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2013/07/07

DREAM-Self Cover Best-/華原朋美

きゃりーぱみゅぱみゅと並んで、もう一つ先週発売されていたのが華原朋美のセルフカバー・アルバムです。

このブログでも何度か取り上げているように、小室哲哉の音楽は好きなんですが、当時(1995年頃・華原朋美の全盛期)はあまりに粗製濫造的に彼の音楽が巷にあふれていたものですから、「ちょっとパス」という感じで華原朋美の歌はあまり熱心に聴いたことがありませんでした。
一般教養程度の意識でテレビで見た中では「I'm proud」と「Save Your Dream」がちょっと好きでしたが、基本、いつも苦しそうに歌ってて、特にピークの後半には歌メロもよく伝わらないようなことになっていて、あまり興味が持てませんでした。
「マライア・キャリーばりのハイトーン」みたいな惹句を何かで見たような気がしますが、こんな不安定なマライアは無いだろう、小室哲哉もいい年して変な娘に入れ込んでいるんだなあ、みたいなちょっと冷ややかな目でみていました。

そんなこんなでいろいろあったらしいのですが、最近になって久しぶりにテレビに出てきて、オーケストラをバックに小室作品何曲かと「夢やぶれて」を歌っているのをみたら、ずいぶんと印象が違う。だから、今回のセルフカバー・アルバムは要チェックと思っていました。

CDで買っても良かったんですが、iTunesでチェックしたら買えるようになっていたので、お手軽さからダウンロードで購入しました。
↓iTunesへのリンク
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ジャケットも美人に写っていますが、どこかで見たような感じがします。
「カワイイ」イメージで売ってた女性がイメチェンで久しぶりに出てくると、なんかみんな「君島十和子さん」みたいなビジュアルになっちゃうなぁ(倉木麻衣とか)…。まあいいや、歌を聴きましょう。

全編オーケストラのバックだとちょっと通して聴くのは辛いかな、と覚悟していたんですが、曲によってはドラムもエレキギターも入るので、地味なだけではありません。正座しなくても普通に聴けます。
当時は粗製濫造かと思っていた小室作品ですが、少なくとも華原朋美に提供していた曲については、メロディや展開に洒落たアイデアがたくさん入っています。全体のアレンジもオリジナルの要素をわりとそのまま手弾きの楽器に置き換わっただけなんですが、意外とロックな感じになっています。このアルバムで「作曲家・小室哲哉」を再評価する人も多いのではないでしょうか?

一方、華原朋美のボーカルは耳障りな感じが無くなって、本人らしさを残しつつも大らかで聴きやすくなっています。「こんなに上手かったっけ?」というのが最初の印象。
とはいえ、岩崎宏美クラスの大物と比べるにはやや線が細く、歌のテクニックで感心させるよりも「素材としての声の魅力」を買ってもらう、アイドルポップの延長戦的商品かなあと思います。本田美奈子が亡くなってから、あの椅子は空いているような気がするので、今後はミュージカルとかで活躍していくのでしょうか?

さて、このアルバムの聴きやすさの理由は高音に余裕があることが大きいと思うのですが、実際に手元の鍵盤楽器で音をとってみると(楽曲によると思いますが、)全体にオリジナルよりも1音半くらいキーを下げてあるようです。地声の最高音がC#かDあたり(それでも高いですね)でした。



2013/06/09

安全地帯XIV ~The Saltmoderato Show~/安全地帯

山野楽器をウロウロと歩いていたら、極彩色のジャケットを発見。なんじゃこれと思ったら安全地帯の新作ではないですか。
思わずジャケ買いしようと思いましたが、思い直して帰宅後iTunesでダウンロードしました。「安全地帯XIV ~The Saltmoderato Show~」です。

↓CDは3000円、ダウンロードは2000円です。
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曲名をみてみると、1曲目に"根尻七五三アワー「The Saltmoderate Showのテーマ」"などと書いてあります。
タイトルの"The Saltmoderate Show"というのもよくわかりません。そういう英単語はないようですし、「いわゆるひとつのサージェント・ペパーズ的ななにかですかぁ?」と思いながらググってみるとオリジナルレーベルが立ち上がっているんですね。
最近アーティストごとにレーベル作るの流行っているみたいなので、今となってはそうスペシャルな感じもありません。
知っている範囲で似ているものを探すと、小田和正の"Far East Cafe"あたりが一番似てるのかもしれませんね。

いずれにせよ、なにかコンセプトアルバム的なことになっているんだな、という想像はつきました。しかも、トニー谷のような顔で「根尻七五三アワー」と書いてあるわけで、絶対おちゃらけたオープニングになるんだよなぁと再生開始すると、果たしてその通りでした。
キッチュな(若い子にはわかりませんね)テーマ曲に乗せて、おそらく玉置浩二がしゃべっているのでしょうが、正体不明の声色で昭和な歌謡ステージ風MCをやっています。どこが笑いどころかわからないゆるゆるの1曲めが終わると、最近なにかのテレビで演奏していた「愛を鳴らせ」が始まり、そこからは現代の安全地帯の音楽が進行する、ということになっています。

本編に入ると、そこはいつもの安全地帯です。
「愛を鳴らせ」はなつかしの「I LOVE YOUからはじめよう」を思わせますし、井上陽水から引き継いだ夜の気配に満ちたちょっとダンサブル(?)なナンバーもあって、そこはいつもと一緒。ロック調の曲はいつになくボーカルのリバーブが深くかけてあって、ちょっと人工的な声に加工されていますが、スローナンバーはほとんど生声のような録音にしてあります。時折、本人の声を重ねたところがあって、そういう時はわざとズレを補正しないで「ここ、重ねてますよ」と分かるようにしてある。そんなベテランならではのラフさもまた良いです。年齢を重ねても、声の調子は悪くなってないようで、素晴らしい!
安全地帯に対して、今さら新しいことをやって欲しいとか、超絶テクとか聴く方も期待していないわけで(安全地帯ってバンド演奏としての評価って見聞きしたこと無いのですが、なんでも無難にやりますよね。これって上手いんじゃないんですか?)、玉置浩二が元気で歌っているだけでまあいいじゃないか、と納得させられてしまいます(まあ、それだけ圧倒的に声が良いわけです)。
そして終盤、再び根尻七五三(ねじりしめぞう、というキャラクターなんだそうで)が登場、今度は話し方のクセで明らかに玉置浩二と分かります。そしてアンコールナンバー的に「これぞ玉置浩二」の切ない系スローバラード「忘れじの君の面影」をもって終了します。

まあ、それにしても今の玉置浩二は躁状態なんでしょうね。短い尺の曲をポンポン書いてる。私生活の諸々の情報を思うと、彼の今の明るさの裏にいったいどんな闇が隠れているのか?その辺の危うさ込みで鑑賞する、大人の楽しみですね。


2012/03/18

21/ADELE


「サカモト教授」のCDを探していたときに久々に足を踏み入れて、会員カードまでもらってしまったタワーレコード。
別の機会に訪れた際に、上から下まで各フロアを徘徊してみました。
良かれ悪しかれ、「なにを売りたいか」が他のショップに比べて明確ですね。
他のショップでもメジャーなアーティスト(めんどくさいからこの単語を使います)の新作が出ればそれなりにコーナー作ってディスプレイしてありますが、タワーレコードはその選択がちょっと捻ってあって、「ふーん、こういうのが渋谷の客層向けなのか」と勉強させられます。毎週通ってそういうのチェックしていけば若いもんと話するときのネタになるかもしれませんね(かえって迷惑か)。

スタッフのおすすめコメントでよく見る「○○や△△がすきならこれはどう?」みたいなのも面白い。Amazonの「この商品を買った人はこちらの商品も買ってます」みたいな感じか。ちょっと前に八重洲地下街のタワーレコードで「キャロル・キングやSuperflyが好きな方に→リンダ・ロンシュタット」てのがあってちょっと驚きましたが(だったら「スピッツやレミオロメンが好きな方に→オフコース」でもいいじゃん)。


そんなわけで行く度に勉強させられてしまうんですが、先月でいうと、上旬であればJ-POPコーナーなら「きゃりーぱみゅぱみゅ」(買ってない)または坂本慎太郎(買いました)、その後は星野源(知らない)。

洋楽コーナーは2011年の代表作が再プッシュされていました。
一番目立ったのが「Adele」でした。相変わらず洋楽アンテナがめちゃめちゃ低いので、名前と顔が一致していませんでしたが、なんか地味なルックスの若い子がガガ様より売れているらしい、という話は聞いたような気がします。 読み方は「アデル」でいいのか、「アデレ」なのか「アドレ」なのか?「お勉強」のつもり安い輸入版の方を購入。
iTunesで購入することも、当然出来ます。
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CDを買って帰ってから、ざっとネットで検索したところ、イギリス人で歳は20歳そこそこ。iTunesに読み込ませてみるとジャンルは「R&B」と表示されました。
え、イギリスにもR&Bってあるの?
そりゃ日本にもあるくらいだからいいだろ?
と自己完結しつつ再生開始。

1曲目はドラムじゃない、なんていうですか、技術家庭で作らされた本箱みたいな、あれですよねリズムは。めちゃめちゃシンプルな演奏。なにこれ、キャロル・キング?
と思うまもなくうら若きADELEさんが歌い始めます。
声ふっとー。

20歳そこそこでこの声が出ますか?

日本ではあまり聞かないタイプの声なのでキーが高いのか低いのかもよく分かりませんので聴きながらキーボードを触ってみたら、どうも2オクターブくらいの幅を行き来しているようです。なんつうか、日本車と排気量が違う感じ。
日本人の上手いのと欧米人の上手いのとはやはり違いますね。

日本人で歌が上手いと言われる人でも、多くはカミソリのような鋭さはあっても斧のような強さを感じさせる人はあまりいません。ADELEさんなんかはチェーンソーみたいなもんです。
スポーツでも芸術でも、欧米人と重厚さで戦うのは日本人には難しい。サッカーとか見てても身長が同じくらいの選手でも、体の厚みが違うじゃないですか?

