2008/10/11

青春歌年鑑 BEST30 '73(DISC 1)/コンピレーション

前回予告した通り、歌謡ポップス、アイドル歌謡を聴いてましょう。CDショップに行くと団塊世代をターゲットにしたようなこの手の商品がたくさん並んでいて、どれを選ぶか迷いますが、今回の話を進めるのに都合の良い1973年のベスト30を買ってきました。

この中には、ヒロミ・ヒデキ・ゴローの新御三家、3人娘と言われそうで言われなかった天地真理・小柳ルミ子・南沙織の曲、また、いよいよマーケットの中心に進出しつつあったフォーク、ロックに分類されるものも混ざっています。
ただし、フォーク、ロック系は話が広がり過ぎるので、今回は素通りして歌謡曲中心に書きます。またの機会をお楽しみに!

では、聴いていきましょうか。
M1.学生街の喫茶店/ガロ(D3-G4-A4)
微妙なところですが、一応フォーク・ロックとして素通りします。意外と歌、上手かったんですね。

M2.早春の港/南沙織(F#3-B4)
M3.色づく街/南沙織(A3-C5)
南沙織が2曲続きます。子ども心にも気になる存在でしたが、ちゃんと聴くとすごくイイ!南沙織だけで1本書きたくなりました。このまま現代のJ-POP界に連れて来ても違和感がないモダンさがあります。作曲は両方とも筒美京平。この湿り気のないカラッとした、でも色気がある声は貴重です。「早春の港」の歌詞を現代のリアルさで書き直すと「強く儚い者たち」にならないか?ならないか。
南沙織についてはDISC 2にも入ってますから、また書きます。

M4.心の旅/チューリップ(D3-F4)
これも今日は素通りします。他の曲と質感が全く違うところだけ覚えておきましょう。

M5.恋する夏の日/天地真理(C4-C5)
出た!80年代まで続いた、日本ならではのいわゆる「アイドル歌手」直接の元祖です。近所にいるような女の子を連れてきて、素人に毛が生えたレベルの歌を唄わせて、それが商品として成り立つということを皆に認識させた人。地声を使わない発声は、一応音楽学校で訓練された名残なのでしょうが、後で出てくる宝塚の優等生、小柳ルミ子とのレベルの違いはすごいものです。

M6.赤い風船/浅田美代子(A3-D5)
天地真理が切り開いた地平は、浅田美代子によって更に広がりをみせます。つまり、レコードとは音が出るブロマイドであり、歌がうまいとかへたとかは関係なく、とにかく浅田美代子の顔が付いている商品であればちゃんと流通することが分かったのです。
浅田美代子自身は素人時代はそこそこ歌がうまいと言われていたそうです。覚えた歌はある程度再現できる音感はありますが、声が弱いのですね。幸いなことに弱いけれども耳障りなところがないので、世間にも許容されました。この後、風吹ジュンや能瀬慶子など、唄うと不協和音が発生するような人もレコードを出すようになり、アイドル歌謡はさらにアナーキーになっていきます。
「赤い風船」では、サビの前半は自分の声のダブルで録音していますが、自分の声どうしなのに結構ばらつきがあるのが愛嬌。サビ後半は歌のうまいコーラスの女性にハモってもらい保たせています。あ、これも筒美京平作品です。

M7.若葉のささやき/天地真理(A#3-C#5)
天地真理のこの頃の作品は森田公一作曲が多かったのですね。M5が1オクターブかっきり、この曲は下に1音、上に半音広げていますが、この辺が天地真理の使えるギリギリなんでしょうか?申し遅れましたが、今回、歌手名の横に入っている(A#4-C#5)というのは、手元のEZ-EGで音をとった各曲の音域です。たまに3段階になっているのは上を地声の上限とファルセットの上限に分けました。ま、なにかの参考になるかと思って…。

M8.裸のビーナス/郷ひろみ(D3-F4)
初期の郷ひろみの中では抜群にいいと思います。半音階を多用したメロディ自体が楽しい。しかも無伴奏でも唄える親しみやすさをきちんと残しています。郷ひろみの声は、それまでの男性歌手にはあまり例のない中性的なものでした。だからデビュー曲が「男の子(?)女の子(?)」だったわけですが、声は不思議ですが音感は悪くない。大人が描くアイドル歌手の、悪い見本みたいに思われていましたが、それは本人の記号性(っていうのかな)が高かっただけで、レベルが低かったわけではないと思います。実際息の長い芸能人としてずっと残っていますからね。

