2010/07/18

Hits/安全地帯

ここ数年、プライベートな話題に事欠かない玉置浩二ですが、何年ぶりかで何度目かの活動再開ということで、安全地帯の新作アルバムが出ています。


"Hits"と、シンプルなタイトルが付いたこのアルバムは、安全地帯の代表作を「当時のトラックをベースに全曲新録音」しなおした(CDの帯による)もの、だそうです。年代的には「ワインレッドの心(1983年)」から「月に濡れた二人(1988年)」。その後はバンド活動休止と再開を数度繰り返していますが、安全地帯としてのヒット曲は記憶に無く(玉置浩二のソロでサバカレーのドラマの歌がありましたが)、これ1枚あれば特に思い入れのない消費者には十分なラインナップとなっています(失礼?)。

一通り聴いてみました。
カラオケは「え?」と思うほど昔のままです。「当時のトラックをベースに全曲新録音」というのはひょっとして玉置浩二がボーカル差し替えただけ?と思うほどです。確か先週の土曜日(7月9日)に放映されたミュージックフェアでは5人そろって演奏してましたから「できるだけオリジナルに忠実に」再現したのかもしれませんが、録音自体古いんじゃないかなあ、という音です。ミックスが変えてあるのは間違いないのですが、それ以上はどこが差し替わっているのか私の耳では分かりませんでした(昔の音源も持ってないし)。また、テレビでやってたアンプラグド風「ワインレッドの心」も良かったんですが、このアルバムには通常版が収録されています。

一方、健康面が心配された玉置浩二の声は健在で、オリジナルよりも生声っぽく処理されているにもかかわらず、その色気と迫力はさすが。よくできたホーンスピーカーのように朗々と歌う部分と囁くようなせつない歌い方のメリハリが見事で、しかもどちらもよく通る、素晴らしい声です。ところどころ自己陶酔っぽいフェイクが入りますが、全体的には「やっぱりうまい」と思わせます。私は以前、玉置浩二はボーカリストとしての才能がソングライターとしての才能に勝ちすぎてるんじゃないか、というような事を偉そうに書きましたが、撤回します。「恋の予感」とか、やっぱりうまくないと歌えません。

振り返ると、それぞれの時代には歌の神様に見込まれたかのように見える歌手がときどき出現します。80年代の代表はおそらく玉置浩二でしょう。90年代は吉田美和で00年代は平井堅、という見立てになるんですが。
しかし、歌の神様は見込まれたご本人たちの個人の幸福までは面倒を見てくれないようです。このジャケット写真といい、ここ1〜2年の乱行ぶりといい、最近の玉置浩二のハジけかたは異常です。前述のミュージックフェアでの本人の発言や、ワイドショーでの言動を総合すると、彼は「自分の感情のままに生きる」ということに決めているようです。その時思ったことに正直に行動するので、過去の発言との辻褄とか、世間の揶揄とかは斟酌しないのでしょう。
それはとても素敵な生き方ですが、ここは日本ですし、せっかくの才能ですから、あまり破滅的にならずに末永く活躍していただきたいと思います(あーでも50歳過ぎたら僕もそうなるかもしれないなあ。兆候あるもん)。

私はうっかりCDを買ってしまいましたが、iTunesでもダウンロード可能です。

2010/06/05

乱反射ガール/土岐麻子

先週くらいの週刊朝日で、渡辺祐氏が紹介していたのが土岐麻子「乱反射ガール」です。渡辺氏によると「なつかしの80年代シティポップ」ということで、「そりゃちょっと聴いてみたいかも」と試聴もせずにアルバム1枚分を2000円でダウンロードしてみました。気づいてなかったんですが、iTSでもトップページで紹介されていたんですね。

新人なのかと思ってWikipediaを読んでみたら、1976年生まれということで中堅というか女性歌手としてはベテランと言って良い年齢です。2003年まではバンドCymbalsのメンバーだった、ということですが、私はCymbalsは知りませんでした。ソロとしてはジャズのアルバムも出しています。「実力派」なんですね。

聴いてみました。
20秒ほどの"Intro"の後、M2として収録されている「乱反射ガール」はまさしく「シティポップ」でした。川口大輔の作曲ですが、バブル期が懐かしいおじさんが、泣いて喜ぶ倍音たっぷりのシンセのフレーズと美しいストリングス、土岐麻子の上手いけどナチュラルさを残した発声が「国道246号線の夜景」っぽくていいです。カラオケはなぜかちょっと中谷美紀の「ケイゾク」のテーマ(クロニック・ラヴ)にもちょっと似ています。
そのまま5曲目くらいまでは、本当に80年代っぽいです。はっぴいえんど、キャラメル・ママ、「RCA三人娘」なんかが好きだった人には、なんの抵抗も無いでしょう。お薦めします!特にこのタイトル曲と「M5.鎌倉」はセールス的にいちばん成功していた頃のEPOによく似ています(もっとしつこく例えるとキャラメル・ママをバックにEPOが歌ってるみたい)。

