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2021/07/04

AXIA 〜かなしいことり〜/斉藤由貴、斉藤由貴、上白石萌音

上白石萌音が懐メロのアルバムを出すよ、というニュースがテレビだのYouTubeのおすすめだのに出てくるので、見るとはなしに見ていたところ、曲名の中に斉藤由貴のAXIAが入っているのに気がつきました。

上白石萌音は顔が古いとか、宮崎美子そっくりとか、可愛くないのになんで売れてるの?とか言われているみたいですが、オッサンから見る限り十分かつお釣りがくるくらい可愛いし、歌が歌えるんだから、そりゃ仕事は来るだろうと思うんだけど、確かに女性ウケは悪いタイプかもしれない。

そういえば僕らの学生時代にも、すごい美人ということもないのに、なぜか男子学生から人気があって彼氏は切らしたことがないような子はいて、女子の間では「なんでブスなのにモテてるの?」と噂になったりしていたような気がします。そういうタイプ。

若い頃の斉藤由貴はビジュアルのレベルも高かったけれど、キャラクターが変だったし、ちょっと田舎っぽいイメージもあったので、そういう意味では土石流萌音と似てないこともないと思うから、今回の懐メロ・トリビュート企画の中に斉藤由貴の曲が入ってくることはなんの不思議もないんだけど、「AXIA」とはくさいところを突いてきたなあ、とは思いました。

「AXIA」は斉藤由貴のファーストアルバムのタイトル曲で、ファンの間ではすごく人気がある曲だとは知っているけれど、「卒業」とか「白い炎」とかのシングルヒット曲に比べると認知度は低く、私自身は初期の斉藤由貴は遠目で見ている感じだったので、自分では音源として購入したことはないナンバー(ベスト盤にも常に入っているわけではない)。あと、当時富士フィルムが新発売したカセットテープ(!)のブランド名がAXIAで、そのCMにも斉藤由貴が出ていたから、それでなんとなく覚えている、ということはあります。

しかも単に過去の名曲というだけでなく、斉藤由貴本人がつい最近リリースしたアルバム「水響曲」の中で新録音で歌ってるんですよね。あの騒ぎの後でこの曲歌える逞しさには感服します。それと比べられるわけです。


比べてみました。


  • 2021年の斉藤由貴(水響曲 M3)
    声はだいぶ変わっているけれど、まあ安定していますね。今にも崩壊してしまいそうな危うさを感じさせつつ破綻はしない、ヘタウマ芸に磨きがかかっている感じ。バックは生ピアノ。
  • 1985年の斉藤由貴(AXIA M5)
    ドラムはシンセ(シモンズかな)、ベースもシンセ、当時のアイドル歌謡のキラキラサウンドで、物騒な二股の恋を歌っています。デビューアルバムにして、もう歌い方が完成しているんですね。この頃の斉藤由貴がどのくらいの恋愛経験があってこの曲を歌っているのか知りませんが、文学少女だったようなのでフィクションとしては十分ありの世界観だったでしょう。
  • 2021年の上白石萌音(あの歌-2- M3)
    はい、声の出し方うまいです。でもちょっと棒読みですね。これならお父さんも安心な現実感のなさ。本人もよくわからない、とYouTubeで言ってたのを信じておきましょう。

2018/08/24

Future Pop/Perfume とおまけ(買わない理由)

今年のお盆はなんだかんだしっかり休めました。7月中旬から土日を含めて常になにか仕事が入っていて、這々の体でたどり着いた感じの盆休みだったので、昼からビール飲んでごろ寝していたら、かえって不健康になってしまいました。

さて、8月になってからもちょっと買い足したCDがあったので紹介します。
思うところがあって渋谷のタワーレコードにも久しぶりに行ってみましたが、やはり鉱脈として期待されているのか、中年~初老狙いの新製品が目白押し!

ざっと紹介しましょう。

まずはサザンのベスト。TSUNAMIから現在までという感じでしょうか。
ここには書かなかったけど、実は「葡萄」を持っているのでパス。持ってて損はないし、ドライブのお供には良さそうなんだけど、売り場で10秒迷ってパス。

今井美樹。大好きだったんだけど、今の今井美樹を聴きたいか、と思うと食指が動かなかったです。なんていうかやっぱりアイドル的に好きだったのかな?数年前に出た"Premium Ibory"も「ポールポジション」が入ってないという理由だけでパスしてしまいました。

「ラブとポップ」おお、広末涼子のどアップ!って広末涼子の曲は入ってないんですね。15年位前のラインナップでしょうか?僕より十歳若い人向けなのかな?って感じでパス。

浜崎あゆみ。は、もともと担当外。

そんなわけで、買ってきたのはPerfumeの新しいアルバム、"Future Pop"ともうひとつ。もうひとつの話はもったいないから次回に回して、今日のところはPerfumeの話です。

前作の"Cosmic Explorer"も例の「ちはやふる」絡みの曲を中心になかなか楽しいアルバムでしたが、同時に彼女たちももうすぐ30歳になるわけで、これからどうしていくのだろう?という余計なお世話的心配がふと去来したものでした。

で、今回はブルーレイディスク付きのを買ってきて、そっちから先にみたんだけど(最後のトラックの「ラジオ」部分は、「CD本編を聴く前に見ちゃだめ!」とご本人たちに言われたのでまだ見てないんですが。素直だな~俺)、テレビで再生している限りでは「地味」て感じがしました。それでも気を取り直して、パソコンにつないだもう少し良いスピーカーで再生を始めると、おお、おお、ちゃんと楽しい音になっていました。良かった良かった。
あと、12曲で40分前後とボリュームが丁度よい。1曲平均で3分台ということで、そういうところも聴きやすいです。みんな忙しいんで。

それにしても、もういちど書きますが、30歳のPerfumeはこれからどうするのか?

まるでCGのようだった3人が、今は体重も体温も匂いもある存在として歌い踊るようになった今、この声の処理で続けていけるのか?いっそのこと過去のヒット曲を生声&アンプラグドでやり直したりするべきではないのか?
限界点は近いと思われる一方、ひょっとかして、この壁を乗り越えれば唯一無二の存在になれそうな気もします。

√
なんパターンあるのよさ?

2016/10/10

LOVE TRIP/AKB48

3年前に例の「フォーチューンクッキー」に引っかかって少しお勉強したAKB48。
その後もBSプレミアムの「AKB48 SHOW」だけは見続けていて、おかげで主な登場人物と主な楽曲は理解できるようになりました。この公共放送の電波を使って垂れ流される(笑)番組の良いところは、歌がほぼ生歌ということです。そのため、メンバー構成によっては目も当てられない時もあるのですが、ライブ感だけはあって、他の音楽番組ではわからない実力度合いなど確認できて楽しいです。

彼女らの歌唱力は、我々の若い頃の世代で例えると、上が柏原芳恵、下は果てしないが能瀬慶子もいるな、平均で中山美穂のちょっと下かな、と。岩崎姉妹はもちろん、松田聖子、荻野目洋子クラスは見当たりません。

それがなんとか商品になっているのは、曲の完成度が高いから、ということなのかな。しかも、あまりとんがったことはやらない。20年~30年前のアイドル歌謡を今のクオリティで再現しているので、客の年齢層が高めになるのは仕方がないでしょう。

さて、「LOVE TRIP」は毎年恒例の「総選挙選抜曲」で人気投票上位メンバーを集めて、真ん中から順位の通りに並んで歌う、というもの(なんだよね)。
このシリーズだけで数えると、私が転んだ「恋するフォーチュンクッキー」から数えて4作目です。
「恋するフォーチュンクッキー」で驚いたのは、先行した「モーニング娘。」が全盛期にやっていた80年代ディスコ調楽曲群よりも更に遡った時代の曲調を引っ張り出してきて2013年にやってみせたことでした。
それがウケたので(だよね?)翌年の「心のプラカード」は古すぎて中年でもわからないところまで行ってしまい、ノリ方がわかりませんでした。昨年の「ハロウィン・ナイト」は逆にすごくよく分かるんだけど、完成度を上げすぎて古さの方が目立っちゃった、という感じでしょうか?

さて、「LOVE TRIP」もちょっと気になってしまいました。この曲は上で上げた3曲ほど、時代を背負ってる感はないんですが、明らかに80年代のいわゆる「商業ロック」のヒット曲がフォーマットになっています。ケニー・ロギンスの「トップ・ガン」の曲とか。なかでも一番似てるのは、オフコースの1984年のアルバムに入ってる「愛を切り裂いて」なんですけど。その曲自体、当時共通のフォーマットから作られていると思うので、パクリとかそういう話ではないんですが。

で、それが2016年のアイドル歌謡となったときになにが変わっているかというと、印象的なリズムギターがアコースティックギターの音になっている!こんな派手な音の中でアコギの音がくっきり聴こえる技術の進歩に感心します。弱々しいAKBボーカルとの兼ね合いがちゃんと考えられているんですね。「ロックじゃないロックサウンド音楽」の良い例か。

↓「多売特典なし」って何?

2013/09/15

恋するフォーチューンクッキー/AKB48

AKB48のことは、そりゃまあ嫌でも目に入ってきます。
何年か前に一般的に売れてきた感じがしたときに、どんなもんじゃろかいなと思ってiTunesで「ポニーテールとシュシュ」という曲をダウンロードしてみましたが、やたら派手な音に訥々とした(?)歌が乗っかっていて、おニャン子時代のクォリティから進歩しているようには聴こえませんでした。私の年代的にもあまりに守備範囲外でもあるわけで、その後はテレビに出てきたときにぼーっと見ている、という立場でした。
そのうちテレビ以外の媒体でも見かけるようになって、会社の美人お局さん的な篠田麻里子という人と、ちっこいのにやたら化粧とか頑張ってる板野という人だけわかるようになりましたが、相変わらずテレビにごちゃごちゃと出てくる画の中では「触覚みたいな髪型をした、魚っぽい顔の女の子がたくさんいる集団」としか思っていませんでした。

一昨年くらいでしょうか、その魚群の中から「指原」という変わった名字の女の子がよくテレビに出てくるようになりました(ポニョか!)。ところがこの人、アイドルグループにいながら「カワイコちゃん」扱いされない変な存在で、しかもやっと顔を覚えた(あまり特徴がないので覚えづらい)頃には週刊誌に醜聞をバラされて福岡に放逐されるとか言っているわけです。
ところがこの指原嬢、地方に左遷(?)されてからもメディアの露出が減るでもなく、テレビタレントとしての存在感をどんどん増していき、とうとう年に一度のグループ内人気投票で1位になってしまいました。
私は若いころに読んだ小林信彦の小説「怪物がめざめる夜」をなんとなく思い出しました。


さて、そんな、もしかしたら怪物かもしれない存在を「センター」に、最近のAKB48がテレビで歌っているのが「恋するフォーチューンクッキー」です。

テレビの音楽特番で初めて見ましたが、「え、今どきこれでいいの?」と思うようなぼんやりした曲に聞こえました。特にテンポが今どきめずらしいほど遅く聞こえました。
ところが2回目に別の番組で見たら、やたら頭に残るんです。何が気になるのかわからなくてYouTubeとかで探して見てたり、ネットのコメントで「フィリー・ソウル」なんて単語にぶち当たると、ピーター・バラカンの「魂(ソウル)のゆくえ」を買ってきて読み、スタイリスティックスのお勉強などもしてみました。


そして、とうとうiTunes解禁の日にはダウンロードして聴くところまで来てしまいました(あちゃー)。
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さて、BOSEのパソコン用スピーカーで聴いてみると、ああやっぱりいいんですね。難しいことをなにも考えずにボケーッと聴いていられます。AKBの歌唱はまあ、感心するほどではありませんが、オケがカッコイイです。

フォーマットとしてはモータウンなどのソウル・ミュージックの翻案であり、それこそ私が小・中学生の頃に歌謡曲としてさんざんやられていたもののはずです。
「ゴールデンハーフのロコモーション」とか、「セクシー・バス・ストップ」とか、ひょっとするとキャンディーズの歌ってたプロポーズ大作戦のテーマソングなんかも思い出してしまいます。あー懐かし!

でも、実は当時のテレビ経由では、こんなに上手くソウル・ミュージック風のノリを実現したものは聴けなかったと思います。なにより当時の家庭用再生装置が、小径のモノラルスピーカーしか搭載されていないテレビでしたから、バックの演奏はラッパと弦の音ばっかりでベースやドラムの音なんてあまり聴こえませんでした。結局我々は「歌」しか聴いていなかったわけです。
一方、当時の演奏者はテレビ局が契約しているビッグバンドのプロフェッショナルでしたから、高いレベルでの解釈ができていたのかもしれませんけど、本当のところはどうだったのでしょう?

まあ、そんな懐かしのソウル・ミュージック風歌謡曲が、すっかり進歩した音響技術と、積み上げられた知識や演奏技術を使って今、よりによってAKB48の名の下でやり直されたのは、うれしいような悲しいような。しかも聴くとちゃんと楽しいというのも困ったものです。
私が好きなのは、2番が終わった後の間奏で転調して、「お、AKBも転調するんだ」と思っていると、最後のサビを歌い出す手前でガクンと元に戻るところです。大滝詠一もよくやりますよね。

↓何種類あるんだ…

2013/09/08

潮騒のメモリー/天野春子(小泉今日子)

今年の夏はいつになく仕事が忙しく、夏休みもぐったりして終わってしまったので、当ブログも更新できず。たいして高度なことも書かないのに、なんでこれくらいのことができなくなってしまったのでしょうか?

9月になりましたので、心機一転して、気になる音楽について書いていきたいと思います。

こちら、iTunesでダウンロードしてきた天野春子こと小泉今日子の「潮騒のメモリー」。NHK朝ドラの重要な劇中歌です。
(iTunesへのリンク↓)
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ああ、それにしてもこのブログで小泉今日子の話を2回も書くことになろうとは!

