2019/04/30

東京少年少女/角松敏生

 シティ・ポップといえば、というお題で話し始めた時に比較的すぐに出てくる名前と思われる角松敏生。残念ながらiTunesのストリーミングでは見当たらず、個別にお金を出さないと聴くことができません。

 ゴールデンウイークは頑張ってギター弾いたりブログ更新したりしようと考えて、会社帰りにまた山野楽器に行って来ました。目当ては「HOCHONO HOUSE」だったんですが、念の為1周回ってみたら角松敏生の新作と思われるアルバムが出ていました。「東京少年少女」なにそのタイトル?

 実は私自身は当時のシティ・ポップには冷淡な態度をとっていたので、角松敏生のことも名前ぐらいしか知りませんでした。杉山清貴のところでも書きましたが、私はその頃オフコースに深く肩入れしていましたので、彼らのような「知識と技術がある人が作る完成度の高い音楽」にはあまり興味を持てませんでした。この後、ブラコンていうさらに魅力的な音楽がJ-POPに影響を与えて、さらにとっつきの良い音楽が流行るようになったんですが、そういうのにハマる自分が嫌だったので、出来るだけ距離を置いていました。こういう「ロックじゃない」もの(まあ多分誤解です)に取り込まれたくない感じ。若かったんですね。山下達郎だけは唯一ロックのストーリーの中から出てきて、結果としてシティ・ポップに近いところにたどり着いた人と思い、抵抗なく聴いていたんですが。

 なので、角松敏生については、V6の「Waになっておどろう」を作った人らしいよ、くらいのことしか知らず、曲名も一つも知らない有様でした。

 そんなわけで初めて聴いてみました。
 私が買ったのは銀座の山野楽器に置いてあった6曲入りですが、限定盤9曲入りもあるようです。発売は2019年4月3日、偶然にしては良いタイミングでの入手です。
 M1は結構ファンキーな(っていうの?)ラッパがガンガンに入ったカッコいい曲で、ブラスのアレンジは新田一郎か?と思ってライナーノーツをみたら違う人でしたが、スペクトラムな感じで好きです。
 Wikipediaで調べるとこの人は今58歳ということで私より歳上なんですが、「へーよくこんな若い声が出るなあ」と感心しました。万年青年系ですね。
 「Waになっておどろう」のような南方民族系なサウンドはデビューして少し後に始めた分野のようですが、まあすべてよくできています。白いクーペでドライブに行きたくなりますね。
 Amazonのリンクは「東京少年少女」2種と友人が好きだと言っていた関連アルバムを貼っておきます。


2019/04/14

宮川泰テレビテーマ・ワールド/宮川泰

 こんな辺境のブログを書いていて良かったことといえば、歳とともに消え去りそうになる「音楽を聴こう」という情熱を無理矢理にでも維持されることで、そのことによって出会えた音楽も多いです。こないだのKing Gnuもそうだし、相対性理論とか、土岐麻子とか。
 で、なんでこんな音楽ブログを書き続けているかというと、30年以上前に潜り込んだ地方私立大学の学生時代にたまたまレベル的にちょうどいい音楽仲間に会えたことで、バンドの真似事ができたこと。それによって音楽をやることの楽しさと大変さのさわりだけでも知ることができたことが大きな理由。一方、当時の自分に与えられていた時間と才能の限界もあって、そこから先の一消費者になった自分の「よすが」としてこのブログがあるわけです。

 ところで、なぜ大学生という遅いスタートから拙い音楽活動を始めたのかというと、実はそこに宮川泰先生の存在があったわけです。
 奇しくも(?)この方は私の父と同じ年の生まれで、作家としていちばん売れていたのはザ・ピーナッツや園まりのヒット曲を書いていた頃でしょうから、おそらく30歳前後だったんでしょう。今よくテレビで見かける息子さんもその頃生まれているんだと思う。そのあと、ヒットチャートではあまり名前を見かけない時期があって(まさにこのCDの曲の多くがその間に作られてるわけですが)、そして我々が中学生の頃に「宇宙戦艦ヤマト」の大ブームが起きました。あの勇壮なオープニング曲と「真赤なスカーフ」の作曲家として再ブレークしたのがおそらく40代後半、ということになると思います。

