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2010/02/07

Expressions[Disc 3]/竹内まりや

Expression [Disc 3]は90年代以降の作品が並んでいます。
時代はバブル絶頂から崩壊、と世の中は転換点を迎えましたが、かといって日本中が一夜にして貧乏になってしまったのではなく、じわじわと蝕まれていく過程が何年かありました。竹内まりや自身は40代を迎えて一段と大人びていくのかと思いきや、90年代以降は特にタイアップの関係か、与えられた「お題」に対して答えを作る、職業作家的アプローチで書かれたものが多い。[Disc 2]で時折はっとさせられたリアリティとは違う味わいの作品が多くなっています。

M1.家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)
お題は「倦怠期」。今の竹内まりやが歌うとリアルすぎて怖いかもしれないが、このころはまだ30代だったので、ちょっと背伸びして書いたらしいです。アコースティックギターがいるバンドサウンドは楽しいです。

M2.純愛ラプソディ
お題は「暗くなりすぎない不倫」。楽器の音は山下達郎の"Queen of Hype Blues"なんかで聴けるエレクトリックなものですが、ミディアムテンポの曲にはめることで新しい効果を生んでいます。

M3.毎日がスペシャル
お題は「めざましテレビ」。10代〜20代の女性をイメージした歌詞は取材と想像力に頼る部分が大きかったのでしょう。かなりオーバーにカリカチュア化された若い女性の生活が唄われます。シナモンロール頬張ってでかけたら、曲がり角で転校生にぶつかっちゃうじゃないか!

M4.カムフラージュ
ああ、これは良いですね。こればっかりだと飽きるけど、やっぱりこの辺が竹内まりやの王道って感じがします。

M5.今夜はHearty Party [Single Mix]
バブル崩壊直後でまだ生活が切り替えられていない頃のOLさんの話。「元気を出して」や「Forever friends」などと同じメンバーなのかは不明。ちょっとこの話のメンバーは浮ついています。ゲストの木村拓哉の声はスピーカーだと分かりづらいけれど、ヘッドホンで聴くとセリフ以外のコーラスでも声が入っているが分かります。実際には1995年には「お茶を配るだけ」ではOLはやっていけなかったし、本当に木村拓哉が好きな子は「キムタク」とは言わない。その辺の緩さも含めて計算済み、のはず。

M6.天使のため息
お題は広末涼子の映画「秘密」。この曲は広末涼子の中の人である岸本加世子に合わせて作られています。

M7.すてきなホリデイ
お題は「クリスマスソング」。服部克久がアレンジした豪華なオーケストラのついた、本格的なクリスマスソングです。こういう保守本流な歌を作って歌えるところが竹内まりやの強みですね。他にこういうのが似合う人がちょっと思い浮かばない。

M8.真夜中のナイチンゲール
「マンハッタン・キスとどう違うの?」と思ってしまいますが、この辺になると、新味を加えるというよりもやり続けてきたことの品質を高める方に(特にサウンド面で)興味が向いているのかも。ドラマ主題歌だったそうですが、ドラマを見ない私はこのアルバムで初めて聴いたように思います。

M9.返信
お題は「戦争映画」。「どーんどんっどどん」という民族系リズムに特徴があるのでこの曲は覚えています。背景を知らなかったので、「出口のない海」の主題歌と聴いて初めて何のことを歌った歌なのか理解しました。

M10.みんなひとり
お題は「松たか子」。この曲もあまり記憶に無いですが、サビは知っていたような。「マンハッタン・キスとどう(以下同文)

M11.チャンスの前髪
イケイケ系のナンバー。70〜80年代洋楽ヒットの断片が混じっている気がしますが、「これ」と決め付けられない微妙なさじ加減になってますね。なぜ原由子が一緒に出てくるのかは不明。「蒼氓」のことがあるので、夫婦ぐるみで仲が良いというのは知ってます。

M12.うれしくてさみしい日(Your Wedding Day)
お題は「結婚式」。独身中年男には理解が難しい。

M13.幸せのものさし
「チャンスの前髪」と似た路線の、ディスコでフィーバーなナンバー。と思って聴いていると、中盤から後半は意外と地味に。本人が作曲中に考えていたサウンドと山下達郎の考えが違った?