私は会社勤務なので、朝ドラは見られないのですが、なぜか仕事で会う人々の間では「あまちゃん」大人気&「じぇじぇじぇ」おおはやり、となっていまして、今年の秋のイベントの出し物作りの必須項目ということがわかり、慌てて夜中に放映されたダイジェストを録画し倍速再生で視聴しました。よっしゃぁ、だいたい分かったぁ(ずももももぉぉ)。

だいたい分かった範囲で述べますと、この曲は薬師丸ひろ子演ずる元アイドル女優が、歌が壊滅的に下手くそだったために、若き日の小泉今日子演じるアイドル志望の女の子が影武者として歌った曲、という設定。発売は1985年頃らしい。
本当の85年頃のヒット曲をWikipediaで見てみると「ジュリアに傷心」「ミ・アモーレ」「恋の予感」、斉藤由貴(と菊池桃子も、か)の「卒業」などが流行っており、小泉今日子本人は「The Stardust Memory」を歌っています(薬師丸ひろ子は「あなたを・もっと・知りたくて」を歌ってます)。ふんふん、思い出してきた。ちなみに松田聖子は「天使のウインク」を歌っていたんですね。

この頃の私はまだ大学生で、今から考えられないくらい精神的に余裕があったから、ぼーっとしてるだけで流行りの音楽は頭のなかに入ってきていました。
じゃあ、そんな私が聞いて「潮騒のメモリー」が85年っぽいかというと、やっぱりぜんぜん違うよなーって感じ。

まず、曲の芸術性が高すぎ。
(ハ長調で書くと)レミドレミドシドレミドというメロディがテーマになっていて、それがどんどん発展していくような曲で、しかもバックのアレンジと同時進行しながら作っている感じがします。「潮騒のメモリー」は楽典に詳しい音楽家の仕事です。
85年当時のアイドル女優の映画主題歌であれば、いわゆる「ニューミュージックのアーティスト」に発注したと思われ、彼らが作る曲は(その後プロフェッショナルなアレンジャーの手が加わったとしても)こういう曲にはならなかったと思うんです(もし似るとしたら尾崎亜美くらいかなあ)。

さらに、もっと時代の違いが顕著なのは日本語の載せ方。
「てい・きぁ・つに」「しおっ・さ・い・の」「さよ・な・らーもぃ・わーず・に」など、大きい音符にぐちゃっと日本語を押し込んで、しかも発音がリエゾンぽくなるのはミスチル以降、90年代以降の載せ方です。80年代なら8分音符をずらーっと並べて「て・い・き・あ・ー・つ・に・の・ぉっ・てー」「し・お・さ・い・の」「(休)・さ・よ・な・ら・も・いー・わ・ぁず・に」じゃないかな?

宮藤官九郎が5分で書いた、といわれる歌詞も相当すごいこと言ってますが、ドラマの中の世界で登場人物が納得していれば別にいいわけです。「一応設定がそうなってる」だけで、いざ、現実世界で消費しようとすると、「潮騒のメモリー」は80年代アイドル歌謡の再現なんかでは全然ない、独立した現代の音楽作品です。
そしてやっぱりそれでいいんだなぁ、というのが最終的な感想。

時代考証を突き詰めるなら、80年代に詳しい人なんてまだいくらでも生きているし、「あの頃の感じで」と発注すればもっとそれらしい曲を作ることができたと思いますが、それでどうなる?やっぱり止めて正解か。

結果として、この曲だからこそ、小泉今日子も新鮮な気持ちで歌えたんじゃないでしょうか。


2011/10/30

age/斉藤由貴

本来のタイトルにはフランス語風にaの上に"^"がついて、読みは「アージュ」です。 先日、何かの拍子に突然聴きたくなって、CDラックその他を捜索したんですが、引越しの時に捨ててしまったのか、どこかに二束三文で売っぱらってしまったのか、見つからずに(持っていたのは間違いないんだけど)iTunesでダウンロードしてきました。
   
ところが、なぜかこの「age」は「アルバムの一部」としか表示されず、同じアルバム名を持つ別々の曲群として販売されていました(アルバムとして一括購入できない)。 
なんで?とじーっとタイトル部分を見たら、なぜか7曲目がありません。そのため、このアルバム1枚分を落とそうと思うと、収録曲全部を1個ずつクリックせねばならず、しかも7曲目は無いままという、とても不満足な形での購入になります。

欠落している7曲目はアルバム中唯一、斉藤由貴自身が作詞した「あなたの存在」という曲。

本人が封印したとか、別の大人の事情があるのか知りませんが。
しかし、今でも大きいCDショップに行けば買える、紙ジャケ・HQCD版にはちゃんと収録されています。ということは、おそらくiTunes Storeとレコード会社側の情報伝達の齟齬かなんかだと思いますが、iTunesは結構こういうこと多いですね。っていうか、ダウンロード販売だからって手を抜かないで、サプライ側もショップもちゃんとやれよなー!

 斉藤由貴は、今でもほとんど印象が変わりませんが、田舎の学級委員長がまちがって芸能人になっちゃったような、若い時からおばさん臭い人でしたが、実はミスマガジン出身のグラビア系だし、スケバン刑事とか朝ドラとか芸能界のど真ん中をきょとんとした顔のままこなしてきた不思議な人。

歌手デビューしても、第一印象としては「あ、声出ない、下手」って感じだったんですが、実はこれが食わせ者で、同時期に歌い始めた菊池桃子が「下手そうで本当に下手」だったのと違って、変な表現力があるんですね。音程もずーっとフラット気味に聞こえるんですけど、作品が壊れるような外れ方はしない。似てる人をさがすと大竹しのぶとかすごい名前が出てきます。最近だと相対性理論のやくしまるえつこなんかもそうかな。 

さて、「age」は1989年と言いますから、バブルまっさかり&80年代アイドル歌謡の爛熟期で、それぞれが差別化のために凝った仕掛け作りに頑張りまくっていたころです。

宮沢りえが小室哲哉プロデュースで歌を出したり、工藤静香があの「あーらしをっおーこーして」とか歌ってたのがこの年(だったんだ。Wikipediaによる)です。

斉藤由貴はちょっとサブカル的方向に向かっていて、武部聡志や崎谷健次郎をスタッフに起用していました。斉藤由貴本人もたいした詩人なんですが、作詞は谷山浩子の印象が強いです。CMで流れた「土曜日のタマネギ」の評判がすこぶる良かったですね。
 
「age」はそれまで棒立ちで歌っているイメージだった斉藤由貴が意外なほど派手な振り付きで歌った「夢の中へ」と同時期に発売されました。「夢の中へ」は崎谷健次郎がプロデュースと編曲を担当していますが、「age」も全編・崎谷健次郎プロデュースで、エレクトロ・ポップなサウンドがほぼノンストップで最後まで続く意欲作です。今聴くとちょっと直球すぎるかもしれませんが、でもちゃんと楽しい。個人的にはM8.「雨色時計店」の、歌詞+曲+声のもつ雰囲気と、エレクトロニクスなバックとのミスマッチな感じがすごく好き。

 このアルバムに「夢の中へ」が収録されていないのは、同シングルとこのアルバムが同日発売だったので「棲み分け」のためらしいです。とはいえ、もう、発売から20年も経っていることですし、サウンド的にもつながっているのだから、iTunesStoreではぜひ今後、7曲目をきちんと入れて、10曲目を「LUCKY DRAGON(ServiceVersion)」から「夢の中へ」に差し替えた、「age(コンプリート版)」としてきちんとアルバムとして購入できるようにしてもらいたいと思います。
 

2009/11/17

イエローマジック歌謡曲 DISC-3/様々なアーティスト

予定より1日遅れましたが、「イエローマジック歌謡曲」の第3夜です。3枚組なので今日が最終回。このシリーズは曲名書いてれば良いから楽といえば楽なんですが、ときどきすごく耳に残る曲があって、困っています。



M1.わがままな片想い/松田聖子
作詞・松本隆、作曲編曲・細野晴臣。「天国のキッス」のB面であるよ、とライナーノーツに書いてあります。松田聖子の倍音たっぷりな声にはちょっとバックがしょぼくない?B面的な制約がちょっと感じられてしまいます。この曲は「細野晴臣トリビュート・アルバム」でコシミハルがカバーしていますが、そっちの方が断然良いです。


M2.まりン/飯島真理
おお、飯島真理が出てきました。彼女が作詞作曲した作品を坂本龍一がアレンジしています。「愛・おぼえていますか」よりも早い時期の作品で、そのためか歌いかたも声優さんが歌うアニメ主題歌的です。

M3.鏡の中の十月/小池玉緒
作曲編曲YMOとなっています。DISC-2の三国志のテーマを歌っている人ですが、どういう人か分かりません。

M4.ダンスホールで待ちわびて/タンゴ・ヨーロッパ
作曲が細野晴臣。これもまったく分かりませんが、タンゴとも8ビートとも取れるリズムの曲なのに間奏では突然3拍子が入ってきたりして作品としては凝っていて面白い。背景に関係なく面白い曲です。

M5.ピンクの鞄/高橋美枝
作詞・松本隆、作曲・細野晴臣。誰だこれ?ライナーノーツには後に作詞家、コーラスとして活躍したようなことが書いてあるがちょっと信じられない歌声です。デモテープみたい。DISC-3はかなり玉石混淆です。

M6.玉姫様/戸川純
あ、やっと知ってるのが出てきました。戸川純が時代の最先端だった頃の作品。しんぴーしんぴー♪って流行ったなあ。「BSマンガ夜話」の「すすめ!!パイレーツ」の回にゲストで出てきた戸川純が、80年代をしみじみ懐かしんでいるのを見た時はちょっと寂しかったです。

M7.風の谷のナウシカ/安田成美
これも松本隆/細野晴臣コンビです。安田成美の歌唱は褒められたものではないけれど、その声があって完成している作品でもあります。

M8.ピンクのモーツァルト/松田聖子
私が松田聖子の全盛期と思うのがこの曲です。声の完成、抑制された中に高級感のあるカラオケ。作曲・細野晴臣ですが編曲は松任谷正隆との併記になっています。おそらくストリングス部分を松任谷正隆が担当したんでしょうね。


M9.ファンキーマージャン/竹中直人
作詞・高橋幸宏、作曲・加藤和彦、編曲・高橋幸宏。こんな作品があったんですね。というか、サディスティック・ミカ・バンドの曲のカバーらしいです。まだ役者としてブレイクする前で、モノマネ芸人なのか俳優なのか分からなかった頃の竹中直人が持ちネタのいくつかを使って録音しています。資料価値は高いと思います。

M10.リセエンヌ/原田知世
作曲編曲が坂本龍一。髪を切って男の子みたい、なんて歌っているからまた松本隆かと思ったら、作詞は原田知世と康珍花と書いてありました。

M11.クララ気分/原田知世
こちらは作曲が南佳孝、編曲が坂本龍一。原田知世ってもう25年もこういう、ちょっと文化の香りを纏いながらの歌手活動を続けているんですね。なんだか分からないけれど偉大だ!

M12.タキシード・ムーンで夕食を/キララとウララ
作曲が細野晴臣、編曲は細野晴臣と船山基紀。片っ方が小室哲哉の元奥さんだったということで有名な女性デュエットですが、どんな唄を歌っていたのかは知らなかった。全編ユニゾンだが、結構声質の相性が良く、聴いてる分には問題ないですね。ま、問題ないだけじゃ売れないか。

M13.銀河鉄道の夜/中原香織
誰?ちょっとDISC-3はマニアック過ぎて着いて行けません。作曲が細野晴臣、編曲は細野晴臣の他2名。

M14.生意気娘/中原理恵
同じ中原でも今度は中原理恵。作詞・RIEとあるのは多分中原本人でしょう。作曲編曲が高橋幸宏。歌メロの一部やベースラインが、まんま、じゃないんだけど、でもやっぱり"Like A Virgin"なんだろうなー、1年後だし。DISC-1、2でスーザンという人の歌でもやってたけど、この頃の高橋幸宏はVCFで変調かけたようなビブラートで声を処理するのが好きだったんですね。

M15.NEO-PLANT/如月小春
作曲編曲が坂本龍一。2000年に若くして亡くなった如月小春がこういう曲を出していたのは知りませんでした。この人も糸井重里や坂本龍一といっしょにいろんな媒体に出てました。私の中では名前の字面とか出てくるチャンネルのせいで松本小雪とちょっとごちゃごちゃになってます。

M16.SIAM PARADICE/少女隊
作曲編曲が細野晴臣。ただし書き下ろしではなく、過去の作品の「リサイクル」とライナーノーツに書かれています。それにしても80年代でこのとんがり方はちょっと意外なほど良くできています。こんなこともやっていたんだ、カッコいいぞ少女隊!

