そんなわけで今週はずっと"This Is The One"を聴いておりました。
iTSでもダウンロードで買えるのですが、先方の技術的問題でリンクが貼れません。またアマゾンのリンクを貼っておきます。
前回も書きましたが、今回のアルバムは宇多田ヒカルとして日本で展開している音楽との乖離が小さく、アメちゃんがどう反応するかは知りませんが、私たち国内のファンには違和感が無い、英語であること以外は聴きやすいアルバムです。
一曲ずつ聴いていても、過去の作品のフレーズがいい具合に再利用されているのに気がつきます(再利用、というよりも好きで使う持ちネタですね)。
M2.Merry Chrismas Mr.Lawrence-FYI
コーラスのフレーズが"traveling"に似ている。歌メロでは"passion"の一部と共通したフレーズが聴けます。
M3.Apple And Cinnamon
サビは「はやとちり(シングル"Wait & See〜リスク〜"のカップリング曲)」の変形ですね。
M6.Automatic Part2
これはまあ、タイトルが。ゲンかつぎ?こういう自己紹介の歌って日本のアイドル歌手のアルバムにありがちだけれど、アメリカでもあるんですね。つまりまだこういうアピールが必要な段階なんですね、新人として。
M9.Come Back To Me
前回も書きましたが、どこがどう、ではなく"First Love"的作品。ベタベタのバラードかと思いきや、バックトラックを差し替えると表情が変わります。彼女の音楽はスローなナンバーでも「ロック」なノリがあるところが良いです。余談ですが以前ここで書いたスコット・マーフィーの"First Love"のパンク風カバーはすごくよくハマっていて、曲の再評価に貢献してますね。
こちらのサイトにはインタビューアーの聞き書きの形式をとって本人の弁が書かれていますが、"EXODUS"は「一所懸命やったがちょっと違った」と思っており、「今回は自然な表現ができた」というようなことを語っているようです(全部英語なんで)。
宇多田ヒカルは"EXODUS"の後、日本で活動しながら次の展開に向けて、修行に入ったのだと思います。これは野球のピッチャーに喩えるのがいちばん的確だと思いますが、松坂大輔がMLBに行くにあたってカットボールやツーシームを覚えたように、「新球の開発」をしていたと思われます。
今、アルバム"ULTRA BLUE"を聴き直すと曲作りで新しいことを試しつつ("passion"とか特に)、歌詞のテーマは重たく暗いのが多くて、私生活も含めていろいろ総括しようとしていることがうかがわれます。やっぱりタイトルのココロは「超憂鬱」だったのか。
それが次のアルバムである"HEART STATION"を聴くと、1曲目の"Fight The Blue"の歌詞でその種明かしをしてくれています。"BLUE"と戦うぞ、と。期待されてプレッシャーすごいけどやるしかない、憂鬱にまけそうになったがタフになるぞ、と。アルバム自体の音が明るいです。「ヱヴァンゲリヲン」のテーマだった"Beautiful World"では"passion"でやりかけたことに再度挑戦し、聴き手には普通の曲だと思わせることに成功しています。つまり新球が完成したのです。
"HEART STATION"にも収録されていますが、やはり先行したシングル"Flavor Of Life"が好評だったことが改めて自信回復させたのだと思います。しかも"Flavor Of Life"のジャケットを見ると、ボクサー風にパーカーの帽子をかぶった彼女は横を向いています。今になって分かるのは、彼女が向いている先にはアメリカがあったんです。"This Is The One"では同じようにパーカーを着た"Utada"が正面を向いています。そっちを見てやっていたんだぞ、と。
どこまでが最初から決まっていたのかは分かりませんが、当然その裏読みの余地があることを分かって作られたことはまず間違いありません。おにぎりの謎だけがまだ残っていますが。
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