この項では、まだ中身の話にはなりません。
"R35 Rock&Pops Super Hits"は熱心な洋楽ファンには呆れ返っておヘソで茶を沸かしたくなるような、ベタなヒット曲がまとめてあります。その分、私のように音楽的にぼんやり生きていた一般消費者でも、曲名とアーティストは答えられなくても、あ、これあの頃よくかかってたなあと思える曲ばかりです。惜しむらくはおそらく大人の事情系理由でマドンナやマイケル・ジャクソン、ビリー・ジョエルが入ってないのが唯一の弱点ですが…。
もし、同じように"R50 Rock&Pops Super Hits"というのが企画され、ビートルズ、ストーンズ、キャロル・キング、PPM、S&G、CSN&Yなどが入ったら、J-POPの歴史が全部語れる素材になるかもしれませんね。
ビートルズやストーンズの出現をきっかけにして、60年代の日本では片やグループサウンズ、片や商業主義に背を向けたロックという大きく分けて二つの流れが出てきました。その前にはフォークソングのブームもあり、こちらも小奇麗なアイビールックの大学生がアメリカのフォークソングのカバーや職業作曲家の作品を歌うタイプと、小汚いカッコで自作の反体制的メッセージを歌うタイプの2種類が存在しました。
70年代の初頭にはグループサウンズは廃れ、アンダーグラウンドなフィールドから出現した「はっぴいえんど」が新たな日本語ロックの潮流を作りました。一方フォークソングも、「帰ってきたヨッパライ」や「走れコータロー」などのメガヒットが生まれ、また吉田拓郎が森進一へ楽曲を提供して成功するなど、大手による商業音楽への合流(吸収?)が進みました。また、フォークソングもある程度「サウンド」に目覚め(または、ボブ・ディランもそうやってるからという理由か?)、ギター1本で絶叫していた歌手が、いつしかエレキギターを手にロックバンドの編成で歌うようになりました。これがフォーク・ロックと言われ、直接のニューミュージックの祖先にあたります。人類で言うとクロマニヨン人のようなもので、遺伝子的にはニューミュージックとなんら違いのない存在です。
70年代中盤から後半にかけては、名称も定まって、いわゆる「ニューミュージック」が成立しました。
テレビの世界には無縁だった「シンガー・ソングライター」が、テレビの歌番組で、キンキラキンの演歌や歌謡ポップスの歌手と同じ画面で並んで映ることが珍しくなくなりました。その画面の中には、歌謡界からフォーク・ロック界への親善大使だった太田裕美がいましたし、シンガー・ソングライターでありながら歌謡曲のステージに飛び込んだ庄野真代や五輪真弓がいました。
ニューミュージック連中のサウンドへのこだわりは、最新の洋楽ヒットをチェックし、自分たちで再現するという方向で、どんどん新しい技術を吸収していきました。
折しもジャズとロックが融合した「クロスオーバー」や「フュージョン」と呼ばれる、ロックバンドの編成で超絶的テクニックを交えた格好いいインストロメンタルの演奏を聴かせる音楽も流行してきました。
ニューミュージックもそれらの影響を受けて発展していきました。演奏テクニックならチョッパー・ベース、バイオリン奏法、ライトハンド奏法…。また、音作りの技術も発展します。バスドラムやスネアドラムの音色の変化、コンピューターと同じテンポで驚異的な発展を続けるシンセサイザー類…。
1980年代になると、もはや「ニューミュージック」というジャンル名自体に手垢が付き始め、「俺たちはニューミュージックじゃない」というのが当時のミュージックシーンのトップランナーの自意識になりました(それは時代が下っても「俺(たち)は渋谷系じゃない」とか「俺たちはビジュアル系じゃない」と云うアーティストの意識と同じでしょうね)。
オフコースなんかが代表でしょう。TOTOやWingsのサウンドを取り入れ、5人のメンバーのうち4人がリードボーカルをとれる歌唱力があって、完成度の高い声のハーモニーと演奏で、半年かけて作り込んだレコードと同じ音をライブで再現できるのが当時の彼らのウリでした。本人たちの自意識はどうあれ、1980年代初頭において、彼らは「ニューミュージックの頂点」でした。
その後数年の間にニューミュージックは一段とロック色を強めたり、R&Bやテクノポップの要素を加えて、"J-POP"と呼ばれるようになり現在に至るわけです。
ここまでが前段です。
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