M17.天使のゆびさき/西村知美
「天使の○○/西村〜」と書いていると「まゆ子」を思い出してしまいますが、あ、同調者少ないですね。まあ良いです。これも松本隆/細野晴臣コンビ。すごいプレミアムなイメージの組み合わせなんですが、結構むちゃくちゃ量産してるんですね。

M18.時代よ変われ/つみきみほ
最後の1曲も松本隆/細野晴臣です。

はい、「イエローマジック歌謡曲」3枚聴き終わりました。とっても疲れた。戸川純とか如月小春とかつみきみほとかもう、懐かしさでオジサンはお腹いっぱいです。このCDずっと聴いてたら、仕事中も柏原よしえの「しあわせ音頭」の「そーれそれそれ」が耳元で鳴ってて、困りました。ちょっとなんか毒消しの音楽を探さないといけませんね。
また、これではまだ足りない、というキャパシティの大きな方には、関連商品として「テクノマジック歌謡曲」というのもあるようです。「芳賀ゆい」とか入ってるらしいですよ。

2009/11/15

イエローマジック歌謡曲 DISC-2/様々なアーティスト

バンドに演奏をさせようと思うと、楽器の数だけ他人の目に晒されるわけですから、意識するにしろしないにしろ作り手側にも体面みたいなことが気になるんだと思うのですが、シンセサイザーは曲を評価することもしないし、いやがることもありません。電気代以外のギャラもいりませんから、前衛的な実験もできるし、どんなレベルの低い冗談も実現できます。
80年代にいわゆるテクノサウンドの歌謡曲がこんなに増殖したのは、音色の流行以上に予算やスタジオ・ミュージシャンをマネージメントする手間を大幅に省けることが最大の理由だと思います。

なんてことを考えながら、「イエローマジック歌謡曲」のDISC-2を聴きます。


M1.赤道小町ドキッ/山下久美子
作詞・松本隆、作曲が細野晴臣です。独特の存在感はありながらも大ヒットが無かった山下久美子の代表作になりましたが、本来のスタイルと違ったのがその後の悩みになったか?

M2.サマルカンド大通り/スーザン
作曲・編曲が高橋幸宏。DISC-1にも出てきた人です。声といい、メロディといい、今から始まるアニメの主題歌などにするととても良いと思います。ていうか、最近こんな曲無かったですかね?

M3.哀愁のデスマッチ・ラブ<予告編>/アゴ&キンゾー
これも作曲・編曲が高橋幸宏。なんだっけこれ?

M4.夏の雫/三田寛子
若い人には想像もつかないでしょうが、三田寛子がアイドル歌手で、ひょっとするとポスト山口百恵かもと思われていた時期があったんです。この曲はたしかデビュー曲「駆けてきた処女」の次の曲だったと思います。阿木燿子と井上陽水が作った曲を坂本龍一が編曲しています。

M5.ハートブレイク太陽族/スターボー
ある意味DISC-2の最大の聴きどころがこの曲でしょう。
松本隆と細野晴臣が組んだにも関わらず大コケにこけたプロジェクト。そのコケ方があまりに見事だったので却って歴史的存在になっています。

今聴くと「シブがき隊」を女の子にやらせてみた、以外の意図が見えませんが、「太陽系10番目の惑星からやってきた」と頭がガンガンするような設定など、相当に作り込まれた商品です。おそらく狙いは「じつは女の子なのに男のアイドルよりも女の子に騒がれる」みたいな完成図を夢見ていたのではないかと思うのですが、結局は男の子にも女の子にも受け入れられずに早々に撤退することになりました。普通にカワイイ女の子を一人混ぜておけばPerfumeになったのかもしれない。

M6.しあわせ音頭/柏原よしえ
作曲が細野晴臣です。聴けば分かりますね。はっぴいえんどとYMOの間で細野晴臣が作っていた「チャンキー・ミュージック」が形を変えてアイドル歌手の、しかもノベルティ的作品として再現されたのがこの曲。イントロは「大ちゃん数え唄」ですが、そこからは沖縄民謡風です。柏原よしえ(芳恵)と酒井法子って声とか存在感が良く似てますね。

M7.コズミック・サーフィン/コズミック・インベンション
初期YMOの作品に近田春夫が歌詞を付けて歌われています。歌ってる人がどういう人なのか、ライナーノーツを見てもよく分かりませんが、それにしてもこの、3分で書いたような歌詞はすごすぎる。

M8.ねらわれた少女/真鍋ちえみ
M9.ロマンチスト/真鍋ちえみ
この2曲は作詞・阿久悠、作曲・細野晴臣です。真鍋ちえみはパンジーというアイドル3人組の一人で、あとのメンバーは北原佐和子とえーと、忘れました。真鍋ちえみも顔を覚えていません。北原佐和子は顔がきれいだったので良く覚えているんですが…。M8の眉村卓なタイトルもなんか絡んでたのかとか全て記憶にありません。

M10.雪列車/前川清
糸井重里と坂本龍一という「若者たちの神々」が合作した曲を「大人の音楽」の本丸であるムード歌謡のエース・前川清に歌わせる、という意欲作。前川清にとってもキャリアの中でこれほどの冒険は、ずっと後の福山雅治作品を歌った「ひまわり」くらいではないかと思います。コーラス最後の「どおぞー」の「お」以外は白鍵だけで弾けるのが意外。坂本龍一はおそらく自分で歌うのは好きな人ではないけれど、理論の抽き出しが一杯あるので、「歌曲の定石」みたいな理詰めなメロディ作りをやるのでしょうね。素人が指摘できるような破綻はしない。


M11.三国志ラヴ・テーマ/小池玉緒
NHK人形劇のテーマソングだそうだが、私は全く見ていなかったので分かりません。細野晴臣が作詞作曲編曲という珍しい曲です。

M12.I Like Best/山田邦子
作詞が山田邦子、作曲が矢野顕子、編曲が坂本龍一。収録されているアルバムのタイトルが「贅沢者」。音楽番組などには出演を渋りつつ、こういう「お笑い」関連に気軽な感じで取り組んで意外性を見せるところがYMO流。

M13.哲学しよう/山田邦子
山田邦子が上昇カーブを描いていた頃ですね。ひょうきん族に出始めた頃は今で言うと青木さやかと柳原可奈子を足して2で割らないくらいの面白さがあったんですけどね。

M14.だってホルモンラブ/伊武雅刀
作曲が細野晴臣。「おちゃっぴー」って!死語だということに誰も気づかないくらいの死語ですね。

M15.ティーン・エイジ・イーグルス/イモ欽トリオ
あー、もう分からないわ。作詞・松本隆、作曲・細野晴臣の布陣は変わってないんですが。

M16.きたかチョーサン まってたドン/川上さんと長島さん
今でもときどきテレビで見かけるプリティ長嶋と、多分今は北海道でラジオを聴けば会えるドン川上(DON)が初期の「笑っていいとも!」で人気が出たことから発売された企画もの。作曲と編曲が細野晴臣です。

M17.君の名はサイコ/郷ひろみ
作詞・糸井重里、作曲編曲・坂本龍一。
M18.毎日僕を愛して/郷ひろみ
詞と曲が矢野顕子、編曲が坂本龍一。

M18.From Tokyo-Endingメロディーはリピートで/ユミ
「もしも世界にタヌキがいたら」のB面なのだそうです。懐かしいなー「なるほど!ザ・ワールド」。
歌ってる「ユミ」は名物リポーターの「ひょうきん由美」ではなく遠藤由美子です。結構可愛かったのにすぐにいなくなっちゃったんだよなー(遠い目)。「メロディー」って今は(最後の音引きを)書かないこと無いですか?時代です。
ていうかなぜA面の方を入れてないんだろう、このCD?

DISC-3では松田聖子が登場しますよ。

2009/11/14

イエローマジック歌謡曲 DISC-1/様々なアーティスト

シンセサイザー奏者出身の作曲家・音楽プロデューサーである小室哲哉の話を2回に渡って書きましたが、もちろんそういう音楽を彼一人が作り上げたわけではなく、その前のほぼ10年間、80年代全体に渡ってテクノポップとその派生商品というものがたくさんありました。歌わないキーボード奏者といえば坂本龍一なんていう大物もすでにいたわけです。

たまたまTM NETWORKのベスト盤を探しに行った山野楽器でこんなのみつけました。
「イエローマジック歌謡曲」CD3枚組で4200円。YMOの3人が何かの形で関わった「歌謡曲」のオムニバスアルバムです。こんなのあるんだなあ…。


今ではテクノのことなんかおくびにも出さないアコースティックなイメージの人が、80年代には時代に乗っかってピコピコサウンドに乗っかって歌っていたこともバレてしまいます。
3日間連続で休みをもらったので、三夜連続でご紹介しましょう。今日はDISC-1です。

M1.YELLOW MAGIC CARNIVAL/マナ
あーいたいた。マンガで描いた中村紘子みたいな容貌の、国籍不明の女の子でした。今聴くとイントロが無茶苦茶レトロなんですね。作詞作曲が細野晴臣、編曲は鈴木茂です。

M2.エレクトリック・ラブ・ストーリー/近田春夫
この柴田恭平のような水谷豊のような南佳孝のような声で、芝居っ気たっぷりに歌っているのが、「音楽界の小林秀雄」こと近田春夫御大です。ちょっとキンモクセイに似ています。編曲が細野晴臣。そして作詞がなぜかあの漫画家・楳図かずおです。おそらく近田春夫との髪型や全体の相似性にちなんだ洒落でしょう。80年代はそれが通用した良い時代でした。

M3.ユー・メイ・ドリーム/シーナ&ザ・ロケット
作曲が鮎川誠と細野晴臣の共作になっています。シンプルなロックンローラーのイメージがある鮎川誠ですが、実は細野人脈から出てきた人なんですね。

M4.チャイナ ローズ/金井夕子
作曲が細野晴臣、編曲が細野+坂本龍一。伊東ゆかりっぽいこの人はスタ誕出身で、歌唱も外見も中庸な人でしたが、ヒット曲には恵まれませんでしたね。

M5.憧れのラジオ・ガール/南佳孝
リズム&ストリングスアレンジに坂本龍一の名が。この人は今「テクノってなに?」って感じでやってますけどね。ボコーダーって和音の演奏できたんだっけ?多重録音?

M6.夜の翼/南佳孝
M5と同じ布陣です。作詞は2曲とも松本隆。この曲は聴いたこと無かったな。

M7.IDOL ERA/サンディー
作曲・編曲が細野晴臣。この人も知らない。"ERA"ってなんだろ?と思ってGOO辞書で調べたら"〔Equal Rights Amendment〕男女平等の観点からアメリカ合衆国憲法の修正を求める修正条項のこと。"なんだそうです。難しいな。このメロディは違う曲名でYMOがやってるような気がするが、ちょっとすぐに分かりません。細野さんって同じ基本コンポーネンツでたくさん曲作りますからね。

M8.CARNAVAL/大貫妙子
大貫妙子が作詞・作曲。編曲が坂本龍一です。電子楽器で構成されていますが演奏形態はロック的。大貫妙子の声がシンセベースの上に乗っかってるのも今聴くと貴重な気がします。

M9.AH! SOKA/スーザン
作曲が細野晴臣、作詞と編曲が高橋幸宏。高橋幸宏で編曲するんだ、と今更ながら。高橋幸宏が鼻歌歌うのを坂本龍一が「しょーがねーなー」って形にするのがYMOだと思っていたので。それにしても耳に残る曲ですね。今をときめくおバカタレントがカバーすると良いと思う。

M10.浮かびのビーチガール/シーナ&ザ・ロケット
作曲・編曲がYMOとなっています。

M11.ラジオと二人/ラジ
作詞・糸井重里、作曲・杉真理。編曲が高橋幸宏。普通の歌謡曲を電子音楽でやってるだけのような気がしてしまう。ラジという人は声が良くて、いろんなアーティストの作品で印象的なコーラスをやってる人。大瀧詠一の「ロング・バケーション」で「ふ」う「け」い「が」とやってる人もこの人。「さんぽしない?」は別の大物歌手。

M12.アパルトマン/ラジ
こちらは作詞作曲が大貫妙子。編曲が高橋幸宏。こっちの方が大人っぽくて好き。

M13.春咲小紅/矢野顕子
作詞・糸井重里、作曲・矢野顕子。編曲がymoymoとなっていますが、もちろんYMO。売上枚数的には多分、矢野顕子史上最大のヒットでしょう。化粧品のCMソングでした。「みーにみにー」のバックのコードが教授っぽいですね。

M14.ハイスクール ララバイ/イモ欽トリオ
作曲・編曲が細野晴臣、作詞が松本隆。DISC-1最大のヒット曲がこれかな?世間の人が思うYMOの音をかなり甘口に再現したサウンド。山口良一らがバックでやってたコードの差し替えみたいな振り付けは松武秀樹の作業を表していたのでしょう。

M15.コンピューターおばあちゃん/酒井司優子
NHK「みんなのうた」の名作として知られる曲。編曲が坂本龍一。

M16.恋はルンルン/伊藤つかさ
作曲・編曲が坂本龍一です。21世紀に聴くと脳みそが痒くなりますが、この後まだ菊池桃子とかもいましたからね。すごかったな80年代。転調あり、音域はA#3〜E5くらいで意外と幅を使ってます。かなり苦しいけどね。

M17.ティアドロップ探偵団/イモ欽トリオ
M14と同じく作曲・編曲が細野晴臣、作詞が松本隆。前作が思いのほか成功したので、もう少し趣味的にしてみた感じでしょうか?シンセサイザーは使っているのでしょうが、テクノポップというよりも思い切りサーフィンミュージックになっていますが、当時は気がつきませんでした。残像効果ってやつですね。松本隆のレトロな歌詞の世界を細野晴臣が疑似60年代サウンドで受けとめた、コンビ芸なのでしょう。

M18.プリティ・ボーイ…大丈夫?/中原理恵
作詞作曲編曲が高橋幸宏。解説を見て思い出したんですが、ここで中原理恵が出てくるのはイモ欽トリオと同様に欽ちゃんファミリーとしての括りなんですね。この人、デビューした時はシンガー・ソングライターという触れ込みだったのですが、とうとうオリジナル曲を聴く機会は寡聞にしてありませんでした。歌はうまいんですけどね。

というわけで、さらに有名なネタが多いDISC-2に続きます。

2009/07/12

C-Girl/浅香唯

大井町の駅前に臨時の中古CD/DVDの店が出ています。CDは値札に関係なく300円。掘り出し物を探していたら、以前書いた「青春歌年鑑」の続編をいくつか発見。といっても3つくらいですが、その中から「続・青春歌年鑑'88 PLUS」というのを買ってきました。「続」かつ「PLUS」ですから一体何匹目のドジョウなのかも分かりませんが、ちょっと良い曲が入っていたので。

はっきり云ってまったく興味ないのも入っているので以前のように熱心に全曲紹介などはしませんが、私がまだ25歳くらいで音楽を良く聴いていた頃のものなので、懐かしいことは懐かしい。時代としてはおニャン子死して工藤静香を残した時期であり、中森明菜の全盛期であり、菊池桃子がラ・ムーでロック(!?)を歌っていた頃。一方、フォークシンガー武田鉄矢がCMタイアップで演歌のデュエット曲を発売し、「『暮れなずむ町の光と影の中』と歌っていた俺が、今は同じ風景を『夜の帳が下りて町に灯がともる』と歌っている」と自虐ギャグを飛ばしていた頃です(全部入ってます)。

テクノロジー的にはデジタルエフェクターの類い、特にデジタルエコーとその派生品と思われるハーモナイザーやらピッチシフターが一般化して、「うまい人はよりうまく、そうでない人もそれなりに聞こえます」という処理がされるようになっています。中山美穂もディスクで聴けば実力派。シンセサイザーは何の断りも無く多用され、ほとんど打ち込みだけのオケの曲も多いです。そうでない曲もスネアドラムの音はみんな「びしゃあ」という音がします。シモンズでしょうか。

さて、そんな中から選ぶのは浅香唯の"C-Girl"です。当時TVで聴いてあんまりかっこ良かったもんでアルバム"Candid Girl"を買ってきてしまいました。恥ずかしながら!


