2008/07/13

LOVIN' YOU/MISIA

要は我々素人が歌の「うまい・へた」に言及するとき、「楽器としての声が優れているかどうか」、「楽器である自分の声をいかに思い通りにコントロールするかという技術論」、さらに「楽曲を解釈できるかどうかという知識とセンス」という3つの要素がごちゃごちゃになっていると思います。その際、どうしても声がきれいということに善くも悪くも騙される場合が多い、と思うんです。

また、「楽器として優れている」の中にも「音色が美しい」と「音域とダイナミックレンジが広い」という二通りがあると思います。
前項の杉山清貴は「音色が美しい」楽器であり、その演奏能力にも「問題が無い」、という人です。こういう人はうまいと言いやすいですね。

今日はMISIAを聴いています。
この人は「音色が美しい」上に「音域が広い」楽器であり、その演奏能力も「優れている」人です。
あえて、有名曲のカヴァーである、"LOVIN' YOU"をダウンロードしてみました。
MISIA - LOVE IS THE MESSAGE - LOVIN' YOU(MISIA 1999 LIVE VERSION)
この三十数年前の名曲は、いろんな人がカヴァーしたりTVで唄ったりしますが、たいていは今井美樹ヴァージョンのように、最後の「ああああああー」をオクターブ落とした常識的な範囲で唄うのですが、さすがMISIAはオリジナルのミニー・リパートンと同じキーで、例の箇所も歌メロの1オクターブ上を使って鳥のような声を出しています。

彼女の音色と音域については全く不満がなく、あとは年齢を重ねつつ楽典の勉強を進めて高みをきわめていただくしかないかと思います。"Everything"が代表曲、じゃもったいない。もっと斬新な曲で天下を取ってみせて欲しいですね。

2008/07/06

さよならのオーシャン/杉山清貴

例えば杉山清貴という人がいます。全盛期は80年代の中盤で、最近はほとんど見る機会もないのですが、この人なんかは喋る声の延長と思える声がきれいで、いかにもハイトーン・ボイスという印象です。いつ声変わりしたのか分からない、ボーイソプラノのまま大人になった声で、似ている人ではもっと昔にあいざき進也っていうアイドル歌手がいたんですが、分かる人が少ないですね。

ところが意外なことに、実際に楽器を持って音をとってみると、杉山清貴の音域は下がEくらいで上はオクターブ上のFまたはG。J-POPがロック色を強める中で、男性歌手のキーはどんどん高くなっていて、今はAあたりが常用されていますから、実際には特筆するほどのものではないように思えます。

でも、今も昔も普通の日本男児がFから上を出そうと思うと、高音専用にギアチェンジをしないと辛いです。シャウトってやつですね。杉山清貴や玉置浩二はだいたいGを上限にしていますが、シャウトすればもっと上まで出るでしょう。
しかし、杉山清貴はシャウトせずにこの音域で十分ハイトーン・ボイスの印象を与えることに成功していますし、特に声を作ることもしていないので、歌詞を伝えることもできています。何を歌っても同じ、という悪口も云えるのですが、ちょっとこの人をきちんと褒めておこうかな、と思いました。
iTMSでもアルバム何枚分か買うことができます。
杉山清貴 - beyond... - さよならのオーシャン

2008/07/05

INTERLUDE

6月中旬に父が亡くなったりして、ちょっと更新が滞ってしまいました。
今日から再開です。

さて、はてなダイアリーの方にも書いたんですけど、先月放送された「BSマンガ夜話」を会社の同僚に頼んで、録画してDVDに焼いてもらって(家にBSチューナーがないから)、一昨日見ました。
今回は第2夜が「男組」だったんで、それが楽しみで。

「男組」の作画担当・池上遼一の画は実に華麗であり、アジア人をこんなに格好良く描ける人はいない、といしかわじゅんも云っています。日本でいちばん上手いマンガ家と思っている人もたくさんいると思います。一方で、そのいしかわじゅんは著書の中で、「動きが描けないマンガ家」の典型としても池上遼一を挙げています。下手だと云ってるんですね。


