このところiTunesでミュージックショップに行くと、宇多田ヒカルの"Eternally"がトップをはっているので、何事があったのかと思ったら、ドラマの主題歌になっているんですね。
この曲が入ったアルバム"Distance"が発売されたのは2001年ですから、もう7年も前になります。最近はあまり言いませんが、いわゆる「リバイバル・ヒット」(CDでは発売されてないので、ヒットも何もないんですが…)ということになり、当然私のMacにも全曲取り込み済みです。
"Distance"は宇多田ヒカル名義のアルバムとしては2作目。社会現象化したデビューアルバムかつ怪物アルバムである"First Love"から2年ぶりに発売されたものです。
"First Love"はダイヤの原石が磨かれていく過程で発し始めた最初の輝きをパッケージしたような物でした。15歳のヒカルちゃん、頑張って一杯曲作ったねー、と国を挙げてその第一歩を見守った感じになっていましたが、では全貌を現した宇多田ヒカルがどれほどの物なのか、彼女はこのアルバムで世間やレコード会社に証明してみせなければならないことをいっぱい抱えていたと思います。
それは、"Automatic"や"First Love"よりも優れた曲を作れることだったり、この先本当にミュージシャンとしてやってくつもりがあるのかという覚悟の問題だったり、いろいろあったと思います。契約の内容がどのようなもので、実際に彼女や家族にどのくらいの金が還元されたのか分かりませんが、メジャーな歌手の一生分くらいの売上を1年で達成してしまったのですから、「やり逃げ」するという選択肢もあったのではないかと思うのです。
しかし、彼女は表現者であり続けることを選択し、その後もシングルを発売し、このアルバムがまとまって行くわけですが、私個人としては、実質2年目に発売したシングル、「For You/タイムリミット」あたりではちょっと息切れなのかなあと思っていました。
その後、"Can You Keep A Secret?"であっけらかんとジャネット・ジャクソン風をやってみせたあたりで視界が広がった感じがします。
斜に構えてこのアルバムを聴くと、"Can You Keep A Secret?"以外にも、「どこがどう」と厳密な指摘はできないが、過去の洋楽ヒットに似た曲が交じっています。以前にも書きましたが、「蹴っ飛ばせ!」はファーストツアーで何故か唄っていた"Take On Me"を下敷きにして百恵ちゃん風ロック歌謡をやっています。"Eternally"はBメロへの展開部分で「タイタニックのテーマ」がかなりはっきり聴こえてきます。
このアルバムで彼女は日本のR&Bを背負って立つような方向ではなく、もっと幅広い方向性があることを示しました。
それは翌年に発売された"DEEP RIVER"の充実ぶりに繋がったと思います。私は"DEEP RIVER"がとても優れたアルバムだと思っているので、しばらくしたらまたここで書こうと思います。
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