この直前に歌った「ビリーヴ・アゲイン」あたりからベスト10番組に出始めて、声もだいぶ出るようになっていた印象があります。"C-Girl"は、吉川晃司作品等でロックサウンドの曲を職人的に作っていたNOBODYの作品。浅香唯はこの曲を松田聖子風の大きなビブラートで歌っています。作詞・森雪之丞/作曲・NOBODY/編曲・井上鑑。音域はA3-A#4のようです。当時はもっとうまく聞こえましたが、今聴くとやはりアイドル発声ですね。昭和のアイドルとはいえ、当時すでに鼻濁音なんて流行らなくなっていて、彼女も意識しては使ってないようですが、なぜか英語である"Girl"の頭に「ん」の音が入っているのが愛嬌。

今聴くと、楽器が新しくなったビーチボーイズのように感じてしまいますが、当時はこれで十分高揚感がありました。この後、彼女はさらにロック色の強い曲を歌うようになったと記憶していますが、思いのほかピークが短く(ルックスなんか松田聖子よりよっぽど可愛いと思うんだが)恋愛問題等の理由かなにかで第一線から退いてしまいました。

2008/10/28

綺麗ア・ラ・モード/中川翔子

この1ヶ月、結果として筒美京平作品をたくさん聴いてきました。Wikipediaによると1967年から専業作曲家として活動しているということですから、40年に渡って流行歌を作り続けているといることになります。作曲家別シングル売上枚数日本一、だそうで、恐ろしいことです。

そして、まったくの偶然だったのですが、数週間前に"HEY! HEY! HEY!"を見ていたら中川翔子が出てきて、新曲は松本隆/筒美京平コンビだと言って唄っていました。また、松田聖子を「神」とあがめているということも語っていました。ちょっと待て、プロフィールによると彼女は松田聖子が結婚した1985年生まれで、松田聖子が神がかっている頃(結婚直前の2年間くらい)のことは生では見ていないはず。若い彼女がどうしてそこまで影響されたのかは良く分かりません。亡くなった父親の影響、ということらしいのですが…。

なんにせよ、この曲は中川翔子がする「松田聖子ごっこ」のために松本隆と筒美京平が一肌脱いだ、ということなのでしょう。
実際には、松田聖子の代表的シングル曲は筒美京平よりも80年代ニューミュージックのアーティストが関わっているわけで、忠実にやるならユーミンか財津和夫を起用するのがスジですが、ちょっとそこまでのキャスティング(?)は無理だったか。ただし、筒美京平もアルバムには曲を提供しており、無縁ではありません。そしてこのコンビは前回までしつこく書いていた南沙織、太田裕美の曲を作っていた二人ですから、話はちゃんと繋がっています。

では聴いてみましょう。ソニー系のためiTSでは落とすことができませんので(とっとと白旗上げてiTSの軍門に下って欲しい。ソニー系にはよい邦楽のコンテンツが揃っていますからね)、アマゾンで注文してしまいました。



いきなりピアノのお稽古風イントロから、分かりやすいベースラインで進行していきます。この辺は80年代のニューミュージック系作家が好んだ(というか、それしかできなかったりもする)コード進行で、ストリングスが美しいアレンジと相まって、「野ばらのエチュード」から「ガラスの林檎」の頃の松田聖子のイメージを忠実に再現しています。筒美京平はフォークソング系アーティストの曲作りのマネも上手で、私はずっと「赤い風船」は吉田拓郎の曲だと勘違いしていましたし、「しあわせ未満」の転調する前にもそんな雰囲気があります。おそらく松田聖子ファンなら、アルバムの中の「xx」に似ている、と指摘できると思うのですが、残念ながら私はそれほど熱心な聖子ファンではなく、細かい元ネタの照合ができないのが残念です。ちゃんと勉強しておけば良かった!

TVで聴いていた時は「ずいぶんキーが高いなあ」と思っていましたが、これは私が絶対音感を持っていないせいで、楽器で拾ってみたらC#5くらいまででした。中川翔子の声質と、半音刻みで上がっていくメロディに騙されました。実際には1オクターブそこそこの範囲で歌メロができています。さすがアイドル歌謡を作り続けて数十年のテクニックは素晴らしいです。
大雑把にいうとA-B-Cと展開するメロディもAよりB、BよりCと尺が長くなっていくので、サビに行くまでが早い早い。この辺、今のJ-POPに望まれる構成というのをしっかり意識していて、前半の状況説明的メロディは極端に短く作ってあります。

一方、作詞の松本隆も松田聖子的単語(「矢」とか「次元」とか「硝子」とか)を散りばめながら、あいかわらず女の子の視点(今風に言うと目線か)からの描写がうまい。「薬指の長い手が好き」は、実際私の乏しい経験に照らしても、女の子ってのは男の「手」の形状を良く観察してますからね。竹内久美子的にも合ってる。ここの描写は「タバコの匂いのシャツ」に対応している部分だと思います。

中川翔子の歌唱は80年代当時のアイドル(松田聖子じゃないよ)のような破綻はなく、うまいと言えばうまい。
ただし、声がアニメソング的で匿名性が高く、名前を言われないと誰が唄っているのか分からない感じがします。松田聖子よりも森口博子に近い感じ。
やはり数週間前のことですが、週刊朝日で連載されている林真理子の突っ込みの甘い対談(あれは何故ホステスが林真理子なんだろう?そのレベルは文春の阿川佐和子と比べるまでも無い)に松本隆が出ていて、その中で(うろ覚えですが)「中川翔子はまだアイドルのコスプレをやっている状態だから、もっと自分をしっかり出せば大成できる」というような発言をしていました。多分、その辺のことを言っているのだと思います。今のままではカラオケボックスのスターで終ってしまう。声は出るので、そこに自分の肉体をのせるような表現をすれば、匿名性は克服されるんじゃないでしょうか?
しかし、彼女の実年齢は23歳。化ける時間が残っているのか?かなり微妙です。渡辺プロ(今はワタナベエンターテインメントだっけ)は昔からアイドルのデビューが遅くて、売れる頃には実年齢が大人になっていることが多いのです。今、彼女が16歳だったらすごい事になると思うけど。


ちなみにC/Wの2曲も良かったです。「カミツレ」は松田聖子でいうと"Rock'n Rouge"の頃のイメージ。こっちが「A面」でも良い。
3曲目の「約束」は斉藤由貴の「卒業」をなぞったような、ギターの3フィンガー奏法がハマるフォーク調。歌詞の道具立ても「レコード」とか「ウイスキー・ソーダ」とか昔のアイテムを並べて、何がしたかったのかというと、携帯電話が無い頃の若者の恋はロマンティックだろう?とお父さん(お爺さん?)世代から今を生きる中川翔子へのメッセージになっています。

2008/10/19

GOLDEN☆BEST[Disc 2]/太田裕美

いよいよ息が続かなくなったので、太田裕美の後半を通って現代に戻りましょう。
"Hiromi Ohta GOLDEN☆BEST Complete Singles Collection"のDisc2を聴いていきます。

ここ何回分かやってきたように、楽器を持って太田裕美の声域を拾ってみると、デビュー後しばらくはG#3〜B4あたりを地声で出し、C5〜E5あたりをファルセットで出す、というのが一定の範囲になっているようです。その後、低音方面にレンジが拡大してE3くらいまでが使われるようになります。印象よりもキーが低いんですね。
さて、こちらDisc2は、アメリカ留学(?)による休業宣言時に発売された、1981年の「君と歩いた青春」から始まって、帰国後の(どっちかというとファンの方が)ぶっ飛んだニューウェイヴ路線の曲、さらに結婚後の開店休業時代を通り抜けて(2002年)現在に繋がっています。ちなみに太田裕美は今も、伊勢正三や大野真澄(ガロの人)と組んで精力的にコンサートをし、ぽつりぽつりと新作を発表し続けています。

太田裕美は、ヒット曲を連発しているときでもミュージックシーンの真ん中にいる感じではなかったので、彼女の流れを追ってもこの25年間の日本のポップスを振り返れるわけではありませんが、これもまた歴史の側面であるということで、ひとつおつきあい願います。


M1.君と歩いた青春
渡米前の、ファンへのけじめのような形で発売された曲。実は1976年発売のアルバム「12ページの詩集」の中に入っている、ファンにはお馴染みの曲です(たぶん録音はしなおしている)。タイトルがあまりにそのままだったのが、熱心なファンの涙を誘いました。
作詞・作曲は元・かぐや姫で元・風の伊勢正三。この人は「地方出身の大学生が卒業間際に恋人と別れる場面」というネタで詩を書かせると日本一で、他にも「なごり雪」「海岸通り」などがほぼ同じテーマです。「君と歩いた青春」の二人は同郷の幼なじみで、子どもの頃は近所の仲間と男も女も無く自然の中を駆け回っていたが、二人だけが(進学か就職で)上京したようです。同郷の二人が都会で暮らす内に異性としての関係に発展したものの、上手くいかなくなって女の子は故郷に帰る、という話です。
これは、個々のシチュエーションの違いはあれ、二十歳前後の若者にとっては恋愛の黄金パターンです。
「グループ交際」内での(精神的なものも含め)ぬけがけ、三角関係、乗り換え、などを経験するうちに、お互いに深く傷ついたり、「最初に声をかけたのは僕だったよねー」とヤクタイの無い自問自答を繰り返す。そうして若者は大人になったり、なりきらなかったりして生きていくわけです。
同名のアルバムジャケットの、内巻きカールで微妙な表情をしたポートレートには、これまでは皆様の夢(幻想)におつき合いしましたが、この先は分かりませんよ、というメッセージが込められていたように思います。


M2.ロンリー・ピーポーⅡ
太田裕美は半年の予定を延長し、結局渡米による空白期は1年を越えました。アルバム「君と歩いた青春」からおよそ1年半経って、アルバム"Far East"で復帰を果たします。
このアルバムは(買ったので良く覚えていますが)、A面はアメリカ人作家による「ニューヨーク・サイド」、B面はその後展開するニューウェイヴ風「トーキョー・サイド」という成り立ち。A面ではAORな風味満載で、なぜか日野皓正のラッパまで入っています。これもなかなか良いものでしたが、彼女はそちらの路線にはいかずにB面のニューウェイヴ路線を過激に発展させていきます。その勢いは、なにかの反動か、とも思えるものでした。
太田裕美は(私の記憶が確かならば)たった一度「ザ・ベストテン」に出演したときにこの曲を歌いましたが、それはランクインしたのではなく、ニューヨーク生活を小説風に書いた「八番街51丁目より」が一部で注目されたことによる「スポットライト」コーナーでの出演でした。


M3.満月の夜 君んちへ行ったよ
いよいよニューウェイヴ路線が本格化し、作詞には山元みき子(=銀色夏生)の起用が増え、アレンジャーには大村雅朗や板倉文(小川美潮とチャクラをやってた人)、バナナ(=川島裕二?)といった名前が出てくるようになります。
この曲は、まるで「新・怪物くん」のテーマみたいですが、子どもっぽいフォーマットの中に辛辣な男女関係も読み取れる、不思議な世界が展開されます。ここまで過去のイメージを捨てて、やっと太田裕美は年齢を超越するとともに、舌足らずの発音のまま成人としてやることやってる男女の歌を唄うようになれた、とも言えます。
私は、同じく太田裕美好きの友人とこの頃の太田裕美のコンサートに行きましたが、「木綿のハンカチーフ」までもぐじゃぐじゃのニューウェイヴ調で唄う太田裕美をみて、「こんなの太田裕美じゃない」と怒って帰っていきました。"Far East"で予習が済んでいた私には想定内のことでしたが、そういう反応はこのころ全国いたるところで見られたんだと思います。

M4.青い実の瞳
太田裕美流ニューウェイヴ路線の頂点がこの辺り。この頃はジャケット写真もつんつんの刈り上げです(アルバム「君と歩いた青春」とのギャップを見よ)。すでに戸川純がメジャーになりつつある80年代の気分を積極的に吸い込んでいった結果がこれ。



