9月になったので、9月の歌を。
私の太田裕美ファン歴は1977年発売の「九月の雨」から始まります。当時私は中学生でしたが、前年に大ヒットした「木綿のハンカチーフ」はあまり好きではなかった。ちょうど父の転勤で首都圏から愛知県に都落ちした頃で、田舎の女の子と都会に行った彼氏の物語が癪に障ったのかもしれません。
その後の「しあわせ未満」、「恋愛遊戯」がお洒落で、その頃から意識して聴くようになり、「九月の雨」が入ったベストアルバム"Hiromi Selection"をお小遣いで買ったところで完全にハマりました。そのLPジャケットが実物の3割増くらい美人に写っていたこと、年齢不詳の声が私から見たら8歳もおねえさんなのにもかかわらず親近感をもてたこと、の2点が大きかったですね。
さて、「九月の雨」は太田裕美のシングルの中でも例外的に歌謡曲よりの曲です。
彼女は実際には当時最大手の芸能プロダクションに所属しており、変わった声のアイドル歌手として芸能生活をしていても不思議の無い人でしたが、ピアノの弾き語りが出来たことと、はっぴいえんどでその日本語ロックの作詞をほぼ一人で担当していた松本隆が(後に小室哲哉が華原朋美に入れ込んだみたいに)プロデューサー的に関わることで、フォーク・ロック的な楽曲を歌う、独特な存在でした(まだニューミュージックという言葉は流通していなかった)。
特に前作「恋愛遊戯」が当時としてはかなりお洒落なボサノバだったので、歌謡曲ど真ん中な「九月の雨」には、子供なりにちょっと戸惑いました。彼女はこの曲で年末の賞レースにもほぼ皆勤賞で顔を出し、その意味では一回ちゃんと歌謡曲として評価をもらっておこう、というような戦略もあったのかもしれません。
なお、太田裕美本人の著書「太田裕美白書」によると、筒美京平は「九月の雨」をABBAを意識して作ったのだが、ちょっと違ってしまった、ということらしいです。2コーラスが終わってから転調して畳み込んでくる大サビが素晴らしく、しかし太田裕美がその声の性質上たたみこめない非力さが却って感動を呼ぶという、不思議な効果を生んでいます。
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