やっぱそういう重厚長大系の戦いは得意な民族に任せて、我々はアイツらの思いも寄らない重箱の隅に装飾を施すような、オタクな世界で戦ったほうがよさそうです。

さて、買って2週間ほど後にグラミー賞の発表がありました。「大方の予想に違わず」6冠に輝いたそうですが、ジャンルに関係なく、こういう骨太でシンプルなのが流行るのが今の先進国の気分であるのだなあ、とこれはしみじみ納得させられました。

2011/10/30

age/斉藤由貴

本来のタイトルにはフランス語風にaの上に"^"がついて、読みは「アージュ」です。 先日、何かの拍子に突然聴きたくなって、CDラックその他を捜索したんですが、引越しの時に捨ててしまったのか、どこかに二束三文で売っぱらってしまったのか、見つからずに(持っていたのは間違いないんだけど)iTunesでダウンロードしてきました。
   
ところが、なぜかこの「age」は「アルバムの一部」としか表示されず、同じアルバム名を持つ別々の曲群として販売されていました(アルバムとして一括購入できない)。 
なんで?とじーっとタイトル部分を見たら、なぜか7曲目がありません。そのため、このアルバム1枚分を落とそうと思うと、収録曲全部を1個ずつクリックせねばならず、しかも7曲目は無いままという、とても不満足な形での購入になります。

欠落している7曲目はアルバム中唯一、斉藤由貴自身が作詞した「あなたの存在」という曲。

本人が封印したとか、別の大人の事情があるのか知りませんが。
しかし、今でも大きいCDショップに行けば買える、紙ジャケ・HQCD版にはちゃんと収録されています。ということは、おそらくiTunes Storeとレコード会社側の情報伝達の齟齬かなんかだと思いますが、iTunesは結構こういうこと多いですね。っていうか、ダウンロード販売だからって手を抜かないで、サプライ側もショップもちゃんとやれよなー!

 斉藤由貴は、今でもほとんど印象が変わりませんが、田舎の学級委員長がまちがって芸能人になっちゃったような、若い時からおばさん臭い人でしたが、実はミスマガジン出身のグラビア系だし、スケバン刑事とか朝ドラとか芸能界のど真ん中をきょとんとした顔のままこなしてきた不思議な人。

歌手デビューしても、第一印象としては「あ、声出ない、下手」って感じだったんですが、実はこれが食わせ者で、同時期に歌い始めた菊池桃子が「下手そうで本当に下手」だったのと違って、変な表現力があるんですね。音程もずーっとフラット気味に聞こえるんですけど、作品が壊れるような外れ方はしない。似てる人をさがすと大竹しのぶとかすごい名前が出てきます。最近だと相対性理論のやくしまるえつこなんかもそうかな。 

さて、「age」は1989年と言いますから、バブルまっさかり&80年代アイドル歌謡の爛熟期で、それぞれが差別化のために凝った仕掛け作りに頑張りまくっていたころです。

宮沢りえが小室哲哉プロデュースで歌を出したり、工藤静香があの「あーらしをっおーこーして」とか歌ってたのがこの年(だったんだ。Wikipediaによる)です。

斉藤由貴はちょっとサブカル的方向に向かっていて、武部聡志や崎谷健次郎をスタッフに起用していました。斉藤由貴本人もたいした詩人なんですが、作詞は谷山浩子の印象が強いです。CMで流れた「土曜日のタマネギ」の評判がすこぶる良かったですね。
 
「age」はそれまで棒立ちで歌っているイメージだった斉藤由貴が意外なほど派手な振り付きで歌った「夢の中へ」と同時期に発売されました。「夢の中へ」は崎谷健次郎がプロデュースと編曲を担当していますが、「age」も全編・崎谷健次郎プロデュースで、エレクトロ・ポップなサウンドがほぼノンストップで最後まで続く意欲作です。今聴くとちょっと直球すぎるかもしれませんが、でもちゃんと楽しい。個人的にはM8.「雨色時計店」の、歌詞+曲+声のもつ雰囲気と、エレクトロニクスなバックとのミスマッチな感じがすごく好き。

 このアルバムに「夢の中へ」が収録されていないのは、同シングルとこのアルバムが同日発売だったので「棲み分け」のためらしいです。とはいえ、もう、発売から20年も経っていることですし、サウンド的にもつながっているのだから、iTunesStoreではぜひ今後、7曲目をきちんと入れて、10曲目を「LUCKY DRAGON(ServiceVersion)」から「夢の中へ」に差し替えた、「age(コンプリート版)」としてきちんとアルバムとして購入できるようにしてもらいたいと思います。
 

2009/07/21

ハイファイ新書/相対性理論

20日に銀座に行ってPerfumeの"Δ(文字の選択はこれで良いのか?)"と中川翔子の新作を買って来ようと思ったんですが、「今度こそ本物の松田聖子仕立て」の中川翔子を試聴したらちょっと期待と違ったのでパスしてしまいました。

代わりになにか若いもんの、知らないバンドでも聴いてみるかと店内を見渡すと「CDショップ大賞受賞(CD市場の落ち込みをなんとかしようと「本屋大賞」を真似たんでしょうね)」と書いてあるPOPを発見。相対性理論といういかにも一癖ありそうな名前のバンドの、「シフォン主義」というCDが置いてありました。ところが見たところシングルCDだと思ってしまったので「1曲じゃ分からないよなあ」とすぐ横に並んでいた、見た目にちゃんとアルバムに見えた「ハイファイ新書」の方を買ってきてしまいました。あとPerfumeもね。


帯から読み取れる曲名が「テレ東」「地獄先生」「ふしぎデカルト」「品川ナンバー」「学級崩壊」等で、「きっとキンモクセイみたいな男4〜5人の理屈っぽい連中に違いない」と思って家に帰って聴いたら、意外にもボーカルが女の子。それもカヒミ・カリィとか風吹ジュンのような弱々しい声の。そしてバックはかなり理屈重視かつロックな演奏で、そのミスマッチ振りが80年代にあったような、なかったような。ゲルニカとかの、細野晴臣が探してきてYENレーベルで売り出していたような、ちょっと既視感のある違和感がありました。

買って損だったか、というとある意味「さすがCDショップ大賞」http://www.cdshop-kumiai.jp/cdshop-taisho/だけあって、中身は悪くないです(投票した店員の数がまだ少ないのがちょっと寂しいが)。風吹ジュンのような、とは書きましたがこの弱い声のボーカルの人=やくしまるえつこ(芸名だったらひどいね!)はへたではなさそう。音域も狭そうで狭くない。それからほぼ一人でこの不思議ちゃんな詞と曲を書いている真部脩一という人は、やはりキンモクセイ的な邦楽マニアなんだろうと思われます。
私が一番気に入ったのは「品川ナンバー」という曲ですが、真部さんが筒美京平の流れを汲む作家であることが窺えます。

実は、家に帰ってからiTSで買えることが分かって、「シフォン主義」の各曲を試聴してみました。バックがもっと激しく、ロック好きは「こっちの方が良いのかな?」とも思いましたけど、「ハイファイ新書」の方がボーカルとバックの対比がより効果的になっているし、全体がソフィスティケイトされていて、私はこっちを買って正解でした。
まあ、初めて「はっぴいえんど」を聴くのに「ゆでめん」と「風街ろまん」のどっちが良いか、というようなことだと思います。
シフォン主義→相対性理論 - シフォン主義 - EP
ハイファイ新書→相対性理論 - ハイファイ新書

2009/01/19

男と女-TWO HEARTS TWO VOICES-/稲垣潤一ほか

せめて週末には更新したいのですが、風邪をひいて寝込んでしまったので1日遅れです。
しかもUtada新作問題は、書くととても大変そうなので後回しにして、今日はニューミュージックの話に戻りつつもやや寄り道、ということにします。

TVでも盛んにCMが流れている、稲垣潤一と女性歌手によるカバーアルバム「男と女-TWO HEARTS TWO VOICES-」を聴いています。会社の同僚から回してもらいました。


私がつくづく「ニューミュージックだなあ」と思うど真ん中辺りにいる人が稲垣潤一です。「ニューミュージックの真ん中」とはなんぞや?ていうか「ニューミュージックとはなんぞや?」と考えたとき、稲垣潤一はその最大公約数な感じがするのです。

これは好き嫌いの問題ではなく、私なりの客観的な考察の上で本当にそう思ったから書くのですが、「ニューミュージック」というのは「フォークソングによってすっかり素人との区別がつかなくなった大衆音楽をもう一度プロフェッショナルなもの、または品質管理可能なものへと修正して行く途中のもの」であると思います。
同じことですが、歌へた・演奏へた・曲はむっちゃくちゃ(勢いだけはあった)だったフォークソングをマスメディアで扱えるように、大人が手伝って最低限の音楽理論や普遍性を付加して、TVの歌番組に嵌められるように直していった過程が「ニューミュージック」だった、と思うのです。

それが完成して何になったか、というとJ-POPです。前にも書きましたが、80年代にアーティストと呼ばれていた人と、今のTVに出てくる(あまり出てこない人も)J-POPのアーティストを比べたら、今の人たちの方がずっとレベルが高いです。曲だって凝ってるし、歌唱も演奏も素人とは一線を画すものを持っている人が多いと思う。

誰だったか忘れてしまいましたが、今の若い人に80年代のアイドル歌手の歌を聴かせたら、「わざとヘタクソに唄っているんですか?」と言われた、という話を書いている人がいました。アイドル歌手に限らず、80年代に「アーティスト」と呼ばれていた人で「こりゃちょっと真似できねえや」と素人に思わせる人なんてほとんどいませんでした。
強いて上げれば井上陽水やクリスタルキングの人の声とか、Charのギターとか、矢野顕子の歌とピアノとかでしょうか?
曲の構成だって耳コピーは無理でも、バンド譜を入手すれば意外と単純に再現できそうなのが多かった(実際に演奏技術があるかどうかは別にしても)。そういう意味で「ニューミュージック」の時代は、売れている音楽が我々素人が手を伸ばして届く辺りをさまよっていたのだと思います。

稲垣潤一も、今の人には信じてもらえないかもしれませんが、私らの若い頃は使われる形容詞はともかく、メディアで紹介される時には「実力派」という意味を付与されて流通している名前でした。

