2008/10/28

綺麗ア・ラ・モード/中川翔子

この1ヶ月、結果として筒美京平作品をたくさん聴いてきました。Wikipediaによると1967年から専業作曲家として活動しているということですから、40年に渡って流行歌を作り続けているといることになります。作曲家別シングル売上枚数日本一、だそうで、恐ろしいことです。

そして、まったくの偶然だったのですが、数週間前に"HEY! HEY! HEY!"を見ていたら中川翔子が出てきて、新曲は松本隆/筒美京平コンビだと言って唄っていました。また、松田聖子を「神」とあがめているということも語っていました。ちょっと待て、プロフィールによると彼女は松田聖子が結婚した1985年生まれで、松田聖子が神がかっている頃(結婚直前の2年間くらい)のことは生では見ていないはず。若い彼女がどうしてそこまで影響されたのかは良く分かりません。亡くなった父親の影響、ということらしいのですが…。

なんにせよ、この曲は中川翔子がする「松田聖子ごっこ」のために松本隆と筒美京平が一肌脱いだ、ということなのでしょう。
実際には、松田聖子の代表的シングル曲は筒美京平よりも80年代ニューミュージックのアーティストが関わっているわけで、忠実にやるならユーミンか財津和夫を起用するのがスジですが、ちょっとそこまでのキャスティング(?)は無理だったか。ただし、筒美京平もアルバムには曲を提供しており、無縁ではありません。そしてこのコンビは前回までしつこく書いていた南沙織、太田裕美の曲を作っていた二人ですから、話はちゃんと繋がっています。

では聴いてみましょう。ソニー系のためiTSでは落とすことができませんので(とっとと白旗上げてiTSの軍門に下って欲しい。ソニー系にはよい邦楽のコンテンツが揃っていますからね)、アマゾンで注文してしまいました。



いきなりピアノのお稽古風イントロから、分かりやすいベースラインで進行していきます。この辺は80年代のニューミュージック系作家が好んだ(というか、それしかできなかったりもする)コード進行で、ストリングスが美しいアレンジと相まって、「野ばらのエチュード」から「ガラスの林檎」の頃の松田聖子のイメージを忠実に再現しています。筒美京平はフォークソング系アーティストの曲作りのマネも上手で、私はずっと「赤い風船」は吉田拓郎の曲だと勘違いしていましたし、「しあわせ未満」の転調する前にもそんな雰囲気があります。おそらく松田聖子ファンなら、アルバムの中の「xx」に似ている、と指摘できると思うのですが、残念ながら私はそれほど熱心な聖子ファンではなく、細かい元ネタの照合ができないのが残念です。ちゃんと勉強しておけば良かった!

TVで聴いていた時は「ずいぶんキーが高いなあ」と思っていましたが、これは私が絶対音感を持っていないせいで、楽器で拾ってみたらC#5くらいまででした。中川翔子の声質と、半音刻みで上がっていくメロディに騙されました。実際には1オクターブそこそこの範囲で歌メロができています。さすがアイドル歌謡を作り続けて数十年のテクニックは素晴らしいです。
大雑把にいうとA-B-Cと展開するメロディもAよりB、BよりCと尺が長くなっていくので、サビに行くまでが早い早い。この辺、今のJ-POPに望まれる構成というのをしっかり意識していて、前半の状況説明的メロディは極端に短く作ってあります。

一方、作詞の松本隆も松田聖子的単語(「矢」とか「次元」とか「硝子」とか)を散りばめながら、あいかわらず女の子の視点(今風に言うと目線か)からの描写がうまい。「薬指の長い手が好き」は、実際私の乏しい経験に照らしても、女の子ってのは男の「手」の形状を良く観察してますからね。竹内久美子的にも合ってる。ここの描写は「タバコの匂いのシャツ」に対応している部分だと思います。