 ちょうどその頃、宮川泰先生(珍しく敬称をつけてしまうが)はうちで取っていた新聞、確かこの頃は朝日新聞だったと思うけど(読売だったらゴメン。Wikipediaでも出てなかった)しばらくの間、毎週金曜日の夕刊に歌謡曲の評論をかなり大きなスペースで連載をしていらっしゃった。毎回、ポイントのところは譜面付きで解説がされていて、主に曲作り(メロディ、コード付け、歌詞)についての解説が詳しかったと記憶しています。現在も続く近田春夫の評論は、どちらかというと声質や歌唱テク、作品が出てきた文脈やサウンドについて詳しいのとは微妙に力点が違ってました(より教科書的使いでがあった)。
 一方、この新聞連載の期間を挟んでもっと長い期間、宮川先生は毎週土曜日午後にFMで「コーセー歌謡ベストテン」という番組のMCも勤めておられました。ですから、70年代後半の一時期、私は当時の代表的ヒット曲を、常に新聞かラジオを通じた宮川泰の解説付きで聞いていたのです。

 ご本人は音大出で、理屈を熟知しているはずですが、当時雨後の筍のように出現するニューミュージック系のシンガーソングライターたちにもやさしい評論を加えていました。今でも覚えているのは横浜銀蝿が出てきたとき、「(本人たちは)3コードのロックンロールでやれるだけやってからっぽになったらやめると言っているらしいが、馬鹿な真似はよせ、あと3つくらい覚えたら10年くらいできる」と書いていたこと。めっちゃウケる!
 それでもやっぱり音楽性が高い新人が出てくると嬉しかったようで、原田真二、渡辺真知子、八神純子、山下達郎なんかはお気に入りだったように思います。

 こうして私は歌謡曲にも作り手の巧拙や志の高低や、いろんな思惑があることを学ぶことができました。その興味が私を音楽という趣味に走らせた、ということです。

 さて、長くなりましたがCDの話です。
 最初に書いた通り、ブログ更新のため意識的に音楽に触れようとする行動の一つとして銀座の山野楽器に行ってきました。渋谷だったらタワーレコードですが、今日は銀座だったので山野楽器です。最近は一階のエスカレーター近くの、五十音順から漏れた、オムニバスというか企画ものコーナーをざっと見てくることが多いんですが、たまたまそこにジャケットを正面に向けて置いてあったのがこのCDです。
CD1枚にボーナストラックも含めて38曲!しかも内容は宮川泰がテレビ番組用に書いた曲ばかり。38全部は書きませんが、「シャボン玉ホリデー」から始まって「ゲバゲバ90分」「(あの「チコちゃんに叱られる」にも流用されている)カリキュラマシーン」「ズームイン!朝」「ふたりのビッグショー」。もちろん「宇宙戦艦ヤマト」の2曲も入ってます。作詞以外のクレジットはいちいち書いてありませんが、おそらく編曲もほとんど本人がやっているはずです。世代はかなり違いますが、大瀧詠一と並べて聞いても良いような内容で、しかも完成度はある意味こっちが高いわけです。
 職人的になんでもやれちゃう音作りと、濡れたようなメロディラインのギャップが宮川泰サウンドの特徴なのかなと漠然と捉えていますが、何れにせよそのバリエーションの豊かさとボリュームに圧倒されます。

 ちなみに隣には「浪花のモーツァルト キダ・タローのほんまにすべて」という3枚組CDも並んでいて大いに気になったんですが、今日はパス。こっちは「恋するフォーチュンクッキー」の元歌ともいうべきキャンディーズの「プロポーズ大作戦」が収録されているようです。

SCIENCE FICTION/宇多田ヒカル

前回の更新から2年近く経ってしまいました。その間に会社を定年退職したり引っ越ししたりで自分のことで精一杯でしたが、まあ晴れてほぼ自由の身(経済的にはどんどん不自由になるわけですが)ということで、これからは身バレしようが炎上しようが誰にも迷惑がかからないことになっています。 さて、...