M14.人生の扉
タイアップでお題の決まっている曲が多い[Disc 3]の中で、例外的に作り手の心情吐露的な曲。年を取ることとか、いくらでも湿っぽくできる話でも必ず明るさや爽やかさを残せるのは竹内まりやの良いところです。それは彼女の自立心に満ちた歌詞やアメリカンなメロディからも醸し出されていますが、やっぱり声によるところが大きいなあ、と感心させられる曲です。

さて、長かったExpressionsのインプレッションでしたが、次回は全く違う話になります。

2010/01/31

Expressions[Disc 2]/竹内まりや

先週に引き続き竹内まりや/Expressionの[Disc 2]です。80年〜90年代前半にかけて、竹内まりやがビッグになる軌跡を辿るパートになります。アン・ルイス、中山美穂などの有名歌手に提供した曲のセルフカバー、本人の歌唱による「シングル・アゲイン」や「告白」など「火サス主題歌」シリーズもみっちりと聴けます。

M1.リンダ
アン・ルイスに提供した曲のセルフカバー。ソングライター・竹内まりやの最初の作品ということになります。アン・ルイスは竹内まりやと友人で、一方では太田裕美と遊んでたんですね。

M2.もう一度
結婚による休養後の復帰作となったのがこの曲。竹内まりやが作詞・作曲して山下達郎がアレンジとコーラスに加わる、という黄金パターンが確立し、松任谷由実・正隆コンビを追撃する体勢が整ったわけです。ナイアガラ・サウンドを意識したようなアレンジ(ちょうどこの頃はEach Timeが出た頃で、実際に流行っていた)。

M3.マージービートで唄わせて
ビートルズへのオマージュ、と言っておいてコーラスとかビートルズよりもちょっと古い感じにまとめてあるのが面白いですね。

M4.本気でオンリーユー(Let's Get Married)
タイトルから想像するともっとポップなナンバーを想像しますが、実際には「リンダ」に近いロッカバラードです。この辺のタイトルと曲調のミスマッチな感じは、昔の、洋楽に無理やりな邦題をつけたヒット曲をイメージしているのでしょう。

M5.プラスティック・ラヴ
いかにも80年代なシティ・ポップ風です。フュージョンっぽいバンドを従えて杏里とかが歌ってそうな…。山下達郎もこの頃はこういう音楽だと理解されていたと思います。「ハロゲンライト」なんて単語がわざわざ出てくるのもこの時代らしいですね。

M6.恋の嵐
その後の竹内まりやの飯の種になる、訳ありげな大人の恋の世界を歌ったのはこの曲がはしりなんですね。この曲では「帰る場所を選べる」と言っているので、まだ深入りはしていないようです。

M7.元気を出して
薬師丸ひろ子の絶頂期のアルバムに入っていて、当時の大学生たちにとても評判が良かった曲。竹内まりや版もカラッとしていて良いですね。女の子が失恋した友人を励ます、という歌詞は意外と少なくて、それがこの曲を長寿にしています。薬師丸ひろ子がコーラスで参加しています。

M8.色・ホワイトブレンド
アイドル歌手が歌う化粧品のイメージソング、本人が「不思議なピーチパイ」を歌っていたわけですから、竹内まりやが立場を変えて加藤和彦に挑戦したことになります。この課題に関しては「ピーチパイ」の勝ちかな?この曲、ちょっと長くてダレる気がします。中山美穂もそんなに上手くなかったし。

M9.けんかをやめて
Expressionのライナーノーツで本人が「私が歌うとひどく傲慢な女に聞こえる」と書いちゃってます。アイドル歌手はもちろんですが、女の子が二人の男を手玉に取るような歌ってなかったので、その辺の「女の子の本音」のくみ取り方がリアルでイイ、と当時の女友達は竹内まりやを高く評価していました。純情可憐な我々男子は「あ、そういうものなんですか」と鼻白んでおりました。アイドルという立場上?河合奈保子はあまりその辺の底意地の悪さを表に出さずに歌っていたので、この曲の本当の怖さが男子には伝わりづらかったんですね。

M10.駅
中森明菜のアルバム用に作られた曲。山下達郎は中森明菜の歌唱が全然気に入らなかった様です。おそらく明菜のベタベタな暗い解釈に我慢ならなかったのでしょう。一方、竹内まりやはExpressionのライナーノーツで「中森明菜からの依頼だったから書けた」とフォローしています。私は竹内まりや版から先に聴いたので、確かに明菜版は辛かった。だって、この曲が言ってることって「私の方から振った元彼を久しぶりに電車で見かけたら、なんかしょぼくれちゃってて、やっぱ悪いことしたかな?テヘッ」ってことでしょ?ただしこの曲をモノにしたことで、竹内まりやは「恋の嵐」と「駅」を土台にその後のヒット曲を量産したのだから、中森明菜のおかげ、もまんざらお世辞では無いのだと思います。

