では、一段とゆがみの激しいベストテンを発表します!
第10位 Self Control(方舟に曳かれて)/TM NETWORK(1987年) 渡辺美里に提供した"My Revolution"と違い、こちらは小室哲哉のホームグランドであるTM NETWORKの曲です。 "My Revolution"との対比で云うと、歌って爽快感があるのはBメロくらいでしょう。 逆にこの、歌い手を束縛するようなメロディをどう歌うかという課題も、腕に覚えのある歌い手にはある種の楽しみがあります。ボーカルの宇都宮隆は、おそらく束縛を楽しむ才能がある(どM体質か?)のだと思われ、その意味では小室メロディを歌わせれば日本で一番うまいです。 曲の後半、サビが何度か繰り返されますが、「ほんとうのかなーしみー」の一カ所だけ、バックの展開に沿ってメロディがギクシャクと変化します。そのギクシャクした部分に作り手の意志が見え、これはこれで美味しいのです。 | |
第9位 タイムマシンにおねがい/Sadistic Mica Band Revisited(2006年) オリジナルが発売されたのは相当昔なので、私もリアルタイムで聴いていたわけではありません。気づいたときにはすでに伝説的名曲になっていました。 リードボーカルを代えながら、何度も再録されたり、他のバンドがカバーしたりを繰り返しています。 もともとこの曲には'70年代特有の反体制的でかつ不健康なものが含まれていたのではないかと思います。それが2006年に木村カエラのあっけらかんとした歌声によってとてもピュアな形で再生されました。 その分純粋に聴いて楽しい、一緒に歌いたい曲になって、このお色直しは大成功だったのではないでしょうか? | |
第8位 君が、嘘を、ついた/オフコース(1984年) 1983年にバンド成立時からの主要メンバーだった鈴木康博が正式に脱退し、オフコースが名実ともに小田バンドになって活動再開した時の、最初のシングルです。小田さんの歌い方は、この頃からはっきりとシャウトとか唸りを使うようになり、現在につながる「小田節」が完成したのがこの頃。 「よるがなあがれーてゆーくう」などの日本語の乗せ方は小田和正独特のものでしたが、その後一般化しました。 たとえばプリンセス・プリンセス「世界でいちばん熱い夏」の「(半拍休み)かけぬ・けるぜぶ・らあのす・とらいぷ」などは明らかに小田流乗せ方。小田さん以前の乗せ方だと同じメロディでも「(1拍休み)かけ・ぬけるぜ・ぶらのす・とらいぷ」になっていたと思います。前者の方が日本語の歌として感情が込めやすいでしょう? 80年代前半にオフコースが大化けした理由ってのは、最新洋楽風サウンドの導入とか、イメージ戦略の上手さとか、いろいろあるんでしょうが、最大のポイントはこの日本人の感情にマッチした、演歌に近いような日本語の乗せ方なんじゃないでしょうか。 | |
第7位 ドール/大田裕美(1978年) 大田裕美は'76~'77年あたりに名曲が多いのですが、'78年発売の名盤"ELEGANCE"に収録されたシングル曲、「ドール」で代表してもらいます。 この頃松本隆が大田裕美向けに書いていた歌詞の世界は深く、上記のアルバムには「煉瓦荘」のように、若さ故に成就できなかった恋愛を、男言葉で私小説風に歌わせている曲があります。そういう場合、普通なら歌っている大田裕美は男役のはずなのに、男役とかけ離れた舌足らずの甘い声のため、その歌詞の中に出てくる可憐なヒロインもまた太田裕美であるという、ちょっと不思議な構造になっていました。 「ドール」では、そんな不器用でお金のない男の子の相手だった女の子が、ちょっと成長したところからその恋を振り返っている歌になっています。アイドル的女性歌手がすべて通る道ではありますが、この子をどうやって大人の女性歌手にしようか、という作り手の試行錯誤が見えます。 その後の展開を振り返ると、大田裕美についてはあまりうまくいかず(というか、成功した人は松田聖子と安室奈美恵しかいないと思いますが、いずれも出産と離婚が必要だった)、本人が休業してアメリカに行ってしまい、1年強の空白の後にニューウェイヴの楽曲を携えて復帰する、という予想外の展開になりました。 | |
第6位 C-Girl/浅香唯(1988年) なぜかこんな上位にがこれが。 アイドル歌謡史上最高にカッコイイ曲、と私は思います。 浅香唯は名前が覚えやすい割にブレイクまでに時間がかかり、この曲のちょっと前に「スケバン刑事」絡みの「ビリーヴ・アゲイン」という曲でようやくベストテン番組に顔を出すようになりました。 この頃の浅香唯は松田聖子風の、ちょっとロックの香りのする大きなビブラートで歌うようになっていて、「結構歌えるじゃん」と思わされたところにたたみかけてきたのがこの"C-Girl"でした。 タイアップしたCMに水着姿で登場し、一気にお茶の間の認知度を上げることに成功した、という記憶があります。初期の吉川晃二の作品でおなじみ、職人的にカッコイイ曲作りをするNobodyの作曲で、アレンジが井上鑑という豪華な布陣です。 この曲と「ビリーヴ・アゲイン」が入ったアルバム"Candid Girl"も全体にカッコよく、当時の私はもう25歳くらいになっていて、レジに持って行くのがとても恥ずかしかったのですが、蛮勇を振り絞って買いました! | |
第5位 Automatic/宇多田ヒカル(1998年) この曲についてはもう何遍も書いているので、多くは語りません。単に流暢に英語をしゃべれる人が英語混じりの歌を歌っているのではなく、日本語、和製英語、日本語英語、ネイティヴ・イングリッシュを自由自在かつ的確に使い分けるセンスに脱帽。歌うまい。声が魅力的。顔はお母さんの方がキレイ。 | |
第4位 君は天然色/大滝詠一(1981年) 私の年代ではフィル・スペクター・サウンドなんて知らないわけですから、この音はなに?と圧倒されました。楽器がどれだけ鳴っているのか?なんでこんなエコーがかかっているのか?まさに音の壁。 また、70年代までのフォーク~ニューミュージックの世界は、王道歌謡曲に比べてメロディのスケールが小さい、こぢんまりした作品が多かったんですが、この人や山下達郎のメロディは動きが大きくのびやかで、高級感がありました。 80年代前半にマイカーを持っていた学生で、"A LONG VACATION"をコピーしたカセットテープを車に積んでいなかった人はいないはず。 |
コメントが長くなってきたので、ベスト3は次回に回します(引っ張る引っ張る!)。
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