2011/08/21

どーも/小田和正

いつ聴いてもおんなじシリーズ第二弾(?)で小田さんも聴きました。
最新アルバム「どーも」です。

小田和正と山下達郎のどこが違うかっていうと、「根っからのミュージシャン度合い」でしょう。
小田さんはミュージシャン(芸人)としての自覚があまりない人です。

山下達郎は「Ray Of Hope」発売にあたって集中的にメディアのインタビューを受けています。その中では「現代のインターネットの影響下での音楽消費を考えると、ミュージシャンが楽曲販売によって収入を得るモデルは難しく、今後のミュージシャンは演奏会(ライブ)入場料を収入とする、原始的な方向に戻るのだろう(大意・確か上杉隆の番組でした)」と言っていました。
つまり現場でウケる力がある、ミュージシャンらしいミュージシャンの時代になるということでしょう。「ゆず」なんかは多分大丈夫。

さて、小田和正は山下達郎に比べると明らかに楽曲販売系アーティストであり、歌声以外のパフォーマンスについては若い頃から不問にされていました。
本来、小田さんは高学歴で運動神経も良く、なんでもできる人です。
音楽家として成功していなくても、例えばビフォーアフターで「空間構成の完璧主義者と呼ばれる匠」として登場していたかもしれないし、7時のニュースの中で自民党政調会長として民主党幹部と会談する映像が流れても全然違和感がない。
バブリーな言い回しをすれば「血中ミュージシャン濃度」がとても低いようにみえるのに成功している人(それだけ器がでかいんでしょうね)です。
もし小田和正が根っからの芸人で、そのプロ意識からくるサービス精神があれば、ハンドマイクを手にダンスしながら歌うぐらいしても良いと思いますが、彼はやりません。

ちょっと変わってきたのは、オフコース時代の完璧主義者、自分にも他人にも厳しくちょっと無愛想というキャラクター。歳を重ねてテレビにも少しは出るようになって「歌詞間違っちゃった」みたいな場面もみられるようになりました。
アルバムタイトルの「どーも」なんていうのも、最近のちょっとカジュアルな小田さん、のイメージからつけられているのでしょう。

聴いてみました。

うーん、ちょっと退屈。
少しずつフォークへ回帰しているのはここ何作か感じていましたが、ちょっと地味です。
音はシンプルになっていくのに演奏される楽器が匿名的になっているのは、オフコース時代の、顔なじみのメンバーで楽器を持ち替えながら作られていた音を知っている古いリスナーとしては、ちょっと寂しいですね。
一応、私みたいにいつまでもオフコースのイメージを追っかけてる連中向けに、「誰もどんなことも」なんていう「いかにも」な曲も混ぜてくれてはいるんですけど。
全体的に完成度はどんどん上がっていて、悪いところはなんにもないんですが、聴いていて興奮しないんです。

小田さんの万年青年な声と、おしゃれなメロディがあれば納得してくれるファンばっかりなのかなあ…。
(本当はもっと色々考えたんですが、めちゃくちゃ長文になったので、今日はここまで!)

2011/08/15

Ray OF Hope/山下達郎

山下達郎の6年ぶりの新作が発売になるよ、震災を受けてタイトルや曲目も変更したらしいよ、というニュースを聴いて、発売日に銀座山野楽器で買って来ました。山下達郎の「Ray Of Hope」。
オリジナルアルバムに限ると、私個人にとっては(前作の「SONORITE」をパスしてしまったので)、実に「Cozy」以来13年ぶり(!)の再会です。
もっとも日曜日のラジオはちらちら聴いているので、全く目をそらしていた訳ではないんですが。

さて、久しぶりな山下達郎は基本的にはやはりいつもと同じでした。
そして、いつもと同じなんだけど、今回は特に凄くいい!
理由のひとつは実質12曲(M1とM14はM3のリフレイン)ってことで長さと曲数が最適だってことです。

