先週の日曜日、前日になってBSスカパーで宇多田ヒカルのライブが放映されることがわかって、慌てて録画をとりながら視聴しました。あー驚いた。
昨年秋に行われた全国ツアーの最終日の実況とのこと。タイトル"Hikaru Utada Laughter in the Dark"はまたまた一筋縄ではいかない感じの矛盾した概念を表しています。ちょっとこのところこの路線の頻度高すぎませんか?と思って、元ネタを探ってみたらナボコフに同じタイトルがあるようです。「暗闇の中の笑い」、試される教養。
セットリストはやや地味というか渋い印象で、ズンドコお調子系の曲はかなり絞り込まれています。休養前のヒット曲は前半にメドレー形式でぽんぽんと放り込まれて客席を温めたあとは最新の2枚のアルバムのナンバーをじっくり聴かせる構成。相変わらず、歌以外のパフォーマンス(MCや肉体を使った表現部分)にはデビュー以来の素人臭さを感じさせつつ、ドレスから露出した肩や腕には定期的なトレーニングを欠かさないプロ意識をにじませていました。
また、前半終了後の着替えタイムには、芸人であり芥川賞作家である又吉直樹の脚本・出演によるコントビデオ(なぜか笑いの質がドリフあるいはゲバゲバ90分的)が上映されるというおまけ付きでした。
さて、新作アルバムでもそうなのですが、このライブを見ていて少し心配になったのは、ひとつはちょっと声が細くなったかな、というところ。歌声としては休養寸前の、ネット配信された横浜スタジアムのライブの頃がもっとも脂が乗っていた感じで、まだそこまで戻ってないかなと思いました。まだ三十代なので、衰えではなく出来上がってないだけだと思いますが。
もうひとつは作品のことで、復帰以来、「母親の鎮魂」というテーマが非常に大きいのはわかるのですが、自分が母親になったことがあまりストレートに作品に反映されないのがちょっと気にかかります。クマのぬいぐるみにも歌を捧げていた彼女の私小説作家的体質を思えば、そろそろ子供との関係を題材にした曲がもっと生まれてきても良いのではないかなあ、と余計な心配をしてしまいます。ことによっては童謡集作るくらいのことをしても不思議ではないんだけど(太田裕美はそうなって、昔からのファンは置き去りにされましたので、そうなってほしいわけではないんですが)。
宇多田ヒカルの家庭環境を思うと、子供を生むということについてもいろんな葛藤があったと思うし、現在はシングルマザーになっているわけですから、いろいろ苦労していると思います。なにかあったときに駆け込む実家にはおばあちゃんはいないわけですし。プロデューサー宇多田照實氏が全面協力しているんだとは思いますが、さてその実際はどうなのでしょう。
https://hikaruutadatour2018.jp
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