M5.雨の音が聞こえる
1984年に結婚による休業が発表され、ニューウェイヴ路線での活動は2年弱で中断することになります。この曲は太田裕美にとっての「微笑がえし」であり「さよならの向う側」です。作詞は当時のお気に入り山元みき子、作曲は筒美京平。編曲は板倉文とバナナの連名になっていて、当時の路線のサウンドに筒美京平メロディが乗っかっているという作り。確か唯一の12インチシングルとして発売されたと思いますが、私は買ってません。なぜ松本隆が絡んでこなかったのかは良く分かりませんでした。

M6.はじめてのラブレター
1992年に童謡を唄ったアルバム「どんじゃらほい」を発売し、1993年になってオリジナルを発表するようになります。もっとも88年の遊佐未森のアルバムには曲を提供しているので、空白期間中も「内職」はやっていたようですが。「ママドル」を目指していたのかは(その時代にそういう言い方があったのかも)分かりません。

M8.ファーストレディーになろう
これは確か、化粧品販売会社のCMに使われていたと思います(○○レディになろう、ということで)。作曲と演奏にゴンチチが加わっています。太田裕美っていう人は、この辺のカルチャーっぽい人を呼び寄せる力が強い人ですね。
聴いていると、ゴンチチの演奏はカッコいいですし、喉を酷使していないせいか、音域も広がっているようです。
とはいえ、実生活に(たぶん)即した主婦・母親ものは、本人にとってはいちばん素直な表現なのだと思いますが、私ら昔の男の子たちはどこで絡んでいいか良く分からないです。

M9.魂のピリオド
その点、松本隆はツボを心得ていて、久しぶりの松本隆/筒美京平コンビの作品は、ちゃんと恋愛ものになっています。淡い不倫ものと思われる歌詞の内容ですが、おそらく松本隆と太田裕美の、この25年にわたる関係の隠喩であろうと思われます。女性の方が飛行機の切符を隠し持っているからね。

M10.僕は君の涙
太田裕美はソングライターとしてはそれほど鋭さを持った作家ではない、と私は思っています。彼女が書いた曲で印象に残っているのは3曲くらいしかないんですが、これはその1つ。女性がこぼした涙が循環してワインになって彼女の元にもどってきましたよ、という童話っぽい話。たしか「みんなのうた」かなんかで放送されていたと思います。「きーみーの、ひーとみから」の跳躍は筒美京平から払い下げてもらったようなメロディですが、強いて言えばこれが太田裕美節なんでしょう。

M16.風信子(ルビは「ヒヤシンス」)
M13、M14と原田真二、はっぴいえんどのカバーが続きます(そういうミニアルバムを1999年頃出していた)。この曲は私は知らなかったけれど、鈴木茂のカバーだと思います。明るい曲ではないけれど、単純なマイナーコードの曲ではなく、かなり凝った作り。初出がなんなのか分からず、オフィシャルサイトで探したら、2000年に出たベスト盤の特典として入っていたようです。

M17.First Quarter〜上弦の月〜
こちらは1999年に出た11,000円する「25周年メモリアルBOX」に収録された曲。25年間皆勤賞でつき合ってくれたファン向けとして、分かりやすい曲です。アコースティックな中にポップさがあって、たしかにファンは気に入るだろうな、という良くまとまった曲になっています。きちんと照合した上での感想では無いけれど、たぶんポリスの「みつめていたい」を参考にしていると思われます。「みつめていたい」を下敷きにした曲は、いったい日本に何曲あるのだろう?

2008/10/18

南沙織ベストコレクション/南沙織

沢田研二に続いて、もう1枚聴いてから現代に向かおうと思います。先日来拘っていた南沙織です。

本当はiTunesでダウンロードできればいいんですけど、ソニー系は相変わらずiTMSに対してかたくなな態度を続けています。消費者は不便しているので、寛大な心でiTMSに結集していただけないですかね(どうせ負けてんだし!)。


さて本題です。
南沙織は私が小学校の低学年の頃から唄っていたので、ものすごく昔の歌謡曲の人という印象なんですが、年齢で言うと太田裕美や竹内まりやと同学年なので、活躍時期がもう少し遅ければ、私が中学生くらいで夢中になっていてもおかしくなかった人です。デビューが早すぎたんですね。

そして、この「ベストコレクション」のラインナップ(後で紹介します)を見ると、15曲のうち12曲の作曲/編曲が筒美京平(作詞は有馬三恵子)です。そうか、南沙織を聴くことは初期の筒美京平を(アレンジ込みで)聴くことでもあったのか!なんかいろいろと繋がってきます。


先日の「青春歌年鑑('73年)」を聴いている時も突出して聴こえたのですが、この人は絶対歌うまいです、今風の意味で。最終的には彼女はレコード大賞の歌唱賞(最優秀ではない)を受賞していますが、現役時代を通じて、アイドルとしての評価はあっても「うまい」という言われ方はあまりされていなかったように思います。

その理由を考えてみると、一つには、彼女は本土復帰前の沖縄から「来日」してきたということ。これは当時の日本人の感覚では、「舶来品=プレミアム」である一方、「違和感」でもありました。いずれにせよ、「外国人枠」のアイドルだったので、そういう(うまいとかへたとかの)問題をきちんと考察する機会がなかったんだと思います。

もう一つ本質的なところでは、彼女の声がそれまでの歌謡曲にあまりいなかったタイプだからだと思います。
当時の日本の一般大衆が「いい声」と思うのは、小柳ルミ子のような声を頂点とする「音楽学校で発声を習ったソプラノ系」でした。南沙織の声はそれとは対称的な、低音成分の豊かな声で、エレキギターでいうとオーバードライブを繋いだような太さがあります。しかも低音から高音までその発声法が変わらない(すばらしい!)ので、どのくらいの音域があるのかもちょっと分かりにくい。
実際にこの15曲を聴く間、EZ-EGで音を取っていたのですが、確認できただけで下はF3、上はD5と2オクターブ近く使っています。これはポピュラー音楽としては必要十分なレンジです。一人アカペラの達人・山下達郎だって、ラジオで「どのくらい音域がありますか?」と質問されると「下はA(2)、2オクターブ上のA(4)。その上はファルセット」と答えていましたから。

そういうことを考えると、南沙織というのは、この間ずっと活動していた結果、「実力派アーティスト」として扱われている竹内まりやなどと同じグループに入れた方が良いと思います。ただし、非常に若い時にデビューして、評価が固まる前に引退したため、「実力派」としての実績が残ってないことは、傍目にはもったいないですね。
しかし、彼女は人気絶頂の時から「引退」を口にして騒ぎを起こしていましたから、あまり芸能人であり続けることに興味が無かった人なのかもしれませんね(あるいは南国娘の情熱で、恋をするとほかのことはどうでもよくなっちゃう性格だ、という妄想の余地もある)。


それでは、聴いていきましょう。忘れている曲も多かったんですが、聴けば「ああ、これだったのか」と思うものばかり。
M1.17才
「たしかめたくってえー」の2個目の「た」の音が森高千里版より2音階高い。昔NHKのドラマで昭和40年代の風景として子どもがこの歌を唄っている場面がありましたが、ここのメロディが森高版だったので「チェック甘いぞ」と画面につっこんだことがありました。この曲、エレキギターの音が入っていないんですね。

M2.潮風のメロディー
これもエレキギター無し。ビートはエレキベースで支えられています。ストリングスがカッコイイ。近田春夫がよく褒めているのはこの辺なのかしら。

M4.純潔
イントロからエレキギター全開で始まります。ブラスの音も派手で、南沙織にしてはうるさめの曲です。当時の歌謡曲の歌手としてはめずらしく、自分の声をダビングしてコーラスをつけています。後に太田裕美も多用しますし、今では常識ですが、この当時にやっていたということは、南沙織は楽譜が読める人だったのかもしれません。

M5.哀愁のページ
冒頭、英語のセリフが入っています。内容は日本人が考えたような文章ですけど。バイリンガルと声質のせいで、どうしても竹内まりやとキャラクターがかぶります。南沙織も上智大学卒業直前くらいでデビューしていたら、全然違うアーティストになっていたかもしれませんが、そうするとどっちかがいらなくなっちゃうか!

M6.早春の港
アコースティック・ギターのスリーフィンガー奏法がずっと続くこの曲は、当時のフォーク青年の心にも響いたようで、Wikipediaによると吉田拓郎の「シンシア」はこの曲へのアンサーソングなのだそうです。

M7.傷つく世代
子どもの頃はこの曲が一番好きだったなあ。アイドル歌手としての可憐さが爆発している曲。曲もそうだが、南沙織が従来の歌謡曲的テクニックを駆使して、若い女の子としての色気を思い切り使ってみた感じ。

M8.色づく街
彼女の代表曲として有名な曲。「すこしおとなすぎる」のポリリズムっぽいのせ方がアクセントになっています。これだけアイデアが入って演奏時間は2分51秒しかありません。贅沢だなあ。ときどきリズムが走り気味に聴こえるのが味になっています。
このM6〜M8の3曲は甲乙付け難く、1973年は南沙織と筒美京平コンビの絶頂期、という感じがします。

M10.バラのかげり
この辺りの曲は、このまま太田裕美が唄っても全く違和感がなさそう。この曲は「ドール」なんかに似ているので、特にそんな気がします。

M12.思い出通り
M9〜M11が重苦しかったので、ここで一息つけます。この辺までくると声の使い方がかなり多彩になっていて、それまでよりかなり軽く唄えるようになっています。彼女なりに芸の完成に近づいている感じがします。

M13.人恋しくて
筒美京平作品から「春うらら」で有名な田山雅充に作曲家が変わっています。ベースが頑張っていますね。この曲でレコード大賞の歌唱賞だったそうです。上手いだけならM7やM12の方が上手く唄っていると思いますが、こういうものは「欲しい」と言わないともらえないものですから、いろいろ事情があったんでしょうね。

M14.哀しい妖精
作曲がジャニス・イアンという、南沙織の記念碑的作品。作詞はすでに太田裕美作品等でも活躍していた松本隆です。南沙織自身はこういう方向の音楽が好きだったんでしょうね。そういえば、「夜のヒットスタジオ」でアリスと共演してとても喜んでいました。彼女が育った頃の沖縄ではどんな音楽が流行っていたのかしりませんが、もともと日本の歌謡曲よりも外国曲やシンガー・ソングライター的なものへの嗜好が強い人だったのでしょう。


M15.春の予感~I've been mellow~
作詞・作曲・編曲が尾崎亜美。
尾崎亜美の曲としても一番好きな曲です。「タイトルが現在完了形だ」と思ったのは憂鬱な中学生だった頃の僕。事実上、彼女の結婚前の最後のヒット曲でしょう。尾崎亜美はこのブログではまだ触れていませんが、山下達郎と並ぶ、自分でアレンジが出来るシンガー・ソングライターの走りで、まあ一言で言えば天才です。南沙織も唄い方がかなり影響されています。このままニューミュージック方面に突っ走るのも大いにありだったと思うんですが、彼女は主婦(篠山紀信夫人)になることを選択しました。

2008/10/12

ROYAL STRAIGHT FLUSH/沢田研二

ディープな歌謡曲の世界から、浅瀬に向かって浮上を開始しています。浮上のついでに、なぜか「青春歌年鑑」に入っていなかった大物、沢田研二を聴きながら行きましょう。
iTunesでも買うことができる、彼の全盛期のベストアルバムである"ROYAL STRAIGHT FLUSH"をダウンロードしてみました。
沢田研二 - ROYAL STRAIGHT FLUSH


沢田研二のことを今更私なんかが紹介することもないと思いますが、ポイントはGS出身で、しかもそのトップにいた存在だったということ。
その後、ちょっとした空白期間の後でソロ歌手として大ヒットを飛ばす一方で、ザ・ピーナッツの片っぽうと結婚したりとか、一般人とのトラブルがあったりして、一瞬もたつきもしたのですが、1977年に「勝手にしやがれ」でレコード大賞を取りました。
その後、当時の子どもがみんな見ていた「ザ・ベストテン」の常連、「一等賞男」として一時代を築きます。
この時期、もうヒットチャートの何割かは「ニューミュージック」に浸食され、歌謡曲の歌い手も時代に乗り遅れまいとニューミュージックのアーティストに楽曲を発注するようになっていました。GSという、日本独自仕様のロックを唄っていた沢田研二が、ニューミュージック勢に対してどんな感情を持っていたかは分かりません。ただ、すでにピンクレディーが消えつつあったこともあり、本人の意識はどうであれ、結果として「歌謡曲側」の最後の牙城のような立場にいました。

この、"ROYAL STRAIGHT FLUSH"は、ソロになった1972年から1979年までに出した多くのシングル曲の中から、大ヒットと言われる曲だけを並べたもの。タイトルは当然、ポーカーでAと絵札を同じマークで全部揃えた最強の手のこと、でしょう。これさえ買っておけば、あとはiTunesで"TOKIO"と「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」を200円ずつ出して補えば、だいたい満足なんじゃないでしょうか?私の好みでは「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」も加えたいところです。

前回、山本リンダのところで書きましたが、「勝手にしやがれ」以降しばらくの間、沢田研二も曲ごとに衣装を決めて、それを常に着て唄っていました。西城秀樹もその少し前に似たようなことをやっていましたが、沢田研二の方が長い期間徹底してやっていたように記憶しています。前回これを「コスプレ歌謡」と便宜上呼ぶことにしたのですが、その裏方に常に阿久悠がいたのはなにか意味があるのだと思います。