おそらく今のポルノグラフィティとかコブクロを聴き慣れている人たちが、このアルバムを聴いて「稲垣潤一ってすげえ上手いなあ」とか言わないと思います。私はこのブログで「うまい・へた」ってなんだという話を何遍か書いてきて、いろんな人の良いところを見つけてきたつもりですから、稲垣潤一の良いところも書くことができます。
例えば声質が独特の硬質さを持っていて、しかもその堅さが嫌な感じじゃなく、年齢を超越したイノセンスが感じられるところとか。あるいは歌詞が伝わりやすいし(CDで聴く限り)音程もしっかりしているとか…。
逆に「何を唄っても同じ唄い方しか出来ない不器用な人」とか「声質が違うのに無理矢理郷ひろみの真似してる人みたい」とか、悪く書くこともできます。

結論として、稲垣潤一は個性的で商品価値はあるけれど、「実力派」とは違うと思います。

さて、このアルバムでは稲垣潤一も、参加している女性歌手も(我が愛しき太田裕美も)、主役とサポートの攻守を上手く入れ替えながら、楽しく聴けるできばえになっています。
1曲だけ質感が違うのは、「ドラマティック・レイン」を中森明菜と唄っているトラック。中森明菜も商品価値はあったけど本当の実力派ではなかった人なので、二人のデュエットはスナックのカラオケで字幕の♠と♡のマーク見ながら合わせて唄っているように聞こえます(中森明菜にボイスコントロールという概念が無い?)。
そんなことばっかり書いて、あなたは稲垣潤一や中森明菜を熱心に消費してきた世代として偉そうなことが言えるのか?と問いつめられそうですが、最初に書いたようにそれが嫌いだというわけじゃない。そして若い頃に愛しくも歯がゆい、そういうレベルの音楽に囲まれていたからこそ、なんの専門的な音楽教育を受けていないにもかかわらず「今に見ていろ俺だって」と音楽を諦めずに生きてこられたわけです。

それに引き換え、現代J-POPから音楽に入った若い人は大変だ。
素人とプロの境目にある壁が、相当高くて立派になっちゃってる(例外はあるけれど。またおいおい触れますが)から、よっぽど渇きを感じていない限り、若くても素人に徹してカラオケボックスに行っちゃうもんね。

2008/11/16

I'm Proud/華原朋美

小室哲哉の逮捕は、まあ、びっくりしましたね。少し前から週刊誌などでは話題になっていましたし、その前にも大分トリニータへのスポンサー料の支払いが滞っているなど、「金に困っているのではないか」という話がありましたが、全部本当だったとは…。

私のiPhoneの中で小室作品を探すと、TMNのベスト、それに華原朋美が2曲入っていました。
"I'm Proud"と"save your dream"です。
華原朋美 - Best Selection: 華原朋美 - I'm Proud (Radio Edit )
華原朋美 - Best Selection: 華原朋美 - Save Your Dream

この2曲はともに1996年の作品です。華原朋美の絶頂期と言って良い時期のもので、作品も歌唱も一番美味しい頃。そこだけつまみ食いしているわけです。

華原朋美は良くも悪くも個性的な歌手でした(と過去形にしちゃいけないのかしら)。うまい・へた問題でいうと、うまくはないです。キーがやや高めで、地声でE5くらいまで使えるのが特徴で、そこからファルセットでもっと上にいくこともある。一般男性がオクターブ下で唄うのにちょうど良いくらいの音域。
それがうまさという印象に繋がらないのは、いつ声がひっくり返るか安心して聴いていられない不安定さにあります。
最高音の手前あたりで本人が一番気持ちよく出せる高さがあって、そこにハマると綺麗な声が響くんですが、曲の盛り上がりがそこに当たらないとただうるさい声で唄っている人になってしまいます。
"I'm Proud"はその辺のちぐはぐさがなくて、全編を通じて安心して聴いていられます。最後の転調からはちょっと怪しいですが。

曲としては、豪華なオーケストラと打ち込みリズムが共存する不思議なサウンドがカッコイイ上に、テンポが少し頑張って歩く時のリズムにちょうど合って、通勤の時の伴奏にすると気持ちが良いです。

2008/10/18

南沙織ベストコレクション/南沙織

沢田研二に続いて、もう1枚聴いてから現代に向かおうと思います。先日来拘っていた南沙織です。

本当はiTunesでダウンロードできればいいんですけど、ソニー系は相変わらずiTMSに対してかたくなな態度を続けています。消費者は不便しているので、寛大な心でiTMSに結集していただけないですかね(どうせ負けてんだし!)。


さて本題です。
南沙織は私が小学校の低学年の頃から唄っていたので、ものすごく昔の歌謡曲の人という印象なんですが、年齢で言うと太田裕美や竹内まりやと同学年なので、活躍時期がもう少し遅ければ、私が中学生くらいで夢中になっていてもおかしくなかった人です。デビューが早すぎたんですね。

そして、この「ベストコレクション」のラインナップ(後で紹介します)を見ると、15曲のうち12曲の作曲/編曲が筒美京平(作詞は有馬三恵子)です。そうか、南沙織を聴くことは初期の筒美京平を(アレンジ込みで)聴くことでもあったのか!なんかいろいろと繋がってきます。


先日の「青春歌年鑑('73年)」を聴いている時も突出して聴こえたのですが、この人は絶対歌うまいです、今風の意味で。最終的には彼女はレコード大賞の歌唱賞(最優秀ではない)を受賞していますが、現役時代を通じて、アイドルとしての評価はあっても「うまい」という言われ方はあまりされていなかったように思います。

その理由を考えてみると、一つには、彼女は本土復帰前の沖縄から「来日」してきたということ。これは当時の日本人の感覚では、「舶来品=プレミアム」である一方、「違和感」でもありました。いずれにせよ、「外国人枠」のアイドルだったので、そういう(うまいとかへたとかの)問題をきちんと考察する機会がなかったんだと思います。

もう一つ本質的なところでは、彼女の声がそれまでの歌謡曲にあまりいなかったタイプだからだと思います。
当時の日本の一般大衆が「いい声」と思うのは、小柳ルミ子のような声を頂点とする「音楽学校で発声を習ったソプラノ系」でした。南沙織の声はそれとは対称的な、低音成分の豊かな声で、エレキギターでいうとオーバードライブを繋いだような太さがあります。しかも低音から高音までその発声法が変わらない(すばらしい!)ので、どのくらいの音域があるのかもちょっと分かりにくい。
実際にこの15曲を聴く間、EZ-EGで音を取っていたのですが、確認できただけで下はF3、上はD5と2オクターブ近く使っています。これはポピュラー音楽としては必要十分なレンジです。一人アカペラの達人・山下達郎だって、ラジオで「どのくらい音域がありますか?」と質問されると「下はA(2)、2オクターブ上のA(4)。その上はファルセット」と答えていましたから。

そういうことを考えると、南沙織というのは、この間ずっと活動していた結果、「実力派アーティスト」として扱われている竹内まりやなどと同じグループに入れた方が良いと思います。ただし、非常に若い時にデビューして、評価が固まる前に引退したため、「実力派」としての実績が残ってないことは、傍目にはもったいないですね。
しかし、彼女は人気絶頂の時から「引退」を口にして騒ぎを起こしていましたから、あまり芸能人であり続けることに興味が無かった人なのかもしれませんね(あるいは南国娘の情熱で、恋をするとほかのことはどうでもよくなっちゃう性格だ、という妄想の余地もある)。


それでは、聴いていきましょう。忘れている曲も多かったんですが、聴けば「ああ、これだったのか」と思うものばかり。
M1.17才
「たしかめたくってえー」の2個目の「た」の音が森高千里版より2音階高い。昔NHKのドラマで昭和40年代の風景として子どもがこの歌を唄っている場面がありましたが、ここのメロディが森高版だったので「チェック甘いぞ」と画面につっこんだことがありました。この曲、エレキギターの音が入っていないんですね。

M2.潮風のメロディー
これもエレキギター無し。ビートはエレキベースで支えられています。ストリングスがカッコイイ。近田春夫がよく褒めているのはこの辺なのかしら。

M4.純潔
イントロからエレキギター全開で始まります。ブラスの音も派手で、南沙織にしてはうるさめの曲です。当時の歌謡曲の歌手としてはめずらしく、自分の声をダビングしてコーラスをつけています。後に太田裕美も多用しますし、今では常識ですが、この当時にやっていたということは、南沙織は楽譜が読める人だったのかもしれません。

M5.哀愁のページ
冒頭、英語のセリフが入っています。内容は日本人が考えたような文章ですけど。バイリンガルと声質のせいで、どうしても竹内まりやとキャラクターがかぶります。南沙織も上智大学卒業直前くらいでデビューしていたら、全然違うアーティストになっていたかもしれませんが、そうするとどっちかがいらなくなっちゃうか!

M6.早春の港
アコースティック・ギターのスリーフィンガー奏法がずっと続くこの曲は、当時のフォーク青年の心にも響いたようで、Wikipediaによると吉田拓郎の「シンシア」はこの曲へのアンサーソングなのだそうです。

M7.傷つく世代
子どもの頃はこの曲が一番好きだったなあ。アイドル歌手としての可憐さが爆発している曲。曲もそうだが、南沙織が従来の歌謡曲的テクニックを駆使して、若い女の子としての色気を思い切り使ってみた感じ。

M8.色づく街
彼女の代表曲として有名な曲。「すこしおとなすぎる」のポリリズムっぽいのせ方がアクセントになっています。これだけアイデアが入って演奏時間は2分51秒しかありません。贅沢だなあ。ときどきリズムが走り気味に聴こえるのが味になっています。
このM6〜M8の3曲は甲乙付け難く、1973年は南沙織と筒美京平コンビの絶頂期、という感じがします。

M10.バラのかげり
この辺りの曲は、このまま太田裕美が唄っても全く違和感がなさそう。この曲は「ドール」なんかに似ているので、特にそんな気がします。

M12.思い出通り
M9〜M11が重苦しかったので、ここで一息つけます。この辺までくると声の使い方がかなり多彩になっていて、それまでよりかなり軽く唄えるようになっています。彼女なりに芸の完成に近づいている感じがします。

M13.人恋しくて
筒美京平作品から「春うらら」で有名な田山雅充に作曲家が変わっています。ベースが頑張っていますね。この曲でレコード大賞の歌唱賞だったそうです。上手いだけならM7やM12の方が上手く唄っていると思いますが、こういうものは「欲しい」と言わないともらえないものですから、いろいろ事情があったんでしょうね。

