーティストの生活は気になります。分け前はどちらが良いんですかね?
そしてこのコロナ騒ぎでコンサートは軒並み中止。今のところは要請を受けての自粛、ということなので公的補助が受けられるかは未定とのこと。気の毒なことです。
要請はしたが強制はしていない、だから政府には責任は持てない、というのはこの数年ずっと見させられてきた「忖度」の再生産をしているわけで、本当に我が国はひとつひとつの過ちを総括できない国であることよ。

さて、新しいのが出るとやっぱり気になるKing Gnuの新作が知らないうちにAppleMusicのサブスクリプションでダウンロードできるようになっていました。前作の"Sympa"でも感想文を書きましたが、歌謡曲臭を一切感じさせないロックな佇まいと神経症的に転調を繰り返す芸風は継続しており、とても良いです。
前作後半はちょっとおとなし目の曲が多くて眠くなったんですが、今回はそういう不満もなく最後まで完走できました。1曲毎の演奏時間が短くて、アルバム1枚を40分弱で走り切るのもロックの名盤のフォーマットに近くて聞きやすいです。ああ、俺も90年代の半ばに"Overflow"って歌詞書いたなあ!
転調の多用とツインボーカルのオクターブ違いの重ねはそろそろ飽きてる人もいるかもしれないけど、私は好きなんでずっとやってほしい。

一方、ちらちら見てはいたものの、ちゃんと聞いたのはじつはDr.キャピタルのYou TubeだったというOfficial髭男dismも、お勉強のためにアルバム1枚聞いてみました。テレビでよく歌っている「Pretender」とか、1曲め「イエスタデイ」を聴いていいる範囲では令和のレミオロメンか、オフコースの孫か、という感じでしたが、サウンドの作りがすごく豪華で、バンドというよりボーカルの存在感が突出している感じに聴こえる。アルバムの曲全体では意外なほどR&B的というかブラコン的な感じな曲が多かった。90年頃の崎谷健次郎の感じがしてなつかしかったですが、楽器それぞれのエッジが効きすぎてちょっと疲れちゃうのと出来が良すぎてオジサンが応援する余地がないのが残念か。

とりあえずAmazonのリンクを貼りますが、これも意味ないよなあ。




SCIENCE FICTION/宇多田ヒカル

前回の更新から2年近く経ってしまいました。その間に会社を定年退職したり引っ越ししたりで自分のことで精一杯でしたが、まあ晴れてほぼ自由の身(経済的にはどんどん不自由になるわけですが)ということで、これからは身バレしようが炎上しようが誰にも迷惑がかからないことになっています。 さて、...