これも前回、1973年の歌謡曲を聴く中で、そろそろこの時期から芝居っ気たっぷりの歌謡曲は、聴く側に取って過剰なものと感じられるようになったと思う、という話をしました。
それから5年経って、ソロ・シンガー沢田研二が活躍した70年代の後半以降になると、かたや音程もおぼつかないアイドル歌手が、こなた自作の曲に生の思いをぶつけるように唄うフォーク(ニューミュージック)がすっかりその陣地を広げていました。そんな中でプロの作詞家である阿久悠は、歌手に架空のキャラクターを割り当て、シリーズ化するというやり方で対抗していました。
その最初の成功例が山本リンダ(=セクシーな女王様というキャラ)であり、さらに大成功を収めたのがピンクレディーです。
ピンクレディーは、最初はパンチラお色気路線だったのを、子どもたちがすぐに飛びついたので「お色気」は捨て、SF、オカルト、おとぎ話の方向に展開していきました。

一方その頃、沢田研二は「当代一のいい男」でした。今で言うと木村拓哉みたいなものです。系統も同じ「雨に濡れた子犬系」。そんな彼に阿久悠はどんなキャラクターを設定したでしょうか?そんな興味を持ちつつ、中身を聴いてみたいと思います。
ベスト盤というと、年代順に並んでいることが多いのですが、このアルバムでは制作側の意図で曲順が変えられています。

M1.カサブランカ・ダンディ
イントロで、ジーンズに挟んだ携帯用ボトルのバーボン(たぶん)を口に含み、霧を吹きながら歌った曲。ドラムス、パーカッション、ギター、ピアノ、ベースというシンプルなバンドサウンド。そういえば、沢田研二は70年代の前半から、歌謡番組でも自分専用のバンド(井上堯之バンド)をバックに唄っていました。そのスタイルは一部で「(いい意味も悪い意味も無く)歌謡ロック」といわれました。それを参考にして「今の一般的な日本人が受け入れられる限界はこれだ」と戦略を練った上で派手な楽曲を唄い始めたのがアン・ルイスです。沢田研二のサウンドの基本はこのバンド形態にあり、あとは曲の要請によってブラスやストリングスが重ねられています。

M2.ダーリング
セーラー服(本来の、水兵さんの格好)で唄った曲。
M1のバンドにサックスが加わって、後のチェッカーズの音(「ジュリアに傷心」あたりの)になっています。沢田研二の歌唱法の特徴がいろいろと確認できる曲です。「むけてくれえ〜」の低音部の喉を絞めたような発声、キメの「ダーリーン」のロングトーンでの音程が狂いそうで踏みとどまるところの危うさ。細かいことは分かりませんが、特にこの曲ではピッチのアジャストがいい加減です。しかし、それがちゃんと味になっているし、下手とは言えない、絶妙な粗さになっています。

M3.サムライ
青緑っぽいぴたぴたしたシースルーの、後のビジュアル系の人が着ていたような衣装にちっちゃい刀を持って唄っていました。死んだ父は「見るのも嫌だ」と言って、本気で怒っていました(西城秀樹が「ジャガー」を唄っていた時も大変だった)。それだけインパクトがあったんですな。演奏時間が5分を越える、当時の歌謡曲としては例外的に尺が長い曲。

M4.憎みきれないろくでなし
洋ピン(外国人モデルのセクシーなピンナップ写真)のモデルが警官のコスプレをしているような格好で唄っていました。アメリカ警察の制帽にノースリーブの白いシャツと黒いレザーパンツだったんじゃないかな?化粧もちょっと女装風だったと思う。こちらはM1のバンドにブラスセクションが加わっていますね。

M5.勝手にしやがれ
曲の基本はいつものバンドサウンドですが、いつになく厚めのストリングスとブラスが重なっています。
私は元ネタを知らないのですが、伝聞&Wikipediaの記事等で勉強したことを総合すると、直接のタイトルはフランス映画からの拝借。その映画の内容も合わせ、全体がハンフリー・ボガードへのオマージュになっているようです。「いったきりなら」のところで客席に投げる帽子もボギー風。
実は、阿久悠が沢田研二に設定したキャラクターは「ハンフリー・ボガードを気取る二枚目」なのです。後でまとめます。

M6.ヤマトより愛をこめて
僕は見ていませんが、同級生が夏休みに見に行って、みんな泣いて帰って来た「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」のエンディングテーマ。
記憶が曖昧ですが、この曲にもデスラー総統風のマント付き専用衣装があったような気がします。タイトルはボギーから離れて、より大衆的な「007シリーズ」になりましたが、深追いはしません。
バンドサウンドにストリングスが厚く被っています。イントロのピアノとエレキギターのユニゾンのあたりに、「僕の基本はロックサウンド」という拘りを感じます。

M7.時の過ぎゆくままに
これはコスプレシリーズになる前、1975年の作品です。たしか沢田研二が三億円事件の犯人で、時効まであとわずかという、現実とリンクした設定の連続ドラマの主題歌でした。このドラマは(子どもだったので)見ませんでしたが、この曲は本当に流行ってたなあという記憶があります。
タイトルは「カサブランカ」のテーマ曲"As Time Goes By"からか。実は、この「カサブランカ」がその後大きな意味を持って行きました。

M8.危険なふたり
ソロになって最初の大ヒットです。これも年上の女性が相手ですが、不倫ではないかも。いずれにせよ若い頃の沢田研二はこういう、年上の女性に愛されるタイプの色気で勝負していたということです。イントロのブラス、伴奏でのオルガンがかっきり裏拍でコードを弾いているのを拾って聴いていると面白いですよ。
「わかーれーるつもーりー じゃじゃっじゃーん」で片足を上げるところを、後に石野真子が「ジュリーがライバル」でパロディにしていました。この頃の大ヒット曲っていうのは本当に浸透力があって、そういうネタに誰でも反応できたから素晴らしい。娯楽が少ない時代でしたからね。

M9.追憶
M8とM7の間の時期に発売された曲です。いつになくオーケストラが分厚く、このアルバムの中でもサウンド的にはちょっと異質です。
この曲については、とくに雰囲気重視な唄い方で、ピッチとかかなり怪しいです。
沢田研二にはなぜかフランスのイメージがあって、相手の名前がカタカナでもあまり滑稽な感じにならないのが強みです。ニーナってのはなに人でしょうか?彼女も人妻でしょうか?

M10.許されない愛
このアルバムの中では、もっとも古い曲になります(1972年)。
印象的なブラスが入っているのはシカゴの影響?オルガンもアタックが強めで、当時思いつくロックサウンドを追究したんでしょうか?
沢田研二は声をあまり作らずに唄うタイプの歌手で、この唄い方でよく声が保つなあと感心します。喉が強いんでしょうね。最後に出てくる最高音のGはかなりしんどく、ショーケンみたいになっていますが、ギリギリ踏みとどまって味にしています。この曲も人妻との恋愛を唄っています。

M11.あなたに今夜はワインをふりかけ
M3「サムライ」のB面の曲。おそらくコンサート等で人気が高い曲だったのでしょうね。あと、CMにも使われていたような気がします。出だしがキャッチーで、CMでもここが使われましたが、アイデアがそこにしかなくて全体を聴くとちょっと平凡。この曲が入っている代わりに「コバルトの季節の中で」という佳曲が入ってないのがちょっと不思議です。

M12.LOVE(抱きしめたい)
前年のレコード大賞に続き、狙いを最優秀歌唱賞と紅白のトリに絞って出して、それを実現した曲。
沢田研二が最優秀歌唱賞的歌手であるかというと、疑問なところもあります。もともとレコード大賞などが成立した頃の歌謡曲で推奨される唄い方(大先生の指導のもと修行を積み、作曲家の指定に忠実に歌い続けること)とは違います。沢田研二の場合、まずは自分の外見や声によるセックスアピールがあってこその歌手であり、それを曲げてまで楽曲に殉ずることはしません。また、ファンもそれを望んでいます。やっぱり大衆音楽とは、歌い手のキャラクターが重要ということが改めて認識され、その認識の中での歌唱賞ってことなのでしょうか?
さて、この「LOVE(抱きしめたい)」の歌詞の内容は、M10やM7と同様、年上の人妻との恋愛ですが、ジュリーも大人になって、ただ「辛抱たまらん!」と破滅型の恋愛をするだけでなく、相手の立場とか収拾のつけかたにも思いを馳せるようになっています。

さて、こうして全曲を聴いてみました。
この中で沢田研二が演じている男は何人いたでしょうか?
1.年上の人妻と恋に落ち、思い悩みつつ関係を続けてしまう若いイケメン=本来のキャラクターに近い
(M7,M8,M10,M12)
2.ハードボイルドを気取り、去って行く女に背を向ける男(後に落ちぶれる?)=阿久悠が仕掛けたキャラ
(M1,M3,M5,M12は1と2の統合でしょう)
3.外国人女性と恋愛する、グローバルな(?)二枚目=虚像としてのジュリーのイメージ
(M9,ひょっとしてM3も。相手がジェニーだから。全部源氏名だったらちょっとイヤだが)
4.無邪気なスケベ
(M2,M11,M4は女性の視点だが相手の男はこれ)
※M6は映画主題歌なので、別モノと考えます。

そのうち、M8、M9、M10は阿久悠の作詞ではありません。つまり阿久悠が担当する以前の作詞家は、若くてセクシーな沢田研二本人のキャラクターをそのまま膨らましていったのに対して、阿久悠には「ジュリーを大人の男、沢田研二にしよう」という意思があったものと思います。そのつもりで俺に発注したんだろ、と。
そこでまず、M7でそれ以前の作品でつき合ってきた女性との退廃的な恋愛を総括します。相手も不倫で疲れ果てているし、もうこの若いジュリーは心中でもして死んでもらおう、ということでしょう(ま、ドラマの内容に沿ってるだけなんでしょうが)。ただ、そのタイトルをハンフリー・ボガードに由来する"As Time Goes By"から拝借したことが、その後の展開に効いてきます。

そして、いよいよ本格的にジュリー大人化計画を進めるに当たって、"As Time Goes By"がヒントになり、「よし、ここからのジュリーはハンフリー・ボガードの路線で行くぞ」ということになったのだと思います。
そして「勝手にしやがれ」「サムライ」とハードボイルドな二枚目路線を演じさせ、「LOVE(抱きしめたい)」では、人妻と恋愛しつつも、相手の幸せを優先して別れを告げる、分別ある一人前の男として描きます。

ところが、最後にどんでん返しがありました。

「カサブランカ・ダンディ」では、それまでの度重なるやせ我慢に疲れた主人公が、その役目を果たせなくなってしまいます。
上のボタンをはずしたジーンズの、胴のところにポケット瓶の酒を持ち歩くだらしない男。帽子もシャツもくたびれています。そして、飲んだくれては「ボギー、アンタの時代はよかったよ」とぼやく中年(たぶん絡み酒で泣き上戸)になりました、というオチです。
だからM1の霧吹きは、M5で彼が恋人を見送った窓辺で抱いていたボトルと同様、バーボンなのだと思います。

阿久悠と沢田研二のコラボレーションによるフィクショナルな作品群はこれにて事実上終了し、この後、沢田研二は他の作詞家の曲を唄うようになります。

2008/10/11

青春歌年鑑 BEST30 '73(DISC 2)/コンピレーション

さて、前のエントリの続き。「青春歌年鑑」の1973年を聴いています。

そういえば、先週の週刊アスキーを見ていたら、こんなサイトが紹介してあって、過去の紅白出場歌手の動画をYouTubeで見るためのまとめサイト、なんていうのがあるのです。リンク先の著作権問題についてはモニャモニャなんですが、これを使えばちあきなおみの「おいでおいで」や、「宇多田ママの全盛期」なんてのも簡単に見ることができますので、「自己責任」でご覧ください。

さて、前にも書きましたが、この頃の歌謡曲の本来の唄い方は作曲家のセンセイやレコーディング・スタッフなどの指示や、自分の解釈によって歌の中で芝居をする、というのが基本です。芝居が言い過ぎだとしても、言葉のニュアンスを過剰に伝えようとするところがあります。ただ音程があってる、声が出るだけでなく、そういった演技力があって初めて「うまい歌手」と言われる。
それに対して、技術的にそれができないアイドル歌手が出てきており、またそのファンたちも、「いわゆる実力派歌手」の演技過剰のクサい唄い方は「NOWじゃない」と思いはじめていて、両者がせめぎあってる様子がこの30曲からも読み取れます。

M1.傷つく世代/南沙織(F#3-C#5)
南沙織は基本的に淡々と今風な唄い方をしていたと思うのですが、この曲では歌謡曲的技法を意識して使っています。「とてもなぞなの〜ん」の「ん」はJ-POPでは流行らない臭みですが、当時の高校生や真面目な大学生は、コロンコロン転がされていたでしょうねえ。リズムの乗り方がちょっとつんのめり気味なのが若々しく、その一方で低い方のレンジが広く、男が甘えたくなるようなところもある。私は香坂みゆき、竹内まりや、早見優などが出てくる度に「あ、南沙織みたい」と思っていました。現代まで繋がる売れ筋の声です。

M2.あべ静江(B3-C#5)
子どもの頃は、こういう唄い方がうまいと思っていましたが、改めて聴くと「こんなものだったのか?」とギャップを感じます。天地真理もちょっとそういうところがありますが、つまり幼稚園の先生の唄い方なんですね。

M3.情熱の嵐/西城秀樹( E3-F4)
まだ、無邪気に声を張り上げていた頃の西城秀樹の唄い方です。この後、喉を痛めやすいという理由で、今の唄い方に変えたんだと思います。「もええるよー」と小節が回っちゃうところに時代を感じます。歌詞の内容は濃密ですが、歌の中で芝居をしているというより、いかにカッコいいところを伝えるか、という点を重視して唄っていますね。それにしてもイントロの「うっ」「うっ」はいかがなものか?