中川翔子の歌唱は80年代当時のアイドル(松田聖子じゃないよ)のような破綻はなく、うまいと言えばうまい。
ただし、声がアニメソング的で匿名性が高く、名前を言われないと誰が唄っているのか分からない感じがします。松田聖子よりも森口博子に近い感じ。
やはり数週間前のことですが、週刊朝日で連載されている林真理子の突っ込みの甘い対談(あれは何故ホステスが林真理子なんだろう?そのレベルは文春の阿川佐和子と比べるまでも無い)に松本隆が出ていて、その中で(うろ覚えですが)「中川翔子はまだアイドルのコスプレをやっている状態だから、もっと自分をしっかり出せば大成できる」というような発言をしていました。多分、その辺のことを言っているのだと思います。今のままではカラオケボックスのスターで終ってしまう。声は出るので、そこに自分の肉体をのせるような表現をすれば、匿名性は克服されるんじゃないでしょうか?
しかし、彼女の実年齢は23歳。化ける時間が残っているのか?かなり微妙です。渡辺プロ(今はワタナベエンターテインメントだっけ)は昔からアイドルのデビューが遅くて、売れる頃には実年齢が大人になっていることが多いのです。今、彼女が16歳だったらすごい事になると思うけど。


ちなみにC/Wの2曲も良かったです。「カミツレ」は松田聖子でいうと"Rock'n Rouge"の頃のイメージ。こっちが「A面」でも良い。
3曲目の「約束」は斉藤由貴の「卒業」をなぞったような、ギターの3フィンガー奏法がハマるフォーク調。歌詞の道具立ても「レコード」とか「ウイスキー・ソーダ」とか昔のアイテムを並べて、何がしたかったのかというと、携帯電話が無い頃の若者の恋はロマンティックだろう?とお父さん(お爺さん?)世代から今を生きる中川翔子へのメッセージになっています。

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

結構多くの人が間違っているのですが
(この曲が出てからやたら増えてる気がします)
筒美京平は松田聖子には1曲も提供していません。
(アルバム含む)

ekke さんのコメント...
このコメントは投稿者によって削除されました。
ekke さんのコメント...

匿名さんコメントありがとうございます。次回からはでまかせでもハンドルネームを付けてくださいね(式神が打てないじゃないですか。うそですけど)。

このエントリを書いた頃にはネットで筒美京平が松田聖子に提供した曲名というのがあったと思うのですが(Wikipediaだったと思うのですが)、今確認してみたら、確かにそういう曲はありませんでした。ご指摘ありがとうございます。

本文中にも書いていますが、私は太田裕美ファンでしたが松田聖子は斜めに聴いていたのでチェックが甘かったですね。

チェックが甘いと言えば、C/Wの「約束」は中川翔子用のオリジナルでなく、カバーなのだそうです(しょこたんぶろぐに書いてあった)。わざと昔の道具立てで今書いた歌詞じゃなかったんですね。

aedift さんのコメント...

遅レスでかつ反問的で申し訳ないが、
この曲は、まずメロディの系統的には、80年代より前、ニューミュージックよりさらに前の(それこそ筒美第一全盛期の)70年代前半の、(このメロ自体が特にどれに似ているということではないが)尾崎キヨ彦や、ちあきなおみ(や和田アキ子)が歌いそうなトーンのものに「強いて言うなら」聞こえる。
 そしてサウンド、響きの雰囲気的には、それらに加えて、80年代後半以降の、オルタナロックの影響を受けたそれ以後のポップスに出てくる音使いが頻出。
 つまり、80年代前半の、松田聖子全盛期の音楽の雰囲気を多分ほとんど持っていない。その時代部分だけがなぜか抜けているというほどに。当時の聖子のアルバムも多く聞いているが、特に似ていると感じさせるような曲はない。
 端的に言っても、当時の音楽はもっと「垢ぬけ志向で軽やか」、これは「やや熱め」。
 単に筒美氏が自由に書いたらこうなってしまっただけなのか、百戦錬磨だった御大二人が、管理人さん仰るその「松田聖子ごっこ」を巧妙にずらしてやったらどうなるか、の作戦に意図的に出たものなのかはわからないが。
 ・・とまあ、個人的にはそういうふうにも思えます。

ekke さんのコメント...

aediftさん、丁寧なコメントありがとうございます。
そうですね、読み返してみると「松田聖子のイメージを忠実に再現しています」はちょっと筆が滑り過ぎだと思います。
話を膨らませていただいたおかげで、真っ直ぐのお答えになるかわかりませんが、もう少し書きたいことができました。
平日の夜ではちょっと対応ができませんので、週末にでも続きを本文で書かせていただきます。その際は冒頭にaediftさんのコメントを引用させていただきますので、ご容赦くださいね。

匿名 さんのコメント...

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