M14.哀しい妖精
作曲がジャニス・イアンという、南沙織の記念碑的作品。作詞はすでに太田裕美作品等でも活躍していた松本隆です。南沙織自身はこういう方向の音楽が好きだったんでしょうね。そういえば、「夜のヒットスタジオ」でアリスと共演してとても喜んでいました。彼女が育った頃の沖縄ではどんな音楽が流行っていたのかしりませんが、もともと日本の歌謡曲よりも外国曲やシンガー・ソングライター的なものへの嗜好が強い人だったのでしょう。


M15.春の予感~I've been mellow~
作詞・作曲・編曲が尾崎亜美。
尾崎亜美の曲としても一番好きな曲です。「タイトルが現在完了形だ」と思ったのは憂鬱な中学生だった頃の僕。事実上、彼女の結婚前の最後のヒット曲でしょう。尾崎亜美はこのブログではまだ触れていませんが、山下達郎と並ぶ、自分でアレンジが出来るシンガー・ソングライターの走りで、まあ一言で言えば天才です。南沙織も唄い方がかなり影響されています。このままニューミュージック方面に突っ走るのも大いにありだったと思うんですが、彼女は主婦(篠山紀信夫人)になることを選択しました。

2008/10/12

ROYAL STRAIGHT FLUSH/沢田研二

ディープな歌謡曲の世界から、浅瀬に向かって浮上を開始しています。浮上のついでに、なぜか「青春歌年鑑」に入っていなかった大物、沢田研二を聴きながら行きましょう。
iTunesでも買うことができる、彼の全盛期のベストアルバムである"ROYAL STRAIGHT FLUSH"をダウンロードしてみました。
沢田研二 - ROYAL STRAIGHT FLUSH


沢田研二のことを今更私なんかが紹介することもないと思いますが、ポイントはGS出身で、しかもそのトップにいた存在だったということ。
その後、ちょっとした空白期間の後でソロ歌手として大ヒットを飛ばす一方で、ザ・ピーナッツの片っぽうと結婚したりとか、一般人とのトラブルがあったりして、一瞬もたつきもしたのですが、1977年に「勝手にしやがれ」でレコード大賞を取りました。
その後、当時の子どもがみんな見ていた「ザ・ベストテン」の常連、「一等賞男」として一時代を築きます。
この時期、もうヒットチャートの何割かは「ニューミュージック」に浸食され、歌謡曲の歌い手も時代に乗り遅れまいとニューミュージックのアーティストに楽曲を発注するようになっていました。GSという、日本独自仕様のロックを唄っていた沢田研二が、ニューミュージック勢に対してどんな感情を持っていたかは分かりません。ただ、すでにピンクレディーが消えつつあったこともあり、本人の意識はどうであれ、結果として「歌謡曲側」の最後の牙城のような立場にいました。

この、"ROYAL STRAIGHT FLUSH"は、ソロになった1972年から1979年までに出した多くのシングル曲の中から、大ヒットと言われる曲だけを並べたもの。タイトルは当然、ポーカーでAと絵札を同じマークで全部揃えた最強の手のこと、でしょう。これさえ買っておけば、あとはiTunesで"TOKIO"と「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」を200円ずつ出して補えば、だいたい満足なんじゃないでしょうか?私の好みでは「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」も加えたいところです。

前回、山本リンダのところで書きましたが、「勝手にしやがれ」以降しばらくの間、沢田研二も曲ごとに衣装を決めて、それを常に着て唄っていました。西城秀樹もその少し前に似たようなことをやっていましたが、沢田研二の方が長い期間徹底してやっていたように記憶しています。前回これを「コスプレ歌謡」と便宜上呼ぶことにしたのですが、その裏方に常に阿久悠がいたのはなにか意味があるのだと思います。

これも前回、1973年の歌謡曲を聴く中で、そろそろこの時期から芝居っ気たっぷりの歌謡曲は、聴く側に取って過剰なものと感じられるようになったと思う、という話をしました。
それから5年経って、ソロ・シンガー沢田研二が活躍した70年代の後半以降になると、かたや音程もおぼつかないアイドル歌手が、こなた自作の曲に生の思いをぶつけるように唄うフォーク(ニューミュージック)がすっかりその陣地を広げていました。そんな中でプロの作詞家である阿久悠は、歌手に架空のキャラクターを割り当て、シリーズ化するというやり方で対抗していました。
その最初の成功例が山本リンダ(=セクシーな女王様というキャラ)であり、さらに大成功を収めたのがピンクレディーです。
ピンクレディーは、最初はパンチラお色気路線だったのを、子どもたちがすぐに飛びついたので「お色気」は捨て、SF、オカルト、おとぎ話の方向に展開していきました。

一方その頃、沢田研二は「当代一のいい男」でした。今で言うと木村拓哉みたいなものです。系統も同じ「雨に濡れた子犬系」。そんな彼に阿久悠はどんなキャラクターを設定したでしょうか?そんな興味を持ちつつ、中身を聴いてみたいと思います。
ベスト盤というと、年代順に並んでいることが多いのですが、このアルバムでは制作側の意図で曲順が変えられています。

M1.カサブランカ・ダンディ
イントロで、ジーンズに挟んだ携帯用ボトルのバーボン(たぶん)を口に含み、霧を吹きながら歌った曲。ドラムス、パーカッション、ギター、ピアノ、ベースというシンプルなバンドサウンド。そういえば、沢田研二は70年代の前半から、歌謡番組でも自分専用のバンド(井上堯之バンド)をバックに唄っていました。そのスタイルは一部で「(いい意味も悪い意味も無く)歌謡ロック」といわれました。それを参考にして「今の一般的な日本人が受け入れられる限界はこれだ」と戦略を練った上で派手な楽曲を唄い始めたのがアン・ルイスです。沢田研二のサウンドの基本はこのバンド形態にあり、あとは曲の要請によってブラスやストリングスが重ねられています。

M2.ダーリング
セーラー服(本来の、水兵さんの格好)で唄った曲。
M1のバンドにサックスが加わって、後のチェッカーズの音(「ジュリアに傷心」あたりの)になっています。沢田研二の歌唱法の特徴がいろいろと確認できる曲です。「むけてくれえ〜」の低音部の喉を絞めたような発声、キメの「ダーリーン」のロングトーンでの音程が狂いそうで踏みとどまるところの危うさ。細かいことは分かりませんが、特にこの曲ではピッチのアジャストがいい加減です。しかし、それがちゃんと味になっているし、下手とは言えない、絶妙な粗さになっています。

M3.サムライ
青緑っぽいぴたぴたしたシースルーの、後のビジュアル系の人が着ていたような衣装にちっちゃい刀を持って唄っていました。死んだ父は「見るのも嫌だ」と言って、本気で怒っていました(西城秀樹が「ジャガー」を唄っていた時も大変だった)。それだけインパクトがあったんですな。演奏時間が5分を越える、当時の歌謡曲としては例外的に尺が長い曲。

M4.憎みきれないろくでなし
洋ピン(外国人モデルのセクシーなピンナップ写真)のモデルが警官のコスプレをしているような格好で唄っていました。アメリカ警察の制帽にノースリーブの白いシャツと黒いレザーパンツだったんじゃないかな?化粧もちょっと女装風だったと思う。こちらはM1のバンドにブラスセクションが加わっていますね。

M5.勝手にしやがれ
曲の基本はいつものバンドサウンドですが、いつになく厚めのストリングスとブラスが重なっています。
私は元ネタを知らないのですが、伝聞&Wikipediaの記事等で勉強したことを総合すると、直接のタイトルはフランス映画からの拝借。その映画の内容も合わせ、全体がハンフリー・ボガードへのオマージュになっているようです。「いったきりなら」のところで客席に投げる帽子もボギー風。
実は、阿久悠が沢田研二に設定したキャラクターは「ハンフリー・ボガードを気取る二枚目」なのです。後でまとめます。

M6.ヤマトより愛をこめて
僕は見ていませんが、同級生が夏休みに見に行って、みんな泣いて帰って来た「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」のエンディングテーマ。
記憶が曖昧ですが、この曲にもデスラー総統風のマント付き専用衣装があったような気がします。タイトルはボギーから離れて、より大衆的な「007シリーズ」になりましたが、深追いはしません。
バンドサウンドにストリングスが厚く被っています。イントロのピアノとエレキギターのユニゾンのあたりに、「僕の基本はロックサウンド」という拘りを感じます。

M7.時の過ぎゆくままに
これはコスプレシリーズになる前、1975年の作品です。たしか沢田研二が三億円事件の犯人で、時効まであとわずかという、現実とリンクした設定の連続ドラマの主題歌でした。このドラマは(子どもだったので)見ませんでしたが、この曲は本当に流行ってたなあという記憶があります。
タイトルは「カサブランカ」のテーマ曲"As Time Goes By"からか。実は、この「カサブランカ」がその後大きな意味を持って行きました。

M8.危険なふたり
ソロになって最初の大ヒットです。これも年上の女性が相手ですが、不倫ではないかも。いずれにせよ若い頃の沢田研二はこういう、年上の女性に愛されるタイプの色気で勝負していたということです。イントロのブラス、伴奏でのオルガンがかっきり裏拍でコードを弾いているのを拾って聴いていると面白いですよ。
「わかーれーるつもーりー じゃじゃっじゃーん」で片足を上げるところを、後に石野真子が「ジュリーがライバル」でパロディにしていました。この頃の大ヒット曲っていうのは本当に浸透力があって、そういうネタに誰でも反応できたから素晴らしい。娯楽が少ない時代でしたからね。

M9.追憶
M8とM7の間の時期に発売された曲です。いつになくオーケストラが分厚く、このアルバムの中でもサウンド的にはちょっと異質です。
この曲については、とくに雰囲気重視な唄い方で、ピッチとかかなり怪しいです。
沢田研二にはなぜかフランスのイメージがあって、相手の名前がカタカナでもあまり滑稽な感じにならないのが強みです。ニーナってのはなに人でしょうか?彼女も人妻でしょうか?

