今週は偶然「ゆず」をテレビで見ることが多くて、「そういえばちゃんと聴いたことなかったな」と思って、アルバム「FURUSATO」を買ってきました。本当はiTSで落としちゃいたい感じの人たちですが、iTSではシングル1曲しか落とせないんですよね。
ちゃんと聴いたことは無いけれど、「夏色」の頃から憎からず思っておりました。ギター2本の弾き語りデュオという額面から思い起こされる貧乏くささがないし、特に右側の人の声がバカバカしいほど伸びやかだったからです。貧乏くささが無いのは歌っている二人のキャラクターにもあるのだと思いますが、音楽的にも単なる一周遅れのフォークソングではなく、ちゃんと80年代以降の音楽を通り過ぎた上で考えられた構造の曲をやっているのがなんとなく読み取れました。
良く似た成り立ちのデュオで「コブクロ」という人たちがいて、彼らもただのフォークソングで終らない人たちなんですが、コブクロはあまりにも「今売って結果を出すこと」に熱心なのが伝わりすぎてあまり好きになれません。その点、ゆずは今売るために必要の無いところでも自分たちがやりたいことは盛り込んでしまおう、という良い意味での効率の悪さがあって、その点も好ましいところです。
さて、アルバム「FURUSATO」は通して聴いて、とても良いアルバムだと思いました。
インストナンバーを除くアルバム11曲のうち、北川作品が6曲、岩沢作品が3曲、共作名義が2曲となっています。ゆずのメイン・ソングライターは北川悠仁なんですね。
作詞作曲の分担比率は印税収入の格差に直結するので、この点だけ見ていると(オフコースやチャゲアスのように)今後の二人の行く末がちょっと心配になりますが、実際に音で聴いてみるとゆずの音色のすごく大きい部分を岩沢厚治の声が担っているのが分かります。リードボーカルでB4あたりを常用する岩沢の声は高さとしては小田和正レベルですが、よりゆったりとしていて、しかし小野正利ほどは人工的な匂いがしないという微妙な味があります。
北川悠仁のキーも高めですが、曲の途中から岩沢に引き継ぐことでよりスケールの大きな表現ができるのですから、ソングライター北川は岩沢の声を手放そうと思わないでしょう。
今日は全曲解説をする元気がないので、シングルにもなっている「虹」を聴いてみます。
ストリングスの音がかっこいいイントロから同じコード進行の上にAメロが乗っかってきて曲が始まります。A-B-A-B-サビと展開して2番が終わるとDメロを挟んで、もう一度サビが繰り返され大団円。かと思うと最後に今まで出て来なかったEのメロディが出て本当のエンディング、という凝った展開です。
ゆずの音楽的ルーツがどこにあるのか私は知りませんが、私はこの曲を聴いてJourneyの"Don't Stop Believin'"を思い出しました。あっちはA-Bの2つの部品をいろいろな聴かせかたでドラマティックに見せている曲で構造は全然違うんですが、この「手を替え品を替え」的なサービス精神は共通しているように思うのです。
じゃあどうしてゆずは部品を5つも使うのか?
彼らの基本はやはりギター2本での演奏で、その編成で「手を替え品を替え」をやるためには曲の構造そのものをサービス満点にしておく、というやり方がデフォルトになっているんじゃないかと思うのです。路上で歌って人を引きつけるには1曲の中で常に変化を加えて「え、なに?」という細かい驚きを与え続ける必要があり、大成してストリングスをバックにするようになった今でもそれを続けているのではないか、と私は想像します。
2009/10/11
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