M7でなぜか突然"ALL YOU NEED IS LOVE"のカバーが入るほか、M10ではマイケル・ジャクソンの"HUMAN NATURE"をアンプラグドな感じで和田唱とデュエットしていて、和田唱が意外なほど歌が上手いことも教えてもらえます。

全13曲、飽きずに聴けます。iTSでアルバム単位でダウンロード、あるいはCDで買っても損はないと思います。

2010/05/09

限界Lovers/SHOW-YA

先日テレビで熱唱していた寺田恵子姐さん率いるSHOW-YAのヒット曲です。

久しぶりに姿を拝見しましたが相変わらずシャープなルックスで、同世代としては頼もしい限りです。しかし、よく考えると遠巻きにして「ええぞ、ええぞ」と冷やかして見ていただけだったので、ちゃんとiTSで「限界Lovers」をダウンロードして聴いてみました。
ちなみにOVA版パトレイバーの主題歌は「未来派Lovers」です。お間違え無く!

日本の女性ロックバンドとしては同時期にプリンセス・プリンセスがいました。あちらは奥居香の丸っこいルックスもあって大学の同級生がやってるように見えましたが、SHOW-YAはもうちょっと玄人っぽい、妖しい感じがありました(実際には奥居香も一筋縄ではいかない人だったようですが、ま、イメージですw)。

寺田恵子は見た目が派手なわりにエンターテインメント的サービスをあまりしない人のようで、意外とテレビなどでは活躍せず、「NAONのYAON」などのライブ活動などを熱心にやっていました。なんども書きますが、個人的には浜田麻里とジョイントして商業ロックの頂点を極めて欲しかったのですが…

さて、「限界Lovers」はテイストとしてはアン・ルイスの歌謡ロックと非常に近く、演奏も歌詞もたいそう派手です。意味もなくカッコいい!
「"Back to the fire"って意味わかんねえ」と当時から言われてましたが、そういうもんじゃない、気合でカッコいいわけです。「激しさ」「No.1」「ビロード」「火花」「刺激的」「天使」「悪魔」と絶対値の大きい言葉がわんさか並びます。言ってることは「自分に素直に愛しあいましょう」みたいなことなんですが。
それは同時期に大ヒットしたマンガ「北斗の拳」の一番面白いところが、ひとことでいっちゃうと「女が原因の兄弟喧嘩」の話だったのとよく似ています(?)。どっちも好きなんだけど、他人に説明しようとすると悪口になっちゃう。

2010/05/05

検索少年/七尾旅人

去る4月25日、風邪を引いて家から出られずにぼんやりと日曜の午後を過ごしていた私は、Twitterでリンクを見つけて、"nbsa+×÷ 2010"のUstを見ておりました。

そこに登場して、1時間ちょっとのライブを見せたのが七尾旅人という人でした。
最初はガットギターの弾き語りで、吟遊詩人ぽい曲をやって、その後"cro-magnon"というバンド(甲本ヒロトとかがいるやつではない)との共演でヒップホップ的な演奏を見せていました。
ジャンル不明、背景不明でしたがパフォーマンスは独特で、ちょっとテレビでは見られないタイプの人でした(Ustライブでは最初のMCで「場違いな暗いフォークです。すいません」みたいな事を言っていましたが、フォークではなさそうですし、途中で声によるサンプリング芸なども見せていました)。

気になってWikipediaとかもあたってみたところ、雲をつかむような記述でしたが電気グルーヴ×スチャダラパーの作品にも顔を出しているらしいので、意識しないうちに声は聴いていたのかもしれません。

Twitterもやっていて(アカウントは@tabito_net)本人がそこで宣伝していたのを追っかけてホームページ ☆::TAVITO.NET::☆ を見てみると、なにやら新作を自力配信中と書いてありました。
それが表題の「検索少年」です。この曲は7月7日発売予定の新アルバムの先行配信曲なのだそうです。サンプルを聴くとやたら可愛いノスタルジックなテクノサウンドが聴こえてきました。

