2019/06/27

Apple Musicでは聴けないポリドール時代の原田真二

 2019年もあと数日で半分が終わります。
今年の投稿は前回までで18本。1ヶ月あたり3本か。
まあ近年の開店休業状態から思うとまあまあですね。これもApple Musicで聴きたい(というか昔違うメディアで聴いていた)曲が聴けるようになった事が大きいかな。
最近もちょっと良いネタを見つけたのでそのうち書きますけど、今日はちゃんとディスクで買ったものの紹介です。

買ったのは原田真二&クライシスの3枚組です。
原田真二もある程度はApple Musicで聴くことができます。当時テレビで見て好きだった、という人が覚えているヒット曲はだいたい網羅されています。
ところが、私の場合、高校時代の友人のせいで(普通はおかげで、と言う)その後のメッセージ色の強いロックをやっていた原田真二のことも覚えていて、「あー、たまにはSTRAWBERRY NIGHT とか聴きたいなあ」と思い出すことが年に1回くらいあるわけです。
ところが、その頃の曲(つまり「原田真二&クライシス」というバンド
名義で活動していた頃の曲)はApple Musicでは一部しか聴くことが出来ません。「スウィート・ベイビー」の次はすぐ「Modern Vision」みたいな繋がりになっていて、まさに「STRAWBERRY NIGHT」のあたりが抜けています。
Amazonのストリーミングサービスでも似たような状況なんですが、そのままAmazonで検索していたら「原田真二&クライシス ポリドール・イヤーズ完全盤」という物理ディスク(CD3枚組)が販売されていました。以前、タワーレコードで見て、ちょっと高くて買い損ねていたものですが、4500円くらいするはずが3000円そこそこで売っていました。てっきり中古の掘り出し物だと思い、慌ててポチって、届いてみたらちゃんとした新品でした。ラッキー!

さて、ほとんど仕様を確認もせずに買ったので、届いてから「どんなもんじゃい?」と開けてみると、ディスク1がアルバム「HUMAN CRISIS」、ディスク2がアルバム「ENTRANCE」、ディスク3が「シングル&ミニアルバム」となっていて、今まで買ったベスト盤とはほとんど曲が重複していません。よかった、探してみるものです。

実際に聴いてみると高校生の頃には気がつかなかった良さが改めてわかった感じです。
ヒット曲連発時代の原田真二は「ロックの御三家」とか言われながら、オーケストラをバックにしたポップス的サウンドでしたが、原田真二&クライシスはロックバンドの音です。ギターもドラムも生々しく録音されていて洋楽のロックのレコードに近い音がします。演奏の角を変に丸めずにそのままざらっとした手触りのまま聴きてに届けてくる感じ。それでも原田真二の絶妙にかすれた声はチャーミングで、とても聴きやすい。曲も1曲の中で展開する幅が大きく「才気煥発」という言葉を思い起こさせる自由さがあります。やっぱり天才だと思う。
このころの原田真二といえば、「&クライシス」になる直前、「MARCH」というバスドラ4つ打ちにピアノのオクターブ弾きのイントロから始まる曲をシングルで発売し、それを1年後くらいに「&クライシス」の「STRAWBERRY NIGHT」でやり直し、さらにディスク3に入ってる「街で散歩」という曲でもう一度使って、という三兄弟みたいな曲があります。当時こだわっていたテーマなんだと思うんですが、それが何を表していたのかは残念ですが今もわかりません(わからないままで好きですが)。ああ、「STRAWBERRY NIGHT」といえば、これからこの曲を初めて聴く人は、エンディングで低い声で英語のセリフが入ってくるところで「マイケル・ジャクソンのスリラーじゃん!」と思うかもしれません。残念!発売はこっちが先です。少なくとも「スリラー」の真似ではありませんので。

原田真二&クライシスのポリドール時代は1980年〜1981年。オフコースが「さよなら」とかをヒットさせていた時代です。
私は高校時代に原田真二という才能に接していながら、大学時代は堅苦しいオフコースをずっと聴いていました。それはなんでかというと、今思うと「オフコースの方が真似しやすそう」だったからだと思います。オフコースの音楽と似た曲を作るには才能は要らない。必要な知識を順番に増やしながら指差し確認で音符を増やしていけば、いつか「小田和正が作りそうな曲」をパロディ的に作ることが可能です。でも原田真二の自由な跳躍に追いつくには、瞬発力のある音楽的才能が必要な気がします。

