夏休みで時間があるので、ちょっと自由研究をしてみましょう。
ポピュラーミュージック、特にロックにおける日本語と歌詞の問題です。
まず、40年にわたる日本語とロックの問題で、このアルバムの話をしないわけにはいきません。歴史上(?)何度となく繰り返された命題「日本語によるロックは可能か?」の最初の回答として、かならず引き合いに出されるはっぴいえんどの「風街ろまん」です。このアルバムも全部聴いても35分くらいの作品ですし、トータルな話をしたいので、アルバムごとテーマにしておきます。
まず、素朴な疑問。本邦初の母国語のロックという言い方をされるはっぴいえんどですが、ファーストアルバム「はっぴいえんど(通称:ゆでめん)」が出たのが1970年です。この前からエレキギターを持って日本語で歌っていた人はいたんじゃないですか?そう、グループサウンズ(GS)です。ブルー・コメッツが1966年、ザ・スパイダースが1965年。もりとー、いずみにー、さーそー、われてー、と普通に日本語で歌っていたじゃないですか!
「はっぴいえんど」を本邦初とする立場からはGSはロックじゃないという前提があるんでしょうね。じゃあ、何がロックなんでしょうか?
先日、ニッポン放送のテリー伊藤の番組に加藤和彦がゲスト出演したとき、加藤和彦がこんなことをいっていました。正確には再現できないんですが、主旨としては「今の日本にはロックサウンドのポップスはあるけど、ロックはないでしょ?ロックというのは生き方だから」ということでした。つまり、既存の歌謡曲の枠組みの中でエレキギターを持って歌うだけではロックではないらしいです。これは、今のJ-POPに対する批判ですから、いつかまた蒸し返してこの話も書きたいと思っていますが、今ははっぴいえんどに戻ります。
難しい理屈は抜きにして、はっぴいえんど以前のロッカーにとって問題だったのは、「日本語でロックを歌うとかっこわるい、ずっこける」ということだったと思います。かといって、英語で歌えばいいかというと、それでは「メッセージ」が伝わりません。東京ビートルズなど極北の例を上げなくとも、日本語でロックを歌うことは「かっこわるさをいかに回避するか」の歴史であると云ってしまいましょう!
そこで「風街ろまん」です。ものの本(萩原健太等が書いています)や松本隆のサイトを読むと、大滝詠一や細野晴臣は当初日本語で歌うことに抵抗したそうですが、松本隆が日本語で歌わなければ意味が無い、と説得したのだそうです。メンバーを納得させるべく松本隆が作って行ったのがはっぴいえんどの楽曲の歌詞です。松本隆は日本語の中からロックに乗りそうな単語を抽出したそうです。「悸く」とか「唐紅」とか「摩天楼」とか…。そういう語彙を収集した上で、オリンピック開発前の東京の風景をテーマに書き上げたのが「風街ろまん」の詩の世界です。
今聴くと「風街ろまん」は、ロックと言い張るにはカントリー&ウェスタン的な楽曲(主に細野作品)も多く、「ほんとか?」と思う部分もあると思いますが、この実験する精神がロックなんです。
また、歌詞が聞き取れるのか?という問題もあります。
内田裕也は当時、「日本語とロックの融合というが、成功したと思えない。せっかく母国語で歌うのに聞き取れない」という発言をしています(萩原健太著:はっぴいえんど伝説)。
私は、はっぴいえんどの歌詞は「聞き取れない」というよりも「意味が理解出来ない」だと思います。これは松本隆が収集した語彙がほとんど当時ですら死語のような古い単語にまで及んでいたからだと思います。だって、文字で読んでも分かりにくいですから。
一方、大滝詠一の好きな「とてもぉ、すばやくーとー、びおりるのでっ」などの単語の繋がりの分解は、このテンポであれば、一種の謎かけとして通用していると思うので、これによって意味が取れないということは無いと思います。
この項続きます。
今回のネタ元に興味のある方は、下のリンクで原典に当たってみてください。
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