2011/03/31

NATURAL BEAUTY/ビビアン・スー

昨年から少しずつ日本での活動を再開しているビビアン・スー。2月中旬頃、エステサロンのCMで「タイミング」のアコースティックバージョンが流れていたので、「あ、新作出るのか?」とオフィシャルサイトを見に行ったら、なんとアルバム発売だというのでAmazonに予約を入れました。

日本では超久しぶりのオリジナル・アルバムです。どのくらい久しぶりかというと、1996年の「天使・想」以来、じゃないか?(ブラビの活動を除くと)

前作「天使・想」はNEW EDIT版を今でもiTSでダウンロードすることができます。まだ二十歳そこそこの、抜群の素材でありながらどういう路線で売れば良いか掴みきれなかった当時のスタッフの迷いがよくわかります。山口百恵~中森明菜風「少女の青い性」路線を狙ってみたがなんか違うー→どうしよう?みたいな。
結局、その後バラエティに進出して、「日本語の不自由な天然キャラ→ブラックビスケッツの活動」で一応の成功を収めて台湾に戻って行きましたが、本国及びアジアでのスターぶりと比較して日本市場では今ひとつ扱いが軽いのがかわいそう。

日本で活動していなかった間、彼女は中国語圏を中心に多くの映画に出演し、歌手としてCDもたくさん出しています。以前、私は輸入レコードショップの通販で購入した話をこのブログにも書いていますが、その音楽性は日本のアイドル歌手にとても近く、デニム地の衣装でオーソドックスなフォークロック調の曲をやっていたかと思うと、薄物の露出度の高いドレスで舞い踊ったり、ケバいメイクでファンキーな曲をやってみせたりと毎回頑張っています。そのどれもがマニアックに本格派を目指すのではなく、角をまるめた歌謡曲的アプローチなので、結果として私みたいな軟弱な音楽ファンには極めて聴きやすいのです。

さて、そこで今回の"NATURAL BEAUTY"は震災直後の3月16日発売で、2月のうちからAmazonで予約していたにも関わらず、出荷延期の憂き目をみて5日ほど遅れて到着しました。初回盤特典は1名様ご招待のデート権(!)。
実は予約を入れた段階で、収録曲を見てたので中身にはあまり期待できないかと思っていました。というのも、このアルバムの中には日本の有名曲のカバーが含まれているのですが、そのラインナップが「恋におちて-Fall in Love-」「長い間」「フレンズ」「時の流れに身をまかせ」ですよ。いくらなんでもベタだし支離滅裂です。たしかに今、カバー・アルバムが流行ってますけど、これじゃあ昔、父親がカセットで聴いてた「李成愛・日本を歌う(いや、タイトルは今適当に作りましたが)」みたいじゃないですか?

聴いてみました。
結論としては意外なほど良かったです。

1曲目が例のCMで流れている「タイミング」のアコースティックな新録音版ですが、オリジナルの攻撃的なところが全く無い普通に良い曲になっていました。そこから続くカバー3曲が、「タイミング」のアンプラグドなサウンドに少しずつ打ち込みのサウンドが重ねられていくように作られていました。そのグラデーションの頂点に昨年シングルで出したイケイケ系の"NICE AND NAUGHTY"が置いてある上手い流れになっていて、曲目リストから感じられた総花的で節操のない感じがしないようになっています。あー、これよく出来てるわ。昨年、シングルで聴いたときは、「ナチュラル派路線もいいが地味すぎだろう」と感じた"Beautiful Day"もアルバムの中ではきちんと光っています。

ビビアン・スーの歌唱はいつものことですが、音程は問題なし、声量は本格派歌手としてやっていくには弱いと思いますが、とにかくなんでもさらっと歌ってしまいます。ちょっと変わったかなと思うのは日本語の発音。ラ行の巻き方とか、つぁつぃつぇ~とか、うぉもうふうーとか、今、J-POPの歌手が多用する発音が導入されてます。ボイストレーナーがそういう指導をするんでしょうかねえ。一方英語部分はRを巻きすぎない、イギリス風のあっさりした発音をするようです。細かく聴いてると面白いです。

そして最後は「時の流れに身をまかせ」。これは解釈が難しい。
日本の芸能人は立候補でもしないかぎり、めったに政治的立場を明らかにすることがありませんが、台湾出身の彼女は好むと好まざるとに関わらず、常に国際政治の影響にさらされていると思われ、テレサ・テンの人生などを思うと、この曲を入れることにどんな深い意味が込められているか想像がつきません。
今回の震災でも彼女は台湾のチャリティー番組に出演して、彼女自身の募金も含め多額の義援金集めに大きな役割を担ってくれているようですね。