2019/06/17

Apple Musicで聞く太田裕美の第3期(ニューウェイブ期)

 当ブログ開設以来、基本的には購入した音楽ソフトの感想文を書いてきたのですが、いまやストリーミング配信での音楽消費がかなり定着してきました。
 ストリーミングが始まったころはオジさんが聴くような音楽が配信対象にならず、あえて深掘りしてきませんでしたが、ここにきてユーミンをはじめ私が若い頃に聴いてきた音楽がかなり配信されるようになっているようです。何回か前から「Apple Musicで聴く」シリーズを何本か上げてみましたが、飽きるまでもうしばらく続けてみようかと思います。
 私は少年時代から今まで、ちゃんとしたオーディオセットとは無縁の生活をしていたので、若い頃はミュージックテープ(LPレコードと同じものをカセットテープのフォーマットで販売するもの。基本は円盤と同価格)を購入していました。今聴くとカセットテープの音なんて本当にショボいんですが、当時はそれより良い音に触れることがなかったので、それはそれで満足していました。しかし、音楽の媒体がCD、MDと変化し、ついにはネット経由のデータで配信されるようになった今、当時買いそろえたカセットテープ資産は、何度かの引越しを経てすべて失ってしまいました。CDで買いなおした音源もかなりありますが、全部をフォローしきれませんので、忘れるともなく忘れているアーティストや作品があるものです。
 ところが、Apple Musicで思いついた名前をダメ元で検索してみると意外なほどヒットするんですねえ。ちょっと前は有料ダウンロードだった作品も改めて検索してみると配信されるようになっていて、iPhoneにダウンロードすることもできる!いい時代になったものです。月極めの家賃は取られますが、ただより怖いものはないですからね。

さて、今日は、発表当時は(一部で)賛否両論だった太田裕美のニューウェイブ路線作品3作をまとめてみます。

 太田裕美自身は音楽学校出身でそれなりの素養はあったのでしょうが、スクールメイツでキャンディーズといっしょにアイドル修行?をしていたし、渡辺プロにも入っていますから、普通のアイドル路線でのデビューもあり得たはずですが、ピアノの弾き語りスタイルで登場しました。おそらくちょっと前に小坂明子がピアノの弾き語りで大ヒットを飛ばした(今思えばヤマハ世界歌謡祭のグランプリ曲であることを前面に押し出して売り出された最初が小坂明子だったと思う)後だったからではないかと思われます。小坂明子より可愛い子がピアノ弾いて歌ったらもっと売れるんじゃないか?大手の商品開発ってのはえてしてそういうものです。

 さて、太田裕美の音楽は4つか5つの時代に分けられると思います。デビューしてから数年間のアイドル的消費をされ、シングルヒットを続けていた時代(アルバムでいうと「ELEGANCE」、シングルだと「ドール」くらいまで)。アルバムでは自作曲を披露したりしていましたが、シングルに関しては判で押したように作詞・松本隆/作曲・筒美京平(/編曲・ 萩田光雄)でした。これが第1期になるのではないかと思います。
 その後、二十代半ばを迎えて少しアダルトな感じにモデルチェンジしようとしてやや迷走気味になりました。この頃の目立ったヒット曲となると、清涼飲料水のCMソングだった「南風」くらいでしょうか。「木綿のハンカチーフ」以来連続出演していた紅白歌合戦にも選出されなくなり、本人も思うところがあったのか、休養&渡米を発表するところまでが第2期。
 半年くらいと言って出て行ったアメリカ留学ですが、休養期間は1年を越え、ようやく活動を再開したのが今回紹介する第3期で、その後、結婚を機に活動は縮小します。
 しばらくして母親の立場から童謡を歌ったアルバム「どんじゃらほい」を発表した一方、自作曲や、久しぶりに松本隆/筒美京平コンビの作品を発表しました。また、近年は同時期に活動していたガロのメンバーや伊勢正三とのコンサート活動を継続しているようです。