そんなわけでiTSから"Rollin' Rollin'(七尾旅人×やけのはら)"をダウンロードして聴いてみて、やっぱり分からなくて自力配信の「検索少年」もmp3版を落として並べて聴いてみました。ちなみにダウンロードした「検索少年」をiTunesに読み込んだらジャンル名が「アシッドパンク」と出ました。たぶん、配信者本人がそう入力したんでしょう。

結局2曲くらいじゃ七尾旅人のことはなんにも分からないのですが、分からないなりに感じたのは、歌い方がとても好ましいってことです。端的に言うと「歌詞がよく聞こえる」。歌を上手そうに聴かせるよりも、書いた歌詞をストレートに聴き手に届けることを優先してる。
私の好きな歌い方です。

あと、ぶっきらぼうに歌っているようで、いろんな音楽をよく聴いていて引き出しが多そうな感じもします。
もうちょっと深く掘って聴いた方が良さそうですね。次はどれを聴けばいいでしょうか?

2010/04/11

シンクロニシティーン/相対性理論

「シフォン主義」、「ハイファイ新書」ときて、次はどんなダジャレタイトルになるのかと楽しみにしていたところ、途中で近田春夫とか渋谷慶一郎が絡んできて、今度はこのまま解体するのかしらと思ってたらちゃんと3作目のアルバムが出てきました。

「シンクロニシティーン」はダジャレなのかどうかも分からないくらい微妙なタイトルですが、「シフォン主義」以来のリスナーを切り捨てない、相対性理論らしいアルバムになっています。

ただし、「シフォン主義」→「ハイファイ新書」で見られた音のノーマライズというかソフィスティケートというか、普通の商品的な音に近づこうとするベクトルはそのままで、今回は「ハイファイ新書」のバックの音に音圧が増したやくしまるえつこの声が載っている、という出来上がりになっています。以前はカヒミ・カリィ並みに消え入りそうだった声のゲインが上がって、もともとやくしまるえつこは下手そうで下手でない、字義通りの「へたうま」でありましたが、曲によってはYUKIに似ているくらい声が前に出てきています。こうなってくると私なんかは、昔の(熱心なファンほどショックを受けて、今ではなかった事になっている)太田裕美・ニューウェイブ路線をちょっと思い出します。

それと同時にたぶん過去2作では聴かれなかった、「リードボーカリストの多重録音によるコーラス」が採用されました。先行配信された「ミス・パラレルワールド」で「ぱられるぱられる…」とハモっているところなどですね。
↓iTunesへのリンク


相対性理論というバンドがどのくらい長くやる気があるのか全く見えてなかったんですが、こうして音楽教室のクラスをだんだん上がっていくように新しい要素を付け加えていけば10年くらいはできるような気がしてきました。ピアノ1本、ギター1本のオフコースが最後はTOTOかジェネシスそっくりになったように…。
逆に言えば相対性理論はバンドやりたいアマチュアにとって、絶好のテキストになるとも言えます。今ならまだ素人でも耳で拾える。ドラムは難しそうだけど、それ以外は頑張ればなんとかなりそうじゃないですか。

2010/04/03

5years<通常版>/木村カエラ

木村カエラのデビュー以来の音楽活動をまとめたベスト盤です。私はiTSで落としてきました。
木村カエラ - 5years<通常盤>
木村カエラは可愛い。デビュー当時はこういう姪がいたらおじちゃん会う度に5000円とか1万円とかお小遣いあげちゃうなーと思ってました。オシャレで、ガリガリ勉強するように見えないけれど学校の成績は良くて、ちゃっかり有名大学に推薦で進学しちゃうようなタイプに見えました。その後のちょっとカルチャーっぽい消費のされ方は80年代の小泉今日子に似てるような気もしますけど、小泉今日子はルックスや歌唱力へのコンプレックスの裏返しからはじけているように見えましたが、木村カエラにはそういうコンプレックスの香りがしません。

さて、中身を聴いてみます。「リルラリルハ」とサディスティック・ミカ・バンドしかちゃんと聴いたことがなかったんですが、CMタイアップ曲が多いため、聴けば「ああ、これか」と思いあたるラインナップです。
曲順は新しいものから過去に遡るように並べられていますが、スパンが5年ですし基本はロックバンドの音なので特別時代を感じさせるものはありません。気持ち「リルラリルハ」以前のナンバーが音圧が低いかなと思うくらい。演奏がユニコーン的ロックだし、木村カエラの歌は上手すぎず下手でない(最近お気に入りのフレーズ)。いわゆる3コードのロックンロールでは無く、メンバーにクラシック崩れがいる構成・展開重視の曲作りをするバンドのサウンドです。「M2.バタフライ」なんかもろにピアノの練習曲的ですし、「M4.どこ」は発声練習的。無理矢理に印象が似てるものを探すとPUFFYということになりますか。ときどきパロディ的に外国の有名曲のフレーズを一捻りして入れてありますし、実際に奥田民生のナンバー(M14.BEAT)も入っています。