私がこの、「うまい・へた」ラベルのエントリで書いていきたいのは、それの歌版です。画風の華麗さと動きの拙さが同居する池上遼一のマンガは、俳優に例えれば絶世の美男・美女なのに大根役者、という存在です。天使の歌声かと思うような声を持ちながら歌の解釈ができない歌手、というのがいたらやはり池上遼一になるでしょう。

僕が思う理想の歌唱法というのは、話し声が美しくてその延長にメロディが乗って、すべての音域をカバーする、というものです。おそらく、そうすれば歌詞が聞き取れないこともないと思われるのですが、プロの歌い手がそれで成り立つかというと、そういう喉の使い方をするとすぐに声帯ポリープになっちゃうのかもしれない。その辺の矛盾も抱えつつ、次の話に参りましょう。

2008/06/15

氷雨/ジェロ

発売は今月の25日だそうですが、iTMSでは既にダウンロード可能になっているジェロの「カバーズ」です。7曲で1400円。ジェロもジャケットいらないでしょ?
ジェロ - カバーズ

ジェロは音楽の知識がなくても「うまい」と言いやすいタイプの歌手です。声がきれいで音程を外さない。日本語の発音も聴きやすく(鼻濁音も使える!)、耳障りなところがまったくありません。
オリジナルの佳山明生が当時の演歌では例外的にあっさりとリズムに乗って歌っていたのを、日野美歌が思いっきり臭く歌ってから大ヒットになった曲です。当然ジェロは佳山系のうたい方をもっと洗練させてくると予想していましたが、ちょうど足して2で割ったようなうたい方をしています。

アルバム全体が外国籍のジェロに敬意を表してか洋楽的アレンジが加えられていますが、それぞれの元ネタが笑えるほどベタで、もっとマニアックな方向にした方がステイタスが上がるような気がするんですが、どうでしょうか?

2008/06/03

BLACK DIAMOND/DOUBLE & 安室奈美恵

先日、自分のブログ(こちらではない方)への検索元リンク等を辿ってネットをうろうろしていたら、結構若い人(ブログのプロフィールが本当な ら)が、「大塚愛の歌は下手だ」と書いている文章が多くて意外でした。私は大塚愛の歌はまあ巧いと思っているので。ま、私もそうでしたが、若い人っていう のは意外と固い考え方をするので、結果として保守的になりがちですからね…。

というわけで、ポピュラー音楽における歌の上手・下手ということについて考えてみようという企画を始めます。
クラシックの声楽と違って、ポピュラー音楽っていうのは聴く人の解釈によって上手い・下手はかなりどうとでもいえるので、あくまでも私が思う上手い・下手についてですけど。

そんな話題に格好のテキストになるかと思って、DOUBLE & 安室奈美恵の"BLACK DIAMOND"を聴いてみました。「決して悪口というわけではなく」で買うぞと予告してたんですが、その感想を書くのはこちらなんです。

二人とも、我が国の誇る実力派と言われる歌手です。楽曲云々よりも、まずこの組み合わせが夢の競演です。でも、この二人はその音楽的ルーツも発声方法もかなり違います。

安室奈美恵は善くも悪くもキャリアの最初はアイドル歌謡曲です。基本的に喋る声の延長で歌を歌います。この唄い方の良いところは聴き手に歌詞がよく届くことです。迫力という点では少し不利ですが。
一方、DOUBLEはR&Bをルーツにし、ちょっと孤高の本格派というイメージを持っていたのですが、Wikipediaなどでその来し方を辿ると、意外とコマーシャリズムとも無縁でないキャリアを持っています。この"BLACK DIAMOND"が収録されているアルバム"THE BEST COLLABORATIONS"も、もっと難しい曲が並んでいるかと思いきや、意外とキャッチーで歌謡曲っぽいのも混ざっていたので聴きやすかったです。しかし、その発声は本格派で、パンチのある(死語ですね)歌声はアムロちゃんを凌駕しています。

それでは横に並んで歌った時に安室奈美恵はDOUBULEよりも下手なのかというと、それぞれ「流儀」というか「目的」が違うので優劣はつけられないのです。R&BとしてはDOUBLEの方がより本来の文法(?)に沿っていると思いますが、J-POPとしては安室奈美恵のキュートさ、身近なリアルさ(ていうか、エッチさ、か)も捨て難い。