M10.許されない愛
このアルバムの中では、もっとも古い曲になります(1972年)。
印象的なブラスが入っているのはシカゴの影響?オルガンもアタックが強めで、当時思いつくロックサウンドを追究したんでしょうか?
沢田研二は声をあまり作らずに唄うタイプの歌手で、この唄い方でよく声が保つなあと感心します。喉が強いんでしょうね。最後に出てくる最高音のGはかなりしんどく、ショーケンみたいになっていますが、ギリギリ踏みとどまって味にしています。この曲も人妻との恋愛を唄っています。

M11.あなたに今夜はワインをふりかけ
M3「サムライ」のB面の曲。おそらくコンサート等で人気が高い曲だったのでしょうね。あと、CMにも使われていたような気がします。出だしがキャッチーで、CMでもここが使われましたが、アイデアがそこにしかなくて全体を聴くとちょっと平凡。この曲が入っている代わりに「コバルトの季節の中で」という佳曲が入ってないのがちょっと不思議です。

M12.LOVE(抱きしめたい)
前年のレコード大賞に続き、狙いを最優秀歌唱賞と紅白のトリに絞って出して、それを実現した曲。
沢田研二が最優秀歌唱賞的歌手であるかというと、疑問なところもあります。もともとレコード大賞などが成立した頃の歌謡曲で推奨される唄い方(大先生の指導のもと修行を積み、作曲家の指定に忠実に歌い続けること)とは違います。沢田研二の場合、まずは自分の外見や声によるセックスアピールがあってこその歌手であり、それを曲げてまで楽曲に殉ずることはしません。また、ファンもそれを望んでいます。やっぱり大衆音楽とは、歌い手のキャラクターが重要ということが改めて認識され、その認識の中での歌唱賞ってことなのでしょうか?
さて、この「LOVE(抱きしめたい)」の歌詞の内容は、M10やM7と同様、年上の人妻との恋愛ですが、ジュリーも大人になって、ただ「辛抱たまらん!」と破滅型の恋愛をするだけでなく、相手の立場とか収拾のつけかたにも思いを馳せるようになっています。

さて、こうして全曲を聴いてみました。
この中で沢田研二が演じている男は何人いたでしょうか?
1.年上の人妻と恋に落ち、思い悩みつつ関係を続けてしまう若いイケメン=本来のキャラクターに近い
(M7,M8,M10,M12)
2.ハードボイルドを気取り、去って行く女に背を向ける男(後に落ちぶれる?)=阿久悠が仕掛けたキャラ
(M1,M3,M5,M12は1と2の統合でしょう)
3.外国人女性と恋愛する、グローバルな(?)二枚目=虚像としてのジュリーのイメージ
(M9,ひょっとしてM3も。相手がジェニーだから。全部源氏名だったらちょっとイヤだが)
4.無邪気なスケベ
(M2,M11,M4は女性の視点だが相手の男はこれ)
※M6は映画主題歌なので、別モノと考えます。

そのうち、M8、M9、M10は阿久悠の作詞ではありません。つまり阿久悠が担当する以前の作詞家は、若くてセクシーな沢田研二本人のキャラクターをそのまま膨らましていったのに対して、阿久悠には「ジュリーを大人の男、沢田研二にしよう」という意思があったものと思います。そのつもりで俺に発注したんだろ、と。
そこでまず、M7でそれ以前の作品でつき合ってきた女性との退廃的な恋愛を総括します。相手も不倫で疲れ果てているし、もうこの若いジュリーは心中でもして死んでもらおう、ということでしょう(ま、ドラマの内容に沿ってるだけなんでしょうが)。ただ、そのタイトルをハンフリー・ボガードに由来する"As Time Goes By"から拝借したことが、その後の展開に効いてきます。

そして、いよいよ本格的にジュリー大人化計画を進めるに当たって、"As Time Goes By"がヒントになり、「よし、ここからのジュリーはハンフリー・ボガードの路線で行くぞ」ということになったのだと思います。
そして「勝手にしやがれ」「サムライ」とハードボイルドな二枚目路線を演じさせ、「LOVE(抱きしめたい)」では、人妻と恋愛しつつも、相手の幸せを優先して別れを告げる、分別ある一人前の男として描きます。

ところが、最後にどんでん返しがありました。

「カサブランカ・ダンディ」では、それまでの度重なるやせ我慢に疲れた主人公が、その役目を果たせなくなってしまいます。
上のボタンをはずしたジーンズの、胴のところにポケット瓶の酒を持ち歩くだらしない男。帽子もシャツもくたびれています。そして、飲んだくれては「ボギー、アンタの時代はよかったよ」とぼやく中年(たぶん絡み酒で泣き上戸)になりました、というオチです。
だからM1の霧吹きは、M5で彼が恋人を見送った窓辺で抱いていたボトルと同様、バーボンなのだと思います。

阿久悠と沢田研二のコラボレーションによるフィクショナルな作品群はこれにて事実上終了し、この後、沢田研二は他の作詞家の曲を唄うようになります。

2008/09/28

よこはま・たそがれ(他3曲)/五木ひろし

ディープな歌謡曲の世界を旅しております。
その中でもラスボス級の大物である五木ひろしを聴いてみたいと思います。アルバム1枚とか聴くのはちょっと大変なので、比較的前期に属する4曲を聴きます。「よこはま・たそがれ」「夜空」、それに事務所独立後の勝負曲だった「おまえとふたり」、レコード大賞受賞曲の「長良川演歌」です。ついでに言うと、「おまえとふたり」以降の作品はみんな同じだと思っているんですよね、私は(ファンの人からは説教されるでしょうね)。

五木ひろしはヒット曲の数、受賞歴、業界での位置づけなど、どれをとっても押しも押されぬ大スタアです。しかもぽっと出で売れたんじゃなくて、今の名前になるまでに何度も芸名を変え、レコード会社を代わり、と下積みの苦労を知っているのも本物っぽいところです。
では、実際どんなものなのか、聴いてみましょう。

1.よこはま・たそがれ
作詞 山口洋子/作曲 平尾昌晃
山口洋子の歌詞は、「あの人は行ってしまった」以外はすべて単語の羅列という画期的なもの。コラージュという手法は絵画が元だと思いますが、そこから音楽、文学でも同様な表現があり、この歌詞もその一つ。曲は演歌の中ではモダンな8ビートの中に、サビでの跳躍などテクニックと音域が必要なもの。当時の歌謡曲ど真ん中の作家がかなり集中して作ったと思われる作品です。そんな作品を「うた」として社会に広く届けるというのが再デビューに賭ける若き五木ひろしへの課題だったというわけです。
実際に聴いてみると、今私たちの頭の中にある五木ひろしの唄い方よりもずっと熱唱していますね。その中でも小節をきかせる部分とロングトーンの使い分け、サビの部分でさりげなくファルセットを混ぜるところなど、高度なテクニックを駆使しています。今では完全に封印していますが、この人はモノマネがもの凄く巧く、家には一生使い切れないほどの象印電子ジャーと魔法瓶が在庫されているはずです。
五木ひろし - 五木ひろし 配信限定ベスト 其の一 - EP - よこはま・たそがれ

2.夜空
作詞作曲は1と同じです。
当時小学生だった私にもとても分かりやすいいい歌でした。この間、ジェロのカバーも聴きました。声質とハリは甲乙付け難い。違うのは五木ひろしには押しと引きを感じますが、ジェロの方はバックが分厚い分、引きが使えていないので、歌唱としてのメリハリは五木ひろしに軍配か?「さみしいさみしい」の芝居っけを巧いと見るか、クドいと見るかで好き嫌いが別れるでしょうか。
五木ひろし - 五木ひろし 配信限定ベスト 其の三 - EP - 夜空

3.おまえとふたり
作詞 たかたかし/作曲 木村好夫
木村好夫はギタリストとしてアルバムをたくさん出している有名な人で、クラシックギターを習ったことがある人にはお馴染みの名前です。このギター演歌が成功したことで以降の五木ひろしはこの手のナンバーが多くなってしまいました。唄い方も今の唄い方であり、モノマネの人が真似するいわゆる五木風の唄い方になっています。声を張りすぎない、コントロール重視の唄い方。歌のメロディに寄り添うように木村好夫のギターが絡み、これはこれで芸術性が高いとは言えますが、女声コーラスのダサさなんかはJ-POP世代には許せない感じもします。ただただおとなしく唄っているように聴こえますが、やんちゃな巻き舌を使ったり鼻濁音もわりといい加減。これは意識してそういう部分を作っているのか、大物になったがゆえの手抜きなのかは、もう素人では聞き分けられないのでした。
五木ひろし - 五木ひろし 配信限定ベスト 其の三 - EP - おまえとふたり

4.長良川艶歌
作詞 石本美由起/作曲:岡千秋
「奥飛騨慕情」などのド艶歌復権の兆しが見られた80年代前半にロングヒットした曲です。この頃はもう、私には全く興味のない音楽になっていましたが、世間の評判はよく、レコード大賞をとったりしています。
格調高い琴の音から始まって、すぐにいつものイントロに切り替わって、そこから先はほぼ奥飛騨慕情です。岐阜県在住の女性が鵜飼の季節に出張かなんかで訪れた男性と一晩過ごしてそれっきり別れました、という話を3コーラス分の歌詞を作ってメロディをつけた、という曲です。全てが紋切り型で、この歌を聴いたからといって人生が変わったりは絶対にしないと思います。それを五木ひろしが歌唱テクニックを駆使して「なんだか分からないけどすごいもの」に仕立てています。一部の実力と人気のある歌手がこういうことをしてやるから、演歌を作るセンセイたちは楽ばっかりして、全体が下火になったんだと思うんですが、違いますかね。
五木ひろし - 五木ひろし 配信限定ベスト 其の四 - EP - 長良川艶歌

五木ひろしは男性歌手のなかでも相当緻密にコントロールされた唄い方をする人だと思います。ちあきなおみと並べて聴いても、ちあきなおみの方が自由度は高いような気がしますが、奥行きの深さにおいては互角。ただ、シンガー・ソングライター系の歌唱に慣れている私のようなタイプの聴き手は、「もっと頑張って唄えよ」と思ってしまいます。実際には頑張っていないのではなくて、自分の声に溺れず、常にベストの歌唱を届けるための高度に制御された唄い方をしているのだということだけは良く分かりました。
また、男の私の耳にはこの人の声は「ごく普通のまあまあいい声」にしか聴こえないのですが、おばさまたちの熱狂を見るに、女性にとっては、下半身を揺さぶられるようなセクシーな声に聴こえているのかもしれません。