 で、やっと本題。
 太田裕美(勝手な区分けで)第3期・ニューウェイブ編の3枚のアルバムもApple Musicで聴くことができます。
時代順に聴くのが良いと思いますが、タイトルは「Far East」(1983年)、「I do,You do」(1983年)「TAMATEBAKO」(1984年)となります。
 「Far East」はニューヨーク帰りでちょっと大人になった太田裕美をフィーチャーしたアルバムで、当時はLPレコードの時代でしたからA面とB面でコンセプトが違い、A面が「ニューヨーク・サイド」、B面は「トーキョー・サイド」と言っていました。A面は当時主流になりつつあったシティ・ポップの音で、なぜか日野皓正のラッパまで入っている豪華版です。B面もまったく違うわけではないのですが、「窓から春の風」のようなシンセの音が前面に出たテクノポップ風味のサウンドが強くなります。私は太田裕美はコンサバティブな人だと思っていたので、A面の路線で行くのだろうなと思っていたら豈図らんや、次作の「I do,You do」はデビュー当時もやっていなかったミルキーボイス全開のテクノポップでした。第2期の迷走は、つまりはどうやったら大人の歌手になれるかと足掻いた上でのことだと思うのですが、声質と舌足らずな滑舌のために本格派になりきれなかったのを完全に開き直った感じがして、「よくやった!」と思う出来でした。私はこのアルバムの「こ・こ・に・い・る・よ」という曲で初めて「5拍子」を理解したものでした。
 しかし、デビュー当時の「可愛い女子大生風弾き語り」のイメージでついてきていた人はこの辺りでいわゆる「オタ切り」されてしまったようです。私の学生時代の友達も一緒に行ったコンサートの後で「こんなの太田裕美じゃない!」と怒って帰って行きましたから、そういうファンは多かったんだと思います。
 そんなデジタル穏健派の私でもちょっと行き過ぎでは?と思ったのが3枚目の「TAMATEBAKO」。
 「ランドリー」とか「チラチラ傘しょって」とか奇天烈なタイトルが並び、前作よりもさらにぶっとんだ曲が並びます。

 でも、今聴くと「TAMATEBAKO」がいちばん完成度が高いですね。太田裕美の時代は、ちょうど音楽向けの機材が現代化していった過渡期なので、「ELEGANCE 」あたりまでは(曲はすごく好きなのが多いですが)音が古いです。次の「海が泣いている」は海外録音で音は良くなったんですが、曲が小難しくなって愛聴するにはいたりませんでした。大瀧詠一復活の時期にシングルで出した「恋のハーフムーン」はさすがのナイアガラ・サウンドですがこれはちょっと例外とすると、やはり「Far East」以降のサウンドは今の商品と比べても音の面で遜色がなく、改めてちょっとおススメしたいと思います。 

2019/06/13

A FILM ABOUT THE BLUES/TRICERATOPS

聞き逃し大物アーティストシリーズ、本日はTRICERATOPSです。Apple Musicよありがとう!

 和田誠の「倫敦巴里」は中学生の頃の愛読書で、私があまり喜んで読んでいるものだから、父が「その本、貸してくれ」ということになってこころよく貸してあげたところ「通勤電車で読むと笑ってしまって読めない」と変なクレームをもらった名作パロディ集。数年前に復刻?しているようなのでリンク貼っておきます。


 さて、和田誠の息子がミュージシャンになったらしいと言う話をどこからか聞きつけてはいましたが、実際にはテレビで何回か見ただけで、そのときなんという曲をやっていたのかも覚えていない。その後かなり経ってから、毎年クリスマスになると小田和正と歌っているよなー、て感じで見ていた和田唱(とTRICERATOPS)です。
 昔々、ニューミュージックの売れっ子たちがテレビに出ない理由として「3曲くらいはやらせてもらわないと音楽性が伝わらない」とか言う例があり、「いやいや、本当に見るべきものがあれば1曲でも伝わるんじゃないの?」と思っていた方だったんですが、確かにTRICERATOPSみたいな音楽は、1曲だと分からないかもしれないですね。
スリーピースのシンプルな音はテレビで見てるとちょっとさみしいし、小難しそうに見えるということもあるような気がします。
 それよりも、以前ここに書いた土岐麻子のアルバム「乱反射ガール」の中でデュエットしていた「HUMAN NATURE」のハモり具合いとか、それこそ「クリスマスの約束」で小田和正の「相方」としての達者な歌とギターを見ていると、なんだこの子すごく上手いんじゃないか!と急に分かるようになります。

