実体不明な「ニューミュージック」と驚異の雑食性ジャンルである「アイドル歌謡」、二つの曖昧なもののそのまた中間に位置するといわれた太田裕美の、78年発売のアルバム"ELEGANCE"に入っている1曲です。
作詞:松本隆、作曲:筒美京平。当時の黄金コンビの作品です。
業界潜入ルポみたいなタイトルですが、この曲はアカペラのコーラスから始まり、伴奏1小節で歌に入ります。当時の歌謡曲としてはとてもおしゃれでした。
「ピッツァ・ハウス22時」はお馴染みの「木綿のハンカチーフ」や「赤いハイヒール」と同様に、男女の対話形式で話が進みます。この頃の松本隆お気に入りのパターンです。「木綿〜」や「赤い〜」は、1コーラスの中の前半と後半で男女が入れ替わりますが、この曲ではじりじりと転調しながら1コーラスずつ男・女・男・女と歌詞が入れ替わっていきます。
学生時代につきあっていて、卒業前後に別れた恋人どうしが何かの機会で久しぶりに会い、二人でよく来た夜のピッツァハウスでワインを飲みながら話をしているという話です。ネクタイ姿が様になってきた彼と、大人びてきた彼女は、核心に触れるのを避けるように友人の話題などを語りながら場を繋ぎます。最後に、お互いによりを戻そうかと思うけれども、どちらからもそれを云えずにまた他人に戻ってそれぞれの生活に戻って行く(のだと思う)、という曲です。どうして21時でも23時でもないのかというと、当時の太田裕美の年齢(22歳)に掛けているからです。
当時の太田裕美は、シングルは歌謡曲的な売れ線の作品でヒットを狙い、アルバムはニューミュージックよりの、アーティスティックな方向で制作するという戦略をとっていました。このやり方は少し後に、松田聖子がアイドル歌謡からスタートして徐々に楽曲のレベルを上げ、セールスと音楽性を高いレベルで両立させたことで大きく花開くことになります。太田裕美は松田聖子のプロトタイプであった、と私は思っています。
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