かようにポピュラー音楽における歌の上手い、下手というのは一筋縄ではいかないんですよ、ということでシリーズの前フリをしつつ、今宵はここまでにしとうございます。

2008/05/31

1978~2007年のマイベスト30 ~その5・拾遺集~

というわけで、マイベスト30のトップ3はYMO、遊佐未森、原田真二になってしまいました。

どうしても外せないものはバリバリにえこひいきして上位にしましたが、それ以外は一応評価軸を7~8個作って、ポイント制でやってみました。当然、候補の中にはポイントがつけにくいものがあって、好きなんだけどリストから落とした作品がたくさんあります。
今日は、ポイント制に向いてない好きな曲をいくつか並べてみます。

はいからさんが通る/南野陽子(1987年)

これも80年代アイドルポップスの佳曲です。今となっては阿部寛の俳優デビュー作として語られることが多い映画の主題歌。昔からあったといえばあったんですが、映画のタイトルがそのまま曲名になっていて、これは角川映画の「セーラー服と機関銃」を薬師丸ひろ子が歌って以来、テーマソングだったらどんなに物騒だろうと無機質だろうとそのまま曲のタイトルにして良い、という約束が出来たからです。
安直そうなシンセサイザーのイントロ、途中のチャイムっぽいピアノ(?)音などで彩りつつ、南野陽子の狭い音域でいかに上手に聞こえ、楽しく聞かせるかをよく考えてあります。

セーラー服と機関銃/薬師丸ひろ子(1981年)

今では色黒の小柄なオバチャンになってしまった薬師丸ひろ子ですが、昔はかわいかったんですよ。アイドル女優としての頂点を極めていた頃の主演映画の主題歌であり、歌手デビューの曲です。それにしてもこのタイトルはないだろうと思うんですが、その違和感も角川メディア戦略の一環。
当時は、顔はかわいいが歌うとがっかり、というアイドルが多かったが、この声は奇跡的。長澤まさみも最近カバーしていましたが、やっぱりこの曲はこの声でないと…。
後に彼女に曲(「メイン・テーマ)」)を提供した南佳孝が「使える音域が狭くて苦労した」と言っていますが、この声をどう生かすかというのは作り手にも楽しいテーマだと思うけどな。
彼女はアルバムもたくさん出していますが、「花図鑑」がお薦め。

ハピネス/タケカワユキヒデ(1979年)

ゴダイゴのベストなどでも聴けますが、発表時はタケカワユキヒデ名義だったはずです。コード進行が洋楽っぽくてカッコイイ。曲の内容は学生時代からの恋愛を実らせて結婚したカップルのほのぼのした日常、という感じ。まだ二十代の頃、会社の後輩同士の結婚式で「歌う直属の上司(<大馬鹿)」として、弾き語りをしました。本隊であるゴダイゴも当然ベスト30に入れたかったんですが、他との調整が付きませんでした<(_ _)>。


砂の城/斉藤由貴(1987年)

崎谷健次郎がプロデュースした彼女のアルバムは聴き応えがあり、他のアイドル歌謡よりもレベルが高かったです。声質のせいで全体にフラット気味に聞こえますが、基本的にとても歌のうまい人です。そういえば、彼女の弟、という人も芸能人になったような気がしますが、どうしているのだろう?早稲田のピッチャーは関係なさそうですしね。
アルバムなら、ぶっとんだダンスミュージック風が楽しい「age(アージュ)」がお薦め。


じれったい/安全地帯(1987年)

玉置浩二はおよそこの20年間、歌のうまい男性の頂点にいました。平井堅が出てくるまで、でしょうか?最近はマイペースで幸せそうにやっていたのに、突然後ろから撃たれて不幸な目に遭っています。かわいそうですね。
「ワインレッドの心」でデビューした頃、「この声でハードロックを歌わないのはもったいない」という評を新譜ジャーナルで読みましたが、まあとにかく歌うために生まれてきた人です。
ひとつ残念なのは、歌手としての力量と作曲家としての力量がちょっと合ってないところでしょうか?玉置浩二の作る曲はシンプルすぎて、歌い手としての自分を納得させられてないような気がしません?もちろん、歌ってしまえばすごい説得力で聴かされてしまうんですが…。特にこの頃の曲は「好きさ」もそうですけど、すごい短かかったり童謡みたいだったりで、悪くはないけど、もっとがんばって!と思ってました。


ああ、そうだ。歌がうまい、へたという問題を次回からやってみようかな!