2008/09/21

しんぐるこれくしょん/ちあきなおみ

さて、太田裕美で免疫力を回復したところで、いよいよディープな歌謡曲の世界に入りましょう。
テキストはちあきなおみです。

ダンナさんが亡くなって以来、芸能活動を止めてしまったので、今はもうNHKの懐メロ番組にも出てきてくれません。
キャリアの後半では「紅とんぼ」など船村徹作品での印象が強いので、「演歌歌手」と思っている人がいるかもしれませんが、本人はそんなつもりは無いと思います。余談ですが、この「しんぐるこれくしょん(何で平仮名なんだ?)」は、コロムビアレコード在籍時のものなので、「紅とんぼ」は入っていません。テイチク版も探してこないといけませんね。
ちあきなおみは昭和40年代の歌謡曲の良心と言ってよく、今の若い人が彼女やザ・ピーナッツを聴く機会がないことを残念に思います。

ちあきなおみは歌謡曲時代の歌手に要求されるほとんど全てを持っています。
歌謡曲における歌手の役割は、「作曲家の先生」が作った歌を、いかに丁寧に録音し、ステージやTVで再現するかです。
当時の歌手は、まず、これはと思う作曲家に「弟子入り」し、子どものお守や雑巾掛けから始め、レッスンを受けてデビュー。新曲ができたらその作家の家に通って、どう歌えば良いか、という綿密な打ち合わせとレッスンをしてレコーディングしていたようです。

最近はあまり見かけませんが、ちょっと前までは素人に歌を唄わせて、プロの作曲家がそれにダメだしするTV番組が結構ありました。そこで作曲家の大先生はこんなことを言います。
「こんやもきてきが、きてきが、きてきが」と3回ありますが、その3回には違った意味合いがあるのでそれを表現しないといけません」とか、
「なみだ、なみだ、なみだ、なみだ、なみだかれても、の5回のなみだは全部違うんですよ。歌は3分間のドラマです」
まるで禅問答です。今だったら、「じゃあ、3回目のなみだの時にアホになります」とか言い返しちゃいそうです。

ちあきなおみは「3分間のドラマ」を忠実に、しかもとても上手にやっています。彼女は後にちょっとコメディエンヌ風な女優の仕事をたくさんやりますが、彼女に取ってはドラマの台本も曲の譜面も同じようなものだったのではないかと思います。

歌手としてのちあきなおみは声質、声量、音域とも非常にすぐれた楽器であり、それは当時のポピュラーミュージックの範疇にある曲であれば、自在に唄いこなせるレンジの広さがありました。そしてハスキーまでいかないが、ちょっとホワイトノイズが乗っかったような深い声を持っています。
また、その演奏能力もすこぶる高度です。広瀬香美のときにしつこく書きましたが、ビブラートをどうかけるか?音程をどこできっちり合わせて、どこに破調を作るか?ということをきっちり計算しています。

ルックスは美人とはいえませんが、デビューが遅かったこともあって、出てきた時にはもうお色気系での勝負もいける、というキャラクターでした。

では、聴いてみましょう。

Disc1

M1.雨にぬれた慕情
デビュー曲です。作曲は彼女の師匠である鈴木淳。バックはジャズコンボ風で、特にピアノがジャズっぽいですね。この半年前にいしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」が大ヒットしています(作曲は筒美京平)。多分意識していると思うのですが、徹底してノン・ビブラートで唄っていて、気持ち鼻にかけていますが、これはいしだあゆみの唄い方(いしだあゆみはこの唄い方しかできない)です。

M2.朝がくるまえに
これもM1とほぼ同じものです。前年に大ヒットしたピンキラの「恋の季節」に似せてあります(もう、断定しちゃう!)。

M4.四つのお願い
彼女の最初のヒット曲です。いしだあゆみより色気があるんだから、それを使おうということか、ビブラートを使うようになりました(できるのに封印していた)。サビの「ひみつにしてねー」のロングトーンはビブラートはかけず、抜きのところでわざとダウングリッサンド(1オクターブ下に向かって声を下げる)しています。

M5.X+Y=Love
前作のヒットをどうつなげて行くかを、作家側が一所懸命考えて作られたと思われ、タイトルからして凝りに凝っています。細かいことですが、英語部分の譜割りが日本語的なのを、彼女なりにせいいっぱい抵抗して、"I love you"を英語風に3音節で唄おうと頑張っています。

M7.無駄な抵抗やめましょう
後に演歌も唄うようになる萌芽が見られます。このころはまだ「お座敷ソング」といって、芸者の格好をした年齢不詳のおばちゃん(実は戦前から唄ってたりする)が、ちょっと色っぽい歌を舞い踊るという歌謡曲のジャンルがありました。ちあきなおみの水商売っぽい雰囲気を使ってみたのでしょう。

M8.私という女
五木ひろしの「待っている女」によく似てるなあ、と思いましたが。こっちが1年先でした。こういうフォービートっぽいのがこのころ流行っていたんでしょうね。元ネタはなんだろう?この曲で年季が明けたのか、鈴木淳作曲作品としては最後のシングル曲です。

M9.しのび逢う恋
これはヨーロピアンな雰囲気でカッコいいですね。ちょっと変えれば竹内まりやが唄ってもおかしくないです。作曲は「バラが咲いた」で有名な浜口庫之助。

M10.今日で終って
これも70年代後半にニューミュージック系で似たようなことをやっている人がいました。具体的には「水鏡」とかに近いですね。

M13.喝采
レコード大賞受賞の名曲。作曲は中村泰士。エレキギターのトレモロは最近流行らないけれど、アコースティックギターのカッティングとかは今聴いてもカッコいいと思います。「ほそいかゲなガくおとして」の鼻濁音、ロングトーンでの声量のコントロールなど、他の曲もそうなんですが、もの凄く丁寧に唄っています。

Disc2

M1.夜間飛行
途中でフランス語の機内アナウンスが入るのは初めて気がつきました。バックの楽器の音を差し替えたら、今でも通用すると思います。このスケールの曲が実は3分29秒しかない。昔は良かったなあ!

M3.円舞曲
「円舞曲」と書いて平仮名で「わるつ」とルビが振ってあります。作詞は阿久悠。曲は川口真です。前半は演歌調でサビはやや洋楽風になります。ちあきなおみのナンバーを、マトリクスを作って説明する時には、この曲が真ん中あたりに来るのかなあ。

M4.かなしみ模様
打って変わってこちらは外国の有名曲によく似ています。思い出せませんが、絶対こんな曲がありました。川口真って人のことはあまり良く知りませんが、面白いことするなあ。

M5.花吹雪
都倉俊一が作曲しています。「里の秋」に似た文部省唱歌っぽい爽やかなメロディを堂々と唄っています。ところが歌詞をみるとストーリーが「?」。十歳くらい年下の大学生に入れあげて、物心ともに支えていた地方都市の飲み屋のママが、その大学生の卒業を期に店じまいする、という解釈で良いんでしょうか?大人の歌の世界は難しいなあ、四十過ぎても読み取れない。

M6.恋慕夜曲
一転して作曲家に浜圭介を起用しています。これはもう完全に演歌です。もちろん、ちあきなおみは完璧に唄いこなしています。それまでの曲で使っていない、裏声になってから細く消えて行くようなビブラート。森昌子なんかが得意にしている唄い方ですが、そういうのも自由自在にやります。

M7.さだめ川
出た。ついに船村徹作品です。
ちあきなおみは演歌歌手に収まりきる人ではないのですが、船村徹の曲を歌わせると本当にうまいです。ここで、「さーだめがーわー」の唄い回しをじっくり聴いてください。「さーだめーがぁぁぁわーぁぁあーあ」と、ビブラートを細かくして抜いて行くのかと思わせておいて、もう一度力を入れ直してビブラートをやめてから、また抜く、という複雑なことをやっています。1番から3番まで全部やっているので、これはわざとです。そのことによって何を表そうとしているのか?音符の指定まできっちり伸ばしたい、とかいうことなのか?美空ひばりあたりになにか似た例があるのかもしれませんが、ちょっと私の知識では分かりません。でも、なにかを表現しようとしているのです。

M8.恋挽歌
こちらは浜圭介作品。浜圭介は演歌を得意にする作曲家の中では、チャレンジ精神というか実験精神みたいなものが旺盛で、佳い曲をたくさん書いている人ですが、ことちあきなおみ用の作品については、彼女の能力を使い切るほどの曲は提供できてないように思います。

M10.酒場川
これはもう、船村徹による古賀メロディでしょうね。「悲しい酒」をちあきなおみでやってみた、ということだと思います。

M11.ルージュ
ここで中島みゆき作品が出てきます。ちあきなおみはコロムビアから移籍した後、シャンソンやファド、ニューミュージック系のカバーなどをやっていますが、そのとっかかりに中島みゆきがいるというのは分かりやすいです。中島みゆきの歌を唄うと、どの歌手も中島みゆきに唄い方が影響されます(研ナオコ、桜田淳子、TOKIO)が、この曲でのちあきなおみの脱力した唄い方(特にAメロ部分)もそのひとつかと思います。これほど完成された歌手に影響を与える中島みゆき恐るべし、なのか?または、ポプコン出身のシンガー・ソングライターからも歌唱法を取り入れる、ちあきなおみの芸への執着を読み取るべきなのか?