 さて、TRICERATOPSの音楽はギターとベースとドラムの音で出来ていて、私が普段好きで聴いているピアノとシンセサイザーがいる5人以上のバンドの音とは全然違うわけです。しかし、上手なスリーピースのバンドというのは本来そういうものなのかもしれませんが、ベースとギターのアンサンブルが巧みですし、キーボードはいないけれど、ハーモニーについてはコーラスできっちり表現されています。とてもよく練られている曲ということは、素人にもよく分かる。
 蛙の子は蛙、だと悪口になっちゃうか。なんていうんだか、親から授かる才能ってあるもんだなあと思いました。




2019/06/09

Apple Musicで聴く平成の天才たち

90年代の音楽は、私にとってちょっと空白になっています。
当時は、学生時代から一緒に音楽作りをやる友人がいたので、もっぱらアウトプットの時期で、今さら新しい日本の音楽をチェックしようとか思っていなかったのです。下手に聴き込んで影響受けるのも癪だったしね。
98年、実際には99年に宇多田ヒカルに後ろからドカンと頭を叩かれて目が醒めるまで、7〜8年くらいちゃんと贔屓にして聴いていた音楽はなかったかもしれません。

なので、テレビでさんざん出てくるような超メジャーな人以外、多少は音楽に興味があれば聴いててしかるべきビッグネームも聞き逃しているものが多いです。

そんなわけで、一般教養レベルで欠けているアーティストに触れるにもApple Musicはちょうど良いような気がします。
浜田麻里のところでも書きましたが、私がApple Musicで聴くことでアーティストにはいくらお金が入るのでしょうか?月間使用料が980円で1週間平均で30曲聴いたとすると4週間で120再生か。そんなに聴かないか?まあ1再生あたり10円くらいの売上でしょうか。そのうちショップであるアップルの取り分とメーカーでどのくらい取りますかねえ。物理的にプラスティックの円盤を箱に入れて売っているわけではないから、レコード会社というよりも音楽出版社の手数料なのかな。再生数はなんとでもカウントできると思うので、最後は按分でやるんでしょうが、アーティストにはいくら入るのかなあ。せめて1再生1円くらい入ってるといいですね。

まずは岡村靖幸です。
テレビに出ていた川本真琴はちょっと知ってましたが、そのプロデューサーである岡村靖幸はちゃんと聴いたことがない。
最近になって年に2回くらいテレビで見ているような気がします。スーツを着て踊っているので、須藤元気と同じ箱に入れちゃってるんですが、たぶん全然違う人。
もっと若い世代なんだと思っていたら、ウィキペディアで見ると1965年生まれと書いていあります。なんだ私と似たようなもんじゃないですか。

当時の紙媒体でタイトルだけ見ていた「家庭教師」をライブラリに追加してみました。発売は1990年11月。今聴いてもぜんぜん古い感じはしません。これなら踊れるよね(私はやらないけど)。電子楽器の音もいっぱい入っていますが、生楽器が色っぽく、なんか肉感的な音で、好きな人はハマるでしょう。私もこのアルバムはこれから何度も聞き直すと思う。30年近く前の曲の歌詞が、風俗として今とほとんど変わらず通じるのには「Nippon大丈夫か?」と考えさせられます。私だけでなく国全体が平成ジャンプだなあ。


つづきましては、中村一義です。
岡村靖幸以上になにも知りませんが、たしか「天才」と言われていたはずです。なにがどう天才なのかは知らないんですけど。天才なら最初の作品を聴くべきだろうと思ったので「金字塔」というのをダウンロードしてみました。
中村さんは1975年生まれ、このアルバムは1997年の発売です。岡村くんより一時代若い感じですね。

えー正直、どこが天才かはわかりませんでした。若いのに70年代の古い音をよく知っててセルフプロデュースでまとめられるほど達者なのはわかった。でも我々は原田真二も知ってるしなあ…。最後の曲からどんなメッセージを受け止めれば良いのかもわからず?
でも、聴き終わった後で私には珍しく「Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band」を(これもApple Musicで)聞き直してしまいました。そういうパワーをいただきました。


SCIENCE FICTION/宇多田ヒカル

前回の更新から2年近く経ってしまいました。その間に会社を定年退職したり引っ越ししたりで自分のことで精一杯でしたが、まあ晴れてほぼ自由の身(経済的にはどんどん不自由になるわけですが)ということで、これからは身バレしようが炎上しようが誰にも迷惑がかからないことになっています。 さて、...