M9.草原の輝き/アグネス・チャン(D#4-D#5)
いきさつはよく知りませんが香港からやってきたアイドルがアグネス・チャン。向こうではシンガー・ソングライターだった、というふれこみでしたが、日本では平尾昌晃の曲を歌っています。突然売れる外国人歌手というのがときどきいますが、おそらくアグネス・チャンが狙っていたのはベッツィ&クリス的なフォークソングのイメージだと思います。この人のすごいところは、来日してすぐのこの時点から現在まで、唄い方も日本語のたどたどしさも全く変わらないことです。ちりめんビブラートは歌謡曲的には気になるが、洋物のフォーク系シンガーにはあるように思いますし、癒し効果の高い声であることも否定しません。

M10.個人授業/フィンガー5(C4-F5)
沖縄出身の兄弟5人組。中心的スターは日本のマイケル・ジャクソンこと晃です。メジャーな歌謡曲の中で「イェーイェイェイェー」とフェイク部分をレコードに入れていた例は多分とても少ないと思います。フレーズは単純ですが、彼がそれなりに早熟の天才だったことは間違いないのだと思います。変声期前の子どもが、こまっしゃくれたサングラスをかけ、グラマーな学校の先生に恋をしたと唄う姿は、当時の中年以上の人たちには宇宙人のように見えたことでしょう。私の父なんかは、見ていたTVに彼らが出てくるとトイレに逃げたり、別の番組に変えようとしました。
作詞作曲は阿久悠と都倉俊一。彼らはフィンガー5と山本リンダでこの手のコスプレ歌謡(このブログでは便宜上この言葉を使います)のノウハウを蓄積してピンクレディーにつなげて行きました。

M11.君の誕生日/ガロ(B2-F4)
歌のうまいフォーリーブスという感じ。ハモリの難易度が高いなあ。詳細略。

M12.赤とんぼの唄/あのねのね(E3-E4)
これもジャンル違いで詳細略です。数年前のNHKTVで、本人たちが字幕付きで唄っているのを見ました。いい時代になったなあ。

M13.春のおとずれ/小柳ルミ子(A4-C#5)
音楽学校で鍛えた後で歌謡曲を唄うとこうなります、という見本。演歌のセンセイのところで育った人たちほど歌の中で芝居をしていませんが、とりあえず「あたしの声を聴けー」という唄い方。
歌詞とメロディが
「きこえて、きたのよ、とても、あかるく
しあわせなくせに、なぜなけてくるの」
と作られているところを
「きこえて、きたのよ、とても、あかるくーうしあわせな、」
とつなげて余裕を見せたりしています。
前年に「瀬戸の花嫁」という国民的大ヒット曲を生んでおり、それをもう一回やってみた、という曲でしょう。

M14.他人の関係/金井克子(A4-A#5)
金井克子は由美かおる等と同じ西野バレエ団出身。歌はうまくないですが、男性コーラスを従えて不思議な振り付けで唄うパフォーマンスが受け、人気になりました。歌謡曲というジャンルは突然変な曲が生まれて、そのまま大ヒットしてしまうことがあります。作曲はちあきなおみのところでも出てきた川口真。バックの伴奏が都会的なジャズっぽい演奏なのに、コーラスは単純なので、当時の忘年会等ではネタとして重宝されただろうと想像されます。
全編本人の声をダブらせて、エコーをかけていて、細かいニュアンスを伝えるような表現をする気は毛頭ないですよ、というプロデュース。その点についてはPerfumeの先輩と言っていいかも。

M15.そして、神戸/内山田洋とクールファイブ(B2-G4)
うまい・へた問題で蒸し返すと、前川清という人をどう評価したら良いのか、私は分かりません。声は間違いなく良い。音域も広い。しかもこの曲をしつこく聴くと、いろんな声の出し方をしています。出だしや「みじめになるだけえええー」での「いかにも前川清」な大きなビブラートはもちろん、「ないてどうなるのか」では杉良太郎風の鼻にかけた不良っぽい声、「あいてーさがすのーよー」では泣き節というかヨーデル寸前の声の変化を見せていて、つまり七色の声を使い分ける器用な歌手と言えないことは無い。でもトータルの印象は「なんでこの人はこんなに武骨に唄うんだろう?」と思わされるんです。
全てが計算なのか天然なのか?TV画面で見られるそのキャラクターも含め、正体が分からない人です。

DISC 2に続く。

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