続きです。
「はっぴいえんど」の次に日本語とロックの問題で俎上に載せられることが多いのがサザンオールスターズです。桑田佳祐のバックボーンについて私は良く知らないのですが、歌謡曲も好きなようですし、邦楽にも水準以上の興味と知識を持っていると思われます。また、1978年デビューということは、既に作詞家として売れっ子だった松本隆の仕事も知っていたことと思います。
さて、桑田佳祐がやったことは、よりサウンド重視。ノリを阻害しない言葉を優先してロックの歌詞を作ることだったと思われます。意味はあえて解体し、耳につくフレーズを次々と貼り合わせ、イメージの固まりをそのまま聞き手にぶつけるような手法です。
桑田佳祐の歌詞にも、松本隆的な、当時既に死語または古語といっていい単語が出て来ます。
「C調言葉に御用心」で拾ってみると、
「アンタ」「たまにゃ」「狂おしく」「うなじ」「ちょいと」「ふらち」「なるがままに」「あろうとなかろうと」「照らう(衒うじゃないの?)」「もどかしや」など。これらは、30年前とはいえ、若者の喋り言葉で使われる言葉ではありませんでした。もっと昔の歌謡曲(芸者の格好をした人が、三味線をバックに歌うやつ)とか、もっと云えば都々逸や落語で使われる言葉です。「風街ろまん」に入っている「春らんまん」と共通した言語の世界です。
しかもこれらの言葉をものすごい早口でメロディに載せたのが桑田節の真骨頂でした。
この個性があまりに強すぎて、早口でまくしたてる系は意外とフォロワーがいません。やると「サザンの真似」と云われるからだと思います。佐野元春がサザンの2年後にデビューしていますが、彼はまた流儀が違うので改めて触れます。
語彙の部分だけ真似たのが、デビュー後数年間「にせサザン」として活動していたTUBEです。「あー夏休み」で顕著ですが、「葦簾」「誰かれ」「切れ込み」「熱冷めやらぬ」「ちゃうのかい」「チョイト」など。「はっぴいえんど」の孫引きとも云えますが、おそらく書いた本人(前田亘輝)は当時サザンだけを意識していたのでしょう。
*各曲の歌詞の仮名遣いは「うたまっぷ」を参考にしました。
この項まだ続きます。
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