M12.夜へ急ぐ人
出たァ!有名な「おいでおいで」の歌です。大ヒットはしなかったと思うのですが、唄っているところをTVで見た人はその晩から3日連続で悪夢を見、一生その映像が忘れられなくなる、という恐ろしい曲。CDだと割と平気ですが、ヘッドホンで聴くのは止めた方がいいかも。この頃、ちあきなおみはこんな感じの恐ろしげなナンバーばかりが並ぶ物騒なアルバムを出していたと思います。彼女はこの辺で、レコードセールスに関する競争から卒業し、アーティストとしての高みを目指す方向に踏み出したのだと思います。

M14.矢切の渡し
細川たかしが唄ってレコード大賞を取った曲ですが、元はM10のB面に入っていた曲。これも船村徹の作曲です。「つれてにげてよ」が女のセリフで「ついておいでよ」が男のセリフ。ちあきなおみはちゃんと女役と男役で声の出し方を変え、「歌を演じて」います。昨日の太田裕美「木綿のハンカチーフ」との違いが分かりますか?男のセリフはちょっと歌舞伎か新劇風のセリフ回し「ついて…おいで…よ」とためています。「これは、長谷川一夫先生のセリフ回しを参考にしたんですよ」なんて芸談が残っていそうです(ウソですよー)。

曲はこの後も続きますが、ちあきなおみのエッセンスはある程度書けたと思うので、以下省略して総論です。

結局、歌謡曲の神髄は「歌は3分間のドラマ」という、手垢の付いた言葉をどれだけ本気で表現しようか、ということだったのだと思います。「歌を演ずるから演歌」というのは多分誰かが言っていると思いますが、ちあきなおみがデビューした頃は、どんなジャンルに影響されていても、そいういう意味で歌謡曲=演歌だったのだと思います。
そして、ちあきなおみは歌を演ずる技術において、ちょっと突出した才能だと思います。当時、その流儀の頂点には美空ひばりという歌の怪獣がいましたが、彼女もそれに匹敵する芸の幅があります。

ちあきなおみが40年遅く生まれて、今二十歳くらいの歌手だったら、彼女はどんな歌を唄っているでしょうかね?

2008/08/27

ヒーロー(Holding Out For A Hero)/デーモン小暮

週に1度は更新しようと思っているのですが、週末は週末でいろいろと用事がありまして、なかなか腰を落ち着けて書く時間が作れません。はてなの日記と違っていろいろ元手もかかるし、ネタを考えるのも結構大変です。

さて、最近カバー・アルバム市場が活性化しているみたいですね。まだ取り上げていませんが、徳永英明の"VOCALIST"シリーズの成功以来、その動きが顕著なのですが、いろんなアーティストがカバー・アルバムを出しています。
基本的にはオリジナルで売上が地味になってきたベテランが出してくることが多いようです。
もちろん、この手の企画は誰でも出来るわけではなくて、本人もしくはスタッフが「私は(うちのアーティストは)歌唱力がありますよ」と思っているからこそやる企画です。「『喉』に覚えあり」ってわけですね。

最近、TVやラジオで知っただけでも、大友康平、中村あゆみ、島谷ひとみなんかが紹介されていました。デーモン小暮(閣下はつかないんだっけ?)もまた、「喉に覚え」の一人として、主に日本では女性が唄ってヒットした曲をカバーした"Girl's Rock"および"Girl's Rock√Hakurai"というアルバムを出しています。
"Girl's Rock"は私も音源を持っていますが、今回は"Hakurai"の方に入っている「ヒーロー」をタイトルにしてみました。
ヒーロー(Holding Out For A Hero)

デーモン小暮は(そのプロフィールにはあえて触れませんが)聖飢魔Ⅱでロックを歌ってた人ですから、ハイトーンが売りのボーカリストなんですけれど、実際にはハイトーンボイスというよりもテクニックで上も下も出せる、というタイプの声の人です。本当に得意なのは日本男子の平均であるE〜Eの1オクターブで、そこから上はターボチャージャーを使うような出し方。私も調子がいい時はそういう唄い方をします。
余談ですが、平井堅や森山直太朗は高音部はOD(ファルセット)にギアチェンジしてしまいます。また、ひたすら力をいれて押し切る大友康平流のやり方もあって、彼のマネをする(腹に力を入れ、大きなバイブレーションをかける)と誰でも相当高いキーで歌えますから、みんな試してみよう!余談おわり!


デーモン小暮はうまい・へたというよりも、とても器用な歌い手です。仮の姿の幼少時にいろんな音楽を聴き、マネをするのがうまかったのだと思います。この器用さは近い年代で探すと石井竜也とかに通じます。「うまい唄い方ってこうだよね」という「歌のうまい人のマネ」がうまく、それを商売に出来る才能がある。おそらくモノマネをやらせてもうまいでしょうし、「このジャンルの曲はこう唄うとカッコイイ」というポイントを押さえるのがうまいんです。耳が良い、ともいう。

こういう才能は実はオリジナルで勝負すると意外と結果が残らず、「器用貧乏」と言われて終わってしまうのですが、カバー・アルバムは作りやすいです。徳永英明はあまり器用でない故に、それが味になって成功したわけですが、デーモン小暮閣下はどうなんでしょうか?
と、うまい・へた問題もまだ続きます。

2008/08/03

歌バカ/平井堅

「うまい・へた」問題も回を重ね、いよいよ当代随一の人気シンガーである平井堅を聴いてみました。

このアルバムが発表された時は買うかどうかかなり迷いましたが、「平井堅を2枚聴きたいか?」と自問自答した上で見送りました。
しかし「うまい・へた」問題を書いていて、彼に触れないのも不自然な気がして、銀座の山野楽器で購入してきました。
このアルバムの良いところは、2枚組にもかかわらずCDケースがコンパクトで、私のCDラックに通常のCDと同じように挟めるところです。最近はオーバージャケットとか特殊な仕様が多くて、結果として非常に整理しづらいものが多いので、それだけでも評価です。
さて、家に帰ってiTunesに読み込むとジャンルが"R&B"と出ました。

彼の唄い方の特徴は、J-POPの男性シンガーには珍しくファルセットを積極的に使うところでしょう。マーティ・フリードマン氏も指摘していますが、今のJ-POPではファルセットはメロディラインの途中で最高音の一瞬だけ使う唄い方が多く、特に男性でこんなにファルセットを多用するのは、「悲しみのJODY」の山下達郎以来かもしれません。

ざっと聴いてみましたが、地声で唄っていると確認できるのは下がDくらいから上がオクターブ上のG#くらいと思われ、杉山清貴や玉置浩二などJ-POPの標準的な男性シンガーのキーです。その上がファルセットになってCかもうちょっと上まで使っているようです。

しかも彼の場合は地声と裏声がクロスフェード(?)する領域が広いので、地声で出せるところもファルセットで唄うことがあります。その辺りの音域は地声とも裏声とも取れる声なので、声の使い方をマネをしようとすると、相当しつこく聴き込まなければなりません。裏声だと思って聴いていたら、そこからまたひっくり返って泣き節になることもあるのです。「瞳をとじて」のサビなどは聴き分けるのがかなり難しい。

これは優れたテクニックと云えると思います。
美空ひばり伝説の中に、「音声スタッフがVUメーターでチェックしていても、地声と裏声の音量が変わらない」というのがあるようですが、平井堅もその域に迫っています。
その結果として彼の歌声はとても特徴的で、何を唄っても平井堅になってしまいます。それが「大きな古時計」でも…。

2008/07/26

Search-Light/広瀬香美

以前、"Alpen Best"なるアルバムを聴いたときにも2回連続で書いていますが、もう一度出てきてもらいます。広瀬香美です。

このところ同じような話をしつこく繰り返していますが、日本で活躍している歌手全員を「歌のうまさ」を構成する要素である、「声質」「技術」「解釈」などの点数を付けて総合得点順にソートしたら、彼女が最上位グループに入ることは間違いありません。唯一、声についてはあまり特徴がないというかアニメの主題歌でも歌いそうな匿名性の高い声だと思います。しかし音域の広さと声を届かせる性能にはすばらしいものがあって、たとえば先日書いたMISIAと比べて何か劣っているものがあるかと考えたとき、なにも思いつきません。なによりこのテーマについて書くときに、説明がしやすいのです。
広瀬香美 - Alpen Best - Kohmi Hirose - Search-Light - 07' Remastering

"Alpen Best"のときにも書きましたが、この人の歌でつくづく感心するのは、ビブラートのかけ方とか、リズムにどのくらい正確にのるか、ちょっと外れるか、あるいはピッチを厳密に合わせるのか、ちょっとラフに歌って表情を出すのか、など(凡人には、せいいっぱい正確に歌うこと以外、意識できないようなところ)を聴く側にはっきり意図が伝わるように歌い分けられるところです。モタっているのではなくレガートなんだ、外れたんじゃなくて外したんだ、と分かるんです。いやいや、素人にそんなことを読み取らせてはいかん、理屈抜きに感動させてこそ本物じゃよ、という境地もあるかもしれませんが、私には読み取れる方が面白いです。
男性歌手でこれに匹敵する歌い手がいるのか、私の知っている範囲ではちょっと名前が挙げられません。

もちろん、こうした表現をするにあたって彼女がシンガー・ソングライターであることは大きなアドバンテージだと思います。自分で作った歌だからこそ、「ここは音をたっぷり伸ばして」、とか「ここは音程は気にしなくて良いからパンチをきかせて」という表現のツボが押さえられるんだ、と云ってしまえば簡単です。でも、同じシンガー・ソングライターだからといって、たとえば吉田拓郎がそういう表現をしているかというと、このレベルとは全然違うと思います。
また、自作曲をあまりに芝居っ気たっぷりに歌われるとげっぷがでそうになるものですが、彼女はその辺の客観性もちゃんと持っていて、臭くなるようなこともありません。

広瀬香美は曲作りもプロであるし、ボーカリストとしてもプロです。こんなに高いレベルでバランスしている人はなかなかいません。
この"Search-Light"は2001年1月発売(Wikipediaによる)ということです。この人は曲作りと歌唱法に関して非常にプロ意識が高いと思われ、「次に出るR&B路線の女の子に曲を提供できますよ」と世間(業界?)に伝えたかったんだと思います。だから、バックのゴスペル風コーラスとか、大サビあたりで使っている無限音階かけ上がり(久保田利伸が得意にしてますね)からの超ハイトーン・ボイス(さらにその声をサンプリングして間奏のメロディを歌わせています)など、ベタと云われかねない要素もすべて品揃えとして並べて見せているんです。「商用音楽でご用のある方は、どうぞこちらまでご連絡ください」というメッセージが聴き取れます。

翌日の追記
上のぐるぐる回るリストの中に"Thousands Of Covers Disc.1"というアルバムがあります。これは広瀬香美が他人の曲をカバーしているアルバムで、シンガーとしての力試し的な1枚になっており、やはりとても巧いです。

2008/07/16

INTERLUDE 2

歌がうまいとはどういうことかと考え続けております。
1.肉声という楽器の音色が美しいこと
2.同じくその楽器の音域が広いこと
3.同じくダイナミックレンジが広いこと
4.その楽器を自由自在にコントロールできること(音程、強弱など)
5.楽曲を理解し、きちんと表現できること
とりあえずこの5つくらいが問題なんじゃないか、と考えが固まってきました。

