2007/08/13

ガンダーラ/ゴダイゴ

「日本語の問題」はまだ続きます。

サザンオールスターズが早口でまくしたてている頃、もう一つの流儀が主流となってきます。それは、「歌詞の一部を大幅に英語にしてしまう」という方法です。

この話に入る前段階で、本来は「キャロル」などに触れなくてはいけないのですが、私はリアルタイムの記憶として彼らの音楽を聴いていません。こちらのリンクで「ファンキー・モンキー・ベイビー」の歌詞を参照していただければ良いと思うのですが、何が云いたいかというと、日本語の歌詞の中になんの断りも無く突然に英単語が入ってくるということです。キャロルはWikipediaによると1975年には活動をしています。この頃にはもう、こういう歌を歌っていた人(矢沢永吉)がいた、ということです。「風街ろまん」の項で紹介した萩原健太著「はっぴいえんど伝説」でもはっぴいえんど後の日本語ロックの展開例として、キャロルに触れています。日本語がはまらないところは英語で歌ってしまう、というのは大きなブレイクスルーだったと思います。

で、ゴダイゴが何をやったかというと、Aメロでは日本語で話の筋を提示しておいて、サビはほぼ全部英語にしてしまう、というやり方です。
もともとゴダイゴはメンバーが外国人や、留学経験者や外語大生であり、英語に対する抵抗が無かったのでしょう。また、外国でも一定評価されていたらしい(私は真偽および詳細は知りません)という評判もありました。リードボーカルのタケカワユキヒデも「英語で歌う方が得意」という意味の発言をテレビでしていました。

「ガンダーラ」は、有名なテレビドラマ「西遊記」のサウンドトラックから大ヒットになりましたが、それまでこんなに英語の含有量(?)が多いヒット曲は稀でした(外国曲は別ですが)。特にこの曲は「テレビで孫悟空の話を見る子ども」をターゲットにしていたわけですから画期的です。言ってることは「ガンダーラはインドにあったと言われています」ぐらいの内容ですが、とりあえず中学2年程度の英語力が必要です。キャロルは"baby"や"I love you"などほとんど単語か慣用句のレベルだったと思いますが、「ガンダーラ」の英語は歴とした英作文です。

「ガンダーラ」を日本中の子どもたちが歌ったことで、洋楽風メロディに無理に日本語を載せなくても、一番カッコいいところは英語で歌ってしまえば、子どもだってついてくることが証明されました。さらに邦楽でありながら全編英語である"モンキー・マジック"までが大ヒットしてしまうという現象が生まれました。

この後、キャロル以上ゴダイゴ未満の英語含有量で歌を作る、という手法は1980年頃までに、ポピュラーミュージックの常套手段となり、当時の多くのヒット曲がこのパターンで作られています。
「エーゲ海から風が吹いてくるわ(ロックじゃないけどね)」「セクシーな紫の君は俺をいい感じにしてくれるぜ(訳はこれで良いのか?)」「私を覚えてる?(加藤和彦作品)」など。あげくの果てに85年には1番で歌った日本語の歌詞を、2番で直訳の英語で歌うという、シーゲル梶原のネタのようだが大真面目な大ヒット「恋におちて」が生まれます。

こうなると日本語ロック論争は、ほぼ沈静化してしまい、この後この問題が深刻に論争されることがなかったように思います。

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