2010/01/31

Expressions[Disc 2]/竹内まりや

先週に引き続き竹内まりや/Expressionの[Disc 2]です。80年〜90年代前半にかけて、竹内まりやがビッグになる軌跡を辿るパートになります。アン・ルイス、中山美穂などの有名歌手に提供した曲のセルフカバー、本人の歌唱による「シングル・アゲイン」や「告白」など「火サス主題歌」シリーズもみっちりと聴けます。

M1.リンダ
アン・ルイスに提供した曲のセルフカバー。ソングライター・竹内まりやの最初の作品ということになります。アン・ルイスは竹内まりやと友人で、一方では太田裕美と遊んでたんですね。

M2.もう一度
結婚による休養後の復帰作となったのがこの曲。竹内まりやが作詞・作曲して山下達郎がアレンジとコーラスに加わる、という黄金パターンが確立し、松任谷由実・正隆コンビを追撃する体勢が整ったわけです。ナイアガラ・サウンドを意識したようなアレンジ(ちょうどこの頃はEach Timeが出た頃で、実際に流行っていた)。

M3.マージービートで唄わせて
ビートルズへのオマージュ、と言っておいてコーラスとかビートルズよりもちょっと古い感じにまとめてあるのが面白いですね。

M4.本気でオンリーユー(Let's Get Married)
タイトルから想像するともっとポップなナンバーを想像しますが、実際には「リンダ」に近いロッカバラードです。この辺のタイトルと曲調のミスマッチな感じは、昔の、洋楽に無理やりな邦題をつけたヒット曲をイメージしているのでしょう。

M5.プラスティック・ラヴ
いかにも80年代なシティ・ポップ風です。フュージョンっぽいバンドを従えて杏里とかが歌ってそうな…。山下達郎もこの頃はこういう音楽だと理解されていたと思います。「ハロゲンライト」なんて単語がわざわざ出てくるのもこの時代らしいですね。

M6.恋の嵐
その後の竹内まりやの飯の種になる、訳ありげな大人の恋の世界を歌ったのはこの曲がはしりなんですね。この曲では「帰る場所を選べる」と言っているので、まだ深入りはしていないようです。

M7.元気を出して
薬師丸ひろ子の絶頂期のアルバムに入っていて、当時の大学生たちにとても評判が良かった曲。竹内まりや版もカラッとしていて良いですね。女の子が失恋した友人を励ます、という歌詞は意外と少なくて、それがこの曲を長寿にしています。薬師丸ひろ子がコーラスで参加しています。

M8.色・ホワイトブレンド
アイドル歌手が歌う化粧品のイメージソング、本人が「不思議なピーチパイ」を歌っていたわけですから、竹内まりやが立場を変えて加藤和彦に挑戦したことになります。この課題に関しては「ピーチパイ」の勝ちかな?この曲、ちょっと長くてダレる気がします。中山美穂もそんなに上手くなかったし。

M9.けんかをやめて
Expressionのライナーノーツで本人が「私が歌うとひどく傲慢な女に聞こえる」と書いちゃってます。アイドル歌手はもちろんですが、女の子が二人の男を手玉に取るような歌ってなかったので、その辺の「女の子の本音」のくみ取り方がリアルでイイ、と当時の女友達は竹内まりやを高く評価していました。純情可憐な我々男子は「あ、そういうものなんですか」と鼻白んでおりました。アイドルという立場上?河合奈保子はあまりその辺の底意地の悪さを表に出さずに歌っていたので、この曲の本当の怖さが男子には伝わりづらかったんですね。

M10.駅
中森明菜のアルバム用に作られた曲。山下達郎は中森明菜の歌唱が全然気に入らなかった様です。おそらく明菜のベタベタな暗い解釈に我慢ならなかったのでしょう。一方、竹内まりやはExpressionのライナーノーツで「中森明菜からの依頼だったから書けた」とフォローしています。私は竹内まりや版から先に聴いたので、確かに明菜版は辛かった。だって、この曲が言ってることって「私の方から振った元彼を久しぶりに電車で見かけたら、なんかしょぼくれちゃってて、やっぱ悪いことしたかな?テヘッ」ってことでしょ?ただしこの曲をモノにしたことで、竹内まりやは「恋の嵐」と「駅」を土台にその後のヒット曲を量産したのだから、中森明菜のおかげ、もまんざらお世辞では無いのだと思います。

M11.Forever Friends
「元気を出して」とは曲調がかなり違いますが、「女の友情」もののシリーズ。この鉱脈も結構デカくて、[Disc 3]にもこのテーマは出てきます。

M12.シングル・アゲイン
「駅」とは違って、男の方が他の女性を選ぶ形で別れた恋のその後。男が次の女性と別れたと訊いて、ちょっと揺れながらも「私と別れて後悔してるでしょ?あなたと別れた時の私の気持ちを思い知りなさい、それが対等な別れというものよ」というようなことを言っておられます。

M13.告白
かなり前に結婚はできない、と話し合って別れたはずの男から突然電話があって、「やっぱり君といっしょにいるべきだった」みたいなことを言われたが、「今頃そんなこと言われても、もうあなたと結婚しないという前提で今の生活してるんだから、困るわ」と言いつつ、「そう言われたことはいやじゃないし、あなたもそれを口にしたことをちゃんと覚えてて生きていきなさいよ」、とおっしゃっています。

M14.マンハッタン・キス
これは本格的な不倫の歌ですね。ホテルのドアに「起こさないで」と札をぶら下げて愛人と会っているわけです。「告白」までは自分または同年代の友人の経験(談)を題材にしたかのようなリアリティがあったのですが、この辺からはちょっと頭でストーリーを考えるようになったんじゃないかなあ、と私はニラんでいます。"Don't disturb"から始まって、物語が一周りして、最後にまた"Don't disturb"に帰ってくるところとか良く出来てます。

特にこの[Disc 2]に収められたあたりの竹内まりやの恋愛物って、力関係とか責任の所在が男女平等な感じがします。それゆえに男にとっても辛辣なところがあるんだけど、嫌味が無いのが美点です。それって日本人が歌ってこなかった恋愛のような気がします。その辺がオシャレであり、支持された理由かもしれませんね。

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