また、おそらく木村カエラ自身がその生育史の中で受けてきた最近のJ-POPからの影響も随所に見られて面白い。たとえば、以前このブログの中でも書いた「hitomi風日本語母音の省略」が意識されてる「M8.Yellow」。この曲ではサビで「いつだってYellow そんなあなたにエールを送るよ」と歌いますが、「そんなーなたにえーろーくーりょー」と聞こえるように歌っています。しかも「エールを=yellを」が前の行の「Yellow」とかけてある。これ頭いいでしょ?
また「M1.You bet!!」の「すすまな"きゃって"そう"ちかった"」の日本語の選び方、歌い方には宇多田ヒカルの(良い)影響が見えます。

こういう細かいところをiPhoneで聴きながら追っかけられるのは、彼女がちゃんと歌詞が伝わるように歌っているからです。今、単純なアイドル歌手はすごく少なくなっていて、そのかわりに歌詞を書いてるからアーティストである、というアイドル歌手が多くなっています(その意味では森高千里の罪は深いのかなあ。彼女はアーティストでしたが)。しかしせっかく書いた歌詞をちゃんと伝わるように歌っている人はあまり多くない。木村カエラはそういう意味でちゃんと作詞をしてるし、伝えています。

2010/03/22

クリスマスの約束2009/TBS(小田和正ほか)

年末恒例、小田和正「クリスマスの約束」の2009版です。
毎年、放送日が微妙に変わるので(明石家サンタみたいに24日深夜、と決まってればいいのですが)、つい億劫になって私も本放送は見逃してしまいました。しかし私にはHDDレコーダーのような友人が名古屋にいて、「小田和正、ゴジラ、古畑任三郎」などのタグのついて番組を見つけると「録画したけどいる?」と聞いてきてくれるのです。「いる」というとDVDに焼いて送ってくれるんですが、それがまた自宅でつん読状態になっていたのを、先日再発見してようやく見た、ということです(まことに申し訳ない)。

さて、2009年版は小田和正が「(J-POPの)リードボーカリストを集めて全員で歌いたい」と言い出し、これはと思うアーティストにメールを入れて参加を要請するところから始まります。
まず最初に現れるのがスタレビ・根本要。いきものがかり、トータルテンボススキマスイッチら。彼らがまず「小委員会」を作って、全体の骨組みを作っていきます。
小田さんの考えを聴きながら「本当にそれで面白くなりますか?」という若いミュージシャン。「もう少しイメージを具体的にしてくれないと」と言います。
それは団塊の「やればなんとかなる」しか言わない口下手上司に不満たらたらの若いサラリーマン、という会社の図式と重なります。若い人達は過去の失敗例・成功例の結果だけはたくさん知っているから、道筋が全部見えてないと走り出せないんですね。でも上司・小田さんは「結果が見えることだけやっててなにができるか?」と思いながら走ってきた高度成長期の創業社長ですから、そのギャップがあるんです。また、(やらせかもしれないけど)番組制作側からも「それ面白いですか?」みたいなことを言われてキレかける小田さん。

そして、飛び道具系の広瀬香美や藤井フミヤ、夏川りみ、中村中、若い世代のJUJU、AI、一青窈、平原綾香、クリスタル・ケイ、キマグレン、Aqua Timez、清水翔太らを相手に苦戦する中、山本潤子、財津和夫、鈴木雅之、佐藤竹善、松たか子といった小田さん人脈の安全装置も参加して形ができていきます。

そして尺そのまま「22'50"」と名付けられたメドレーソングが本番で発表されるのですが、すごいことになっています。オフコースの「愛の中へ」の歌詞じゃありませんが「心がことばを越え」た瞬間がたしかにありました。4月1日に再放送されるそうなので、犬にでも噛まれたと思って騙されたと思ってぜひご覧ください。
ちゃんとした番組情報はこちら

Mine or Yours/宇多田ヒカル

ベストアルバム"SCIENCE FICTION"を買った後しばらくぼーっとしていましたが、5月になった途端にYouTubeでライブ配信的なものを見かけました。配信は途中から見たのですが、過去のMVが次々流れていて、いつから新作発表になるのかわからず、見るのやめ...