2019/05/05

日本の恋と、ユーミンと。/松任谷由実

 さて、とうとうユーミンがストリーミング配信されるようになりました。随分と掘りがいのある鉱脈に出会ってしまったものです。

 私は兄弟もおらず、基本的に昭和一桁の両親と見るテレビだけで幼少期の音楽体験をしてきましたので、ユーミンのことを知ったのは、随分と年長になってからのことでした。
 おそらく最初に聴いたのは母が午後に多分再放送で見ていた連続ドラマの主題歌として使われていた「あの日にかえりたい」だったと思います(なんのドラマだったんだろう。あまり重要なことではないので調べずに素通りしますが)。

 私にとっては検証をしないうちにとんでもない大きな存在であることだけが結論として伝えられたのがユーミンです。そりゃ私もバブル時代を生きてきましたし、「私をスキーに連れてって」もレンタルビデオで見ましたから、大人になった頃にはなんとか追いついたんですけどね。

 Wikipediaなどで確認してみると、1983年の「VOYAGER」から1995年の「KATHMANDU」までの干支一回りの間、判で押したように11月下旬から12月上旬にアルバムが発売されています。この間、日本人が毎年の暮れになるとユーミンのアルバムを買ってクリスマスを迎えることが国民的行事になっていたということがわかります。恐ろしや。

 で、荒井由実時代のことについては実はほとんどよく知らないということで、何年か前に慌てて「ひこうき雲」など買って聴いたりしたんですが、改めて表題のアルバムに収められた曲の中から荒井由実時代の作品に注意しながら聴いていると、そりゃまあ、我々の上の世代が崇め奉るのもよくわかります。私も今後は改めてユーミンの旧作をアルバム1枚ずつ、ゆっくり味わってみようと思っています。

 大衆音楽家の先進性というのは、当然、その時代と込みで考察されるべきであり、当時の荒井由実が出てきたときに他にどんな音楽が流行していたかを考えるとその突出ぶりはすごいです。例えばアルバム「ひこうき雲」が発売された1973年のヒット曲をWikipediaでひろってみると、「おんなの道」「喝采」「危険なふたり」とか梶芽衣子「怨み節」とか出てくるわけですよお立ち会い!
 若者(大学生あたり)に対象を絞り込んだとしても「神田川」「心の旅」「ひなげしの花」「てんとう虫のサンバ」とか…。おそらく多少なりとも音楽に関心がある人にとっては、1999年当時の宇多田ヒカル「Automatic」がそうだったように、「これは買って聴かなければいけない」とつき動かされるような新しさがあったことは間違いないと思います。

 初期のユーミンを聴くことは、はっぴいえんどの流れを汲むキャラメル・ママまたはティン・パン・アレーの演奏を楽しむことでもあります。今の高度に処理されたカラオケを聞き慣れた耳には、多少もたつきを感じさせる箇所もあるような気がしますが、当時最新の演奏法を取り入れ解釈し再現することの初々しさを感じさせ、逆にすーっと聞き流すことを許さない演奏になっていますね。

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