M11.Forever Friends
「元気を出して」とは曲調がかなり違いますが、「女の友情」もののシリーズ。この鉱脈も結構デカくて、[Disc 3]にもこのテーマは出てきます。

M12.シングル・アゲイン
「駅」とは違って、男の方が他の女性を選ぶ形で別れた恋のその後。男が次の女性と別れたと訊いて、ちょっと揺れながらも「私と別れて後悔してるでしょ?あなたと別れた時の私の気持ちを思い知りなさい、それが対等な別れというものよ」というようなことを言っておられます。

M13.告白
かなり前に結婚はできない、と話し合って別れたはずの男から突然電話があって、「やっぱり君といっしょにいるべきだった」みたいなことを言われたが、「今頃そんなこと言われても、もうあなたと結婚しないという前提で今の生活してるんだから、困るわ」と言いつつ、「そう言われたことはいやじゃないし、あなたもそれを口にしたことをちゃんと覚えてて生きていきなさいよ」、とおっしゃっています。

M14.マンハッタン・キス
これは本格的な不倫の歌ですね。ホテルのドアに「起こさないで」と札をぶら下げて愛人と会っているわけです。「告白」までは自分または同年代の友人の経験(談)を題材にしたかのようなリアリティがあったのですが、この辺からはちょっと頭でストーリーを考えるようになったんじゃないかなあ、と私はニラんでいます。"Don't disturb"から始まって、物語が一周りして、最後にまた"Don't disturb"に帰ってくるところとか良く出来てます。

特にこの[Disc 2]に収められたあたりの竹内まりやの恋愛物って、力関係とか責任の所在が男女平等な感じがします。それゆえに男にとっても辛辣なところがあるんだけど、嫌味が無いのが美点です。それって日本人が歌ってこなかった恋愛のような気がします。その辺がオシャレであり、支持された理由かもしれませんね。

2010/01/24

Expressions[Disc 1]/竹内まりや

竹内まりやの3枚組(4枚目はカラオケ)ベストの1枚目です。
90年代にはソングライターとして松任谷由実、中島みゆきと並ぶ位置を確立した彼女ですが、1978年のデビューから山下達郎と結婚するまでは、基本的に作家に提供された楽曲を歌う歌手でした。同期をWikipediaで拾うと石野真子、杏里、中原理恵、サザンオールスターズ…。時代はピンク・レディーの全盛期であり、沢田研二と山口百恵がザ・ベストテンで歌う一方、アリスのブレイクや原田真二、世良公則&ツイスト、渡辺真知子らが現れた「ニューミュージック」の開花期にもあたります。

竹内まりやは大卒後のデビューという年齢的なものもあってか、太田裕美や中原理恵がそうだったようにアイドルとニューミュージック・シンガーの中間的イメージでテレビに出ていました。一番良く見かけたのは年末賞レースがらみで「September」を歌うところです。「September」の発音がなんか本場モンぽく、ちょっと偏差値が高そうな感じでした。
70年代デビューの女性歌手の中ではもっとも現役感がある人なので、もっと若いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、南沙織、太田裕美とほぼ同い年で、大器晩成タイプとも言えます。
それでは聴きましょう。

M1.戻っておいで・私の時間
加藤和彦夫妻の楽曲。オシャレだが素人の耳に残りにくいですね。ゴダイゴのブレイク以前にしては英語部分が多い。

M2.グッドバイ・サマーブリーズ
これ、全く憶えてないわ…。歌詞カードはカタカナですが、本人は英語風に歌っています。またそれを許す譜割りになっています。

M3.ドリーム・オブ・ユー〜レモンライムの青い風〜
これは有名ですね。キリンレモンのコマーシャルソング。個人的にはまだ顔と歌が一致しておらず、意識して聴いたことはありませんでした。

M4.涙のワンサイデッド・ラヴ
ワンサイデッドと過去分詞がカタカナで表記されるのは当時の曲名としては珍しかったと思いますよ。これはアルバム用ということですが、自身の作詞作曲で、編曲には早くも山下達郎の名があります。

M5.September
前年に同い年の太田裕美が「September rain」と儚げに歌っていた単語を、彼女は乾いた声で、バリバリのRの発音で歌いました。この曲で集中的にテレビに出たので私もようやく竹内まりやを認知しました。私の第一印象は「南沙織が風邪ひいたみたいな声だなあ」。もっと年配の人は「伊東ゆかりみたいな声だなあ」と思っていたみたいです。