M4.同棲時代/大信田礼子(F3-A#4)
どういう消費のしかたをされたのかしりませんがBEST30に入ってるんですから、売れたんでしょうね。
大信田礼子は、今で言うと井上和香みたいな感じの人だったという記憶があります。作曲は後にこの人と結婚して離婚した、都倉俊一です。ずーっとベタベタなマイナーで展開しておいて、各コーラスの最後だけメジャーコードを付ける、というのが隠し味。真面目な大学生がそのまま年を取ったみたいな容貌の彼ですが、女性の好みは意外とこってり系なんだ。
それにしてもこの、スネークマンショーの「ホテルニュー越谷」みたいなのを大真面目に作っていたんだから、すごいものです。ナレーションは誰なんだろう?井上瑤じゃないよな。西城秀樹にしても、この曲にしても、70年代って猥褻な時代だったんだなあ。

M5.君が美しすぎて/野口五郎(D3-A4)
12ビートで、更に倍に刻む部分がある凝ったリズムの曲です。「ぼくの|こころ|をー」ではなく、「ぼーっくの|こーっころ|をー」とリズムに忠実に唄っているところが生真面目な感じですが、これが流行っている頃に聴いてた人は、作家の考えよりもずっと単純にこの曲を受けとめていたと思います。
歌謡曲って、作る人が結構本格的に音楽の勉強した人たちなので、よーく聴くとすごく難しく作ってあって、スタジオミュージシャンも強者が多いから、結果としてすごく高度なことやってるんですけど、なんか重たくなっちゃうんですよね。逆に素人に毛の生えたようなバンドサウンドの方がかっこ良く聴こえるのは何故なんでしょう?
野口五郎は声域は広いんだと思うんだけど、ビブラートの種類が一個しか使えなくて、この時点ではすごく巧い歌手ではないと思います。

M6.恋の十字路/欧陽菲菲( F3-A#4)
後の「ラヴ・イズ・オーヴァー」にも通じるロッカバラードで、M5の野口五郎よりもカッコいいです。アレンジをもっとシンプルにして、黒人コーラスを入れると、今でも商品になると思います。

M7.おきざりにした悲しみは/よしだたくろう(C3-E4)
今回はジャンル違いということで、素通りします。

M8.紙風船/赤い鳥(D3-D4)
これもジャンル違いなんですが、ちょっと書きます。「赤い鳥」は後の「ハイ・ファイ・セット」と「紙ふうせん」が一緒にやっていたバンドで、コンテストでオフコースにも勝った実力派。この曲も最初は普通のフォークソングかと思って聴いているとどんどんスケールが大きくなって行きます。ギターコードも装飾音符がいっぱい入ったお洒落なものが使われています。音域は男性の主旋律を拾いましたが、まったく意味がありません。

M9.絹の靴下/夏木マリ(G#3-A4)
今ではちょっとお洒落なおばちゃんという感じになっている夏木マリですが、この時点での唄い方はとても古典的です。声質が変わっていて、それが魅力ですが、演出過剰で今聴くとちょっと恥ずかしい。「わたしをだめにする」のセリフっぽさとか、「ああん、だいてぇ〜ん」とか絶対やりすぎです。最後の「こころをゆさぶる」でも「ゆーっさぶる」とわざと付点を入れて「ゆさぶられ感」を表現しています。作曲家の指定なのか、ディレクターの指示かしりませんが、この辺が歌謡曲の真骨頂でもあり、また辟易とさせられる部分でもあります。

M10.甘い十字架/布施明(D3-F#4)
この曲のことを忘れていて、「西城秀樹ってこんなにいい声だったかな?」と思いながら途中まで聴いていました。サビまで行って布施明だということが分かりました。なんでそう思ったのか理由を考えてみたら、編曲が馬飼野康二。この人は西城秀樹作品の作曲や編曲をたくさんやっている人なので、私の頭の中では馬飼野サウンド=西城秀樹になってたんだと思います。
もっとも、布施明も若い頃は派手な衣装を着て、女の子にきゃーきゃー言われながら唄ってた人(その頃はまだ短足だということもバレていなかった)。思えば布施明のアップテンポな曲の部分を西城秀樹が、バラード系を野口五郎が引き継いでいるという見立てもできないことはありません。布施明自身はこの後、小椋佳や大塚博堂など、シンガー・ソングライターの作品を唄って結果を出しましたが、本来はど真ん中の歌謡ポップスや、外国曲のカバーがよく似合います。

M11.狙いうち/山本リンダ(G3-A4)
出たな妖怪!
昔から、歌手は覚えてもらうまでは同じ格好でTVに出続けるというやり方があって、舟木一夫の学生服とかもそうだったと思うんですが、山本リンダはまず「どうにもとまらない」でものすごいイメージチェンジ(車で言うとプリウスがアルファードになったみたいな)が成功した後、新曲の度にそれにリンクした衣装を用意して、ずっとその衣装で唄う、というやり方を戦略的に続けました。
そのやり方でおよそ2年間突っ走ってフェードアウトしていきましたが、その後のピンクレディーや沢田研二もほぼ同じ戦略で一時代を築いたわけですから、先駆者と呼ばれて良いと思います。
このブログでは、便宜的にコスプレ歌謡(そんな言葉は無いと思いますが)と呼んでおきます。
それにしても、この曲、歌詞と曲はどちらが先なんでしょう?「ソレレ、ソレレ、ソファソファレ〜」と都倉俊一が書いたのか、阿久悠が「ウララウララウラウラで」と書いたのか?どっちが先でもバカみたいなんですけど、ピンクレディー作品では阿久悠が歌詞を上げてから都倉俊一が作曲するという手順で作っているのを、昔TVで見ましたから、たぶん阿久悠の歌詞が先なんでしょうけど…。
おそらく正解は、まず阿久悠が、結果として今の2ブロック目から始まる歌詞を作り、都倉俊一に渡したら、
「あっさりし過ぎだから、この前にパンチのある歌詞を8小節付けてくれませんか?」みたいなことを言われたんでしょうね。
「そんなこと言ったって、これでまとまるように書いちゃったから、言葉なんか付け足せないよ。なんか適当に唄わせたら?ヤッホー、ヤッホー、ヤッホッホー、とか」
「ヤッホーはどうも…」
「じゃ、ラララ、ラララ、ラララララ、だな。(サラサラ)はいよっと」
「あ、これ全部"ラ"なんですか?阿久先生、乱暴に書くからウララに読めましたよ」
「そう読めるなら、ウララでもいいよ。あー、っていうか、そっちの方がいいわ」
「わはは。じゃあそういうことで」みたいなことなんでしょうね。

M12.青い果実/山口百恵(A4-A#5)
出た!山口百恵です。
いきなりデビュー曲が当たって新人賞総なめの桜田淳子に比べて、山口百恵のデビュー曲「としごろ」は地味でした。桜田淳子と同じ「スター誕生」の出身であり、制服姿で横に並ぶとショートカットの外見も紛らわしくて、そのままでは裏桜田淳子で終りそうになっていた山口百恵は、2作目で急ハンドルを切ります。
「わたしなにをされてもいいわ」と中学生に唄わせる、掟破りの「青い性」路線は翌年の「ひと夏の経験」で完成しますが、その最初の曲です。
もし山口百恵が従来の歌謡曲のように、例えば夏木マリが「だいてぇ〜ん」と唄ったようにこの曲を歌ったら、きっと放送禁止です。山口百恵は技術的にも性格的にも、この曲に感情を込めずにセリフ棒読み風に唄ったから、この曲は放送禁止にもならなかったし、山口百恵本人のイノセンスが保たれたわけです。
この頃からポップスに過剰な演技は不要、ということが徐々に国民的合意になっていきます。「分かって唄ってるのか?」から「分かんないまま唄ったって、可愛けりゃいいじゃないか」あるいは「分かんない子が唄ってるからかわいいんじゃないか」という世論の変化が起きるわけですね。

M13.街の灯り/堺正章(C3-F4)
浜圭介は演歌を作っても、どこかに洋風なお洒落さを込めるセンスの良い作曲家。堺正章はGS出身ですが、もともと2世芸能人でなんでも達者に出来る人。この時点でも歌にドラマにバラエティに活躍する人気者でした。最近もスマッシュヒットを飛ばしていましたが、歌手としても息の長い人です。今よりも声に艶があり、ロングトーンの終わりでは意外なほど泣き節を多用しています。ロックを通り過ぎてきているせいもあってか、歌詞に合わせて芝居をする、というよりも楽器として音程や音量をどうコントロールするかの方に意識が高い唄い方だと思います。曲全体が「君といつまでも」に似すぎているような気もしますが、まあいいか。

M14.たどりついたらいつも雨ふり/モップス(E3-F#4-A4)
先日亡くなった鈴木ヒロミツがリードボーカルを務めるGSバンド。後に小椋佳などニューミュージック系の編曲をする星勝がギターを弾いています。サディスティック・ミカ・バンドなんかを思い出させるサウンドはカッコイイのですが、結構パートごとのレベルがバラバラで巧いバンドとは言い難い。でも、こういう音を聴くと楽器の演奏とはどうやるべきか、というのが分かって勉強になりますね。それと、どんなに頑張っても出てくる和風な部分(ボーカルの声質とか)が、この曲をしてもなお、歌謡曲の枠から逃れられていないことが面白いですね。

M15.小さな体験/郷ひろみ( D#3-F#4)
郷ひろみのデビュー2曲目です。作曲はやはり筒美京平。
1曲目の子どもっぽさからはゴロンと路線を変えています。A-B-A-B-C-C'という凝った構成で、特にA-Bの落差が大きい。つまりこの曲は、「変な声で唄うオトコオンナ」だった郷ひろみに、どれほどの可能性があるかを一気にディスプレイしてみせたんじゃないでしょうか?低音の男の魅力(古い表現だ)、アップテンポ部分での若々しい躍動感、意外と使える声域が広いことなど…。

さて、そんなわけで大急ぎで30曲を聴きました。

ディープな歌謡曲の世界に潜っているとCDショップのレシートが貯まるばかりなので、この辺で息継ぎのために浅瀬に戻ろうかと思います。どこを通って帰ろうかな?

青春歌年鑑 BEST30 '73(DISC 1)/コンピレーション

前回予告した通り、歌謡ポップス、アイドル歌謡を聴いてましょう。CDショップに行くと団塊世代をターゲットにしたようなこの手の商品がたくさん並んでいて、どれを選ぶか迷いますが、今回の話を進めるのに都合の良い1973年のベスト30を買ってきました。

この中には、ヒロミ・ヒデキ・ゴローの新御三家、3人娘と言われそうで言われなかった天地真理・小柳ルミ子・南沙織の曲、また、いよいよマーケットの中心に進出しつつあったフォーク、ロックに分類されるものも混ざっています。
ただし、フォーク、ロック系は話が広がり過ぎるので、今回は素通りして歌謡曲中心に書きます。またの機会をお楽しみに!

では、聴いていきましょうか。
M1.学生街の喫茶店/ガロ(D3-G4-A4)
微妙なところですが、一応フォーク・ロックとして素通りします。意外と歌、上手かったんですね。

M2.早春の港/南沙織(F#3-B4)
M3.色づく街/南沙織(A3-C5)
南沙織が2曲続きます。子ども心にも気になる存在でしたが、ちゃんと聴くとすごくイイ!南沙織だけで1本書きたくなりました。このまま現代のJ-POP界に連れて来ても違和感がないモダンさがあります。作曲は両方とも筒美京平。この湿り気のないカラッとした、でも色気がある声は貴重です。「早春の港」の歌詞を現代のリアルさで書き直すと「強く儚い者たち」にならないか?ならないか。
南沙織についてはDISC 2にも入ってますから、また書きます。

M4.心の旅/チューリップ(D3-F4)
これも今日は素通りします。他の曲と質感が全く違うところだけ覚えておきましょう。

M5.恋する夏の日/天地真理(C4-C5)
出た!80年代まで続いた、日本ならではのいわゆる「アイドル歌手」直接の元祖です。近所にいるような女の子を連れてきて、素人に毛が生えたレベルの歌を唄わせて、それが商品として成り立つということを皆に認識させた人。地声を使わない発声は、一応音楽学校で訓練された名残なのでしょうが、後で出てくる宝塚の優等生、小柳ルミ子とのレベルの違いはすごいものです。

M6.赤い風船/浅田美代子(A3-D5)
天地真理が切り開いた地平は、浅田美代子によって更に広がりをみせます。つまり、レコードとは音が出るブロマイドであり、歌がうまいとかへたとかは関係なく、とにかく浅田美代子の顔が付いている商品であればちゃんと流通することが分かったのです。
浅田美代子自身は素人時代はそこそこ歌がうまいと言われていたそうです。覚えた歌はある程度再現できる音感はありますが、声が弱いのですね。幸いなことに弱いけれども耳障りなところがないので、世間にも許容されました。この後、風吹ジュンや能瀬慶子など、唄うと不協和音が発生するような人もレコードを出すようになり、アイドル歌謡はさらにアナーキーになっていきます。
「赤い風船」では、サビの前半は自分の声のダブルで録音していますが、自分の声どうしなのに結構ばらつきがあるのが愛嬌。サビ後半は歌のうまいコーラスの女性にハモってもらい保たせています。あ、これも筒美京平作品です。

M7.若葉のささやき/天地真理(A#3-C#5)
天地真理のこの頃の作品は森田公一作曲が多かったのですね。M5が1オクターブかっきり、この曲は下に1音、上に半音広げていますが、この辺が天地真理の使えるギリギリなんでしょうか?申し遅れましたが、今回、歌手名の横に入っている(A#4-C#5)というのは、手元のEZ-EGで音をとった各曲の音域です。たまに3段階になっているのは上を地声の上限とファルセットの上限に分けました。ま、なにかの参考になるかと思って…。