大滝詠一が「ナイアガラ・カレンダー」をして自ら「ポップスの定石集」と言っていましたが、それを真に受けてる私はポップスのアルバムは12曲くらいが最良と思ってます。山下達郎だって「人間が集中して聴けるのは昔のアナログ盤アルバム裏表くらい(大意)」、と言っていました。
とはいえそこはやっぱり今の世知辛い世の中、CDアルバムともなればパッケージに目一杯入るだけ曲を詰めて17曲入り70分!しかもその内の過半数はシングル曲、さらに8割はドラマとCMのタイアップ!とかにしておかないと商品にならないっていう話で。
でもそういうアルバムはスピーカーの前で正座して(しないけど)聴くにはツーマッチです。
私が前作「SONORITE」をパスしてしまったのも、前々作の「Cozy」が余りに盛り沢山で聴くのが大変だったのを思い出し、二の足を踏んだというのが大きな理由でした。

それが今作は、やっぱりタイアップはいっぱいのようですが、このご時世に敢えて出すことへの調整もあったのか、内容が凝縮され、一回聴いた後、また頭からリピートしたくなる腹八分目の快さが保たれています。
久しぶりに頭から尻尾までじっくりしゃぶりたくなるアルバム。
すでに何周目かなんですが、もう一度聴きましょう!

M1.希望という名の光(Prelude)
M3のコーラス部分のアカペラ版。終わった途端に「ふとふれーたゆびさーきにー」とか歌い出しちゃだめよ。
M2.NEVER GROW OLD
打ち込みベースにピアノの白玉コード弾きが重なって段々壮大になって行く、本編オープニングに相応しい曲。こういうのすぐ真似したくなります。「炎のランナー」とかをちょっと思い出す。
M3.希望という名の光
震災直後にラジオで流れ評判になったとされる曲。アルバムタイトルもここから。「蒼氓」方面の真面目なメッセージをテーマにした歌です。
M4.街物語(NEW REMIX)
マイナーな曲調だがギターがはねたリズムを刻む、いかにも山下達郎らしい曲。
M5.プロポーズ
メジャーとマイナーが入れ替わりながら淡々と進行するAOR的にオシャレな曲。
M6.僕らの夏の夢
力強い三拍子とサビからの盛り上がりが印象的。余計な想像だが、前の曲とこの曲は追っかけのコーラスとか入れて小田和正がやっても似合いそう。
M7.俺の空
「FOR YOU」なら「HEY REPORTER!」、「ARTISAN」なら「"Queen OF Hype" Blues」など、アルバムに定期的に加わるファンキー・ナンバーの系統か。今回はロック色が強くて、はっぴいえんどの「颱風」をすごい完成度にした感じ。こういう直截な怒りって、日本でももっといろんな人が歌っていいと思う。
M8.ずっと一緒さ
ビフォーアフター解決編なイントロから定番のベースラインでじっくり聴かせます。「ゲット・バック・イン・ラブ」とかの感じですが、内容はハッピーなことを歌ってます。
M9.HAPPY GETHERING DAY
M4と違って今度は明るい進行のシャッフル。楽しい、可愛い。途中で「キャンディ」や「恋の予感」を思い出しちゃうニューミュージックな自分が嫌。
M10.いのちの最後のひとしずく
タイトルと歌詞を見るとすごい歌謡曲、な感じですが、もちろんそんなことにはなりません。「Endless Game」よりずっとドライ。
M11.MY MORNING PRAYER
来たあー!夏だ、海だ、タツローだ!いや、歌詞はうんと真面目で海の歌でもないですが、こういう曲調のが入ってるとうれしいですね。
M12.愛してるって言えなくたって(REMIX VERSION)
ラストに向かう王道バラードです。前の曲で踊ってた人も座ってじっくり聴きましょう。
M13.バラ色の人生~ラヴィアンローズ
アンコール的位置づけのアカペラによる超有名曲のカバー。いいなあ、うまいなあ!
M14.希望という名の光(Postlude)
そしてまた荘厳なアカペラ。フェイドアウトするとまた1曲目から聴き直したくなる。

今回はあえて過去の曲をたくさん引き合いに出しました。
山下達郎はいつ聴いても同じであって同じでない。
まず前提として引き出しがものすごくたくさんあって、その中でいわゆる達郎サウンドとしてお馴染みなパターンがいくつかがあるんですが、じゃあそのパターンがいくつって言えるかというと、それが難しい。しかも完成度がどんどん上がってくるからケチがつけられません。
特に今回は、音としてはとてもシンプルなんだけど、そのアンサンブルがかっこよくて、真似ができそうで目指すと道果てしないという意地悪なことになっています。音楽の道は険しい、私はもう15年も休憩しています。