2008/03/20

海雪/ジェロ

今、最も注目の新人歌手、ピッツバーグの演歌の星・ジェロです。
iTMSでダウンロードできるので、A面だけ落として聴いてみました(ちなみにiTMSでは"JERO"では出てきません、カタカナで検索しましょう)。

ジェロ - 海雪 - Single - 海雪

ここ数十年来、聴き手をバカにした曲しか出てこない演歌界でしたが、ひょっとすると彼は救世主かもしれません。ちゃんと聴けます。

なぜかということを真面目に説明しますと、氷川きよしとジェロは「演歌歌手です、頑張ります」と言いながら、実は演歌を批評しているからですね。今、ストレートな演歌で真面目に聴けるものはめったにないのです(最後が「天城越え」くらいじゃないでしょうか?)。
氷川きよしは今の若者から見た演歌への批評です。彼は演歌のもっさりしたリズムを自分で倍に刻んで唄い、小節(こぶし)の部分もやたらはっきり音符的に唄うことで、演歌を他の音楽と交流可能なものにしています。
ジェロは外国人から見た演歌の批評をしています。若い頃の五木ひろしや角川博などに近い、地声の奇麗な演歌歌手の系譜に位置づけられる喉の持ち主。ちゃんと鼻濁音も使えるところなどはネイティヴ・ジャパニーズもまっ青です。

作曲は宇崎竜童という、キャリアの中で一応ロックを通り過ぎてきた人。作詞の秋元康は、(前にも書きましたが)「川の流れのように」を作ったから作詞家だ、ということになっていますが、実際には一から作品を生み出す才能ではなく、引用と組み合わせで何かを作る二次産業的クリエイターです。こういう人は演歌と相性が良い。「酒」「夫婦」「不倫」「貧乏」「水商売」「日本の都市名」「日本の観光地名」などを取捨選択して組み合わせれば良い演歌の歌詞を、ちょっと新味があるように見せかけるのは得意なはずです。
さて、結果として「海雪」は根っからの演歌歌手がなかなか手に入れられない新しいテイストの演歌として通用しつつ、パロディでもあるというなかなか高度な出来上がりになっています。

私の希望は、次の作品でヒップホップのアーティストにバックトラックを作ってもらい、上モノとしてド演歌が乗っているようなのをやって欲しいです。そうすると演歌のみならず日本のヒップホップ批評にもなるはずです。

HEART STATION/宇多田ヒカル

宇多田ヒカル名義での通算、えーと5枚目のオリジナルアルバムになる"HEART STATION"が発売になり、遅れることなくアマゾンからメール便で配達されました。同日発売の中川翔子も一緒に、とちょっと思いましたが自重しました。

Bonus Track扱いの"Flavor Of Life"を含め7曲がシングル曲というわけで、大変お買い得な1枚になってますが、私のように小まめにiTMSでダウンロードしていた者にとっては、iTunesの楽曲整理が大変でもあります。今の若い子は、知らない曲がいっぱい入っているようなアルバムを、がんばって聴くような根気がないだろうという割り切りなんでしょうね。

相変わらずのハイクォリティです。デビュー後数年に感じた、このコどこに行っちゃうんだろう?とオジさんを不安にさせるようなことも今はなく、自分の声のどのあたりが消費者に支持されているのかも十分に計算された1枚になっています。 「テイク5」という曲があったので、まさか5拍子?と思ったら4拍子でした。
強いて悪口を言えば、あまりにも粒がそろいすぎていて「なんか普通になっちゃってつまんない」という気もするんですが、「では」と他のアーティストのアルバムと比べると、それがとんでもなく贅沢な注文であることに気づかされるという、そんなレベルです。

宇多田ヒカル