M6.不思議なピーチパイ
シンガー・ソングライターとしての作品以外ではもっとも成功した曲でしょう。安井かずみと加藤和彦のコンビによるポップな曲。当時はCMもガンガン流れててサビはいやでも覚えたし、しかもCM曲によくある「サビまでいくまでが退屈」ということもありません。前半からめくるめくように展開して、一気にCMで使われる箇所まで行ってしまいます。さすが!「かーくしきれない(っぱん)」と入るハンドクラップが効いてます。コーラスには山下達郎の声が。

M7.象牙海岸
松本隆と林哲司の作品ですが、ちょっと退屈。この頃の竹内まりやって歌い方が一本調子でこういうミディアム・スローなナンバーを聴かせられるタイプではなかったようにも感じます。アレンジはいろいろ頑張って変化をつけているんですけどね。

M8.五線紙
ギター1本の伴奏に3声コーラスという渋い曲。「いかにも松本隆」という歌詞で、メロディが変われば太田裕美のアルバムに入っていても全く違和感が無いでしょうね。

M9.Morning Glory
山下達郎のを先に聴いちゃったからなあ…

M10.僕の街へ
竹内まりやに対して林哲司が提供している曲は、いまいちキレが無いように思うのは何故だろう?なんかこう、この子の声はこう、と枠を決めてそこから一歩も踏み出さないような作り方をしているような気がする。それが悪いのかと言われると「いや、べつに…」としか言えないんですが。

M11.ボーイ・ハント(Where The Boys Are)
これはもう、もろに伊東ゆかりに挑戦したわけですね。

M12.恋のひとこと(Something Stupid)/Duet with 大滝詠一
これはオシャレ。しかも相手が大滝詠一。アレンジが服部克久という豪華版。

M13.Never Cry Butterfly
「スローなブギにしてくれ」みたいですが、作曲は南佳孝ではなく杉真理。学生時代に杉真理と活動していた、と自筆ライナーノーツに書いてあります。なるほど、そういうルーツの人なんですね。

M14.Let It Be Me [Studio Version]
2008年の新録音だそうです。サンデーソングブックの夫婦放談でも聴いたことがある曲。山下達郎とのデュエット。

気が向いたら来週辺りに[Disc 2]をやります。

2007/06/30

終楽章/竹内まりや

CDで買うか、iTMSでダウンロードするか迷ったんですよ。
CDでもアマゾン価格3000円ちょっとで、iTMSでのアルバム購入が2400円。微妙ですよね。
ただ、狭い部屋に物理的にディスクが増えるのもナンですし、熟女写真のジャケットは(相変わらずお美しいですが)まあいらないか、という判断でiTMSでダウンロードしました、"Denim"。

えー、基本的にはいつもと一緒です。これは別に悪口じゃないのですが、小田和正、山下達郎、大滝詠一等に対してファンが望むものは、目先の新機軸ではなく、クォリティですからね。そういう意味では期待に違わぬできばえですし、男の子は竹内まりやというより山下達郎がどんなカラオケを作って来たか、という興味で買う人も多いと思います。

竹内まりやがただ者ではないと気がついたのは、大学の時に好きだった女の子が「竹内まりやの歌は良い」と云っていたのがきっかけです。彼女が云うには、竹内まりやのちょっと底意地の悪いところが現実の女の子の感覚に近いのだそうです。

歌の世界の女性は(特に男の作詞家の場合)、「そんな女の子どこにいるの?」と女子が思うような、ただ可愛く、優しく、我慢強いが体は弱い、という存在にされがちです。実際の女の子はちゃんと計算もしてるし、いざとなったら結構強いし…ということで、竹内まりやの書く歌詞はその辺がちゃんと現実の女性になっている、というようなことを云っていました。
なるほど、確かに僕が好きだった女の子も「けんかをやめて〜」といいながら、ときどき後ろ向いて舌を出しているようなタイプでした。

さて竹内まりやは結婚後、歌手としてではなく、主に女性アイドルへの作品提供から仕事復帰しました。河合奈保子や薬師丸ひろ子の作品を作っていましたが(特に「元気を出して」の評判がすこぶる良かったですね)、さっき"Denim"をざっと流して聴いていたら、聞き覚えのある曲が入っていました。10曲目の「終楽章」です。
これは確か薬師丸ひろ子のLPに入っていた曲。多分20年ぶりくらいのお蔵出しだと思います。賢い奥様の「リユース・リデュース・リサイクル」でしょうか。

竹内まりや - Denim - 終楽章

Mine or Yours/宇多田ヒカル

ベストアルバム"SCIENCE FICTION"を買った後しばらくぼーっとしていましたが、5月になった途端にYouTubeでライブ配信的なものを見かけました。配信は途中から見たのですが、過去のMVが次々流れていて、いつから新作発表になるのかわからず、見るのやめ...