M8.裸のビーナス/郷ひろみ(D3-F4)
初期の郷ひろみの中では抜群にいいと思います。半音階を多用したメロディ自体が楽しい。しかも無伴奏でも唄える親しみやすさをきちんと残しています。郷ひろみの声は、それまでの男性歌手にはあまり例のない中性的なものでした。だからデビュー曲が「男の子(?)女の子(?)」だったわけですが、声は不思議ですが音感は悪くない。大人が描くアイドル歌手の、悪い見本みたいに思われていましたが、それは本人の記号性(っていうのかな)が高かっただけで、レベルが低かったわけではないと思います。実際息の長い芸能人としてずっと残っていますからね。

M9.草原の輝き/アグネス・チャン(D#4-D#5)
いきさつはよく知りませんが香港からやってきたアイドルがアグネス・チャン。向こうではシンガー・ソングライターだった、というふれこみでしたが、日本では平尾昌晃の曲を歌っています。突然売れる外国人歌手というのがときどきいますが、おそらくアグネス・チャンが狙っていたのはベッツィ&クリス的なフォークソングのイメージだと思います。この人のすごいところは、来日してすぐのこの時点から現在まで、唄い方も日本語のたどたどしさも全く変わらないことです。ちりめんビブラートは歌謡曲的には気になるが、洋物のフォーク系シンガーにはあるように思いますし、癒し効果の高い声であることも否定しません。

M10.個人授業/フィンガー5(C4-F5)
沖縄出身の兄弟5人組。中心的スターは日本のマイケル・ジャクソンこと晃です。メジャーな歌謡曲の中で「イェーイェイェイェー」とフェイク部分をレコードに入れていた例は多分とても少ないと思います。フレーズは単純ですが、彼がそれなりに早熟の天才だったことは間違いないのだと思います。変声期前の子どもが、こまっしゃくれたサングラスをかけ、グラマーな学校の先生に恋をしたと唄う姿は、当時の中年以上の人たちには宇宙人のように見えたことでしょう。私の父なんかは、見ていたTVに彼らが出てくるとトイレに逃げたり、別の番組に変えようとしました。
作詞作曲は阿久悠と都倉俊一。彼らはフィンガー5と山本リンダでこの手のコスプレ歌謡(このブログでは便宜上この言葉を使います)のノウハウを蓄積してピンクレディーにつなげて行きました。

M11.君の誕生日/ガロ(B2-F4)
歌のうまいフォーリーブスという感じ。ハモリの難易度が高いなあ。詳細略。

M12.赤とんぼの唄/あのねのね(E3-E4)
これもジャンル違いで詳細略です。数年前のNHKTVで、本人たちが字幕付きで唄っているのを見ました。いい時代になったなあ。

M13.春のおとずれ/小柳ルミ子(A4-C#5)
音楽学校で鍛えた後で歌謡曲を唄うとこうなります、という見本。演歌のセンセイのところで育った人たちほど歌の中で芝居をしていませんが、とりあえず「あたしの声を聴けー」という唄い方。
歌詞とメロディが
「きこえて、きたのよ、とても、あかるく
しあわせなくせに、なぜなけてくるの」
と作られているところを
「きこえて、きたのよ、とても、あかるくーうしあわせな、」
とつなげて余裕を見せたりしています。
前年に「瀬戸の花嫁」という国民的大ヒット曲を生んでおり、それをもう一回やってみた、という曲でしょう。

M14.他人の関係/金井克子(A4-A#5)
金井克子は由美かおる等と同じ西野バレエ団出身。歌はうまくないですが、男性コーラスを従えて不思議な振り付けで唄うパフォーマンスが受け、人気になりました。歌謡曲というジャンルは突然変な曲が生まれて、そのまま大ヒットしてしまうことがあります。作曲はちあきなおみのところでも出てきた川口真。バックの伴奏が都会的なジャズっぽい演奏なのに、コーラスは単純なので、当時の忘年会等ではネタとして重宝されただろうと想像されます。
全編本人の声をダブらせて、エコーをかけていて、細かいニュアンスを伝えるような表現をする気は毛頭ないですよ、というプロデュース。その点についてはPerfumeの先輩と言っていいかも。

M15.そして、神戸/内山田洋とクールファイブ(B2-G4)
うまい・へた問題で蒸し返すと、前川清という人をどう評価したら良いのか、私は分かりません。声は間違いなく良い。音域も広い。しかもこの曲をしつこく聴くと、いろんな声の出し方をしています。出だしや「みじめになるだけえええー」での「いかにも前川清」な大きなビブラートはもちろん、「ないてどうなるのか」では杉良太郎風の鼻にかけた不良っぽい声、「あいてーさがすのーよー」では泣き節というかヨーデル寸前の声の変化を見せていて、つまり七色の声を使い分ける器用な歌手と言えないことは無い。でもトータルの印象は「なんでこの人はこんなに武骨に唄うんだろう?」と思わされるんです。
全てが計算なのか天然なのか?TV画面で見られるそのキャラクターも含め、正体が分からない人です。

DISC 2に続く。

2008/04/28

ポリリズム/Perfume

久々に音楽畑からの発信で社会現象的なものを感じさせるのが"Perfume"のアルバム"GAME"です。
去年の公共広告機構のCMで世間的には(もちろん私の主観でも)突然現れた女の子3人組。

ボーカルは過度にエフェクトがかけられて、実際の歌唱力がどうなのか、誰がどこのパートを唄っているのか、本当に本人たちが唄っているのかも判別できません。化学調味料たっぷりのとんこつラーメンというかチョコバナナパフェというか、とにかく耳に残ることは間違いありません。一通り聴いたが最後、寝入りばなに空耳が聴こえるほどです。

私もついそのクドさにノックアウトされてアマゾンでアルバムを購入してしまいました。1曲くらいは地声が分かるようになっているかと思ったら、全編「ポリリズム」と同じように処理されておりました。
80年代に爆発的に増殖したテクノポップが、あの頃のテイストのまま帰って来たかの印象で、矛盾するようですがこの濃さがあればこそ40代でもまったく抵抗が無い、という特徴があります。

ちょっと昔話が入りますが、テクノポップの最大の功績は「演奏能力や歌唱力が無くても、電気の力で誰でもできるよ」という音楽の解放にあったと思います。初期のシンセサイザーは和音も弾けないし、タッチセンスもなくて、「微妙なニュアンス」とか「グルーヴ」の表現なんてなく、ただ決まったタイミングでオンタイムのリズムを刻んで行くしかなかったのですから…。
それが「やっぱり楽器なんだから表現力がなくちゃ」って、やれタッチセンスだのグルーヴ・クォンタイズだのとしゃらくさい機能が開発され、また上手・下手(あるいは根気比べ)の世界になってしまいました。
"Perfume"のカラオケはそんな単純なものでは無いと思いますが、ちょっとあの頃の、ニュアンスなんてなんにも無かったプラスチッキーな音色を思い出させ、若い頃にYAMAHAのCS01なんかを無理して買っちゃった経験のあるオジサン(俺だよ俺)には、ちょっと嬉しいかも…。


それにしても"Perfume"は、メンバー3人のうち芸能人として成立しそうな容姿なのは、私の主観では1名だけ(SPEEDよりは率が良い?)。いったい歌謡界における女子グループというのは、カワイイ子を集めて作るのか?バラでは売れないのをセット販売するのか?という伝統的テーマを今一度じっくり考えさせてくれる素材です。

2008/02/03

太田裕美 オール・ソングス・コレクション/太田裕美

「たのみこむ」のメールマガジンで恐ろしい企画が成立したことを知りました。
「太田裕美 オール・ソングス・コレクション」39,800円。

全てのオリジナルアルバムとシングル曲。おまけにレア音源集、CMソング集など全部で25枚組とのこと。
詳しくはこちら。→Sony Music Shop オーダーメイドファクトリー
現役アイドル風本人の音声によるコメントまで載せて、煽っています。

情報も刻々と更新されているようで、今見たところでは「メタモルフォーゼください」が入ってないように見えるが、Disc25のCMソング集に収録されるんでしょうか?予約期間は2月11日まで。気になるが、私のサイフは若干余裕が足りなくなっております。ちゃら〜ん!

2007/10/13

恋しよう♪/リア・ディゾン

秋になって人恋しくなったのか、iTunesでアイドル歌謡をいくつかダウンロードしてみました。
今後の話題になるかもしれないので、今日全部は紹介しませんが、グラビア界の黒船(何だそれ?)「リア・ディゾン」の「恋しよう♪(この音符マークはWindowsだと文字化けするのではないか?)」を聴いてみました。

リア・ディゾン - 恋しよう♪ - EP - 恋しよう♪

残念ながら一人の女性としては、あの薄い眉毛とその下のきつい目つきが恐ろしく、あまり食指は動かないんですが…。

さて、曲はm-floの"Come Again"そっくり(細かく聴くと似てないんですが、遠くから見ると素人には同じものに見える)。リアちゃんはLisaよりもちょっと声が太く、アイドル歌謡にしては音域内で上下が激しい曲の中でさすがに最高音、最低音に近いところはよく聴くとしんどそう。それでも声質が良いのと、録音・編集時の加工が上手いのか意外なほど上手く聴こえます。しかもリア嬢はどこで日本語を覚えて来たんでしょうか?譜割りの細かい曲ですが、歌詞が良く聴き取れ、なぜか英語部分もやたらきっぱり聴き取れます。特に2コーラス目の"Because I love you"など外人なのに日本人が歌っているようです。

さて、それにしてもm-floが絡まずにこの曲で良いのか(というか、絡んでいてもこんな自己模倣みたいなことは本人もしないでしょうが)?
作曲の平田祥一郎さんは、Wikipediaによるとゲームミュージック出身で、J-POPではEXILE、上戸彩、伊藤由奈やジャニーズ系で実績があるとのこと。
ふ〜ん。つまり「何々風」の発注を大過なくこなすことが得意な人なんでしょう。つまりm-floってこういうもんだろ?今時のR&Bってこういうもんだろ?ってわりとそれがちゃんとそういう風に聴こえる、という才能なんでしょうね。帰納法的作家というか、抽象化能力が高いというか。私もどちらかというとそういう人なんで、それは良く分かる。けど、消費者としてはあまり支持できないな。自己嫌悪的感情も込みで。しかも提供する相手はカラオケ大会優勝的に上手い歌手かアイドルで、結局CD1枚に、頭から尻尾まで「商業」が詰まっている、そういうものです。

2007/08/17

SOSO/Vivian Hsu

ちょっと和みネタを。

一昨日、休みでテレビのワイドショー(「スッキリ」だったかな)を視ていたら、上海で映画撮影中のビビアン・スーが顔面麻痺になって台湾に戻って静養しているというニュースをやっていました。年間で映画3本撮って、歌もうたって、と馬車馬のように働いているようです。昭和のアイドルのような生活なんでしょう。お見舞い申し上げます。

私は単純に女性として好きなタイプなのでこっそり応援しているのですが、日本ではほとんど仕事をしないので、ときどきYouTubeで著作権上問題ありそうな台湾のTVの録画やPVをチェックしています。


韓流を中心にしたアジアのDVD/CDを販売するネットショップもあるので、好きな人はそちらで購入する手もあります。私も一つ買いましたが、CD2枚組+DVDで3000円とかで安いし、DVDはリージョンフリーなのでなんの問題もなく再生できました。"Amazon.co.jp"で買えるのは下のリンク1タイトルです。

さて、ビビアン・スーが台湾で今どんな音楽をやっているかというと、この"SOSO"のような、なんの違和感も無い日本風アイドル歌謡です。ちょっと前の洋楽ヒット曲風のメロディに母国語(中国語)と英語が混ざった歌詞。この曲では途中でおニイちゃんがラップで絡んできます。ひとことでいうと、数年前の安室奈美恵を一段階ヌルくした感じですが、80年代アイドルに親しんだ世代にはとても楽に聴ける曲です。
彼女の歌唱力は可もなく不可もなし。およそどんな曲でも破綻無く歌い、かといって聴く側を圧倒したりはしません。万人向けのアイドル歌手として非常に完成度が高い、とも云えます。欲を言えば、楽曲のレベルをもう1目盛上げてくれると、もっと良い。

西洋にルーツのある音楽を、アジア人が取り入れるには各国それなりの悩みがあると思います。中国語圏の場合、日本よりも可能性を感じさせるのは、おそらく中国語は日本語の何倍もラップとの親和性が高いと思えることです。漢字一つが一つの音符に乗っかって、それに全部意味があるので、相当高度な内容をラップに出来るんじゃないでしょうか(想像)。日本のラッパーが強引な脚韻に血道を上げている中、彼の地にはもともと漢詩という数千年の文化があって、あれは定型詩(リズムが一定)だし、韻も踏んでいて、ほとんどラップと同じものでしょう?なんかサンプル音をループさせて杜甫の漢詩を朗読すれば、アルバム1枚くらいすぐ作れるのではないでしょうか(想像)。
ということはロック系の音楽にも親和性は高いはず。昔、ジャッキー・チェンが歌ってたのはカッコ悪かったですが、作り手のセンスが良くなれば、日本語ロックより苦労が無いはず(想像)。

それにしてもビビアン、30歳過ぎてこの路線は辛かろうと思います。すぐに鮮度が落ちる日本の(韓国はもっとサイクルが速いそうですが)アイドルと違って、台湾は古典的なスターシステムがまだ生きていて、彼女は永遠の「娘役トップ」なのかもしれませんね。

Mine or Yours/宇多田ヒカル

ベストアルバム"SCIENCE FICTION"を買った後しばらくぼーっとしていましたが、5月になった途端にYouTubeでライブ配信的なものを見かけました。配信は途中から見たのですが、過去のMVが次々流れていて、いつから新作発表になるのかわからず、見るのやめ...