2008/05/29

1978~2007年のマイベスト30 ~その4~

ずいぶん同じテーマで引っ張りましたが今日はベスト3の発表です。


第3位 タイムトラベル/原田真二(1978年)

早熟の天才・原田真二の絶頂期の1曲。例の3作連続リリース、ベスト20に3曲ノミネートなどの話題で最高のデビューを飾った後、いよいよアレンジも自分で手がけたという4曲目のシングルがこれ。
2番の途中、「チャールストン」のところでおんぼろピアノ風のフレーズが入るところに1発でやられました(中学生の子どもだった僕は、まじめな中にこういう遊びが入ったものに初めて気づかされたのです)。

この頃の勢いなら、原田真二は今頃すごい大御所になっているはずだったんですが、彼は大物芸能人として成功するには繊細すぎたようです。人生、頭がよいこととか、感性が鋭いことが大成功への近道ではないんですね。


第2位 暮れてゆく空は/遊佐美森(1989年)

「月刊Keyboard Magazine」で特集されていて、大田裕美が楽曲を提供する女性歌手とはどんな人なんだろうという興味で聞き始め、はまりました。アコースティックな楽器を集めたバックなのに、聴いているときの快感はハードロックを聴いているときとほぼ同じなんです。
この曲のアコースティック・ギターの細かいストロークが大好きで、当時は私も友人と一緒に作曲とかをしていましたから、結構それ風のギターを入れようとしたりしました。

遊佐未森本人のルックスは大変地味だが、とても不思議な声をしています。セクシーというのとは違うような気がするんですが、腰骨の辺りをぞくぞくさせるなにかがあって、ずっと聴いていたくなります。大変個人的なことですが、学生の時に好きだった女の子の声に似ていることを思い出しました。彼女の声の魅力はもっと普遍的なものだと思いますが…。

遊佐未森を聴いたとき、太田裕美も無理に大人ぶった歌など唄おうとせずに、こっちの方向で年齢や性別を超越してしまえば良かったのに、と思ったものですが、やはり10年という時代の違いは大きく、当時はその選択肢は見えなかったかもしれません。


第1位 テクノポリス/YMO(1979年)

じゃじゃん!第1位はテクノの首領、YMOです。いろいろと文章で書こうとしたんですけど、すごく長くなることが分かったので、なんで1位なのかを箇条書きにします。

  1. 当時、音色自体が珍しかったシンセサイザーを使い、シンセサイザーの音だけでポップミュージックを作って見せたこと。
  2. そしてその音楽が高級かつ楽しかったこと。
  3. その後の社会全般に大きな影響を与えたこと。

    • テクノポップ・ユニットの「増殖」。
    • 当時の男子中高生の髪型が長髪からテクノカットに。
    • YMOの後、シンセサイザーの普及に伴い、ローコストでカッコイイサウンドが作れるようになった→80年代アイドル歌謡の隆盛へ。
    • 従来の、一生かけて訓練を続けるような楽器が弾けなくても作曲・演奏できる方法が普及した→今のテクノ、ヒップホップへ

歴史的な1曲であり、歴史的なユニットです。そうそう、だいたい「ユニット」っていう言い方もYMO関連商品以降に広まった言い方ですよね。少なくとも日本では。

Mine or Yours/宇多田ヒカル

ベストアルバム"SCIENCE FICTION"を買った後しばらくぼーっとしていましたが、5月になった途端にYouTubeでライブ配信的なものを見かけました。配信は途中から見たのですが、過去のMVが次々流れていて、いつから新作発表になるのかわからず、見るのやめ...