例えば、もう亡くなりましたが、村田英雄という歌手がいました。
彼の声は浪曲出身ということもあって、クラシック歌手のような美しさとは違いますが、邦楽用楽器として優れた音色であったと思います。ただ、ピッチの調整が難しく、力むと音程が上に外れる楽器でした。ライバルといわれた三波春夫の方が西洋音楽的知識が豊かで、音楽性が高いように思えます。
村田英雄

森進一という歌手がいます。彼の声は美しい音色とは違いますが、魅力ある音色の楽器です。また、歌手にとってきれいな声が絶対の条件ではないということを日本人にきちんと教えてくれた歴史的な存在です。またその声のコントロールも巧みでありますが、「伴奏とのハーモニー」という感覚がない(または重要だと思っていない)ので、バックの和音がどう動いても関係なく、エンディングで延々と一つの音を伸ばし続けるという、暴力的な演奏をします。
森進一

あべ静江というとてもきれいな声で唄う女性がいます(最近は唄っているところを見ませんが)。鈴を転がすようなきれいな声だけれども、一つの唄い方しかできないように見えます。
あべ静江
薬師丸ひろ子もちょっとそんな感じがあります。声がきれいと歌がうまいはすぐ近くにあるのですが、このふたりのことを考えると、どうも同じではないようです。
薬師丸ひろ子
次回は私が本当にうまいと思う人の話を書きたいと思います。ああ、とても大変そうだなあ…。

2008/07/13

LOVIN' YOU/MISIA

要は我々素人が歌の「うまい・へた」に言及するとき、「楽器としての声が優れているかどうか」、「楽器である自分の声をいかに思い通りにコントロールするかという技術論」、さらに「楽曲を解釈できるかどうかという知識とセンス」という3つの要素がごちゃごちゃになっていると思います。その際、どうしても声がきれいということに善くも悪くも騙される場合が多い、と思うんです。

また、「楽器として優れている」の中にも「音色が美しい」と「音域とダイナミックレンジが広い」という二通りがあると思います。
前項の杉山清貴は「音色が美しい」楽器であり、その演奏能力にも「問題が無い」、という人です。こういう人はうまいと言いやすいですね。

今日はMISIAを聴いています。
この人は「音色が美しい」上に「音域が広い」楽器であり、その演奏能力も「優れている」人です。
あえて、有名曲のカヴァーである、"LOVIN' YOU"をダウンロードしてみました。
MISIA - LOVE IS THE MESSAGE - LOVIN' YOU(MISIA 1999 LIVE VERSION)
この三十数年前の名曲は、いろんな人がカヴァーしたりTVで唄ったりしますが、たいていは今井美樹ヴァージョンのように、最後の「ああああああー」をオクターブ落とした常識的な範囲で唄うのですが、さすがMISIAはオリジナルのミニー・リパートンと同じキーで、例の箇所も歌メロの1オクターブ上を使って鳥のような声を出しています。

彼女の音色と音域については全く不満がなく、あとは年齢を重ねつつ楽典の勉強を進めて高みをきわめていただくしかないかと思います。"Everything"が代表曲、じゃもったいない。もっと斬新な曲で天下を取ってみせて欲しいですね。

2008/07/06

さよならのオーシャン/杉山清貴

例えば杉山清貴という人がいます。全盛期は80年代の中盤で、最近はほとんど見る機会もないのですが、この人なんかは喋る声の延長と思える声がきれいで、いかにもハイトーン・ボイスという印象です。いつ声変わりしたのか分からない、ボーイソプラノのまま大人になった声で、似ている人ではもっと昔にあいざき進也っていうアイドル歌手がいたんですが、分かる人が少ないですね。

ところが意外なことに、実際に楽器を持って音をとってみると、杉山清貴の音域は下がEくらいで上はオクターブ上のFまたはG。J-POPがロック色を強める中で、男性歌手のキーはどんどん高くなっていて、今はAあたりが常用されていますから、実際には特筆するほどのものではないように思えます。

でも、今も昔も普通の日本男児がFから上を出そうと思うと、高音専用にギアチェンジをしないと辛いです。シャウトってやつですね。杉山清貴や玉置浩二はだいたいGを上限にしていますが、シャウトすればもっと上まで出るでしょう。
しかし、杉山清貴はシャウトせずにこの音域で十分ハイトーン・ボイスの印象を与えることに成功していますし、特に声を作ることもしていないので、歌詞を伝えることもできています。何を歌っても同じ、という悪口も云えるのですが、ちょっとこの人をきちんと褒めておこうかな、と思いました。
iTMSでもアルバム何枚分か買うことができます。
杉山清貴 - beyond... - さよならのオーシャン

2008/07/05

INTERLUDE

6月中旬に父が亡くなったりして、ちょっと更新が滞ってしまいました。
今日から再開です。

さて、はてなダイアリーの方にも書いたんですけど、先月放送された「BSマンガ夜話」を会社の同僚に頼んで、録画してDVDに焼いてもらって(家にBSチューナーがないから)、一昨日見ました。
今回は第2夜が「男組」だったんで、それが楽しみで。

「男組」の作画担当・池上遼一の画は実に華麗であり、アジア人をこんなに格好良く描ける人はいない、といしかわじゅんも云っています。日本でいちばん上手いマンガ家と思っている人もたくさんいると思います。一方で、そのいしかわじゅんは著書の中で、「動きが描けないマンガ家」の典型としても池上遼一を挙げています。下手だと云ってるんですね。


私がこの、「うまい・へた」ラベルのエントリで書いていきたいのは、それの歌版です。画風の華麗さと動きの拙さが同居する池上遼一のマンガは、俳優に例えれば絶世の美男・美女なのに大根役者、という存在です。天使の歌声かと思うような声を持ちながら歌の解釈ができない歌手、というのがいたらやはり池上遼一になるでしょう。

僕が思う理想の歌唱法というのは、話し声が美しくてその延長にメロディが乗って、すべての音域をカバーする、というものです。おそらく、そうすれば歌詞が聞き取れないこともないと思われるのですが、プロの歌い手がそれで成り立つかというと、そういう喉の使い方をするとすぐに声帯ポリープになっちゃうのかもしれない。その辺の矛盾も抱えつつ、次の話に参りましょう。

2008/06/15

氷雨/ジェロ

発売は今月の25日だそうですが、iTMSでは既にダウンロード可能になっているジェロの「カバーズ」です。7曲で1400円。ジェロもジャケットいらないでしょ?
ジェロ - カバーズ

ジェロは音楽の知識がなくても「うまい」と言いやすいタイプの歌手です。声がきれいで音程を外さない。日本語の発音も聴きやすく(鼻濁音も使える!)、耳障りなところがまったくありません。
オリジナルの佳山明生が当時の演歌では例外的にあっさりとリズムに乗って歌っていたのを、日野美歌が思いっきり臭く歌ってから大ヒットになった曲です。当然ジェロは佳山系のうたい方をもっと洗練させてくると予想していましたが、ちょうど足して2で割ったようなうたい方をしています。

アルバム全体が外国籍のジェロに敬意を表してか洋楽的アレンジが加えられていますが、それぞれの元ネタが笑えるほどベタで、もっとマニアックな方向にした方がステイタスが上がるような気がするんですが、どうでしょうか?

2008/06/03

BLACK DIAMOND/DOUBLE & 安室奈美恵

先日、自分のブログ(こちらではない方)への検索元リンク等を辿ってネットをうろうろしていたら、結構若い人(ブログのプロフィールが本当な ら)が、「大塚愛の歌は下手だ」と書いている文章が多くて意外でした。私は大塚愛の歌はまあ巧いと思っているので。ま、私もそうでしたが、若い人っていう のは意外と固い考え方をするので、結果として保守的になりがちですからね…。

というわけで、ポピュラー音楽における歌の上手・下手ということについて考えてみようという企画を始めます。
クラシックの声楽と違って、ポピュラー音楽っていうのは聴く人の解釈によって上手い・下手はかなりどうとでもいえるので、あくまでも私が思う上手い・下手についてですけど。

そんな話題に格好のテキストになるかと思って、DOUBLE & 安室奈美恵の"BLACK DIAMOND"を聴いてみました。「決して悪口というわけではなく」で買うぞと予告してたんですが、その感想を書くのはこちらなんです。

二人とも、我が国の誇る実力派と言われる歌手です。楽曲云々よりも、まずこの組み合わせが夢の競演です。でも、この二人はその音楽的ルーツも発声方法もかなり違います。

安室奈美恵は善くも悪くもキャリアの最初はアイドル歌謡曲です。基本的に喋る声の延長で歌を歌います。この唄い方の良いところは聴き手に歌詞がよく届くことです。迫力という点では少し不利ですが。
一方、DOUBLEはR&Bをルーツにし、ちょっと孤高の本格派というイメージを持っていたのですが、Wikipediaなどでその来し方を辿ると、意外とコマーシャリズムとも無縁でないキャリアを持っています。この"BLACK DIAMOND"が収録されているアルバム"THE BEST COLLABORATIONS"も、もっと難しい曲が並んでいるかと思いきや、意外とキャッチーで歌謡曲っぽいのも混ざっていたので聴きやすかったです。しかし、その発声は本格派で、パンチのある(死語ですね)歌声はアムロちゃんを凌駕しています。

それでは横に並んで歌った時に安室奈美恵はDOUBULEよりも下手なのかというと、それぞれ「流儀」というか「目的」が違うので優劣はつけられないのです。R&BとしてはDOUBLEの方がより本来の文法(?)に沿っていると思いますが、J-POPとしては安室奈美恵のキュートさ、身近なリアルさ(ていうか、エッチさ、か)も捨て難い。

かようにポピュラー音楽における歌の上手い、下手というのは一筋縄ではいかないんですよ、ということでシリーズの前フリをしつつ、今宵はここまでにしとうございます。

Mine or Yours/宇多田ヒカル

ベストアルバム"SCIENCE FICTION"を買った後しばらくぼーっとしていましたが、5月になった途端にYouTubeでライブ配信的なものを見かけました。配信は途中から見たのですが、過去のMVが次々流れていて、いつから新作発表になるのかわからず、見るのやめ...